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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
14章 英雄期II 賢者への途編
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閑話10 遺跡発掘(後) 玄室にて

エジプトの発掘とか好きなんですよね。よくCSの番組で視てます。

 じゃあ、さっさと斃すとしよう……いや、待てよ。ゴーレム100体か。


 ゴーレムは魔獣とは違う。魔獣は魔結晶を遺すだけで、屍体が残らないので良いが。ゴーレムはそうはいかない。


 ゴーレムを斃すと、核と素材である粘土や石が残る。あの巨体の素材が100体も集まれば、広間が埋まってしまいそうだ。斃した端から、魔収納に入れるか。


 どの程度の量が残るか。まずは、この4体を斃してみよう。


 区画の中に再度踏み込むと、ガーゴイルが生物さながらに呼吸を弾ませつつ、俺に突進してくる。精巧な物だ。鋭利な乱杭歯が覗く顎門を耳まで開き、数瞬で俺に迫ると床を強く蹴った。


 なかなかの凶悪さじゃないかと思いつつも、全く心は波立たない。幸か不幸か人並みの恐懼とは無縁となったらしい。


衝撃(エンペルス)!】


 飛びかかって来たヤツを潰して吹き飛ばす。破片が俺の方にも飛んできたが、常時張っている魔障壁に弾かれ床に落ちた。


 振り向き様──

氷礫(ヘイル)!】【氷礫!】


 つづけさまに粉々に飛び散った。脆いな。

 あと1体。


 数歩横に飛び退き、降ってきたガーゴイルを……

虚穿(ヴィド)!】


 無色の鎌が乱舞して迎え撃ち、褐色の巨躯を切り刻んだ。


 クレイ()・ゴーレムか。

 汚い。こんな物、収納したく……ん?


 4基の台座が鈍く緑に光った。呼応するように崩壊した泥の中に極微の魔界が誘起される。ゴーレムの魔核だ。


 ほう。

 崩れた泥が蛍光を帯びると、時間が逆流する如く、その姿を取り戻した。

 再生魔術込みのゴーレムか。


「ははは……これは良い! 片付ける手間が省けた」


 魔核というのは、斃されると内部の魔術式が破壊されるのだが、どうやらこいつはそうではないらしい。

 斃されることを前提に、魔術が組み立てられているのか。

 なかなか面白い発想だ。


─── 御館様は尋常な神経ではないな ここは戦慄するところじゃ


 尋常でなくて悪かったな!


─── ゲド殿は 御館様は人間をやめていると言ったが 真だったな


 ティアは無視だ。


 斃されると再生するという発想は良いが、1つだけ難点がある。再生に必要な魔力が多いことだ。

 それをあの小さな魔核に溜め込むのは不可能。つまり、再生の度にどこからか──ここの場合は、あの台座からだが、魔力供給を受けざるを得ない。魔核を大きくすれば、供給頻度は減らせるが、攻撃を受ける確率が上がる。痛し痒しか。


 ならば魔力供給を断てば……駄目か。それでは100体斃したことにならないよな。ここは地道に斃すしかない。


【氷礫!】【氷礫!】


 使えるのは破壊力の密度が低い下級魔術だけだ。閃光(ゼノン)などは魔核に当たる確率は低いが、当たってしまえば取り返しが付かない。


 退屈だ。

 同じ魔術ばかりだと飽きて集中が落ちるので、数種を織り交ぜて斃しているが。

 斃すのは数秒。復活するのは30秒余り掛かる。

 待ち時間の方が長い。


 こういう機械的な作業は、昔よくやって……いや何時だ。そんな記憶はない。ないが。

 おっと集中、集中。


 なんだかんだで15分余り経った頃、台座の光りが紅く変わった。

 ガーゴイルの残骸は、台座の上に戻っていく。


「100体斃したようだな。数えてなかったが」


─── 恐ろしい男だのぅ 魔力量が減るどころか 息1つ乱さぬとは


 俺が戦闘するところを見せたのは初めてか。

 あれから超獣も斃したが、ティアは大体館に居させたからな。


─── (わらわ)は平和裏に調伏されて 良かったと思っておる


 平和裏だったか?


「ਮਜਨਅਜ ਫਕ ਞਣਟਟੲਅਗਧਢ ਵਚਘ」

 突如広間に声が響いた。


─── 古代エルフ語じゃ 訳してやろう


 条件満たしたと言っているが、どういう意味だ。


─── ちっ!


「ਡਯਙਦਕਫਛ ਘਗਣਗਠਢੜ ਵਘਗਣਗ ਢਞ ਡਯਙ ਫਛਵਘਗਣਗ ਘਗਣਗਠਢੜ ਗਠਢੜਖ ਝਥਸਧ」


 転層機構の起動呪文を変更する場合は、転層陣の中に入れか。

 数歩歩いて、像に囲まれた区画に入る。


「ਵਘਗਣਗ ਡਯਙ ਲਝਥਸਧਛਡ」


 新しい呪文を言えばいいのか……。

「ਅ ਧਞਵਸਞਹਬਛ(文化)ਠਢੜਖਮਢਲ()


「ਕਫਛਵਘਗਣਗਠ」

 もう一度?


「ਅ ਧਞਵਸਞਹਬਛ ਠਢੜਖਮਢਲਝਥਸਧ」


ਹਢਅਧਞਵ(受諾)


 2回唱えると、呪文が更新された。


 では、転層行ってみよう。

 

ਛਡੲਣਬਕਙਡ(糞食らえ!) ਅ ਧਞਵਸਞਹਬਛ ਠਢੜਖਮਢਲ」


 罵る言葉を交えて唱えたが、まともに起動したようだ。床に魔紋が輝き、僅かな浮遊感と共に光景が変わった。


 転層陣の輝きが消えると、暗闇となった。

 眉間から少し力を抜くと、頭上が眸と明るくなる。


「臭いな」

 なんとも()えた匂いが充満している。転送前の場所は清浄な空気だったが。とはいえ呼吸に支障はないようだ。


 あっちか。


─── あっちって 暗くて何も見えぬぞ


 あぁ。この明るさでも俺に支障はないが、映像魔導具にとっては問題だ。


燈明(カンデラ)!】 

 光源が出現して明るくなった。地味だな。


 30ヤーデン角程の部屋。

 煉瓦の壁に半円状の天井。床は石灰岩を荒く磨いだ面。味も素っ気もない。

 まあ墓所だしな。

 転送前の広間と違い、薄らと埃が積もっている。コーティングとやらは施されてないようだ。


─── おお 石棺だ

 古代エルフのティアも石棺に見えるか。明るくなる前に行こうとした所だ。角の取れた直方体が3基並んで居る

 やはりここは玄室と言うわけだ。


 長辺は2ヤーデン、子供用か。


─── 成人用だ


 いやいや、内壁は1.8ヤーデン程、それに内装の厚みを差し引けば、遺体の身長は1.6ヤーデン(1m40cm)未満だ。


─── ああ成人の男でも そんなものだぞ


 そうなのか? 古代エルフは小さいな。

 現代のエルフは、プロモスで何人も見たが、俺とさほど変わらない身長だったがな。


─── しかし 3基とはな


「3基だと変なのか?」


─── 普通の埋葬は王と妃 幼くして子供が亡くなった場合は合葬するが……


 その線じゃないのか? ああ石棺は、全部成人用か。


─── 御館様 蓋の上に 被埋葬者の名が刻まれて 居るはずだ


 棺桶のひとつに近付く。勢いよく息を吹きかけると埃が飛んだ。


「えーと。デメトリウス14世……聞いたことがある名だ」


 ああ、国立資料館の(ワイズ)晶片(クオーツ)だ。年代記に有った名だ。


 隣。その隣と見ていく。

 イイゥラッタか? 女性の名前だな。最後はデメトリウス15世か。


 確か、14世が急死した1年後、自分も急逝して同王統が断絶。配下の神官が継承したんだったな。

 なるほど。別氏族の前王の墓を作るのが惜しくて、さらに前の王に合葬したというわけか。

─── 100日以内に埋葬しないと、悪鬼となって復活する迷信がな


 急逝か。ふん、自然死かどうか怪しいものだな。文化省のやつらは喜ぶかも知れないが、俺は興味がない。それよりも。


「残念だったな」

 ここは、彼女(ティア)の子であるルガル1世の墓所ではなかった。


─── 広間の段階で うすうす違うとは思っていた

 明らかにティアの興奮が沈静化している。


「そうか。また良いところがあれば連れて来よう」


─── お館様 感謝する 期待せずに待つとしよう


 それっきりティアの意識は、王都に戻るまで表層に現れなかった。


 さて。

 俺の関心は……こっちだ。


 壁を抉るように作り込まれた棚。古代エルフの典型的な副葬品。所狭しと並ぶ知晶片だ。

 映像魔導具に良く映るように、棚の横を横歩きする。


 ん?

 知晶片とは違う物が5つあった。

 魔導具か。まあいい。あとで調べるとして、全てを魔収納に入れた。


   †


「おお、ラルフェウス卿!」


 広間に転層して戻ってくると、文化省の役人が居た。


「どちらへ、今までどちらへ行かれていたのですが?」

「転層先だが」

「いっ、いやそれは見ていたのでわかります。そこがどういう所が知りたいのですが」


「ああぁ。真っ暗な部屋だったな……冗談だ。玄室に転送されて行ってきた」

「玄室! まっ。真ですか?!」


「ああ、石棺が3つ有ったぞ。心配するな。そちらには手を付けていない」

 息は吹きかけたが。


「そちらには? と仰いますと?」

 良く気が付くな。


「副葬品17点については、当方で接収した。約定通り3ヶ月以内に引き渡す。目録を渡すぞ」

 首に掛けて居た映像魔導具を外して渡した。


「分かりました」

 不満そうだが肯いた。


「ではな!」


「おっ、お待ち下さい! ラルフェウス卿。 この転層陣はどうやって駆動すればよろしいのでしょうか?


「ああぁ……呪文を唱えれば良い。一度しか言わないから、憶えろ。ਅ ਧਞਵਸਞਹਬਛ(文化)ਠਢੜਖਮਢਲ() ਝਝੜਗਞਜਧਕੲ(万歳!) だ!」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2021/02/06 返送→変更、誤字脱字訂正

2021/08/23 呪文変更

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