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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
黒竜討伐編

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第八十一話 男を尾けよう

「ミノタウロスよりヤバかった」

 そう口にするジンライを、風音はタツヨシくんに担がせてダッシュで帰還し、そのまま治療院へと直行した。もっとも虫の息だったのは体力の限界だっただけで後は普通に軽い怪我で済んでいたようである。癒術師からそう聞かされたときには全員がその場で安堵して座り込んだ。

『普通は死んでるんだがのぉ』

 メフィルスがぼそっと呟く。熟練パーティでも遭遇すれば全滅の危険があり、ソロならば死は免れないと言われるミミックさんである。なおミミックを倒して手に入ったのは超レアアイテム『パナシアの雫』、飲むと十歳若返ると言われている霊薬であった。

 風音や弓花が飲んだら五歳児に、ジークが飲むと生後一歳児になってエラいことになる薬だが、これはジンライに飲ませようということで意見が一致した。「売ればひと財産だが」とジンライが口にしたが使えるアイテムは出来うる限り自分たちで使用するという風音の方針から有無を言わさず飲ませた。


「あまり変わらないねえ」

「元々師匠って銀髪らしいし。けど肌に張りが出たっぽいような」

 飲ませた後の変化を見てちょっとガッカリしている風音の呟きに弓花がフォローする。元々ジンライは年の割には若々しいので飲んだ後の見た目もそうは変わらなかった。尤も本人曰く「キレが良くなった」とのこと。また持久力は目に見えて上がっていた。まあ、効果があって良かった。風音の感想通り、あまり変わっていないので妙に損した気分ではあるのだが。


 ともあれ、ジンライはとりあえず一日安静とし翌日は休みとした。そして本日よりオープンのカザネ温泉だが、

「大盛況です」

 ほくほく顔のザクロがやってきた風音たちにそう言ってきた。ダンジョンから疲れて帰ってきた後のひとっ風呂はやはり堪まらんらしいとのこと。ルイーズの伝手で温泉饅頭や果汁入り牛乳なども後日届くらしい。

 風音たちは風音たちで自分たちの温泉でゆっくり浸かった後は、夕食を食べて早々に眠りについた。



◎オルドロックの洞窟近辺 温泉コテージ前 朝


「むう」

 コテージの前で風音が一人思案顔である。

「変な顔してどうしたのよ?」

 家の中から出てきた弓花の質問に「変な顔……」と軽くショックを受けながら風音が答える。

「昨日洞窟で尾けてきていた臭いがここにもあってね」

 その言葉に弓花の顔が陰る。

「やっぱり狙われてる?」

 風音がそれに「うーん」と唸る。

「もしかするとジークかティアラ関係かも。弓花とルイーズさんは今日は二人に付いててくれるかな?」

「それはいいけど」

 ルイーズは元よりティアラの護衛兼お目付役として入っているそうなので、基本いっしょに行動している。そのティアラも普段はジークと一緒のことが多い。近い境遇に親近感があるらしいようだった。

「私はちょっとこの臭いを辿ってみる」

「危なくない?」

 弓花の質問に「かもしれないけどインビジブルがあるから」と風音が返す。

「そうかもしれないけどね。ムチャはしないでよ」

「うん。了解」

 そういって風音はインビジブルを発動して臭いを辿ることにする。


(さて、たいしたものが釣れなければいいけどねえ)

 臭いの数は5、恐らくは1人は獣人だろう。ジンライに気配を感じさせずに尾行出来る相手となれば、風音たちの通った臭いを辿って尾けている可能性が高いからだ。

 獣人は持ち前の鼻から斥候業についていることが多い。風音やギャオほどの鼻でなくとも需要はかなりあるのだ。



◎オルドロックの洞窟前 市場


 風音が臭いを辿って歩いていくと、市場の前で2つに分散していた。

(獣人の人はこっちか)

 風音はとりあえず1人で別れた獣人らしき臭いの後を追うことにする。

(うん。こっちは宿屋だね。あれ、さっきの臭いのひとつもある)

 どうも獣人と別れた人間がまた合流したようだった。


「そうか。今日は連中、潜らないか」


 風音が宿の前まで来ると裏手から臭いと声が響いてきた。


「ああ。とはいえ、昼ぐらいからまた嬢ちゃんを追い回してほしいって話なんだが」

 獣人と男が宿屋の裏手で話をしていた。

「まあいいがな、だが報酬は上乗せさせてもらうぜ」

「今でも結構な額を払っていると思うが」

 男の返答に獣人は渋い顔をして言葉を返す。

「あんたらも昨日のアレは見ただろう。ミノタウロスとミミックの死骸だぜ。隠し部屋を見つけただけじゃなくてあんな大物を倒しちまうんだ。あのクラスを相手にするならおかしな話じゃないだろう?」

「まあ、そうだな。分かった。俺らも雇われてるだけだしな。雇い主に確認してみる」

「頼むわ。俺だって本当はあの連中みたいに泣きながらドア洗いするかもしれないような真似をしたくねえんだよ」

 獣人の言葉に男がしみじみと頷く。

「まったくだな。しかもそんな危険をはらんだ依頼ってのがあんなガキ同士がデキてるか見てこいだなんてどんな物好きが……と、これは内緒な」

「分かってるって。あんたが愚痴るのも仕方ねえ。俺だって子供同士がヤってるかを鼻で確認するなんてマジでどうかしてると思ってるし」

 そう言って男たちが乾いた笑いを浮かべた後、どちらからともなくため息が出ていた。


(ガキ同士がデキてる? ヤってる? ナニヲイッテルンダコイツラハ?)

 男たちの会話をインビジブルで認識を隠しながら聞いていた風音の頭の中は混乱していた。

(ガキ、成人ではない人間、ティアラ、弓花、ジーク、私?)

 しかし男たちはガキ同士と言った。そして不本意ながら風音は自分の姿がジークと同い年くらいに見えていると自覚はしている。

(まさか私とジークがウッフンアッハンなことをしてると? それを確認しに来ているだと?)

 風音の脳裏に戦慄が走った。残念ながら風音の『直感』が「それ、正解やねん」と告げている。

(まさか、弓花の言う通り、ゆっこ姉が私とジークをくっつけようと?)

 しかし、いくらゆっこ姉がそうしたことを企んだとして、冒険者を雇って、まさかヤってることまで確認するだろうか。

(いやいやないって、それ!?)

 風音は首をブンブン振った。さすがにありえないだろうと。

(いやまさかロジャーさん? もしくは王族関係者がかぎつけて?)

 それならばありえるのか……などと風音が頭の中で悶々としていると、獣人と話していた男が「じゃあ報酬の件聞いてくるから、昼によろしく」と言ってその場から離れた。

(おっと、雇い主とか言ってたね。あっちについてきゃ会えるってわけだ)

 風音は無理やり頭を切り替えて、男を追うことにする。


 そして風音が男を尾けて進んでいくと男の目的地は仮設テントでできた酒場だった。


 男が酒場の中に入っていく。中は昼時だからだろう。人が少なく、奥にはどことなく硬い、軍人風の男が座っていた。

「よお、約束通り来たぜ」

 獣人と話していた男がその軍人風の前に立ち、声をかける。

「時間通りか。冒険者にしては珍しいな」

「良い冒険者ってのは依頼主を不機嫌にはさせないもんさ」

 と言って軍人風の前に座った。

「けど、そうすると俺は良い冒険者ではないかもしれねえな」

 困った顔をした男に軍人風が「どういうことだ?」と尋ねる。

「いやね。ガンザザにさっき昼に来るようには言ったんですがゴネられました」

「報酬金の上乗せか」

「お察しの通りで」

 男がにっこりと笑って軍人風に言う。

「その顔はお前も……ということだろうな」

「ま、それだけ厄介なターゲットってえことですよ。昨日の顛末は一応報告書に上げておいたんですが読みましたか?」

「ミノタウロスにミミックか。にわかには信じられんが市場にミノタウロスの角が流れているのは確認した。確かにこちらの説明よりも実力は上と思われても仕方はないな」

 軍人風はため息をいて男の言い分を認めた。

「では?」

「いや少し待て。私の立場ではその判断はできんよ。上に掛け合う」

「ガンザザが何か言ってきた場合には?」

「昼前には話を付けて私も一度合流する。集合場所は確かこのロックロ酒場でいいんだったな?」

「それでお願いします」

「了解した。それと一応の確認だが」

「あの小僧と嬢ちゃんが性交渉をした気配はねえですよ。明け方に一応確認に行きましたが白でした」

 軍人風の言葉を遮り、男が言葉を先読みして返答する。

「肉体的接触はないということだな」

「まあ、若干小僧に匂いが残ってたって言ってたから多少はあるんでしょうが」

「それは報告にはなかったぞ?」

 軍人風が眉をひそめて男を咎める。

「あーそうでしたっけ。いや、かなりどうでもいい程度ですよ」

「しかしだな。あるいは接吻をした可能性がないとも限らんだろう」

「ないとは言えませんがさすがにそれを匂いから気付けってのは無理ですよ」

「可能性はある……と」

「いや、まあそうなんですがねえ。正直その……」

 男が言いよどむのを軍人風も察したように言葉を返す。

「分かっている。だが、そこから先はよしておけ。不敬に値する可能性がある」

「はあ、分かりました。それじゃあ上の方によろしくお願いします」

 男の言葉に軍人風は頷くと、急いで酒場から出ていった。

「軍人さんも大変だなあ」

 という男の声を聞きながら風音は軍人風を追って外に出る。

(軍人さんって言ったよねえ。やっぱり跡継ぎ問題か。ミンシアナ関係かなあ。あーもう)

 性交渉とか接吻とかそんな単語を聞かされて風音の顔は真っ赤であった。その気なんてまるでなかったが、人から言われれば意識してしまうのは仕方のないことだろう。誰にも見られないインビジブルが今ほどありがたいと思ったことはなかった。


名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・白銀の胸当て・白銀の小手・銀羊の服・甲殻牛のズボン・狂鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪

レベル:24

体力:83

魔力:140+300

筋力:40

俊敏力:30

持久力:21

知力:41

器用さ:25

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv2』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:二章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』


風音「なんてことを調査してるんだ。あいつらは!」

弓花「明け方に調べに行くとか生々しいわね」

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