ユメ語る夜
「それじゃあ皆、早く寝るんだよー」
「「「はーい」」」
流石にまだ小学二年生だからか、部屋を分けられるなんて事はなくお風呂を済ませた俺達は男女共に同じ部屋で布団を引き、その中から先生へと皆はそう返事をする。
それを聞いた先生は満足気に頷くと部屋から出ていく際に電気を消して行くが、予想通りひそひそほしょほしょとあちらこちらから話し声が上がり始める。
「よし、それじゃあいっぱいお話しような!ちよよん……みやみや…………すぅ……」
「え、寝た?かなちー寝たの?」
「うぇへへ……ちよよんそれは……おむすびだぞ…………」
寝るの早っ!秒だったぞ!というかどんな夢見てるんだ一体……そういや結局、持ってきたトランプ意味無かったなぁ。
ポーカー仕込んでやろうと考えてたんだが……残念。
「えーっと……ちよちーは起きてる?」
「起きてるよ」
流石にあんな即寝は出来ん。
「実はね私、お友達と皆で一緒にお泊まりするの初めてで昨日すっごいドキドキしてたんだー。千代ちゃんはー?」
んー……言われてみれば確かに、家族とか親戚と一緒にっていうのは何回もあるけど、友達とーっていうのは初めてだな。前世でも今世でも。
「ちよちー?」
「ごめんごめん、私も初めてだよ。ドキドキはー……してないかな?」
綺月ちゃんに謝りつつ俺がそう答えていると、モゾモゾとちょっとずつ隣に居る綺月ちゃんが俺の布団の中へと移動してくるのを感じ、少し真ん中から右の方へズレてあげる。
「ありがとちよちー。でもそっかー。ちよちーはドキドキしてなかったのかー」
「えーっと……なんかごめんね?」
「ううん、責めてるんじゃないの。やっぱりちよちー大人だなー、かっこいいなーって思ってたの」
「お、おぉ……そうなんだ」
それはなんというか、嬉しいのやら嬉しくないのやら……俺に対してはすごく微妙な褒め言葉な…………
「ねぇねぇちよちー。ちよちーは将来どんな女の人になりたい?」
「私?んーそうだなぁ……じゃあ逆に綺月ちゃんは?」
「私?私はねー、うちの神社でお仕事してる巫女さんみたいな綺麗な人になりたいの!でねでね、お父さんの後を継いで女の神主になって皆と一緒に居れるようお祈りするの!」
あら可愛い、目をキラキラさせちゃってまぁ。というかこれじゃあなりたい女の人って言うよりも夢だな。それならまぁ……
「それでちよちーはどんなのになりたいの?」
「私はねー……」
アイドルみたいなキラキラした可愛い人?未来の知識を使って博士みたいな賢い人?いいや違う、俺がなりたいのは────
「いつもニコニコ笑ってて、お店に来るお客さんとか子供と楽しく色んなお話をしてる、皆に好かれる街のお店屋さん……かな」
そう言うと俺は限りなく近い距離で互いに見つめ合っている綺月ちゃんに微笑みながら、これが本当の願いであると片方の手をきゅっと綺月ちゃんの手に絡める。
「なんかちよちーらしいね。うん、凄くちよちーらしいよ」
「えへへへへ、そうかな?」
そうだといいなぁ。
「うんうん!それでだけどちよちー……」
ん?まだ何かあるのかな?
「そ、その……おっぱいはどれくらい……欲しい?」
「お、おぉぉ……そ、そうだなぁ……えーっと……これくらい?」
こう、水風船を8割くらいふくらませたくらいのサイズ……
「わわっ、結構大きいね……実は私もこれくらい欲しいなぁって……」
「おぉ……綺月ちゃんも結構欲張りさんだ……」
スイカか?いや、少し小ぶりなメロンくらいか?どちらにせよなかなかないデカさだぞそれは。
「夢、叶うといいね」
「ううん、叶えるんだよ。私達、一緒にね」
「うん」
「それじゃ、寝よっか」
「ん、おやすみ」
「おやすみ」
最初は片手だけだった手を両方繋ぎ、こつんとおでこを当て互いに夢を語り合った俺達二人は夢の世界へと落ちて行ったのだった。




