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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
14章 英雄期II 賢者への途編
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335話 善意と悪意

両方とも連鎖するんですよねえ(題目の話です)。

 昼食を摂ると、まだ日が高いので書類仕事を始めた。

 ダノンやモーガンからは、少しはお休みをと言われたが、大して疲れては居ない。

 3週間弱も館を開けていたので、少なからず要決裁書類が溜まっている。とっととやった方がモーガン達が楽になるだろう。


 とはいえ、他の者をそれに付き合わせる気はないので、ローザには明日一杯まで強制的に従者については休暇を取らせた。


 3時を過ぎて、仕事が一段落したので、離れにやって来た。

 渡り廊下から、2階ホールに入ると、セレナが火が入っていない暖炉の前に寝そべっていた。廊下の向こうの部屋には、ローザとルークが居る。しばらく2人にしてやろう。


 近付いていくと、セレナがゆっくりと立ち上がる。


「ラルフ」

「セレナ」

 足下に纏わり付いてきたので、首筋から肩に掛けて(たてがみ)を梳いてやる。表情が緩んだ。

 そのまま傍らのソファに座ると、セレナは俺の足下に蹲った。

 しばらく頭を撫でる。


「ありがとうな。俺は嬉しいぞ」

「なんの こと?」


 本当に分からないようだ。 


「ああ。俺が居ない時、12日前だな。夜中に、ゴーレムが来たろう。セレナが退治してくれたから嬉しいんだ」


「きた ルーク まもる あたりまえ」

「ははは。そうか、当たり前か」

「ラルフ セレナ たすけた いっしょ」


 ほぅ。


「ラルフ うれしい セレナ うれしい」

 いじらしいので、わさわさとまた頭を撫でる。


「中尉から聞いたが、一瞬でゴーレムを斃したそうだな」

 修行で強くなったようだ


「ゴーレム よわい」

「ははは、弱いか」


「でも」

「ん?」

「におい かいだ こと あった」

「ん? どういう意味だ?」


「ゼノビア きたころ ラルフ から かいだ」

「何だと?!」


     †


 夕方。ダンケルク家にやって来た。


「おおぅ、婿殿。それにローザさん」

 応接室に入ると、義母上の座る椅子に歩み寄る。


「帰って参りました。義母上」

 両腕を伸ばされたので、軽く肩を抱く。


「今回は、また随分長く掛かりましたね」

「はい」


「婿殿にはご苦労を掛けました」

「ああいや。王都を発った次の日には超獣を斃しましたので、私はそれほどでも。まあアリー達は少し大変そうでしたが」


「そうは仰っても……なんでも、兵隊を救うため婿殿は身を挺して庇われたとか。大変な目に遭ったのでしょう? 身体は大丈夫なのですか?」

「ははは、大丈夫ですよ、義母上。職務ですから、どうと言うことはありません」


 義母上は、それでも心配なのか、ローザを見る。

 妻は、至って穏やかな顔で肯いた。

 兵を締め上げたクセにな。


「セバンテス伯から文が参りました。婿殿にひとかたならぬ苦労を掛けた。自分の力不足で、まともに労うこともできなかった。是非私から礼を申し上げてくれと」

「いえ、辺境伯殿より丁寧な謝辞を戴きました」


「こんなこと言えば、またローザさんに叱られそうだけど……ありがとう。ラルフェウスさん。ローザさんと、あなたに出会って本当に良かったわ」

 珍しく名前で呼ばれた。


「義母上に少し孝行できたようで、私も嬉しいです」


 夕食を相伴に与ってから、館に戻った。


     †


 一旦館に戻ってから、再び外に出た。

 行き先は、黒衣連隊(ノアレス)の庁舎だ。

 通された部屋には、中尉と中佐が待っていた。後者は中尉の上司で役職は部長だ。


「中佐、夜分に済まない」

「これは子爵様。お疲れのところ恐縮です。ところで、繋ぎの者から、何かお気づきになったことがあると、承りましたが」


 こちらは、俺にきっちり敬語だが許容だ。


「うむ。セレナ……我が館に居る聖獣から訊いたのだが、あのゴーレムの閉じ込められた残留思念に心当たりがあるらしい」

「なんと、そのようなことが。では例の魔石は用意致しましたが、聖獣殿に?」


「いや、私で大丈夫だ」

「それはなにより。それから、例の教授が解読された、魔石に刻まれた文字の控えもございますが」


 ふむ。王都スパイラス大学のアンドレイ教授も解読されたのか。


「では、先ずは魔石から見せて貰いたい」


 肯いた中佐は、掌大の箱を取り出した。

 蓋を開けると、禍々しい青紫の魔石が入っていた。


「大変恐縮ながら、証拠品ですので壊さないように願いたいのですが」

「無論だ。約束しよう」


 箱が差し出された。

 俺は便箋とペンを取り出し、箱に入ったままの魔石に手を翳した。


真査(キュレート)


 ふむ。網膜上に文字らしきものが、浮かび上がるが……念を込めると、文字が左右反転する。やはり神代(グルーム)文字か。


───ほう 流石はお館様 器用だな


 ゲドに話したところ、俺に憑依して付いて来た。

 ああ、解らないところがあったら教えてくれ。


───いや お館様に助言など不要だろう


 読み取り終わったので、紙に書いていく。


 ਣੜਡਣਬਪਥਟਗਣਫਪਛਢਧ ਲਨਥਣਚਯੳ ਮਘਣਠਫਜਦਛੜਕਘਧਹਝਦ ਕਘਸ ਸਕਮੲਢਮਜਕੜਫਭਝਸਭਞਣਹਘਓਚਕਘਰ ਸਵਏਇਨ ਏਲਸਅਸਸ ਵਦਬਡਫਞ ਚਙਫਝਟ ਖਲਘਬਭਬਹਤਟਵਤਤਲਢਘਧਘਞਕ ਅਹਵਹੜਢਭਣੜਡਣਬਪਥਟਗਣਫਪਛਢ ਧਲਨਥਣਚਯੳਮਘ ਣਠਫਜਦ  ਛੜਕਘਧਹਝਦਕਘ ਸਸਕਮੲਢਮ ਜਕੜਫ ਭਝਸਭਞਣਹਘਓਚਕਘ ਰਵਦਬਡਫਞਚਙ ਫਝਟ ਖਲਘ ਬਭਬਹਤਟਵ ਤਤ ਲਢਘਧਘਞਕਅਹਵ ਹੜਢਭਣੜਡਣਬਪਥਟ ਗਣਫਪਛਢ ਧਲਨ ਥਣਚਯੳਮਘਣ ਠਫਜਦਛੜਕਘ ਧਹਝਦਕਘ ਸਸਕਮੲਢ ਮਜਕੜਫਭਝਸਭਞਣਹ ਘਓਚਕਘਰਵਦਬ ਡਫਞਚਙਫਝਟ ਖਲਘਬਭ ਬਹਤਟਵਤ ਤਲ ਢਘਧਘਞਕਅਹਵਹੜਢਭ


「ふぅ」

 書き終えた。


「あのう。子爵様、終わったのですか?」

 ずっと黙っていた中尉が声を上げた。

 この前、ラルフと呼べと言ったが、まあ上司が敬語を使っているのに、そうはいかないか。


「ああ。悪かったな、時間が掛かって」


「えぇ? いやいや、アンドレイ教授は、読み取るのに3日ほど掛かったのですが」

「ほう」

「いや、ほうって」

「中尉!」

 中佐が睨み付けている。


「失礼しました。あのう。折角ですので、教授が書かれたものと比べてもよろしいですか?」

「ああ、そうしてくれると助かる」

 便箋を、中佐に差し出す。


 封筒から、別の紙を出してそれぞれを両手に持つと、見比べ始め……間もなく、中佐の眉間に皺が寄った。


「あっ、あのう。失礼ながら。全く一致しないのですが」

「ん? おお、そうか。教授が書かれたものを見せてくれるか」


 まさかと思うが……

 差し出された紙には、こう書かれていた。


 ਭਢੜਹਵਹਅਕਞਘਧਘਢ ਲਤ ਤਵਟਤਹਬ ਭਬਘਲਖ ਟਝਫਙਚਞਫਡ ਬਦਵਰਘਕਚਓਘ ਹਣਞਭਸਝਭਫੜਕਜਮ ਢੲਮਕਸਸ ਘਕਦਝਹਧ ਘਕੜਛਦਜਫਠ ਣਘਮੳਯਚਣਥ ਨਲਧ ਢਛਪਫਣਗ ਟਥਪਬਣਡੜਣਭਢੜਹ ਵਹਅਕਞਘਧਘਢਲ ਤਤ ਵਟਤਹਬਭਬ ਘਲਖ ਟਝਫ ਙਚਞਫਡਬਦਵਰ ਘਕਚਓਘਹਣਞਭਸਝਭ ਫੜਕਜ ਮਢੲਮਕਸਸ ਘਕਦਝਹਧਘਕੜਛ  ਦਜਫਠਣ ਘਮੳਯਚਣਥਨਲਧ ਢਛਪਫਣਗਟਥਪਬਣਡੜਣਭਢੜਹਵਹਅ ਕਞਘਧਘਢਲਤਤਵਟਤਹਬਭਬਘਲਖ ਟਝਫਙਚ ਞਫਡਬਦਵ ਸਸਅਸਲਏ ਨਇਏਵਸ ਰਘਕਚਓਘਹਣਞਭਸਝਭਫੜਕਜਮਢੲਮਕਸ ਸਘਕ ਦਝਹਧਘਕੜਛਦਜਫਠਣਘਮ ੳਯਚਣਥਨਲ ਧਢਛਪਫਣਗਟਥਪਬਣਡੜਣ


 やっぱりか。


「ところで教授は、文章の意味が解ったと仰ったか?」

「いえ。それが、文字は解ったが意味まではと……何やら暗号ではないかと仰っていましたが」


───ははは! 暗号! その教授とやらも大したことないな

───お館様が教授を代わってやった方が 良いのではないか?


 そんな暇はない。


「ああ。中佐、この文章は呪いの文章だ」

「呪い?」

「ああ。だから、普通の文章ではない。まあ一種の暗号のようにも見えるが、そこまで高等なものではない。まずは左右逆の鏡面文字で刻まれている」

「はい。それは教授も仰っていました」

 だろうな。でなければ、これは書けない。


「ああ。それだけではなく、文字順も逆になっている」

「は?」

「最初から読むか、最後から読むかだ」

「えーと?」

 伝わらないか。


「要するに魔石を解読しようとして、浮かんでくる順番に文字を書くと、教授が書いた通りになる。が、それでは意味が分かりづらい。だから、逆向きに書いたわけだ」


「ああぁぁ、そういうことですか。よろしいですか」

 中佐が紙を自分の方向に回す。


「ああ……確かに、文字の順番が全く逆だ!」

「本当だ! そう言えば、子爵様は一気に書き上げられましたが」

「ん?」

「逆順ということは、この虫がのたくったような文字を、1回全部憶えたのですか?」

 中尉が真顔で訊いてきた。


「ああ。それが?」

 中尉と中佐が、顔を見合わせる。


「前から思ってましたが。我々と子爵様では頭の構造が違いますな」

 横の中尉もうんうんと肯いている。

「そんな訳ないだろう。同じ人族だ。何を言ってるかよく分からんが。ともかく、俺が書いた紙を、教授に見せれば解ると思う」


───どうかなぁ?

 うるさいぞ。


「ところで問題はここだ。6節目と7節目」

 ਸਵਏਇਨ ਏਲਸਅਸਸの部分を指し示す。


「はぁ……」

 腑に落ちない顔だ。


「エスパルダ文字で書くとこうなる」

 置いたペンを再び持って書き付ける。


「ス、ヴェ、イ……スヴェイン??」

「スヴェイン・アルザス?! あの西外縁の運河で死体が見つかったスヴェイン・アルザスですか?」


「魔石には、そう刻まれている」


───魔石に名を入れざるを得なかったのは あの者の意思を束縛するためだな


「呪いでは、その者の名を奪って支配するというやり方があるそうだ」


 館にスワレス伯爵から派遣される団員を連れてきた折り、難癖を付けて俺と手合わせしたが。その時、彼の臭いが付いたのだろう。それをセレナが……。


 それにしても、スワレス伯爵を見限りバズイットへ走り、監禁された末路がこれか。

 俺の口からは、オルディン殿には言えない。


「つまり、誰かが彼の者の命を奪い、残留思念をこの魔石に封じ込め、ゴーレムとして使ったということですか? 子爵様」


 肯く。


「はあ。やりきれませんな」

「そうだな」

「ですが、バズイットを追い詰める手札にはできましょう」


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/12/02 誤字、少々加筆

2020/12/27 決済→決裁

2022/08/06 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2022/09/23 誤字訂正(ID:288175さん ありがとうございます)

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