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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
13章 英雄期I 血脈相承編
324/472

313話 訓練会と言う名の(上)

行ったことのない場所と言っても観光地とかではなく、事業所だったり特に工場とかですが、興味津々で興奮します。 そうそう!TVで何を作っているのかを当てるクイズで、生産ラインの動画流れるの、いいですね、あれ。

「カタリナさん。カタリナさん」


 おっと、ウトウトしてた。

 私を呼んだ同僚のサブレーは、手で前の方を指している。

 ああ、門が開いてる。


「もう9時になったのね」

 立ち上がって、地面に敷いていた布を畳むと、人の流れに乗って私達も進み出す。


 王都外縁。

 東門から出ておよそ1ダーデン(900m)離れた辺鄙な場所。

 街道が近いけど周りは牧草地だったり、荒れ地だったり。普段はほぼ一般人が居ない場所だ。しかし、今日は……。


 後ろを見ると居眠りする前には居なかった人達、冒険者達だ。

 よく見えないけれど、30人、いや50人は居るかも知れない。


 一昨日、王都にある新聞各社へ、ラングレン騎士団の訓練所を公開するという連絡が来た。冒険者ギルド王都西支部と合同訓練会を開く、公開で取材可と。これまで、取材を何度も申し込んだが、訓練所については非公開だったのだけど。


 この訓練所には男子宿舎があり、多くの騎士達がここで寝起きして訓練しているのは分かっているが、どんな訓練をしているかまでは分からない。だから自分たちが赫赫たる成果を報道してきたラルフェウス様ぁ……もとい。子爵様個人もそうだが、騎士団が普段何をしているかには、凄く興味がある。きっと読者もそうに違いない。

 訓練所公開の知らせを見た時、凄く嬉しくて、もちろん編集部内で取材を志願した。


 良い場所が取れるのかと思い、日の出すぐに出張ってきたが、既にいくつかの他社が来ていた。


「では新聞社の方から、お入り戴きます」

 拡声魔導具だろう。団員の誘導で、競争相手である新聞社の記者達が門の中に入る。


「カタリナさん、右を見て下さい。大スパイラスのやつらが居ますよ」


 うわっ!

 あれは、ヘスヴィル。

 下卑た顔に相応しい、下品な記事を……もとい下品な記事しか書かない大スパイラス新聞の記者だ。記者仲間でも蛇蝎のように嫌われている40歳過ぎの男だ。


 私も、前にお嬢ちゃんに記事なんか書けるのかねえと、完全に馬鹿にされたことがある。

 確かに大口を叩くだけあって、話題を嗅ぎ付ける能力は高いし、文章もしっかりしているとは思う。しかし、その記者能力があるのに、なんで、他人を誹謗する記事ばかり書くんだと、顔を見ると平静では居られなくなる相手だ。


 それに大スパイラス新聞? うち(スパイラス新報)と名前が被ってるのは大迷惑だ。大体どこが”大”なんだ、ふざけるな!


「しかし……やつら。良くここに来られましたね。でも、きっとあそこで弾かれますよ」

 門で、団員が記者達を検査している。


 サブレーの言った通りだ。

 4日前の大スパイラス新聞は、大いに話題となった。あのラルフェウス卿を貶める記事によって。あれだけ事実無根なのも珍しい。私はやらないが、嘘というのは嘘だけでは、人は信じない。事実8割、嘘2割というのが効果的らしい。

 だか、あの記事は、事実5割、嘘5割だった。要するに嘘を信じさせるためではなく、扇情的に貶めたいだけだ。


 地道に取材している……と思っている身からすれば、怒りが燃え上がる記事だった


 ここは、その子爵様麾下である騎士団の訓練所なのだ。

 入れるとでも思っているのか。


 あっ!

「あぁぁ、あれ? 断られずに入って行きましたね」

 

 むぅぅ。

 大スパイラス新聞と書いてある腕章を見せて入って行った。何か紙を受け取っていたが。

 むぅ……きっと門前払いに遭うと思っていたのだけど。

 あの団員がわかってない……はずはないわね、見送る目付きが尋常ではないわ。憎しみが籠もっている。


 団員の態度は立派だけど、その怒りに任せて排除してやれば良いのに! うーむ。報道に携わる者としてあるまじきことが頭を過ぎってしまった。


 私達の番が来た。

「スパイラス新報です」

 内務省から配布されている腕章を見せる。


「はい。1から10までの数字の内、お好きなは数字は?」

 ああ、どう言う意味かはさっぱり分からないが、事前に連絡を貰った件だ。


「ああ、じゃあ……5で」

「5だ!」

 そう後ろに居る別の若い団員に告げると、紙を貼った大きい板の5と書かれた縦長の枠の中に丸を書いた。ああ、私達が言った数字を数えているのか。


「では、これをお持ち下さい」

 折りたたまれた紙を受け取る。みんな貰っているわね。


「紙は後で説明しますので、捨てずにとっておいて下さい。右手にある、土の壁の上に階段から登って下さい」


 壁? おおう。色からして、土の壁だ。

 高さは人の背丈の倍以上、長さはざっと100ヤーデンというところ。今から、あれに登るのか。何のために? 何かあそこで見下ろすのか?

 他社の記者を追って、そっちに向かって歩き出す。


「カタリナさん。さっき何受け取ったんですか?」

 おっと壁に興奮して、忘れていた。


「ああ、この紙よ。きっと取材の注意事項とか書いて……なによ、これ?」

 畳まれた紙を開くと、四角い枠がたくさん描かれていた。その枠の中は、何だか沢山の線がのたくった様な模様で埋まっている。そして枠の下には1から10まで数字が書いてある。


「……版画の模様?」

 確かに新聞と同じように印刷したのは間違いない。


「確かに濃淡を作る模様みたいですが……その割には規則性がないですね」

 1色の墨で色の濃淡を付ける細かな点の模様(トーン)が、新聞に絵を乗せる時に使われる。が、これは点ではなく曲線というかカクカクとした細かな四角い点が繋がった様なぎこちない線だ。しかもよく見ると、全部繋がっている。


「ああ!」

「何?」

「こっ、この模様、10個とも全部違いますよ」

 紙をサブレーから受け取って見直すが確かにそうなっている。だから?

 もう一度、サブレーに紙を渡すと、彼は唸りだした。


「何。分かるの?」

「うーーむ。何かこれ……」

「何よ?」

「……えーと。良くは分からないですけど、何だか迷路みたいだなと」

「迷路?」

「えっ、ええ。この墨の黒いところが壁で、その間の塗ってないところが通路としたら、迷路だなあと思えるんですが」


「あぁぁ。なるほどね。見える見える、この四隅の枠の繋がっていないところが、出入り口か。サブレー賢い!」

 この男は線が細いけど、教養はある。

「あっ、ありがとうございます」

 手を取って褒めたら、サブレーの顔が真っ赤になった。褒められ慣れていないのだろう。


「ああ、それはまた後で。ほら、壁ですよ壁」

 紙を見ながら歩いて居たら、いつの間にか壁の直前まで来ていた。その上には先行した他社の記者達が既に居て、こちらを見下ろしている。


 やっぱり土の壁だわ。

 足で蹴るとまるで岩のように固まっている。


 これは良い!


 大スパイラスのやつらに当てつけになるわ、思い切りね。

 階段を昇って行くヘスヴィルも気が付いたようね。顔が少し引き吊って見える、いい気味だわ。


 私たちも階段を昇り切ると訓練所が一望の元に見えた。とは言っても、だだっ広いグラウンドと宿舎だけだけど。


「あれ? こんなもんだったっけ?」

「はっ? 何がです、カタリナさん」

「んん……なんかさあ。前に外から眺めた時より広くない?」

「ああ、そのことですが、何でも隣の土地も買い取ったそうで。倍くらいに拡張したって訊いてますよ」

「へえぇ」


 サブレーは、最近……子爵様を取材したすぐ後ぐらいから、絵師だけでなく記者もやりたいと志願して張り切っているのだ。まだ見習いだけど。子爵様が若いのにがんばっていらっしゃる姿を見て、触発されたようだ。私からみればまだまだ拙い文章しか書けないけど量は書くし、肖像画も描きまくっているんだよね。この前、いくつか描いたのを見せて貰ったけど、素人目にもどんどん上達しているのが分かった。家に帰ると、子爵様の肖像ばっかり描いているらしい。


 いやいやそこまで緻密に描いても、どのみち新聞では再現できないよって言ったけど。そんなことはサブレーの方がよく知っているし、趣味なんだろうなあ。まあ、子爵様は見た目はほっそりしてるし、端整な顔立ちで綺麗な女の子に見えなくもないし、描きたくなるのもわからないでもないけど。ちょっと心配だ。


「おっ、入って来ましたよ」

 さっきまで私達の後方に並んで居た冒険者達だ。

 やっぱり30人ぐらい居る。


「みんな若いですね」

「ああ、今日参加できるのは、確か新人(ルーキー)ランクから初心者(ノービス)ランク限定って要項に書いてあったわよ。だからじゃない?」

「それでですか。まあ中級者以上は、一人前って言うから訓練には出ないっすよね」


 彼らがグラウンドの中央付近に集まると、宿舎の中から団員がでてきて、向かって右側に並んだ。


「あっ、あそこ。2階を見て下さい」


 宿舎の2階にはちょうどグラウンドのほうに向かって突き出た舞台のようなものがある。そこに数名の人間が出て来た。一人はすぐ分かる。


「子爵様だ」

 サブレーが言うまでもなく、遠目にもそうだ。その横は誰だ?

 考えて居る内に、声が響き渡った。

 拡声魔導具だ。100ヤーデンは離れているのに良く声が聞こえる。


「冒険者の皆さん。お集まり下さり、ありがとうございます」

 ああ。この声は騎士団副長のバルサムさんだ。


「これより、ラングレン騎士団と冒険者ギルドの合同訓練会を始めます。それでは主催を代表して冒険者ギルド王都東支部ギルドマスターのジョルジ様より、ご挨拶があります」


 バルサム副長と入れ替わって、小太りの壮年男性が魔導具の前に立った。


「あぁぁ、子爵様を差し置いて恐縮ながら、挨拶申し上げます」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正

2020/09/16 ラルフの呼び方を調整。その他細かに訂正

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