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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
黒竜討伐編

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第七十七話 冒険者を助けよう

◎オルドロックの洞窟 第一階層 昼過ぎ


 風音は犬の嗅覚を使い、ジーク用に数の少ないシビルアントの群れを探し、ホワイトファングだけではなく剣術での戦闘も体験させた。そして分かったことは『戦士の記憶』のスキルを使った状態でのシビルアントの相手ならば充分に戦えるということだった。

 なお『戦士の記憶』に頼らず自分だけの剣術でも試させたが、切り込むまでは問題ないがシビルアントの殻を砕いたり関節を破壊するまでには至らず、逆に襲われてしまう。そのジークに襲いかかったシビルアントを風音はひと蹴りで破壊しながら(普通に白剣持たせて戦わせるしかないかなー)と反省した。後、ちょっとジークが泣き出しかかってたので「だいじょーぶだいじょーぶ」と赤子をあやすように優しく抱きしめて落ち着かせた。結果、ジークの好感度がだだ上がりしていた。


「さてと、マッピングは大体こんなもんかなあ」

 風音がマップウィンドウを開いて確認する。

「ふむ、本当にそこに地図があるのだな?」

 ジンライが風音の見ているウィンドウを見れないかと目を凝らすがやはり見れない。

「魔術のひとつっぽいからねえ。私にも理屈は分からないけど」

 そう言いながら風音はジンライ自身のマッピングの紙を見ながら、いくつか修正を加えていく。仲間にも見える用も必要で、別の視点での情報もいるかなと思ったのでジンライにはそのままマッピングをお願いしている。また、これはルイーズとティアラも交代で行なっていた。

「発見されてない隠し部屋らしきものはやっぱりないっぽいかな」

 以前に無垢なる棺を発見したときのように、オートマッピングの精密さを生かせれば他のパーティも気づかぬ隠し部屋がすぐに発見できるのではないか……と期待したが、安易な考えだったようだ。三つほど隠し部屋はあったがいずれもすでに発見された後だった。

「階を降りればここよりも広くなるし見つかっていない隠し部屋も探しやすくなるだろうが」

「こんだけ広いとちょっと自分らでコンプリートってわけにもいかないよね」

 さっさと進んだ前回とは違い、今回は試しに第一階層のマップ埋めをまじめにしていた。

「地上に上がったらやっぱり攻略済みのダンジョンマップを購入しておかない? そんで誰も行ってない場所探した方がいいと思うけど」

 弓花の提案に風音も頷く。取り敢えずは自力でやってみようと主張していた風音も徒労感を覚えていたようだった。

「まあ今日は二階層までいって、そんで戻ろっか」

「ああ、ちょっと待って」

 そこでルイーズが手を挙げた。

「なに? ルイーズさん」

「いやね。あたし思ったんだけどさ。カザネがほら温泉発見したヤツ」

「んんー、ダウジングのこと?」

「そうそれ。試してみたらもしかして隠し部屋も見つかるんじゃない?」

「はははは、まさか、そんな安易な」

 その場にいる全員がルイーズの案を笑ったのだが


 見つかりました。隠し部屋。


「爆炎球5個か」

「ああ、あのゴブリンを吹っ飛ばしたヤツだ」

 隠し部屋で見つかったものは風音が最初に魔物を倒したときのアイテムだった。

「どういうものなんです、それは?」

 爆炎球を見たことがないジークが尋ねる。

「グリモア5章クラスの範囲爆撃が出る球だよ。かなり強力なやつだね」

 風音はアイテムボックスに爆炎球をしまう。黒岩竜戦で使えるかもしれない。

「それにしても冗談で言ったんだけどね」

 ルイーズが呆れ笑いをしながらそう言った。

『しかしやって効果があるなら試すべきだろうよ』

 メフィルスはルイーズの腕の中でそう口にする。風音も「そうだねえ」と頷く。

「実際、こんな場所を見つけるのはちょっと無理だな」

 そうジンライは口にする。この隠し部屋、本当になんでもない壁の中にあったのだ。

「しかし風音の直感とその鍵のどっちの効果なんだろう?」

「大体は無限の鍵の力で細かい部分は直感でって感じかなあ」

 弓花の問いに風音がそう答える。実際にはすでに体感的に得たダンジョン情報から直感で場所を導き出して、そこから解除できるものを鍵が反応という処理が行われていた。最終的には直感で場所を見つけているので、発見のプロセスとしては直感、無限の鍵、直感という順である。


 その後は二階層に潜り、ダウジングでさらにひとつ隠し部屋を発見する。中身はコアストーンふたつ、散々取り尽くしているのでありがたみがなかったが、換金額は高いので持ち帰る。そして夕方を迎えた頃合いに風音たちはダンジョンを出た。



◎オルドロックの洞窟近辺 温泉コテージ 夜


「ただいまー。風音、これ。マップの方買ってきたよ」

 ガチャンと扉が開いて外から弓花が入ってくる。不思議な倉庫が手に入ったことで収納可能になったため風音は普通のドアを買って、それをコテージにはめ込んで使用していた。

「あんがとー」

 風音は弓花に礼を言って置かれたマップを広げる。

 この弓花が購入したダンジョンマップは実はギルドで販売しているものである。ダンジョンの入り口ではマップの情報も換金対象となっている。だが換金対象は未攻略ポイントや訂正のみで間違いがあるとギルド内での評価も下がる。本当に儲けるつもりなら未攻略階層に最初に足をつけるでもしないと旨みは少ないのだが、現状の拡大期を過ぎた辺りだと新しいポイントも多数出現するので、今潜っている冒険者にはちょっとしたボーナスみたいなものになっていた。

「以前記録したオートマッピングと比較してもふた周りほど広くなってるね」

「降りる位置は同じだからそのまま素通りも可能よ」

 風音がダンジョンマップを広げていると横からルイーズが声をかける。

「うーん。ジークを実戦で慣れさせたいんだけど。実際ホワイトファングは遠距離攻撃としては普通に使えるし下に降りても戦力にはなると思う」

 風音の言葉に裏で白剣を磨いていたジークが嬉しそうな顔をする。それを見ていた弓花がやはり子犬のようだという感想を持った。

「無垢なる棺がもう一個出れば助かるんだけど」

「まあ、あれはビギナーズラックと思っておくべきだろうな」

 ジンライの言葉に風音が若干落胆する。

「やっぱ、そっか。まあ、ジークは魔力総量はゆっこ姉譲りで多いしなんとかなるかな」

「はい。大丈夫です」

 元気よく声を上げるジーク。それにティアラが弟が褒められたかのような嬉しそうな笑みを浮かべる。

「では弓花、落ち着いたらいつものあれを頼む」

「はあ。元気ですねえ」

 今日も弓花は神狼化はしなかったのでいつものジンライとの模擬戦はやるようだった。

「明日に疲れを残さないようにね」

 風音が呆れてそう言った。



◎オルドロックの洞窟 第四階層 昼過ぎ


「三階層の隠し部屋は見つかったけど、四階層はダメっぽい」

 三階層の隠し部屋はひとつあった。中身はまたコアストーンだった。

「ないということか?」

「いや、ある程度回ってみないと発動しないんじゃないかな。四階層はエルダーキャットにディアボと続けて戦ってそのまま帰ったし」

 直感とはたんに偶発的な何かを当てるものではない。まったく情報のないところからは導き出せないようだった。

「となると上の階もまだ回っていない場所にはあるかもしれんな」

 実際風音たちが見つけた隠し部屋は通った道やその近くにあったものだった。

「かもね。けどアイテムの中身は下の方がいいんでしょ。だったらもう進んだ階を回った方がいいと思う」

「そうだな。とりあえずこの階は回ってみるか」

「そうしよう。ここは確かバロウタイガーがいるんだっけ?」

「いや。掃除が行われて正常に戻っているはずだから以前とは違ってダーツボアが出ると管理官が言っていたな」

 ジンライがそう言う。

「ダーツボアですか?」

「そうです。細身のイノシシで強力な突進を行なってきます。出会ったら受けずに避けてください」

「は、はい」

 ジンライの言葉にジークが頷く。

「猪かあ」

 風音がそう言って洞窟の奥を見る。

「んー、あっちに戦ってるパーティがいる。ちょっと苦戦気味だねえ」

「助けが必要そうか?」

「そうだねえ」

 風音がそう言い、走り出す。

「じゃあ私らもいきますか」

 弓花もそれに続き、他の仲間も風音の後を追ってダンジョンの奥に足を踏み出していった。


「うわあッ」

 ガツンっと盾にダーツボアの突進が当たり、ダッカがよろける。

「ちょっと、何してんのよダッカ!?」

「いや、こいつ。力がツエエ」

「受けるな。避けろ」

 後衛の魔術師が叫び、弓使いが何度めかの矢を射るが、ダーツボアの動きが止まらない。

「こんなことならケチらず痺れ矢買っておくべきだった」

 弓使いがそうぼやくも状況は変わらない。

 剣士、魔術師、弓使いの3人パーティはダーツボア3匹相手に苦戦していた。

「ちょっと、こっちは行き止まりじゃない。マッピングしてたのジキル?」

 魔術師が今度はジキルと呼ばれた弓使いに当たる。

「こっち側は来てなかったんだよ」

「だったら通った方に誘導するべきでしょうに」

 魔術師のマカは目の前の二人に憤慨していた。ちょうど以前のパーティを解散してツヴァーラのジランの街で集った仲間だったが初心者過ぎた。もう一人は仲間がほしいというマカの言葉も無視してダンジョンに来てみればこの有様である。仲間のフォローにまわり過ぎて魔力もろくに残ってない。まさかこんなところで自分が死ぬとは思ってもみなかった。

(連中、確か突いて引きずって死ぬまで痛めつけるタイプだったよねえ。やだなあ)

 いっそ自決した方がいいかと本気でマカが考えた時、天井から何かの影が見えた。

「えっ?」


「スキル・キリングレッグ」

 空中跳びで天井ギリギリまで飛び上がった風音はそのまま、自由降下をしてダーツボアに殺人蹴りを見舞う。「ブモォ」と言いながら地面にめり込むダーツボア。

「よしっと。む?」

 風音は次の相手をと周囲を見るがウィンドウが同時に開く。

(レベルアップに空中跳びがレベル2? スキルも増えてるか)

 『チャージ』という文字がスキルリストに現れる。

「チャージか。っていうと」

 風音の直感が閃く。

「うわあっと」

 風音が多段ジャンプで跳び上がり、立っていた場所にダーツボア同士が激突する。


「ブモモォォオ!?」

「跳べた? そうかパッシブスキル!?」

 風音は空中で驚きの声を上げる。空中跳び:Lv2は多段ジャンプのパッシブスキル化だった。


「なーに、やってんのよアンタは」

 ズドズドッとそれぞれのダーツボアに雷神槍が突き刺さる。もちろん、弓花とジンライのものである。

「おっとっと、ゴメンゴメン」

 風音はそのまま地面にスタッと降りると後ろからやってきた弓花たちに謝る。

「むっ?」

 と、風音は壁を見て「うーん」と唸った後「スキル・チャージ」と唱えてグッと構え「キリングレッグ!」と言って壁を蹴った。ズドォオンと凄まじい音がした。

「ちょっと、いきなり何してんのよ!?」

 弓花がいきなりの行動とその大きな音に驚き、非難の声を上げた。

「というか今の随分と威力が上がってなかったか?」

 そしてジンライもまた別のことに驚きの声を上げた。これはチャージの能力で風音のキリングレッグがおおよそ2倍の攻撃力を得たためである。なお、チャージはスキル・チャージの後に使用スキル名を言って発動させる。ゴーレムメーカーのプラスと同じ処理である。

「よーし、隠し部屋見っけた」

「あら本当だわ」

 ルイーズが土煙が消えた先に部屋があるのを確認する。

「よーし、中をご確認ー」

 といって一旦止まり、その場にいた三人組の方を向く。

「あ、ごめんね。獲物取っちゃってー」

 その場にいた冒険者たちは「いえ、どういたしまして」と言いながら「じゃっ」と口にする風音を呆然と見送った。後に残ったジンライがさすがに哀れに感じたのかマカたちに対し「ここにくるには能力や人数が足りんだろう」と先輩らしい助言をし、ろくにマッピングもできていなかったので帰り道もきちんと教えた。さらにダーツボアに関しては一匹は取り分として渡してから帰したのである。

 一応ダメージは与えられていたのとこちらが横取りした形であったので……ということからだが、マカらのパーティは最後まで「いいんですかねえ」と言っていた。ちなみに風音は取り分はあっちが全取りするならそれで良しと考え部屋の中に向かったのだが、まあそれはそれだ。

 そして隠し部屋の中身だが


「ジーク、ちょっと来てみて」

「は、はい」

 突然、呼ばれたジークが何事かと風音の前に寄る。

 風音は「へっへー」と言いながらジークの手を取り、腕輪をはめた。

「腕輪、ですか?」

「うん。帰依の腕輪って言ってね。放出した魔力を少し戻してくれるんだ。ホワイトファングの消費量が若干減ると思う」

 これは本来ビギナー魔術師用のアイテムだ。熟練の魔術師になると変換効率が上がり無駄に魔力を放出しないので必要ないのだが、白剣使いなどの戦士系であるのにもかかわらず魔力消費の激しいタイプには相性がよいアイテムでもある。

「よろしいんですか」

「うん。一日遅れだけど冒険者になったお祝いだね」

 その言葉にジークは顔を輝かせる。そしてはめられた腕輪を掲げて、誇らしげにそれを見つめていた。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・白銀の胸当て・白銀の小手・銀羊の服・甲殻牛のズボン・狂鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪

レベル:23

体力:80

魔力:138+300

筋力:38

俊敏力:30

持久力:19

知力:40

器用さ:22

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv2』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:二章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』


弓花「ちゃくちゃくとフラグを立てている……だと?」

風音「???」

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