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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
黒竜討伐編

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第八十話 隠し魔物に会おう

「グォォオオオオオオオオオ!!!!」

「マジっすかぁあああ!!!」

 隠し部屋の中からのうなり声と風音の悲鳴が外にいたメンバーに響き渡る。

「な、なんです?」

 ジークの問いにティアラは答えられず青ざめる。

「ジンライくん」

「どうも当たっちまったみたいですな」

 ルイーズの視線にジンライが頷く。


「逃げてえッ」


 そして風音と一緒に入った弓花が弾丸のような勢いで部屋から飛び出してくる。続けて風音もダッシュで外に出る。

「ジンライさんッ、ともかく離れるよ」

 風音は空中跳びでジークを拾って突進も併用して一気に距離をとった。


「ォォオオオオオオオオオオオオオンンンン!!」


 同時に隠し部屋の中から4メートルはある巨大な牛の顔をした大男が飛び出し、そのまま壁に激突する。

「ミノタウロスだとッ!?」

 ジンライがルイーズとともに下がりながらその化け物を見る。

「何こいつ!? ミノタウロスってこんな階層に出るもんなの!?」

「そんなことあるわけないじゃない。こいつは60階層クラス。B級なら最深部近くに出る敵よ」

 風音の問いに若干余裕をなくしたルイーズの返事が返ってくる。

「チャイルドストーン持ちなの?」

『いや、あ奴ならば普通に出てくるぞ。余も連続で遭遇したときには死ぬかと思った』

 メフィルスの言葉にジークとティアラがゾッとする。あんなものがシビルアントと同じように出てきたら命がいくらあっても足りない。

「喜べ、ユミカ! カザネ!!」

 そんな中、ジンライが一人ミノタウロスを睨みつけながら、叫ぶ。

「えーと何が?」

 風音がなんのことかと問い返すとジンライは槍を構えながらこう言い放った。

「コイツを倒せば少なくともドラゴンまでの敵には通用するってことだ。深階層への予行だと思えば悪くない展開だろう?」

 その言葉にポンと風音が手を打ち、頷く。

「なるほど、そういう考えもあるよね」

「グォォオオオオッ」

 声に反応してか巨大なハルバードを持ったミノタウロスが風音に向かって走ってくる。

「ルイーズさん。ティアラとジーク頼むよ」

「何よ。こいつまでやらせないっての」

 ルイーズが苦笑しながら風音の指示通りティアラとジークを連れて戦線を離れようとする。さすがにこの化け物相手に二人を守っての戦闘は無理との判断だった。


「ブモォオオオオオオッ」


 ガシャンッとハルバードが振り下ろされ、飛び退いた風音に凄まじい風圧が当てられる。

「うわっ、おっかないなあ」

 さすがにヒヤッとする。勢いだけで吹き飛ばされそうな攻撃だ。

「ユッコネエ、頼んだ」

「にゃあああ!!!」

 風音の言葉に反応し、ユッコネエがチャイルドストーンから飛び出す。

 ミノタウロスは突然の巨大猫に一瞬驚きを見せるが、再びハルバードを振るう。

「にゃっ」

 それをユッコネエは絶妙なタイミングで避けて爪攻撃。当たりは浅いが切り裂かれた肉からミノタウロスの血が飛ぶ。風音たちの攻撃を何度もかわした直感による回避能力は健在だった。

「うおっりゃっ」

 そのミノタウロスの足下にジンライが素早く潜り込み、足に『閃』を放った。

「ブモォオオッ」

 ミノタウロスがよろめく。

「よしっ、私も」

「いかん。下がれっ!?」

 飛びかかる弓花にジンライが叫ぶ。


「ブモォォオオオオオオオ」


 ミノタウロスの叫びとともに全身から魔法光が放出される。

「チィッ」

 ジンライが槍を構えてガードし留まるが、弓花は飛び出した空中でモロに食らって大きく弾き飛ばされる。

「くあっ」

 壁に激突し弓花が苦痛の声を上げる。

「ブモォォオオ」

 そしてそれを見てミノタウロスが弓花に対し走り出す。容赦などという言葉はこのケダモノにはない。

「スキル・ゴーレムメーカー・ヌリカベくん」

 そのミノタウロスの突進を見て風音がゴーレムメーカーを発動し、弓花の前に岩の壁を出現させた。

「ブモッ」

 だがミノタウロスはそれをモノともせず頭の角で突進して破壊する。勢いがわずかに衰えた程度にしかならなかった。

「弓花ッ!?」

 だが、そのわずかな時間が腕輪の発動を可能にした。

「ォォオオオン!!」

 ミノタウロスがハルバードを振り下ろすのと同時に銀色の光が飛び出す。ハルバードが振るわれる先にあるのはただの壁のみ。目標であった弓花は強化された脚力でその場から離れることに成功した。

「銀狼ッ、出番だよ」

 そして神狼化した弓花が叫び、その影から二体の銀の狼が飛び出す。神狼の眷属たる銀狼が弓花の両脇に立ち並んだ。

「やっちゃえっ!」

 そして弓花の声で二体の銀狼がミノタウロスに向かって走り出す。ユッコネエも併せて攻撃をし、ミノタウロスがたまらずハルバードをムチャクチャに振り回す。その姿はまるで暴風、或いは筋肉で動く粉砕装置だった。

「おっかないなあ」

 風音がそう言いながらジンライに尋ねる。

「さっきのって何?」

「かなり強力な防衛魔法だ。あのクラスだと魔法が使えるんでな。まあヤツができるのはあれぐらいなんだが連発もできる」

 魔法とは魔力を用いた法則での力の発動のこと。魔術もその分類だが、魔術を用いずに魔法を使う魔物がミノタウロスなどの一部に存在している。

「ああ、あの厄介なヤツね」

 風音はゲーム中でも同じ攻撃を食らったのを思い出した。

(確かダメージを食らうと出して、体力が限界になってくると乱発してくるんだよねえ)

「スキル・ゴーレムメーカー・タツヨシくん」

 風音は少し思案した後、タツヨシくんを起動する。

「どうする?」

「こうする。タツヨシくん、ヒューマンダイブ開始!」

 頷くタツヨシくんが風音を持ち上げる。

「お、おい?」

 何事かと狼狽えるジンライに風音は「スキル・チャージ」と言い、その言葉に反応したタツヨシくんがミノタウロスに向かって構え、そして思いっきり投げつける。そのまま風音は両足を突き出し


「キィイリングレッェエエエグッッッッ!!!!」

 威力を二倍にしたキリングレッグを両足で放つ。


 ガッキィイインと激しい金属音がした後にグサッと何かが刺さる音がする。


「ブモォォオオオオオオオ」

「うわっと!?」


 ハルバードが破壊され、その破片が身体に突き刺さり叫ぶミノタウロスの前で、空中跳びで体勢を立て直し、地面に着陸する風音。

「うりゃああああ」

「うぉおおおおおお」

 その機を見逃さず、神狼化弓花とジンライ、そして銀狼たちとユッコネエが同時に攻撃する。

「ブモッ、ブモモモォォオ」

 パニックに陥ったミノタウロスは壊されたハルバードの柄を振り回しながら防衛魔法を連発する。

「倒しきれなかったかあ」

 防衛魔術の影響から離れた風音が悔しそうにそう口にする。本来であればあの一撃で倒せたはずだったが、ハルバードで防御をされて撃ち抜けなかった。

「風音、さっきのは何?」

 牽制を銀狼に任せて下がってきた神狼化弓花が尋ねてくる。

「タツヨシくんとの合体技『カザネバズーカ』、チャージプラス両足揃えてのドロップキックで威力四倍の大技だよ!」

 本当に四倍計算でよいのか怪しいが、威力は見ての通りだった。

「確かに凄まじいがどうする? あれでは近付けん」

 ジンライがミノタウロスを指す。ハルバードの柄と防衛魔法で近付くこともできない。選択はこのまま力果てるのを待つか、無理をしてでも討ちに行くか、

「いや、あれは基本物理防御だから魔術なら届くハズ」

 そう言って風音は杖を取り出す。

「随分と叩いて肉も軟らかくなったようだしあれなら斬り応え十分だよね」

(それはどうかなー)

 と弓花は思ったがさておき、


「スペル・ファイアストーム・スライサー!」


 風音がそう叫び、杖を突きつける。

 すると一瞬ミノタウロスの前に赤い霧のようなモノができたように見たが、瞬時にそれは赤い線に変わった。横から見れば線に変わったのではなく薄くなっただけで真円のような炎の刃が見えたはずだ。範囲魔術を極限まで薄くし強度を上げたカスタム魔術『スライサー』。ゆっこ姉のアドバイスでそれを高回転させて更なる強度の安定化を図っている。キュィィイインという音が響き渡った。


「いけッ」


 風音が杖を突き出すと巨大な丸カッターの刃に似たそれがミノタウロスに向かって突き進む。

「ブモォォオオッ!?」

 そして、弱ったことで対魔法防御もロクに働かなくなったミノタウロスの身体を真っ二つに切り裂いた。


「やったねえ」

 自分のレベルが上がったのを確認した風音が一息ついて座り込む。このクラスの敵と戦うのは狂い鬼以来だ。さすがに疲れた。

「うむ。見事だ」

 ジンライがそう言い、「終わったぁ」と神狼化弓花も槍をついて杖代わりにしてへたり込む。銀狼たちの具現化はすでに解いている。

「むう、スキルも手に入ったけど『マテリアルシールド』って言うのか。あれ」

 手に入ったそのスキルがパッシブスキルらしいのはありがたかった。

「何か来たときにはこれで弾けるってことか」

 風音がふんっと手をかざすと前に確かに魔力光が出て壁になった。が、すぐに消失した。

(発生は一瞬、必要魔力量は少々か。だから連発もできたんだろうけど)

 弾けるのは物理対象のみなのも注意するところだろう。魔術には効果がない。

「しかしここでミノタウロスと出くわすとは思っていなかったな」

「もしかして隠し部屋の中って魔物が潜んでいるときがあるの?」

 風音が気になっていたことを質問すると、ジンライが頷いた。

「ワシも今回初めて遭ったが高レベルの魔物がいる場合があると聞いたことがある。といってもこのペースで隠し部屋を見つけ続けるとそこそこ遭うこともありそうだが」

 ジンライのダンジョン探索時代にはここまで隠し部屋を見つけることはなかった。現在の風音の発見ペースが異常なのである。


「さてっと」

 状況が落ち着いたところで風音が立ち上がる。

「ティアラたちを探しに行かないと」

「あー、さっさと迎えに行かないとね」

 風音の言葉に神狼化弓花が頷く。

「ならばワシはここでミノタウロスの角を収穫しておこう」

 ミノタウロスの素材はその硬い角である。ハルバードもと思ったがこちらは風音が破壊してしまったし重い。

「終わったら隠し部屋の中もよろしくっ。ミノさんの裏に宝箱あったから」

 風音と神狼化弓花はジンライにその場を任せて、匂いを辿ってダンジョンの先を進んだ。

 途中で弓花は神狼化が解けた。その先に進むとルイーズとティアラとジークの姿が見えた。

「大丈夫だったんですか?」

 ジークとティアラが駆け寄り、風音が「見ての通り」と両手を広げる。ティアラがその風音をギュッと抱きしめ、ジークも釣られて一緒にやりかけようとして真っ赤になって固まった。

「若いわね」

 その横でルイーズが妙に渋い笑顔を浮かべたのを見て(やっぱり年食ってるんだなあ)としみじみと弓花は思った。失礼な奴である。


 なおミノタウロスの隠し部屋の宝箱の中身はミミックだった。戻ってきたところ、ジンライさんが死にかけながらも一人で倒していてみんなマジでビビってた。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・白銀の胸当て・白銀の小手・銀羊の服・甲殻牛のズボン・狂鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪

レベル:24

体力:83

魔力:140+300

筋力:40

俊敏力:30

持久力:21

知力:41

器用さ:25

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv2』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:二章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』


風音「ここ最近のミミックは宝箱の下からほっそい八頭身ボディがニュッて出て蹴りとかかましてくるから気をつけてね」

弓花「最近のっていうか該当するゲームがひとつしかないでしょ、それ」

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