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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
黒竜討伐編

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第八十三話 夜営をしよう

「ほい。こんなものかな」

 風音がパチリと留め具を付ける。

「うわあ、これっていつも布団にしてる奴ですよねえ」

 ジークが風音につけてもらった不滅のマントを見て、嬉しそうにバサバサと振ってみる。質感が非常に良く、とてもマントの素材のようには見えなかった。

「うん、そうだよ。ブレスや魔術とか。後、物理攻撃にも貫通しないからそこそこ有効かな。夜営の時もこれのまま寝れるだろうし便利だと思う」

 そして風音はタツヨシくんの分も不滅のマントを用意した。これは頭のヘルメットから垂らす形で装備させることにしていた。


「うむ。今日は調子がいい」

 そう言うのはジンライ。どうにも10歳若返ったようには見えないが、さすがに『パナシアの雫』の効果はあるようである。

「ジンライくん、ちょっとお姉さんと若さを試してみない?」

 「カモーン」と言うルイーズに「結構です」と返すジンライ。もうミスは犯せない。だがルイーズの目は獲物を狙う目に変わっていて、今後ジンライがその身を守りきれるかは不明である。



◎オルドロックの洞窟 第六階層 昼過ぎ


「今日からはダンジョン内で寝泊まりすると思うと、この時間にここに着いてもあんま焦った感じがしないねえ」

 風音はウィンドウに表示されている時計を見ながらそう口にする。

「行って戻ってじゃないのはいいけどさ。さすがにダンジョン内じゃコテージも出せないんだよね?」

 弓花の言葉に風音が頷く。

「場所が結構狭いしね」

「まあ十階層を超えてくると広い場所も出てくるし、造ることは可能だろうがな。だが目立つしコテージの中に魔物が発生する可能性もある」

 ジンライがそう言うと弓花が「うわぁ」という顔をした。

 魔物の発生プロセスは召喚のそれに近く発生ポイントはランダムだ。コテージ内だから安全という保障はなかった。

「普通はどうしてるもんなの?」

「発見された隠し部屋の中だと魔物が出ないからそこで休むことが多いわね」

 風音の質問にルイーズが答える。

「ああ、それでダンジョンマップに発見された隠し部屋がチェック入って書かれてたんですね」

 弓花が自分の持っているマップをのぞき込みながら聞いた。

「そういうことだ。隠し部屋なら警戒は入り口だけしていればいいしな」

「だったらヌリカベくん使えば入り口も塞げるねえ」

「確かにそうだな。まあ一応見張りはたてておく方がいいだろうが」

「あのー」

 風音たちの会話にジークが手を挙げて割り込む。

「なんですかな、ジーク様?」

「そのですね。なんでヒッポーくんで移動はしないんですか?」

「それは馬ではダンジョン内を移動するには不向きだからで……む、だが、あの石馬ならば問題ないのか?」

 ジンライは口にしながら「おや?」という顔をした。確かにヒッポーくんは無生物なので魔物にも怯えないし森の中などの道なき道も突き進む。ダンジョン内で乗れないかというとそうではないような気もしてきた。

「うーん、そうだねえ。確かに盲点だったかも。ジーク、よく気付いたね」

 風音に褒められてジークが照れる。その裏でティアラが「わたくしも言っておけば」とぼやいていた。ティアラは最近弓花以上に出番がなくなっていることを気にし始めていた頃だった。

「けど使うのは帰りや通った道限定にしておきたいかな。通ったことのない道は何があるか分からないし、まだかかったことはないけど罠とかもあるんだよね?」

「あるな。なぜあるかは知らんがな」

「だったらとりあえず今回は帰りにでも使用してまずは使い勝手を見てみよう」

 風音の言葉に一同頷き、そして先に進んでいく。


 途中でシビルアント10匹やダーツボア6匹などと遭遇するも難なく撃退。敵があまり強くないことを体感した風音たちは七階層、八階層、九階層の階段まで最速で向かいそのまま十階層まで降りていった。



◎オルドロックの洞窟 第十階層 夕方


「ふむ。そろそろ夜か」

 ジンライが天井から見える空が暗くなったのを見て、そう呟いた。

「もう少し進めそうだけど、そろそろみんな限界かなあ?」

 風音が後ろを向いて、全員の状態を確認する。ルイーズとジンライ、弓花はまだまだといったところだがティアラとジークは結構へたり込んでいた。能力の低さと慣れぬダンジョン攻略の疲れもあるが、これはペース配分がしっかりとできていないことが一番の原因だろう。

「まあ、暗くなってから夜営場所を探すのも危険だからな」

「じゃあ、隠し部屋に行こっか。ここらにあるのはどれが一番近いかなあ」

 なお、ここに来るまでに風音はひとつも隠し部屋を見つけられていない。これはダンジョンマップの通りに最短で先に進んでいるせいで、やはり自分の足で探索をした場所でないと直感は働かないようだった。


「おや、先客がいるみたいだよ」

「ほお」

 一行が隠し部屋の近くまで進むと風音はその先に別のパーティがいるのに気が付いた。

「知らない匂いだねえ。女の人もいるみたいだけど」

「まあ、旅は道連れとも言うからな。あまり失礼な態度をとるなよ」

「え? なんでそんなことを言うの?」

 別に風音から喧嘩を売ったことなどないのだが、ジンライの中では危なっかしいという印象があるようである。ドアとか洗わせたのがいけなかったのだろうか?


 そして風音たちが隠し部屋にはいると、そこにいたのはリザードマンの戦士二人と魔術師の女性、癒術師の男性だった。


「おお、あんたが噂の守護獣を殴り殺した子供か」

「またデマが流れてるッ!?」


 風音が涙目になり、みんなが笑う。リザードマンの戦士の言葉の掛け合いが想像以上に愉快で風音も彼らとはすぐに打ち解けた。そして風音がヌリカベくんで入り口を塞いだのにはリザードマンらも驚いたが、魔物の侵入が防げることに礼を言い、また交代で見張りにもついた。


 そして朝になり、風音たちがさらに深い階層に進む方針なのと、リザードマンたちがこの階層を探索するという方針だというのを確認すると地上でまた会う約束をして隠し部屋の前で別れた。


「なかなか良い戦士のようだったな」

 ジンライはリザードマンの、特に年季の入った戦士の方と酒を飲み交わしすっかり打ち解けたようで去りゆく姿を名残惜しげに見ていた。

「うん、リザードマンって関西人の気質なんだねえ」

「かんさ……い? なんだそれは?」

 そう首を傾げるジンライに弓花が笑いをこらえている。


 そうして風音たちは先に進む。十五階層まで進んだところで、一旦は地上に戻ることにし、その日は十階層の隠し部屋まで戻って一泊することに決めた。その帰り道、十階層の途中で風音がふいにヒッポーくんを止める。

「どうしたの風音?」

 風音の様子に何かを感じた弓花がそう尋ねる。

 だが風音は答えず、鋭い視線を通路の先に向けて黒牙を抜き「戦闘準備ッ」と言ってヒッポーくんを全力で走らせた。


 そして向かった先にいたのは豚の化け物である6体のオーク、その中心にいるのはチャイルドストーン持ちのタイラントオークだった。


「風音? ねえ、あれって?」

 弓花の悲痛な声も風音の耳には届かない。いや、あえてそれを無視する。

 タイラントオークの下腹部から突き出るようにある女性の亡骸など今は気にかけてはいけない。それが昨日出会った女性だったとしてもだ。目の前の敵に集中しなければ自分たちがそうなるかもしれないと、ギュッと唇を噛みしめて風音は飛んだ。


 その後の戦闘は恐ろしいほどに速やかに終了した。誰も彼もが一切の油断なく全力で挑んだ結果だが、なかでもティアラの奮闘ぶりはその場にいた誰よりも苛烈で想像以上のモノだった。それはあの冒険者の女性の姿を見て、かつてオーガに連れ去られた自分を思い出し、あるいはそうだったかもしれない自分の未来を見せつけられたせいかもしれない。彼女は覚えたてのフレアバードを暴走限界まで操りオークたちを焼き尽くした。


 そして風音であるが、今回の戦闘ではスピードと動きでの勝負には出なかった。おこなったのはいつもの彼女らしからぬ強引な力技。呼び出したタツヨシくんとユッコネエに命じ、迫り来るタイラントオークを強引にねじ伏せ、その場に押し倒した。

 魔物としては同格のユッコネエだけではなく、小柄なタツヨシくんにまで押さえつけられたタイラントオークは大いに慌てふためいた。しかし子分のオークたちも全滅寸前で、さらに目の前の少女のあまりにも苛烈な眼光に心臓が掴まれたような恐怖を感じて動けなかった。それは風音が自身の怒りを抑えつけ、ただただ純粋に研ぎ澄ませた殺気に呼応したスキル・タイガーアイによるもの。

 そして風音はチャージしたキリングレッグで躊躇なくタイラントオークの頭部を蹴り飛ばした。その攻撃を食らって一度で死ななかったのはさすがにチャイルドストーン持ちであったが、だがたとえ一撃目に耐えられたとしても、続けて二発目の蹴りが飛ぶだけのことだ。二撃目で死ななければ三撃目で殺せばいいだけのこと。


 そうして二発目に続いて三発目の蹴りを見舞おうとしたところでレベルアップのウィンドウが開き、風音は魔物が死んでいたのに気が付いた。スキルリストに新たなスキルが入ったが今は目に留まらなかった。


 その後、風音たちは他の散らばっていた冒険者たちの亡骸も見つけ、ともに埋葬する。

「これもまた冒険者たちの通る道だ」

 そう口にするジンライだが、その表情は自身の感情を押し殺したように無表情だった。そうして風音たちは後味の良くない想いを抱きながら、十階層の隠し部屋で一泊し、翌日には地上に戻ることとなる。


 風音は帰りに死んだ冒険者たちのギルドカードを渡したときの管理官のやるせない顔を見て、

(この人はいつもこんな思いをしてるんだろうな)

 と感じたことで、自らの心の有り様を整理できたようだった。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・白銀の胸当て・白銀の小手・銀羊の服・甲殻牛のズボン・狂鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪

レベル:25

体力:85

魔力:143+300

筋力:42

俊敏力:33

持久力:24

知力:43

器用さ:27

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv2』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:二章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』


弓花「あのとき、ティアラを助けられて良かったね」

風音「うん」

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