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娘として

 よく漢字を間違えられる綺月ちゃんの家、宫神宮家の神社の裏手、森の中に突如として現れるその花畑はこの街の人でも更にこの街に詳しい人ですら知ってる人の少ない場所だ。


「結局、何かある度にここに来ちゃうんだよなぁ。仲直りしたら父様を案内してあげよっと」


「昔から本当にここにはお世話になりっぱなしだな。仲直りしたら千代を連れて来てあげよう」


「「はぁーあ……早く仲直りしたいな……えっ?」」


 そんな数少ない人にしか知られてないこの場所で、その夜偶然にも家出した娘とその父親が再開したのだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


「……」


「……」


「……」


「……」


 何か喋れよ父様ぁー!じゃないといつまでもムスッとしとかなきゃダメじゃんか!


 まさか鉢合うなんて思ってもおらず、気まずい雰囲気の中とりあえず花畑の中にある岩に腰掛けた父様に、俺は横に座りながらむすぅっとした表情をしていた。


「……あー」


「……」


「その……なんだ、千代」


「……なに」


「お尻痛いだろう?膝、座るか?」


「……すわる」


 お尻痛かったのは事実だし。


 未だ頬を膨らましつつも、ぽふんと父様のお膝の上に座った俺は、いつもの癖で無意識に父様の腕を掴みシートベルトみたいにする。


「……千代」


「ん」


「悪かった」


「……ん」


「女だからって頭から否定した事、千代の考えてくれた事をしっかりと読むべきだった事、そして何より千代自身の事をきちんと理解すべきだった事、本当に済まなかった」


「……うん」


「これからはもっと、きちんと千代と向き合って行く。だから……許して、くれないか?」


「……たら」


「?」


「もっと……ぎゅうってして、頭撫でてくれたら……許す」


「……!あぁ、あぁ!」


「うみゃあぁー!苦しい!父様それはきつすぎる!」


「お、おぉ。す、済まない」


「んもぅ……優しくしてよね?」


 やっぱり、父様の腕の中って安心するなぁ……でも仲直りに何か要求したかと思えばこんな事なんて、俺も順調に女の子に染まって来てるのだろうか……


 未だ不機嫌そうな顔をしつつも、ぎゅうっと抱き締めてもらい頭を撫でられ若干ニヤケ気味な顔をしながらそんな事を俺が考えていると、父様はお話を聞かせてくれる。


「父様もな、小さい頃から何かある度に来てたんだ。親父と喧嘩したり、商売で失敗したり、本当に色々な事でここに来たんだ。千代にもいつか案内してあげようと思ってたんだがな」


「意外と父様って私の事あんまり知らないよねー」


 毎日あれだけピッタリしてるのに、娘が何で苦労してるかとか、ただの生理なのに風邪かどうかって無駄に沢山心配したりとか。


「そう言う千代だって、父様の事あんまり知らないんじゃないか?」


 む、舐めて貰っちゃ困る。


「私知ってるもーん。実は父様が母様に内緒で市場の人と賭けやって大負けした事とか、こっそり仕入れた本?をウチの商品倉庫に置いといて夜中にこっそり────」


「悪かった。千代、俺が悪かっただからそれ以上はよしてくれ」


 ふふん♪他にもいっぱい父様の秘密は知ってるのだよ。というか後者のは母様にもバレてるしね。


「今度ラーメン屋さん連れてってね」


「それくらいでいいなら幾らでも連れて行ってやるから……一恵さんには内緒にしてくれよ?」


「仕方ないなぁー……んうぅ……」


 やべぇ……緊張感が解けたからかくっそ寝みぃ……


「眠いのか?」


「うんー……」


「もうこんな時間だしな、よいしょっと。ほら、おんぶしてあげるから一緒に帰ろう?」


「ん……」


 ずるいわぁ……本当ずるいわぁ……父様にの頼れる背中でおんぶなんて言うお誘い断れるわけないのに……あーぁ、これで初めての家出も終わりかぁ……短かったなぁ。

 でもまぁ……せっかく…………だし。


「よしよし、いい子だいい子だ。しっかり掴まってろよ?」


 寝ちゃう前に…………勢いで……


「あい……ねぇ、父様」


「なんだい?」


「私ね、父様の事ね、大好き」


 心の底からの想いを、大切な人に……


「そうか。父様もな、千代のこと……っと寝ちゃったか」


「すぅー……すぅー……」


「……帰るとしますか、我が家へ」


 こうして、俺の初めての家家出は幕を閉じたのでした。



どうも皆様!こたつです!


今回も「昭和TS」を読んで頂き誠にありがとうございます!


この度なんと、皆様のおかげで「昭和TS」のブックマークが700件を突破致しました!

本当にありがとうございます!

ほぼ一月100件のペースで伸びてくれて私としてもとても嬉しい限りです。

最近では新たな読者の方々もついてくださり、感想も以前とは比べ物にならないくらい貰えるようになってよりモチベにも繋がるようになりました!


そして明日は記念すべき100話になるので、少し特別なお話しになります!

これからもどうか「昭和TS」をよろしくお願い致します!


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