表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
10章 青年期VII 非番と冒険編
218/472

211話 新魔術を手に入れる

最近手に入れて凄く喜んだもの……あんまりないですねえ。ちょっと前だとスマホなのかなあ……。何でもかんでもコモディティ化しちゃいますねぇ。

 光が床から立ち上がり、像を結ぶとエルフ女性の姿となった。整ったと言えば整った無個性な顔。

 だが、そこに気配はない。

 ただの光だ。


 グルゥゥゥゥウウウ。

 それは、セレナも分かっているのだろう。像に向かって臨戦態勢だが飛び掛かりはしない。


「古代においては。人の名を訊く前に、自分が名乗れと躾けられなかったか?」


───ああ、我は元々生ける物ではないのでな

───名は ニトクリスとでもしておこうか


 魔導仕掛けか、残留思念体でもないのか。

 本当ならば相当高度な技術を使われているということになる。

 いずれにしても、これではっきりした。魔獣の大発生には何らかの理由があったと言うことだ。


「俺はラルフェウス・ラングレン。上級魔術師だ」


───上級魔術師 上級が何を意味するかは知らぬが 確かに侮れぬ面構えだな


「そんなことより、仲間はどこに居る?」


 彼らがどこに居るか、それ以前に俺がどこに居るかすら分からない。

 俺の魔感応にも反応がない。

 それ以前に感覚がまともじゃない。気分の悪さが半端ない。


───仲間?

───一緒に居た人間共か

───待て待て 魔圧を練るのはそれぐらいにしてくれ こちらに害意はない


 何も無かった所に、床からぼんやりと光が立ち上がった。ニトクリスと同じように。


「バルサム! ゼノビア!」

 思わず、近付く。トラクミルも見えた。

 3人がそこに居るようにしか見えないが。やはり気配はない。

 試しに手を差し出してみたが、やはり何の抵抗もなく突き抜ける。単なる光の像だ。腕に遮られていた上方には像を結んでいない。

 どういった仕組みか分からないが、地から光が投影されている。思わず地に手を付ける。


 それはともかくも、これが現在の画像ならば、無事のようだ。少し安心する。

 像の動きは皆で何かを探している。俺とセレナか。


───ふふふ 見た通りだ 仲間とやらは地上に戻しておいた


 地上? 本当にそうかどうかは確認できないが。


「俺に何の用だ?」

 分けたのはそういうことだろう。


───話が早くて良い

───15日前 聖配置を壊したであろう?


「聖配置? なんだそれは。そもそも15日前と言えば、俺達は遺跡から1200ダーデン北、いや1100ロメータル北に居た。壊すことはできない」

 ロメータルは古代の距離単位だ。


───ふむ 言葉に嘘はないようじゃな


「俺の思考を読めるのか?」


───そこまで便利ではない

───汝がいる場所はセレーテルが充満している故な 感覚が伝わるのじゃ


 セレーテル。セル=エーテルか、直訳すれば虚無を満たす物。

 魔導波が減速されているのは、その所為か。


 ちっ! 俺とセレナが居ないことに動揺しているからか、バルサム達の動きが鈍い。

 三人の背を寄せる体勢から見て、魔獣に囲まれているようだ。


───どうやら あちらが気になるようだな


「話をするなら、俺だけで良かろう。このセレナを、あそこに送れ!」

「ラルフ? いや!」


───ほう 口を利けるとは 神獣の類いか 良いだろう


 セレナの姿が黄金色に染まっていく。


「ラルフ!!」

「ここのことは言うな。俺は無事だと伝えて皆を護ってくれ、セレナ!」

 膝を地に突き命ずる。


 ブーンと空気が揺れ、セレナが霞むとその姿が掻き消えた。


───送っておいたぞ


「一応感謝しておこう。もっともこの状況を作ったのは、あんただがな。それで用件は?」


───思った通り 突き抜けた能力の割に善良な質だな


「そうかな?」


───用件だったか 聖配置の復活だ


「聖配置とは何だ?」


───当地の竜脈を制する魔導陣でな


 数分に渡って説明があった。要約するに、地に埋めた3基の魔導器で作る陣。竜脈から放たれるいわゆる気の出過ぎを止めるもの。正体不明のエルフ女性の主人が2144年前に構築したとのことだった


「それはまた古い話だ。その魔導器が15日前に掘り出されてしまったと?」


───その通り 崖崩れでな 力場が露呈してしまったのだ

───それで 何者かが魔導器を一基を掘り出して 移動したのだ


「それと今起こっている魔獣の大発生と関係があるのか?」

 時系列的には付合する。


───ああ 不完全な魔導陣では 虚の生態系への悪影響を抑えきれぬ


 虚の生態系──


───口ぶりからして 魔導器の行方に関して心当たりがあるようだが?


「まあな。それを奪い返して、再び埋めれば良いのか?」


───そうだ 汝に可能か? 可能であればそう願いたいが


 この女。

 ガルやゲドと余り変わらないとすれば。その影響力は遺跡内部に留まる。自分では如何ともしがたいのか。


「わかった。その依頼受けてやろう」


 無限に魔獣が発生しては洒落にもならん。


「ところで、奪われた魔導器の大きさはどれほどだ? このくらいか?」


 魔収納から、人間の頭部大の魔結晶を取り出す。手首を捻って宙に浮かし受け止める。なかなか良い重さだ。何度か投げ上げた。


───ふふふ もう少し大きいな 青紫の魔石に金の器が被っている


「わかった。それを、どこに埋めれば良い?」


 また地が光ると、上空で見た地形と同じ画像が現れた。


───ここだ 


 画像の3点が輝く。1辺200メータルが綺麗な正三角形だ。そのひとつが点滅している。さっき入った入り口から西へ70ヤーデン、北へ30ヤーデン位……なんだ、さっき崖のような地形が崩れていたところだ。


───深さは5メータルから100メータルであればいい


「ちなみに、聖配置やらは1辺200メータルの正三角形であればいいのか?」


───そうだが 何をするつもりだ?


「まあ、任せておけ」


───では 汝の実験も済んだようだし 送る必要があるかな?


「ほぅ……」


───先に床に手を付いていただろう


「バレていたか」


 セレナが転送されるとき転送魔術を習得した。床に手を突き術式を読んだというわけだ。それは創世記の記述を思い出したからだ。


 虚無の闇に神は唱えた 光あれと しかし混沌の支配は緩まず 成すことはなかった 未だ時期に非ず 神は待った 1万年に1度光あれと唱えた 幾たびも試みたが混沌は衰えることはない 神は諦めなかった 数えること39度目 ようやく 遍く光が行き渡った 神は光神(アマダー)となった──


 遺跡で得られた、古代エルフの遺産をもって解読すれば。

 開闢以来38万年、宇宙が冷えたお陰で多くの電子が消え、光が直進できるようになった。昼が明るく、夜空に星々の輝きが見えるのはそのお陰だ。


 光波には電子、魔導波にはセレーテルと言うわけだ。だからセレーテルが満たされた空間では魔束は透り辛い。だが床は別だ。ニトクリスが行使した魔術は、すべて床を経由した物だった。


───汝は 智慧の器を持って居るようだな


 知識を受け入れる素養のことか


「ああ、いくつかは受け継いでいる」


───面白い 築きたる物を途絶えさせても詮無い

───汝ならば活かせるであろう 受け取れ!


 目の前に輝く6角錐が現れた。

 ガルの遺跡のあれと同じだ。


 腕を伸ばして触った瞬間──

 おお!

 またしても眼の裏に目まぐるしく、情報の奔流が流れ込んだ。


 しかし、初体験ではない。数十秒の酩酊状態の後、再び立ち上がる。


「報酬は前払いでもらった、勤めを果たすとしよう」


勇躍(リープ)!!】


 微かな浮遊感の後、眼を開けると月夜だった。

 月影が城壁に射している。


 ふうぅぅ。魔感応が戻ってきた。

 どうやら,念じた通りの場所に転位した。

 ボアンとは段違いに大きな城壁、ここはメディル辺境爵領領都(ワナーク)だ。


 重力魔術──

 空間と慣性を操作できる術式を手に入れた。

 今は、それが何を意味するかは、微かにしか分かっていない。解読が必要だが、魔術としては、既にいくつか使える。そのひとつが 勇躍(リープ)

 

60ダーデン(54km)を一瞬か。飛行魔術も形無しだ。まあ使用魔力量は段違いだが。


 ともかくも領都に来られた。

 仕事を始めよう。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2019/11/10 転移→転位

2020/02/16 誤字訂正(ID:1523989さん ありがとうございます)

2020/02/21 誤字訂正(ID:702818さん ありがとうございます)

2022/01/30 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ