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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
最終章 救済者期III 終末編
465/472

435話 災厄VIII 棘の行方

お知らせです。本作につきまして完結まで書き上げました。

そこで、まとめて投稿していきます。(本日もあと何話か)


それから、明日からになると思いますが、新作の連載を開始します。

よろしくお願い致します。


追伸


予告しておりましたが、新作「異世界にコピペされたので剣豪冒険者として生きてゆく_だが魔法処女に回り込まれてしまった」の連載を開始しました。


https://book1.adouzi.eu.org/n6470hv/


末尾にリンクがあります。是非お読み下さい。

 眼下に、王都がはっきりと見え始めた。


 ん?

 記憶が残っている。

 あのドS天使のことも、憶えている。てっきり毎回のように記憶を消されると思ったのだが。

 罠か……きっとそうだ。豹頭天使め!


 俺は首に掛けた魔導具に手を翳した後、自らに暗示を掛けた。


     †


『ラングレンだ! 全ての戦隊員に告ぐ! (くろ)き竜を無力化して、災厄(エゴゥー)を回避した。繰り返す……』


 そうだ!

 後回しにしたアレ。

 竜が放った棘の内2本は、今も魔収納の内にあるが。王都直撃軌道をなんとか逸らした1本。あれが墜ちた場所はどうなった?


 数分の飛行で、落下した上空にやって来た。


光輝球(ルーメナント)

 赫赫(あかあか)と照らされて、大地が露わとなる。


「はぁぁぁ」

 やはりなあ。こうなるよなあ。

 荒れ地が大きく筋状に抉れている。それをずっと辿った先。

 溝はウチの敷地の寸前で途切れていた。


 途切れたから良いかというとそうではない。

 その先は逆に大地が隆起して巨大な(うね)のようになっており、ウチの敷地である訓練所は悲惨な状況だ。騎士団の宿舎などは、ほとんど倒壊して半分位土に埋まってしまっている。


 これは復旧が大変だ。


 棘自体はどこだ?

 魔感応に魔力を込めると地下30ヤーデンで止まっていた。

 不幸中の幸いと言えるかどうか。事業所と研究所に届いていない。

 長さはおよそ18ヤーデン、一番太いところで直径5ヤーデン位か。


 王都を直撃していたら、どれほどの被害を出していたか。非常にまずいことになっていたことは必定だ。


 あの魔導障壁は、限られた魔力でブレスを防ぐため、対象の魔圧波動周波数を絞り込んである。つまり、実体がある飛来物には全く無力だ。


 ウチの家と騎士団にとっては惨憺たる結果になったが、致し方ない。

 まあ、ここに誰も居ないのが不幸中の幸いだ。


 誰も?

 生命反応を感知した。


「おぉぉい。お館様ぁぁああ!」

 研究棟の屋上で、手を振っている人間が居た。


 降下して、近くに降り立った。


「サラ!」

「やっぱりお館様でした。まあ空飛ぶ人間なんて滅多に居ませんからね。お久しぶりです」

「ああ。大丈夫だったか?」

「はい?」

 調子が狂う。 


「あぁぁ。さっきの地震のことですね。私、寝ていたんですが。どーんと衝撃が来て、起きちゃいました。えっ、もしかして、それでわざわざ来てくださったんですか?」

「地震……な」


「ええ。結構大きかったですよ。ああ、でも。しっかりした建屋を作っていただいているので、研究棟の中は大した被害が出ていませんでした。机の上に置いてあった物が散乱していましたけど、それぐらいで」

「地震ではない。あれを見ろ」

 屋上の際近くまで歩いて、騎士団宿舎の方を指さした。


「うわぁぁ。ひどい! あそこって宿舎ですよね。土で埋まっちゃっていますよ。えっ? これは隕石ですか? ああ、まずいわ? この時間だから、騎士団の皆さん、生き埋めになっているんじゃ!」


 まったく。

「生き埋めにはなっていない」

「へ? いやでも」


「それより、なんでサラはここに居るんだ?」

「ああ。いや、私はここに住んでいますので。ご存じなかったんですか? あれ? そういえば。お館様は、どこか外国に行かれたと聞いた気がしますが」


 はぁ。ますます浮世離れしてきたな。


「そんなことより。避難指示が出ているだろう!」

「ああ……えっ。今日って何日です?」


「3月1日だ」

「ああ、なるほど。それで、誰にも会わなかったのか。てっきり、皆さん地震があったから、私を置いて避難したのかと……ああ! それで誰も生き埋めになっていないんですね。よかったですぅ……って、お館様、とても恐い顔をされていますが」


 それから、10分程サラをこってりと叱った。


     †


 空から王宮に降り立つと、その足で国王陛下が居る大広間の手前まで来た。

 国王陛下を始めとして4人の閣僚がいらっしゃる他、グレゴリー卿とバロール卿も居た。


「ラルフェウス卿!」

「非常時につき、参内、謁見の手続きを省略致します」

 賢者には職権で許されている。


「構わん。近う!」

「はっ!」

 玉座の間近に歩み寄り跪く。


「ラルフェウス卿、ご苦労だった! 両賢者よりあらましは聞いた。教皇領からよく駆け付けてくれた。朕はうれしく思うぞ」

「ありがたき幸せにございます」


「うむ。宰相(ゲルハルト)!」

 同席されていた4人の閣僚から、宰相閣下が進み出てきていた。


「ラルフェウス卿。先程の通信にあった、災厄(エゴゥー)は回避したとは真か?」

「事実です。ご心労をお掛け致しました。魔導障壁により、城内に被害は出て居ないようでしたが、城外は中々に酷い状況です」


 竜のブレスの直撃を受けたのだ。城内が保っただけマシと言えばそうなのだが。


「そうであろうなぁ……もはや城外へ調査の者達を繰り出しても、大丈夫なのか?」

「はい。一部地盤が捲り上がり、未だ熱を保っている場所がありますが、ご留意の上であれば」

 首肯すると、侍従が1人広間を辞していった。


 まだ真夜中にもなっていない。

 これから兵や役人を動員させて、調査させるのだろう。夜が明けてからやらせた方が、効率が良いとは思うが。火が出ないか心配なのだろう。

 見た限りは、そのような箇所はなかった。

 城外では大半の建物が、潰れ、もしくは吹き飛び、痛ましい限りだ。が、却って燃え上がり難いはずだ。そういう消火方法もあるからな


「もうひとつ質したい……まず竜は教皇領に現れた。その後に我が王都に転位した。そうだな?」

「はい。聖都上空で一旦戦闘になりましたが、その途中で転位致しました。その場で決着を付けられなかったのは、私の責にでございます」


「おい! ラルフ……あっああ、失礼致しました」

 バロール卿が言い掛けて恐縮する。陛下の御前だ。


「宰相閣下。発言をよろしいでしょうか?」

「グレゴリー卿、何か?」

「はい。只今、ラルフェウス卿は、王都へ竜が襲来した責任を口にしましたが、彼にできなかったことが、何人(なにびと)にできましょうか? 少なくとも小官にはできかねます」

「小官もです」

 バロール卿は知っていたが、グレゴリー卿も意外なことに篤い人だ。

 視線を戻すと、謹厳な宰相の顔がひくついていた。


「うぅむ。両賢者には悪いが……それは、ここに集った者が全て知っていることだ。だからこそ、ラルフェウス卿には新世界戦隊へ赴任して貰って居るのだ。小職は責任など追及してはいない。ただ事実関係を詳らかにしたいだけのことだ」

「はっ。差し出がましい物言い、申し訳ありません」


「ああ、いや。分かって貰えれば良い。ラルフェウス卿、その辺りを含めて説明してくれ。そうでなければ、賞賛も、如何に感謝を述べて良いか分からぬ」


「はっ! 今から……30分程前のことになりますが、王都上空にて今回の災厄の主要因となります、竜を無力化致しました。無力化とは竜の魔力を吸い取ったこと、また昇華する原因となる、累積された魔素の澱を除去したということです。すなわち昇華に必要な、性急な生命の吸収は不要となりました」


 閣僚7人と周囲の者が、唸るように響めいた。


「ただし。先に申しておきますが、竜……黎き竜を滅ぼすことは、叶いませんでした」

「なっ!」

 宰相閣下は言葉を止め、陛下を振り返った。流石に陛下も質したかったのだろう、頷いて許可を与えた。

「詳しく説明せよ」


「少々お待ち下さい」

 台になりそうな物を魔収納から出庫し、首から外した映像魔導具を置く。

 そこから光が漏れると、気を利かせた侍従達が、いくつかの魔灯に覆いを掛ける。広間がやや暗くなって、映像がはっきり見えるようになった。


「口上よりも、ご覧になって戴いた方がよろしいでしょう。今から見える街は聖都です」


 映像は聖都上空から始まり、黎き竜と戦闘が起こる。

 各所で唸り声や感嘆の声が上がるが、複製した物でじっくり見て戴くとして、今は要所以外を飛ばしつつ見せる。


「止めよ!」

「はっ!」

 陛下の声に応じて、魔導具を止める。

 亜空間戦闘で黎き竜を追い詰めた、駐屯地から目映い光条が打ち上がってきたところだ。


「うぅむ。朕には魔術の戦闘は分からぬ。分からぬが……今の、竜のブレスにも似た攻撃は、地上から撃たれたものではないのか?」

「どうなのだ?」


 これは誤魔化しきれないな。まあ、その気もないが。


「ご賢察の通り、あれは教皇領内レガリア王国軍駐屯地より撃たれたものです。古代エルフの遺物と推察します」

「ふぅむ。あのようなものを、レガリアは隠し持っていたのか?」

「これは……」


 閣下は眉間に皺を寄せている。国家的に視れば脅威なのだろう。

 少しは補足しておかないとな。

「おそらく国家間転送魔導器の動力を転用したと見られます。その後、転送が使えなくなりましたので」


「それは由々しき事態ではないか! その動力魔導器の術式は我が国、ラルフェウス卿が供与した物。供与技術の目的外使用はしないと決めた連盟規約に対して完全に違反ではないか。あまつさえ、それでラルフェウス卿を撃つなど、有り得ん」

 いつも穏やかな外務(テルヴェル)卿が気色ばんでいる。


「はあ、ただ一応、あの攻撃は黎き竜に命中しておりますれば」

 なぜか、俺は弁護していた。


「その件は、レガリアに厳重に詰問するとして。ん? 待て。卿はどうやって、この王都へ戻った? まあいい、説明を続けてくれ」


「はっ!」

 映像を少し飛ばして再生させた。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2022/09/17 誤字訂正(ID:632181さん ありがとうございます)

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