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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
8章 青年期V 上級魔術師選抜試験編
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161話 ラルフの2次実技試験前哨戦 

いよいよラルフの実技試験(2次という名の)本番です。

─── 2次実技試験記録員の視点


 6番の試験が早めに終わったので、しばらく間が有ったが、次の候補者の馬車が到着した。


 ほう……。

 降りてきた候補者のローブは白一色だ。無論深緋連隊(サカラート)ではなく、ホーズや靴からして軍人でもないようだ。

 

 つまりは、魔術師協会推薦の候補か。

 1次はともかく、2次実技試験受験者に民間人は珍しい。居ない年の方が多いだろう。


「候補者7番です」

 そう特別審査員(イーリス)様に告げながら、よく2次実技試験まで来たなという賞賛と、だがこの試験ではなあという侮る気持ちが相半ばした。

 私が記録員になってからはもちろん、相当遡らなければ非軍人の合格者は居ないはずだ。


 7番は降りるなり、なぜかじっとこちらを睨み付けている。まるで、ここにイーリス様がいらっしゃることが分かってでもいるように。


「2次試験を始めさせて頂きます。その魔導器に掌を当てて下さい。魔力を吸引致します。魔石珠(オーブ)が蒼くなりましたら戦闘開始です。ではお願い致します!」


 その指示にしたがって、7番は手を乗せた。

 おっ。

 一瞬で1番目のランプが点いた。まあ1個目はたまにあること。そう高を括った10秒後だった。


「むっ!」

 ランプが続けざまに点灯していく。

 ありえない。

 5秒に一つの割で点いていく。瞬く間に魔力が吸引されている。ぞっと冷たいものが背筋を走る。


「まさか、不正……」

 一旦止めるか? 戦闘に入っていない今なら!


────不正はない! 続けさせろ!


 イーリア様の念の迫力に押される。

「はっ、はい。承知しました」


 そして1分も経たない内に、全てのランプが点灯した。

 戦闘開始──


 嘘だ!

 背後に生まれた紅い渦が、眼にも留まらぬ白い礫に襲われた。

 収束し掛けた魔気体が雲散する。


 おお。

 確かにそうできる候補は居なくも無い。だが、漏れなく何らかの痛手を被る。

 それなのに何事もなかったように、7番は立っている。余裕綽々だ。


 嘘だろう……こんなことは初めてだ。

 いや、驚くの早い。吸引した魔力は半分以上残っている。


 分身体は、瞬時に三頭火鳥(トレフォーン)の形態を取った。目まぐるしい魔術が応酬され始めた。

 焔、礫、目映き光が飛び交う。


 押されている……。

 候補者がではない、分身体が、だ。


 余りも信じられない光景を目の当たりすると、頭は冷えてきた。そして、あることに気が付く。

 7番は何時詠唱してるのだ?

 1発目だけならば、魔力吸引中に詠唱していたかも知れない。


 しかしだ! 現時点で連続して発動しているのは? 説明が付かないぞ。

 数秒経たずして次々と炸裂する魔術など……。


 もしかして、詠唱していないのでは?

 我ながら、馬鹿なことが頭を過ぎる。


 我が国最強魔術師、賢者が1人、電光(ブリッツ・デ)バロール。

 噂では、その名の通り、瞬く間に発動できると言うが。


 それを、まだ元服したてのような7番が? でも、そうとしか考えられない。それだけではない。


 分身体の魔術は、避けられ、弾かれ。およそ7番に損傷を与えていない。

 が、7番の魔術は、幾度も分身体を捉え、その度に魔力残量が減っていく。


 ヤバい!

 まだ3分と経っていないのに、早くも最終状態だ! 慌てて鎧戸を閉めた。

 席に戻り、記録魔導具を見る。

 分身体は、プクプクと膨らんで昇華の前兆を見せていた。


「なっ! なんだ、あれは!?」


   † † †


─── ラルフの視点


 あれが魔導器か──


 拡声魔術の声の指示にしたがって、地から生えた魔導器の上端、魔石の上に掌を乗せた。


 魔力が吸い取られる。

 うーん。大した勢いでは無い。

 それ以前に、なんか滞っているじゃないかという気すらしてきた。吸引に時間を掛けるのは芳しくない。その分、戦闘時間が減るからな。


 そうだ!

 セレナに魔力譲渡するときにみたくやってみるか。ただし、慎重にだ。

 右手に魔力を収束してみる。おお、やっぱり吸引の速度が上がってきた。

 いいぞ。もう少しずつ上げてみるか。

 そんな感じで続けていくと、最初と比べると10倍位まで上がった。


 それが良かったのか、1分弱で魔石が蒼く輝いた。

 よしよし、大して持って行かれなかったが、ただ吸われるの待っていたら5分くらい掛かっていたところだ。


 敵襲! 後ろ──

氷礫(ヘイル)!!】


 反射的に礫を放つと、至近に蔓延(はびこ)ろうとした(もや)が霧散した。

 試験で不意打ちはないんじゃないか?。

 それに……。


 むっ!

 消えたと思ったら今度は前兆無しに、魔獣が出現した。

 三頭火鳥(トレフォーン)だ!


光壁(オーラ)!!】

 いきなり火を吐いた。しかも結構な広がりで噴きやがった。しかし速度が遅い、余裕で阻む。


閃光(ゼノン)!!】

 光束が怪鳥を貫通したが、効いてない……光魔術とは相性が悪い。悪霊(レイス)系とは違うか。


 うおっ! 

 黒い衝撃波が光壁を回り込んできた。慌ててトンボを切って避ける。

 光が駄目なら!

 着地。そのまま大地の両手を突き──。 

地極(エンデ)垓棘(シュターヘン)!!】

 物理攻撃だ!


 地面から無数の蔓が急速に伸びる。

 怪鳥が危機を感知し、高度を上げようとしたが、間一髪茨が勝った。下半身に巻き付いた。


 よし! 絡め取ったぞ!

 キィーキィーと耳障りな悲鳴を上げて激しく羽ばたき続ける。

 無駄無駄! がっちり棘が喰い込んでいるからな。


 さて! どうやって茨を剥がさないように斃せるか……ぁあ?! おいおい。 

 怪鳥の身体が解けるよう分散すると、茨が取り付いた下半身を自ら引き千切っていく。

 大きく羽ばたいて、上半身を宙に逃し遂せた。

 それでも大きな痛手を与えたはずと思ったが、ものの数秒で再生しやがった。


 これならどうだ!

 指を差し出し、魔力を収束──

金剛迅雷(ヴァジュラム)!】


 瞬時に極太の紫電が迸ると雷光が網膜を灼き、空間絶縁が破れる轟音が膚を震わせる。電撃が絶大なる熱を生じさせ、数十ヤーデン前の怪鳥が刹那に蒸発して消え失せた。


 まただ! 手応えがなさ過ぎる。


 実体が薄いのか? 受肉魔術で作り出しているのだろう。

 そうか! 俺が、いや、受験者が供した魔力を使っているのか。つまり魔力が尽きるまで、何度斃しても再び魔獣として発生する。


 ならば元凶を絶てば!

 俺は、先程の魔導器を睨み付ける。

 いや、だめだ!

 普段なら良いが、これは試験だ。その器具を壊して解決するのは、反則に違いあるまい。


 異物感知──


 反射的に首を巡らせると

 僅か手に乗る程の光球が突如として発現、虹色に輝いた。


加速(エピタキシー)!】

 怖気が、魔術を使わせ10ヤーデンも後ろへ退く。


 なんだ?

 半拍遅れ、一気に膨張(インフレート)した。パンが2次発酵するように数倍に膨れ上ると、俺が居た場所すら飲み込んだ。


 これは──

 試験場の敷地に入る前、僅かに感じた違和感。

 この魔界強度なら分かる、俺が8歳の頃目の当たりにした魔導的爆発。

 超獣の昇華だ!


 そう考える内にも一段と巨大化した。

 まずいな。もはや、いつ弾けても不思議ではない。

 どうする、いっそ燃やし尽くすか。


 それとも──


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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