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幼馴染みざまぁを見届けた俺、自分も幼馴染みざまぁをしたかったので感想を聞いてみた。  作者: 棘 瑞貴


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文化祭に向けて


『……』


 時は現在に戻り、旧生徒会室。

 眼前には真顔で俺を見下ろす佳南と筑波。

 いやぁ参ったね、冷や汗が止まらないや。いっそ自白剤でも盛られたい気分。

 椅子に縛られたままの俺は、恐る恐る2人に話し掛けてみる。


「あ……あの、一旦耶麻さんとの出会いは語ったので拙者が劇に出れない理由はお分かり頂けましたかな……?」


 もはや一人称までおかしくなり始める始末である。

 それ程までに2人が俺に掛けるプレッシャーは強い。

 まず、俺に口を聞いてくれたのは佳南だった。


「──で、結局あんたはいじめられっ子の耶麻麗華さんを放っておけなくて、ほいほい彼女のお手伝いをするわけね?」

「ほいほいって……。で、でも仕方ないだろ!あんなの目の前で見せられたら……」

「まぁ要ならそうするってのは分かるけど、あんたさ」

「何だよ……」

「……」


 そこで佳南は黙ってしまった。

 彼女が何を言おうとしているのかは、まぁ大体予想はつく。

 何度同じ事を繰り返すのか、大方そんな所だろう。

 そりゃ言いづらいだろうな。佳南もそうやって俺に助けて貰ったと感じているのだろうから。

 そしてそれは筑波も同じなのだろう。

 今もまだ筑波は黙ったまま。


『……』

「……何とか言って貰えませんかね……」


 いい加減この体勢にも疲れてきた。

 いっそ叱るなら叱るでさっさとしてくれい。

 そう投げやりになり始めた頃、ようやく筑波が口を開いた。


「高知君、耶麻さんはその後どうしたの?」

「え、どうって……」


 思いの外普通の質問にたじろいでしまう。

 

「耶麻さんをいじめてるっぽい奴らは俺のせいできっしょとか言って散って行って……その後はまた耶麻さんにお願いしますって頭下げられて──」

「ほいほい承諾してしまったと」

「ねぇそのほいほいって止めてくんない?」

「あんたの事はこれからほい助って呼ぶから」

「それは──ん?蔑称なのか?」


 俺が頭上にハテナマークを浮かべていると、筑波が俺の後ろに回った。

 そっと腰を下ろして、どうやら俺を縛る縄を解いてくれるらしい。


「もう高知君が決めてしまった事だし、私達がどれだけ言っても無駄だって事は良く分かってる。だから解いてはあげる」

「……はい」

「だけど」


 筑波は縄を解いてから、そっと立ち上がった。

 俺は座ったまま彼女を見上げた。

 逆さまに映る筑波と目線が合う。

 同時に、俺の両頬に筑波がそっと手を添えた。


「私、いつでも(・・・・)見てるからね。もう二度と無茶が出来ると思わないで」


 俺は無言でただ頷いた。

 だって筑波の顔、全っ然笑ってないの!

 ついでに言うと声に温度もない。

 

「あ、あとそれとね」

「へ?」


 筑波は俺から離れる前にそっと耳元で囁いてきた。

 佳南には聞こえないであろう声量で。


「告白の返事、待つのは文化祭までだからね♡」

「っ!」


 一気に心拍数が上がる。

 思わず振り返って筑波を見ると、エンジェルスマイルで頬を僅かに染めている。

 やはり筑波は天使だ。その笑顔はあまりにも魅力的すぎる。


「……」


 俺達のやり取りを黙って見ていた佳南は、旧生徒会室を出るまで口数は少ないままだった。





『結局僕がハムレット役を演じる事になっちゃったよ。凄く嫌なんだけど……』

「悪いとは思うけど、この学校の規則で生徒会補佐の人間は色々免除されるんだろ?仕方ないじゃん」


 放課後、俺はクラスで一番仲が良い男友達倉橋(くらはし)(りく)君と電話をしながら、とある場所を目指して歩みを進めていた。


『……そもそも何で要君が……』

「俺だって分からん。ふっ、でも良いじゃん佳南と筑波、クラス──どころか学校でもトップの美少女と演劇だぞ?」

『筑波さんはともかく……か──桜庭さんは……』


 倉橋君と佳南、この2人は元幼馴染みだ。

 元、と付けるのは2人がその袂を分かったから。

 まぁ俺とマナみたいなもんだ。


 そんな相手と劇をやるのはそら嫌だろうな。

 

「そんなに嫌なら2人に降りて貰えよ」

『それがさぁ、あの2人凄くやる気で言い出し辛いんだよね』

「……確かに」


 何故2人はあれ程劇に拘るのか。

 しかも演目はハムレット、復讐の物語だ。暗いにも程がある。


「ま、配役的にはぴったりなんじゃねーの」

『君、楽しんでるだろう……』

「そりゃもちろん」

『はぁ……仕方ないとは言え、とんだ貧乏くじを引かされたね……』

「ごめんてば。俺に出来る事があれば可能な限り手伝うからさ」


 俺がそう言うと、倉橋君は少しだけ間を空けてから答えた。


『……いや、要君のやらなきゃいけない事に集中してくれて大丈夫だよ』

「そうなの?」

『たぶんそうするのが一番良い気がするんだ。あの2人、何か企んでいるみたいだし』

「なんじゃそりゃ」


 とは言えそれはありがたい。

 2人の企みとやらは気掛かりだけれども、文化祭実行委員長の補佐役、聞く限り結構面倒臭そうだしな。

 この先に待ち受けているであろう無賃労働にげんなりしていると、俺は目的の場所に着いた。

 倉橋君との電話を切り、目の前のドアをノックする。


「失礼しまーす」


 場所は職員室。別に何かやらかして呼び出された訳じゃないぞ。実行委員絡みの案件だ。

 俺がそっとドアを開けると、ピリッとした空気感が流れてくる。職員室って苦手だわ。

 鼻腔に流れてくる微かなコーヒーの香りだけは悪くないが。

 さっさと目当ての人物を見付けようと職員室を見渡していると、向こうから俺を呼んできた。


「先輩!こっちです!」

「声がデカいよ……」


 小さな体を懸命に伸ばして、応接室の方から俺を呼ぶのは耶麻さんだ。

 そして──


「来たね、問題児」


 職員室の後方からニヤリと顔を出す教師がもう1人。

 齢40をすぎ、アラフィフが近付いているというのに、一切の衰えを感じさせない美貌を携えた、この学校の魔女。

 その名を吟醸(ぎんじょう)朱鳥(あすか)

 見た目のうら若さは、いっそ変化の術でも使っていると言われた方が納得がいくレベルだ。一部の男子からはババァでも……だがそれが良い!と人気である。


「……誰が問題児ですか……」


 直接の関わりはほとんど無い筈だが、何故か俺を認知しているみたいだ。

 俺は職員室に残っている教師達の刺すような視線を抜け、2人の方へ向かった。

 応接室は職員室と併設する形で、部屋がしっかりと分かれており、ドアも付いている。

 普通に喋っているくらいでは声が漏れる心配も無さそうだ。


「よく来たね、高知要」


 応接室に入ると、高級そうなソファに2人は座っていた。対面で向かい合っており、吟醸先生に促されるまま、耶麻さんの隣に座る。


「先生が俺らを呼び出したんでしょ。実行委員絡みで何の用ですか?」

「可愛くない態度だねぇ。文化祭実行委員の顧問相手に」

「俺はただの補佐役なんで」


 俺はチラリと耶麻さんの方を見る。

 目線が合うと、彼女は申し訳無さそうに微笑を浮かべた。


「先生、あまり先輩を困らせないであげてください。私の無理を聞いて貰っただけなんで」

「ふふっ、こっちは健気だねぇ〜」

「……はようしてくれ……」


 ニヤニヤと笑うばかりで話の進まない吟醸先生。

 俺達の背が丸くなりそうになると、ようやく彼女は本題を切り出した。


「文化祭を2週間前に控え、実行委員も本格的に始まるだろう。明日以降、放課後は基本会議だからそのつもりで」

「マジかよ……」


 う、嘘だろ……!?2週間、放課後が全潰れだと!?

 しかも俺に見返りは無し……。倉橋君、一番の貧乏くじを引いたのは俺だったぞ……。

 俺が肩を落とし生気を失っていると、ツンツンと脇腹を耶麻さんがつついてくる。


「そんなリアクションしないで下さいよ」

「無理だ。マジ絶望」

「……だって、先輩しか居なかったんだもん……」


 いじらしくしゅんとしてしまった耶麻さんを見て、さすがに態度を改める。


「あー……ごめんな、一度手助けするって言ったのに──」

「そうですよ!しばらくの間、先輩は私のものなんですから今後私を悲しませないように気を付けて下さいね!」

「え、なにこいつしばきたいんですけど」


 人が下手に出てやったのに急にふてぶてしい奴だなぁ!

 こいつがいじめられてるのって性格も原因じゃねぇの。


「お前ら、自分達から話を脱線して、帰りたくないのかい?」

「そうだった」

「すみません」

「ったく」


 吟醸先生は嘆息した後、俺達に文化祭に向けての説明を続けた。


「あんたら実行委員って言ってもやる事は基本裏方の仕事だ。本番のステージでの指示出し、開会閉会の宣言……あとは何だったかな。まぁいわゆる雑務だらけなもんさ」

「……うげぇ」

「そうだるくなる事もないよ。実行委員ならではの役得ってやつもある」

「ほう」


 そんなものがあるなら早く言ってくれ!

 少しだけやる気が出てきた!


「それで役得とは?」

「あぁ、このあたしからの心象が良くなる!」

「……は?」


 このババァ何て言った?

 心象?アラフィフの担任でもなんでもない先生からの?


「……やっぱり引き受けたの間違いだったなぁ……」

「ちょ、先輩そんな事言わないで!先生超美人じゃないですか!役得でしょう!」

「……そうだね。美人だね。あと30くらい若かったらトキメイたかもね……」

「ほんっと失礼なクソガキだね。これでもGカップはあるってのに」

「そうなんですか!?」

「……先輩」

「すみませんでした」


 耶麻さんが向けてくる視線の痛い事痛い事。

 俺はすぐに姿勢を正し、吟醸先生の言葉を待った。

 しかし、彼女はすぐに話の続きを語る事はなく、指先で顎を触りながら何かを思案しだした。


「あの……吟醸先生……?」

「ん?あぁ悪いね。このクソガキを少しでもやる気にさせる方法を考えてたんだが……」

「思い付きましたか!?」


 食い気味に反応する耶麻さん。

 こいつもたいがい失礼じゃない?


「……いや、悪いね耶麻麗華。さっぱりさ」

「そうですか……」

「別に良いだろ。やる気なんか無くたってさ」


 俺が本気で集中しなくちゃいけない事は他にあるんだ。

 あの2人の事──それが今の俺の最優先事項だ。


 まぁ……とは言え、耶麻さんの依頼を蔑ろにするつもりもない。

 出来る事ならこの子のいじめ問題だって解決してやりたい。

 ただ俺にそんな物語の主人公のような活躍は無理だし、首を突っ込んでもどうせ後味の悪い結末になるだけだ。

 

「ま、お前さんにやる気が無くったって実行委員は大丈夫さ。なんたって本気でやらなくちゃいけないのは耶麻麗華、お前の方だからね」

「うっ……そ、それは十分承知してます……」

「ならば結構。あと少しだけ連絡事項があるから、それを伝えたら今日は解散だ」

『はい』


 吟醸先生は明日の会議の議題や、まとめてくれていたプリントを渡してくれた後、ようやく解散となった。

 こんな風にこれから2週間、放課後が潰れていくのを考えるとゾットするな──なんて思いながら職員室を出ようとした。


「高知要、あんたは少し待ちな」

「え?」


 耶麻さんと一緒に開放してくれないの?もうほんとやだ……。


「何なんだよ……。耶麻さん、悪いけど先に帰っててくれ……」

「は、はい。でも先輩にだけってどうしたんですかね?」

「俺が知りたいよ」

「やっぱり失礼過ぎたんじゃないですか?」

「また説教タイムかよ……」

「また?」

「いやこっちの話」


 きょとんと首を傾ける耶麻さんは少し可愛い。

 つくづくこの子に友達がいないのが不思議だ。

 排斥される程に美少女って事なのだろうが、女の社会は本当に恐ろしいね。

 俺が耶麻さんに「じゃな」と言って吟醸先生の方に戻ろうとすると、彼女はそっと俺の制服の裾に触れる。

 

「先輩」

「ん?」

「今日も会えて嬉しかったです。また明日もよろしくお願いしますね」

「あ、あぁ……」


 ぺこりと頭を下げた耶麻さんが、次に俺と視線を合わせた時、金色の隙間から覗く彼女の頬は微かに紅くなっていた。


「それじゃ失礼します」

「き、気を付けて帰れよ」

「はい!」


 無邪気そうに笑い、彼女は職員室を出た。

 俺はそっと自分の胸に触れ、鼓動を落ち着かせ──


「なぁにドキドキしてんだい。小悪魔系に弱いのかい?」

「ほほぅ!」


 後ろから俺の肩に腕を回し、ニヤリと悪い笑みを浮かべる吟醸先生。


「ド、ドキドキなんてしてないですよ!?」

「あ〜良い良い。男はあぁいう手前が好きだよな。よぉく知ってる」

「あぁ先生はバツイチでしたっけ」


 どこかの噂でそんな話を聞いた気がする。


「……」

「先生?」


 吟醸先生は急に俺の肩に体重を乗せると、半目になって声を低くした。


「”ババァ”と”バツイチ”と”幸せ”があたしの嫌いな言葉──3大嫌いな言葉だ」


 そんな心が痛くなる名言だったっけ!?

 あと幸せが嫌いな言葉は歪み過ぎだろこの人。


「まぁ良い、今回だけは見逃してやる」

「それはどうも……」


 吟醸先生はパッと俺の体から離れると、再び応接室へと招いた。

 先ほどと同じように対面に座ると、彼女は太ももの上で組んだ両手に顎を乗せた。

 そして鋭い視線を俺に向ける。


「高知要、お前さんは耶麻麗華の置かれた状況についてどう思う?」

「え……どうって言われても……」

 

 予想だにしないその問いかけに思わず口籠ってしまう。

 

「言い方を変えようか」

「……はい」

「教師として、いじめられている生徒を見逃したくはない。が、学校側がこれを認知する事はないだろう。まだ事は大きくもなっていないからね。それに、認知したとしてあの子の置かれた状況は良くならんとも思う。あくまでもあたしの私見だがな」


 話す間も吟醸先生は俺から目を離さない。

 まるで、俺から逃げるという選択肢を選ばせないように。


「実はあの子の事は昔から知っていてね。あの子は良い意味でも悪い意味でも人の目に付いてしまう。いい加減普通に日常を送って欲しい所なんだよ」

「……はぁ」

「さて、そんな風に思っていた時に現れたのがあんただよ、高知要」

「……」


 俺はニヤっと笑う吟醸先生に半目を向ける。


「俺に何を期待しているんですか」

「言わなくても分かるだろう?」

「それ程頭が良い方じゃないもんで」

「あぁ成績は平々凡々、そんな事は分かってるさ」


 いちいち癇に障る人だ。

 俺はため息をつきながら答えた。


「無理ですよ。いじめってのは根が深いんです。学年も違う俺が介入したからって何も変わりませんよ」

「解決しろとは言わないよ。ただあの子の毎日を幸せにしてやってくれって言ってるんだ」


 何て曖昧な依頼だろうか。

 結局何をして欲しいのかさっぱり分からん。


「……先生、幸せって言葉嫌いじゃないんですか?」

「あぁ、他人の幸せなんて反吐が出るね」

「最悪だこの人」

「だけど──」


 吟醸先生は立ち上がりながら、続きの言葉を口にする。


「──生徒は他人じゃない。あたしの教え子には幸せになって貰わなくちゃならん」

「……」


 先ほどまでの暴言の後からは考えられない言葉だ……。

 とは言え、耶麻さんのいじめ問題をそもそも俺は良く分かってない。

 原因もそうだし、どんないじめを受けているのかも。あ、いや少し分かってるわ。こないだ水ぶっかけられたわ。

 よく考えたら俺はあいつらに仕返ししてやる大義名分があったのか。


「ま、どっちにしろ俺から首突っ込む気はないですよ」

「意外だね。耶麻麗華にちょっかい出してるのは、あんたに関係のある人物だってのに」

「えぇ?」


 あの女子達の事なんてカケラも知らないんだけど……。

 あれか、また俺の記憶の隅に隠れてる誰かなのか!?

 海馬を絞りに絞って記憶の迷路に迷い込んでいると、吟醸先生がその関係のある人物の名前を口にした。


海堂(かいどう)日神(ひがみ)、小学校の頃のお前らと関係があった奴だと耶麻麗華からは聞いているが」

「海堂……日神……」


 今回は珍しく確かに覚えがある。

 ……少しだけ、苦い記憶だ。


「あー……あいつこの学校だったのか」

「何があったかまでは知らないけどね。ま、上手い事やってくれる事を祈る」

「……」


 先生は俺に、補足で少しだけ耶麻さんについて語ってくれた。

 その一通りを頭に入れて帰路へついた。

 家に帰って夕飯を食って、佳南や筑波から来てた連絡を返す。そんでもって風呂に入って適当に時間を潰し眠りについた。

 目を瞑りながら脳裏に浮かぶのは、まだ自我も確立されていない頃の幼かった頃の思い出。

 懐かしむように回想するが、それはある瞬間で止まる。古傷が痛むようにその先へ行かせないのだ。

 一体いくつトラウマを抱えてるんだよ俺は……。


「……しっかりしないとな……」


 明日は実行委員の初顔合わせがある。

 ちゃんと休んで耶麻さんの補佐をしてやらないとな。

 それが今回俺に与えられた役割だ。

 正直、俺が彼女を助ける必要はないと思う。今までみたいに俺自身に目的があるわけでも、筑波や佳南の為にやらなきゃいけない事があるわけでもない。

 流れでこういう状況になっただけだ。

 それでも俺は彼女の頼みを引き受けた。

 困っている奴がいれば助ける、孤立している奴がいれば一人にさせない。恩を受けたならきっちり返す。


 ──それが”普通”の事だと信じているから。


 他人は今でも信用出来ない。する気もない。

 だから装わなきゃならない。普通の自分を。

 じゃないと一人孤立して、またボッチ飯を食う羽目になる。

 

「……少し前まではそう思ってたっけな」

 

 佳南と筑波、2人は俺を変えてくれた。

 マナは違うと言うが……。

 あいつの言葉が眠気に襲われ始めた脳によぎる。


『被る仮面を変えただけね。カナメの本質は何も──』


 俺の本質。

 そんなの自分にだって分からない。

 あいつに一体何が分かってるんだっての。

 聞いてみたい気もするが、聞いた所で今のマナとマトモな話しが出来るとも思えない。

 ほんと俺の前途は多難だな……。


「ふぁ〜……」


 いよいよ睡魔が俺を支配し始めた。

 疲れが溜まっていたのか、睡眠はほんの一瞬で、いつの間にか夜は明け、朝を迎えた。


 1日の始まり。少し前まではだらだらと二度寝を挟んでから朝礼ギリギリに登校していた。

 最近は佳南達のせいでそうはいかなくなっているが……。

 とは言え、今日はいつもより更に早い目覚めだ。


「うーむ、こりゃもう一眠りだな」


 この二度寝が出来ると分かった瞬間の目覚めに勝る快感が他にあるだろうか。いや無い(反語)。

 と、俺がダメ人間のギリギリを攻める思考をしながら目蓋を閉じようとした時だ。


『せんぱーーーい!!おっはよーございまぁーーす!!!』

「!?」


 だ、誰だ!?朝っぱらから大声で叫んでいる奴は!?

 俺は自室の窓を開け、大方の予想はついている声の主の方へ視線を向ける。


「あ、出てきた!本日も全力で私を躾けて下さいね♡」

「今すぐ帰れ!!」

「きゃん♡ハウスだなんて朝から卑猥ですよぉ♡」

「……俺の周り、一人くらいまともな奴はいないのかよ……」

お読み下さりありがとうございます!


続きが気になる、面白い。

少しでもそう思って頂ける方がおられればぜひスクロールバーを下げていった先にある広告下の☆☆☆☆☆に評価やブックマーク、感想等ぜひ願いします!!

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