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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
10章 青年期VII 非番と冒険編
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199話 レイア勧誘

人間の骨って、何か微妙ですよね。普段見慣れた物でもないし。ただ頭蓋骨がない、あるいは原型を留めてなければ、さほど気味が悪くはないっすね。

「ダダム孔、白骨?」


 レイアは、この男は何を言い出したという顔だ。


「その死体は、死後相当な年月が経過しており、1人は我が祖先にして過去当地の領主だった者と分かった。残りの2人も父方、母方の我が一族に当たる」

「そっ、それはまた……昔のラングレン男爵」


 徐々にレイアの顔が強ばって行く。


「着衣には多量の血痕があり、頭蓋に大きな穴が空いていた者もあった。つまり、3人は殺害されたということだ。時に前任のご領主ガスパル卿は、ダダム孔を立ち入り禁止にしていたと聞いたが、どういった理由かご存じか?」


「ああ……いっ、いえ。理由につきましては危険だからと聞いて、詳しくは存じ上げませんが」

 まあ俺が入ったときは結構危険だったかもな。補強したり取り除いたから、今は違うが。


「ただ、我が父の代には既に立ち入りが禁止されていたはずです。家令がそう申しておりました。兄が……いえ、兄をお疑いなのでしょうか?」


 ローザが、身を乗り出してレイアの肩に手を置く。

「あなた! レイアさんが動転されているではありませんか。ああ落ち着いて。殺害されたのは随分前……50年以上昔のことだから」


「そっ、そうでした。しかし、それでも私のお爺様が……」

「さて、そこまでは分からないな」


「はぁ……そっ、それで、なぜそのことを私に?」


「うむ。まずはレイア殿に知っておいて欲しかったからだ。その上での話だ。父があなたに協力を依頼した、当地の(まつりごと)を手伝って欲しいと言ったこと、受けて欲しいと頼みに来たのだ」


「はっ、はあ?」

 レイアの視線が、俺とローザに行きつ戻りつする。


「いっ、いや。なぜです? 私は、あなたの祖先を殺した者の子孫かも知れないのですよ? 私が言うのは憚られますが、正直その可能性は低くないでしょう。あなただってそう思っていますよね?!」


「確かにな。だからどうしたと言うのか? 先祖が犯罪を犯したとして、その罪が子孫に及ぶと光神様は仰ったことはあったかな?」


 レイアがぐっと詰まる。


「それは分かりましたが。なぜ男爵様がお越しになったのですか?」

「私が、父に推挙したからだ」

 再びレイアが訝しむ。


「なぜ私を? お目に掛かったは、初めてですよね?」

「この姿なら、分かるかな?」

擬人装(マスケラーレ)


「なっ! まっ、魔術? って、あなたは!」

「お久しぶりですな、レイア殿」


「声が……ああ……あの烈女。凄い剣幕な女村長と一緒に城に来た……」

「ヒューゴです」

「そう、そんな名前だった。くぅぅ。魔術……こんなことまでできるとは……」


解除(ハールト)擬人装(マスケラーレ)


「はぁぁ。以前に会っていたことは分かりましたが……私には資格がありません。やはり、お断わりしようと思います」


「ふむ。では訊くが。以前統治を手伝っていたのは、なぜだ! 領民を助けるためか? それとも兄を扶けるためか?」

 ううっと詰まる。


「両方です……」

 正直だな。


「ならば! 兄が領主でないなら、領民は扶けないと言うことだな」

「むう! わっ、私がやらずともラングレン卿には御家臣が何人もいるでしょう?」


「自分で確かめてみてはどうだ? だが、この招請に応えなければ、以前行ったレイア殿の取り組みが嘘になるぞ!」


「嘘?!」

 レイアの眉が、ガッと逆立つ!


「大理石売却業者の再選定、灌漑用水の開削、営林の改善と植樹の促進……レイア殿が出した建白書に書かれた提案は、立ち消えになっても良いのか? 領主が変わったからと言って放棄するなら、それは嘘だ!」


 美しく整った顔が、少し歪みつつ俺を睨み付ける。

 いいぞ!


「なぜ、それを! ガスパル領政府でも主立った者しか知らなかったはず!」

「さてな……」


 ローザが、なぜか大きく肯いた。

 対照的にレイアの表情は難しくなり、瞑目した。


「はあぁ……あなたに乗せられることにします」

「何?」


「私は、招請に応じると申しました。至らぬ者ですがよろしく頼みます」

「勘違いしないでくれ。仕えるのは私ではない、父だ」


「わっ、わかりました」


     †


 聖堂を出ると人集りができていた。中に居るときから魔感応で分かっていたが。

 馬車が停まっている空き地に出て行くと、時折喚声が上がり、俺達を見ながら何やら囃している。


 年配の小太り男が、俺の前に進み出てきた。

 すかさずレプリーもこちらに寄ってきた。


「と、当地の村長をやっております。ドゥエムと申します」

 

「出迎え、ご苦労!」


「はっ! 御領主様のご子息様と伺いました。お目に掛かることができて光栄です。よっ、宜しければ、我が家にてお持てなしなぞ……」


「申し出殊勝ではあるが、生憎忙しい身なのでな。志はありがたく戴いておく。饗応は、またの日にさせてもらう」


「はっ! 楽しみにしております」

 ほっとしたような表情で、肩が落ちた。

 領主の一族が来た。なのに、持てなしもしなかったとなれば、後に叱責を受けるかも知れないと、怯えつつここへ来たのだろう。


「うむ、ではな」


 そう言って、先にローザを馬車に乗せ、自分も手を振ってから乗り込んだ。

 馬車が走り出した。

 しばらくしたら、また文字通り飛んで帰るが。今はまだ村民の眼が有る。暫くは、このまま走ろう。


「皆、ローザのことを綺麗綺麗と言っていたな」

「ふふふ。確かにそうは言っていましたが、主に年配女性が。あれは旦那様のことを囃していたのです」

「そうは思えないが」


「そうなんです。それより」

 ローザがぎゅっと身を寄せてきた。

「ん? どうした?」


「いいえ。レイアさんがかなり綺麗なので、気を揉みました」

「はあ?」

「側室をお望みではないのかと」


「何を馬鹿なことを……」

「そうですね。ここに私をお連れ戴いたのも、ちゃんと気を使って戴いているのですものね」


「それにしても、レイアさんのことをちゃんと調べていたのですね。義父様に推挙したと聞いた時は、領民の評判がよかったからかと思っておりました」


 ああ、そうか。

 親父さんと話したとき、ローザは居なかったからな。


「調べたのは、スードリ殿ですか」

「その通りだ」

 スードリ達が行った諜報の成果だ。

 旧ガスパル領政府の主立った者の大半は、王都に召喚されており、ラングレン領政府に登用されていないからな。


 ああ、あの時ローザが肯いたのは、そういうことか。


「ともあれ。本当にあなたは、やさしいのですね」

「ん?」


「レイアさんに、きつく言ったのは、彼女が落ち込んでいたのをなんとかしたかったのでしょう?」


「……さあてな」


 ローザは、にこやかに笑っていた。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

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訂正履歴

2019/07/13 時勢の訂正(ガスパル領政府でも主立った者しか知らないはず!→ガスパル領政府でも主立った者しか知らなかったはず!)

2020/02/16 誤字訂正(ID:1523989さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

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