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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
黒竜討伐編

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第八十五話 奥に進もう

 風音がタイラントオークから手に入れたスキルの名前は『情報連携』。アクティブスキルでその効果はスキル所持者とパーティメンバー全員との意識を浅く共有し戦闘の把握ができるスキルである。その能力に鑑みると、これを所有していたタイラントオークと部下のオークを別個で撃破したのは成り行きではあったが効果的であったようだった。



◎オルドロックの洞窟 第十五階層 昼過ぎ


 その風音の習得した『情報連携』だが、


「うううりゃああああああああああああ!!!!!」


 さすがに一撃で決められては、使う間もない。

 ジークのホワイトファングの威力にバロウタイガーが二体吹き飛ばされる。

「まだまだいけるよー」

「はいっ」

 背後からの風音の言葉にジークが二度剣を振り、ホワイトファングを発生。三、四体とさらにバロウタイガーが吹き飛んで戦闘が終了した。


「ご苦労様。どうだった?」

「はあ、はあ。はい、頑張ればあと一発は撃てそうです」

 戦闘終了後の風音の言葉にジークは息を切らせて答える。急速な魔力消費は肉体的疲労と精神的脱力感を生む。

「全力なら合計4発か。命中率は思ったより落ちてないみたいだね」

「ホワイトファングの範囲自体が上がっているためだろう。昨日確認させてもらったが、体勢さえブレなければ中距離程度なら問題なく命中させられるだろう」

 ジンライが後ろから補足を入れる。

 昨日風音が要求していた通りにジークは100パーセントのホワイトファングを撃てるようになっていた。いや100パーセントに設定するとリミッターが外れ上限自体が使用者の任意になるため、実際に100パーセント以上の威力となっているハズだ。もはやミンシアナにいるときとは比べものにならないほどにジークは白剣を使いこなせていた。

「こりゃ認めるしかないわけだね」

 ジンライの許可も下りたことだ。風音はそう言ってジークを見る。

「じゃあ頼りにしてるからね、ジーク」

「は、はいっ」

 風音の言葉に嬉しそうに頷くジーク。やはりその子犬のような仕草は変わっていない。


 立派になったことを認められたジーク。とはいえ、今は打ち止めである。風音はダルそうなジークをヒッポーくんに乗せて先に進む。



◎オルドロックの洞窟 第十六階層


「それにしても昼過ぎにはここまでつくなんてヒッポーくん様々ねえ」

 階層を降りたところでルイーズがそう呟く。

「まあ、ここからはデコイ型ヒッポーくんを先行させて、スピードは落ちちゃうけどね」

 自分たちの未踏破領域に入ったことで風音はヒッポーくんの速度を緩め、昨日作成したデコイ型ヒッポーくんを作って前に進ませていた。

「このデコボコとした道が体力を削る要因でもあるからな。それを馬で進めるだけでも有り難いものはあるさ」

 ジンライは偽りなき気持ちでそう返した。蓄積される疲労はダンジョン内の長期攻略では命取りになる場合もある。体力の温存はダンジョン攻略において優先されるべき重要な事項だ。

 もっとも便利すぎる今の状況に慣れてしまうと後が怖いなともジンライは思うのだが。

「それで、予定通りにこのまま先に進むでいいんだな?」

 そのジンライの問いに風音が頷く。

「うん。ヒッポーくんの足もあるし明日、明後日中にはドラゴンの前までは行こうと思ってるよ」

「ふむ。少しペースが速いように思えるが」

「私たちは元々このダンジョンを攻略しにきたんじゃないしね。ダンジョンにも慣れてきて目処が付いたなら依頼通りにドラゴンを倒すのを優先にするよ」

「まあ、確かにな。それでそのままドラゴンを退治に行くのか?」

 ジンライの確認に風音は頷く。

「できるならそうしようかと思う。でも30、31階はある程度攻略しておきたいかな。そこらへんなら何かいいものもあるかもしれないし」

「それはいいが20階層からは魔物の種類も変わるし、開けた場所がいくつもある。ダンジョンマップの階段までのルートでもいくつか通る場所があったはずだ」

「ヒッポーくんなら背後を取られても逃げられると思うけど?」

「それなんだが、人通りの多くなった大広間には魔物が大量発生することがある」

 ジンライの言葉に風音が「ゲッ」という顔をする。いわゆるモンスターハウスという奴だろう。風音以外にも弓花もティアラもジークも同じ顔をしていた。

「なにそれ?」

「ダンジョンとはそういうものなのだ。理由は知らん」

 そう言われては返す言葉もない。

「そうした場合、どうしたらいいわけ?」

「普通は来た道に戻って全力で逃げるか足止めだな。出てきたばかりの魔物は連携こそしないが争い合いもせずこちらを狙ってくる。一番悪いのは大広間に留まり、八方から攻撃を受けることだ」

「ヒッポーくんで移動してると中心地点辺りに出そうだね」

 風音の言葉にジンライが頷く。

「といっても発生タイミングは分からんからな。全力疾走で突き抜けるというのも手かもしれんが」

「んー、いや慎重に行こうか。焦ると失敗しそうだ」

『ちなみにだが、余たちが潜ったダンジョンではミノタウロス50匹が発生してその場にいた高ランクパーティがいくつも全滅したということもあったの』

 メフィウスの言葉に若手一同は先ほどよりも酷い顔をしたが、今度はジンライも苦虫を噛み潰したような顔になった。

「確か全滅したのってランクS冒険者の率いてた最深部攻略メンバーだったわよねえ。あのときはその後拡散したミノ討伐にもエラい苦労した記憶があったわぁ」

 ルイーズのいつもにはない達観した顔での言葉にジンライも深く頷いた。

「あれは地獄でしたな。討伐だけでも本当に死ぬかとも思いました。あれの大量発生などに出くわしたら生き残れるわけもない」

 どうもこの老練パーティにとっても想像以上の惨状だったらしい。恐ろしいことだ。

「うん。ともかく慎重に行こう。慎重に」

 風音の言葉に一同頷く。



◎オルドロックの洞窟 第二十階層 夕方


「クルルオォオオ」

 それは直感がなければおそらく危険だった。

「あぶなっ」

 風音が上に手をかざしマテリアルシールドを張り、それを防いだ。

「クルルッォオ」

 防がれたそれが回転して、離れた地面に着地する。

「マッシブカメレオンかっ」

 ジンライが叫び、ヒッポーくんから飛び降りる。

(臭いは……ないわけじゃないけど、薄いのか)

 風音も他の仲間たちもジンライに続いてヒッポーくんから降りる。

「は虫類系って臭い弱いんだねえ」

「ああ、そういうものらしいな」

 風音の言い訳にジンライも昔聞いた話を思い出す。

「でも気付かなかったのは姿を消すスキルのせいだよね」

 光学迷彩。事前にこの階層の魔物の情報とその能力のことを聞いて風音は心の中で小躍りしていた。

(インビジブルと併用すればより一層捗るね)

 風音はインビジブルがレイゲルに見破られたことを気にしていた。それを改善させるかもしれないスキルを目の前の魔物は持っている。狩らざるを得ない。

 そして風音はようやくの出番と思い、


「スキル・情報連携」


 タイラントオークから手に入れたスキルを発動させた。


「「「「「!」」」」」


 その能力に全員の顔が引き締まる。

「上に5?」

「左右に一体ずつ?」

 ティアラやジークが戸惑いながらも『光学迷彩』で見えない敵の位置を把握する。それは風音の『犬の嗅覚』で得た情報だ。それが『情報連携』でティアラとジークに教えられる。


「こりゃ便利ね」


 ルイーズはそう言いながら天井にサンダーストームを放つ。直撃を受けたマッシブカメレオンがボトボトと天井から落ち、

「うわぁああああ!!」

 ジークのホワイトファングが右手のカメレオンを一撃で倒し、

「お出でませ、フレアバード!」

 ティアラの指輪の一つから炎の鳥が飛びだし、左手のカメレオンへと攻撃を仕掛ける。なお、この指輪はこのダンジョンに着いてしばらくしてからルイーズが渡した召喚器だ。適正レベルになった段階でルイーズはティアラに次の召喚器を手渡すようツヴァーラから依頼されている。


 驚いたのはマッシブカメレオンたちだ。知性がそこそこある彼らは最初に姿を現した一体を囮に、仕掛けてきたパーティを隠れている残りのメンバーで奇襲する……という予定だったが、それが完全に失敗した。

 残りは正面にいる、最初の一体と雷にやられ傷ついた五体。風音、弓花、ジンライはそれらに対し情報連携で対象の敵などの情報を共有しながらいつも以上の速度で狩り尽くした。


「なるほどな。魔物たちの中でも妙に動きが良いのがいたと思えばこういう能力があったというわけか」

 ジンライが1人納得して頷いていた。

「これはかなり使えるねえ」

「かなりなんてものじゃないわよ」

 ルイーズが苦笑する。風音の感覚と連携すれば魔術の命中度も魔術を放った後の前衛の突入タイミングも驚くほど正確に可能になる。

「あふぅ。カザネと一体に成れたことでなんだかわたくしフワフワしてしまいましたわ」

 顔を赤くしているティアラに、メフィルスが首を振る。

『いや、感覚の共有で精神的にかなり疲労しておるだけよ。強力ではあるがあまり使いすぎるのも危険よの』

「だねえ。ちょっと疲れるかも」

 風音も同意する。戦闘中はそうでもなかったが今は目が回る感覚がある。

「だが有効なのは違いない。ジーク様のホワイトファングの命中精度も増すだろうしドラゴン戦では重要な要素となるだろうな」

「まあ慣れずに使うのも危険だし頃合を見て使っていくかな」

 そのカザネの言葉に一同はうなずき、またヒッポーくんに乗って先に進むこととなる。なお、カザネはこの戦いで予定通り『光学迷彩』のスキルを手に入れた。


名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・白銀の胸当て・白銀の小手・銀羊の服・甲殻牛のズボン・狂鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪

レベル:25

体力:85

魔力:143+300

筋力:42

俊敏力:33

持久力:24

知力:43

器用さ:27

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv2』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:二章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』


弓花「このスキル、他の人の認識まで全部頭の中に入ってくるから繋がる人間が多いとパンクしそうになるわね」

風音「強力なスキルなんだけどね。おかげで集中力を多大に使うから多用は出来ないみたいだよ」

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