表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
ユッコネエとタツヨシくん編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/1136

第六十三話 猿を退治しよう

◎アルゴ山脈 温泉コテージ前


 モーターマシラがそれを気付いたのは偶然ではなく、縄張りを見回っていたときに人の臭いを発見したためである。

 見慣れない四角い岩の塊が岩場にあり、中は空洞のようだったがどこも入れず(露天風呂部分も出るときに天井を封鎖している)、また人の気配もなかった。だが、モーターマシラはおそらく作ったばかりのそれを放置せずにまた戻ってくるであろうと考え、仲間を呼び周囲を固めていた。そしてそれは来たのである。


「フニャアアアア」

 モーターマシラは驚きの声を上げた。来たのは人間ではなく巨大な猫一匹であった。エルダーキャットの存在は知らないが、それが強力な魔物であるとモーターマシラは理解できた。

「キィイッ!」

 だが、モーターマシラはこちらに数の利があると考え、一斉に襲いかかる。強い魔物の肉は自身の力を高めてくれる。チャンスだと考えたのだ。

 ユッコネエはそうして襲い来るモーターマシラの攻撃をひょいひょいとかわしながら2、3匹としとめていく。そしてある程度の数が溜まった段階となり頃合いと見てUターンを開始した。

「キィ、キキイキイイイイイ!!」

 臆病な猫が逃げていく。それを見てモーターマシラは歓喜の叫びを上げる。逃がすな!追え!と指示を出し一斉に走り出す。

 ユッコネエは猿どもに姿を晒しながら適度に差を付けながら引き離す。そしてちょうどコテージとジンライたちの中間の距離に来たときである。猿たちの後ろから何かが飛んできた。

 それに気付かずに進んでいた猿の一匹が直撃を受け、胸に風穴があく。

「キィ!?」

 無数の何かが飛んできて二匹、三匹と食らい、そしてそれが周囲の巨木に突き刺さったことで投げられているものが拳大の石であることにモーターマシラたちは気付く。


 それはコテージ近くでユッコネエに下ろされたタツヨシくんの投擲攻撃。投げるためだけにマッスルクレイを特化させた投擲モード。ディアボの魔法障壁などは貫通させられないだろうが、魔力が込められておらずレジストも不可能な完全物理攻撃のため、モーターマシラの防御力では当たれば即死である。これは現時点での風音パーティにおける最大攻撃力といっても良かった。

 とはいえ、命中率はそれほど高くもない。コテージ側に逃げ出させないための牽制を主な目的としているため、この投擲で三匹もしとめられたのは運の良い結果といえる。さらに一匹をしとめ、二匹重傷を負わせ、そして指定通りの20発の投擲を終えるとタツヨシくんは正面に向かって走り出す。両腕にはスコップのようなナックルがついている。これは蛇腹構造ではなく、収納され兜状になっているときに底蓋の役割もしている武器である。ナックルとは言うが形状はスコップやスプーンに近く、先は刃のようになっていて、そのまま殴れば斧と同じようなダメージを与えられる。


 さて、エルダーキャットのユッコネエに誘導されていたモーターマシラたちであるが、ユッコネエが過ぎ去った林から突然4体の大盾を持った炎の騎士が登場したことで大いに慌てふためき、混乱する。4体ということもあるがそもそも全身が炎のため触るだけでダメージを負うのである。背後からの謎の攻撃で、もはや正面突破のみと突き進んでいたのだが、ここに来てそれも止められた。

 そして直後に雷撃が降り注いだ。無論、それはルイーズのサンダーストームである。幾度となく降り注ぐその雷に10匹近い猿が倒され、群れは一気にパニックとなった。

 わずかな判断力で前もダメ、後ろもダメと考え一斉に左右に走り出す。散らすように逃げ出す猿たちだが右から風音が、左から弓花が躍り掛かる。さらに風音には背後からのタツヨシくんが、弓花には正面からユッコネエが(この配置は弓花のリクエストによる)合流し、またそれぞれのフレイムナイトも分散し攻撃を開始する。

 もはや戦意をなくし、逃げまどうしかない猿たちは風音たちにとっては的でしかなく、10匹程度に減った段階で風音のスキル『フィアボイス』でだめ押しの恐慌状態に陥らせて潰走させる。風音たちの完全勝利である。


「終わったよ」

「ご苦労だったな。弓花もよくやった」

「へへ、ありがとうございます」

 戻ってきた風音たちにジンライはねぎらいの言葉をかける。

「ところでアレで良かったの? 何匹も逃がしちゃったけど」

 風音のアレとは全滅させずに猿たちを故意に逃がしたことである。

「あれでいい。前にも言ったが大概の魔物は戦闘で仲間が殺された道は忌避する傾向にある。これは殺した敵に出会わないためだ。あれだけ痛めつけたんだ。当面は人間には手を出さんだろうよ」

「そういうもんなんだ」

 風音はへぇと言う。

「ほーら、そんな立ち話はいいからとっとと戻って温泉よ」

「そうですわ。とっとと入りましょう」

 ルイーズの言葉にティアラも賛同する。

「そうだね。それじゃあ戻ろっか」

 という風音の言葉で一行はコテージに戻ることとなった。

 なお、今回で風音はパッシブスキル『身軽』を手に入れた。ますます格闘戦に特化していく風音だった。


◎アルゴ山脈 温泉コテージ 露天風呂


「よーし、ゴッシゴッシと」

 風音が全裸でタツヨシくんを磨いている。このタツヨシくんはただの人形なので特に反応は示さない。というかマッスルクレイも解除しているので動きようもない。

「大活躍だったねえ。タツヨシくん。うーん、大好き」

 マッパでタツヨシくんに抱きつく風音。なお、この大好きは600年前に死んだ人とは関係はない。念のために言っておく。

「ふぅ、気持ちいいユッコネエ?」

「にゃおん」

 風呂の中にはゆったりと浸かっているユッコネエとそれにへばりついてる弓花がいた。ユッコネエも入らないとかわいそうだという弓花の懇願に風音は最後の魔力を振り絞って風呂を広げてユッコネエも入れるサイズに変えた。お湯が貯まるのには時間がかかったが、お湯の元手はただなのでそこは気にならない。

「ふう。今日はハードだったわぁ」

「さすがにキツいですわね」

 大きいものをぷかぷか浮かせながらルイーズとティアラが口を開く。どちらも魔力切れである。実際魔術師組がここまで消費したのはこのパーティを結成して以来初めてのことだった。

「でも、ティアラの召喚術も様になってきたねえ。4体をちゃんと制御してたし」

「ありがとうございますカザネ。ツヴァーラ王家は代々召喚師の家系ですから、ここでようやく面目躍如できた気分ですわ」

 ちなみにアウディーンがディアボ襲来時に召喚をしなかったのはアウディーンがルビーグリフォンの眷属以外を呼び出せなかったためである。上位召喚体であるルビーグリフォンが敵になった場合にはそれらを呼び出すことが不可能となる。これはティアラも同様で、ルビーグリフォンに限らず上位召喚体と敵対した場合には同属性の下位召喚体は呼び出せなくなるというのが召喚術の原則となっている。

「慣れてくれば消費量も減るし、能力も上がるわ。ともかく使い続けることが大事よね」

 そうルイーズが締めくくる。


 その後交代でジンライ(メフィルスは魔力切れで召喚できなかった)ひとりで入ることになり、その広さに落ち着かない気分で浸かっていたという。あとちょっと泳いでた。


 そして一行は次の日に再度グレイゴーレムを狩り、計38個のコアストーンを入手。その夜は再度温泉コテージに泊まり、さらにその翌日にコンラッドに、翌々日にはウィンラードへと戻り、ギルドに依頼達成を報告。ティアラのランクC昇格も成った。

 報告の翌日、指名依頼の依頼者が予定よりも大幅に多いコアストーンをすべて通常よりも高めに買い取ることで同意し、併せて約20000キリギアの報酬が手に入る。これにより風音たちは200万円相当のボロ儲けとなった。


 しかし今回、問題は一点だけあった。ある噂が街中を飛び交っていたのである。


◎ウィンラードの街 ジンライ道場


「ワシが、複数の女を連れて露天風呂巡りに行っただと? そんな噂が流れていると?」

 ジンライが愕然としてその噂を再度風音に尋ねる。

「うん、マジで。幼女に弟子、お嬢様、お姉様の色とりどりの美女を連れて温泉旅行してたって。ジジイハーレムとか言ってた」

 そう口にする風音の目の前には縄で縛られ袋叩きになったギャオがいた。

「こいつが」

「しーましぇーん」

 頬を腫らしたギャオが弱々しくそうつぶやく。

 なんでもルイーズを連れて旅立ったジンライに嫉妬したギャオがあることないこと吹聴しまくっていたらしい。

「えーと、それじゃあ私はコレでね」

 とりあえず自分の分はボコにした風音は最大被害者のジンライにギャオをおいて道場を出ていく。

「えー、えーと」

 ギャオは恐る恐るジンライを見る。

 同じ街にいるとは言え、ギャオにジンライとの接点はない。牙の槍兵と呼ばれている凄腕の冒険者……というぐらいしか知らない。だが、風音たちといるところは何度も見かけてるし、良い人だという話も聞いている。だからちょっと謝れば許してくれるかな〜と顔色をうかがったのだが


「ッ!?」


 そこには鬼がいた。

「ギャオ……だったな?」

「ひゃ、はいいい!?」

 聞くものに反対を言わせない絶対的な力のこもった言葉がギャオの耳に届く。

「少し頭冷やそうか」


 翌日、街中で会う人全員に挨拶をして回る目の綺麗な獣人の姿があった。

 メロウが冷や汗混じりに「どうしたの?」と聞くと「心を入れ替えました」と返ってきた。その後もゴミ拾いやボランティアなどを積極的にギャオは行なっていたが一週間ほどで元に戻った。矯正は失敗したようだった。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・白銀の胸当て・白銀の小手・銀羊の服・甲殻牛のズボン・狂鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪

レベル:22

体力:77

魔力:132+300

筋力:33

俊敏力:27

持久力:17

知力:34

器用さ:20

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』

スキル:『ゴブリン語』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv2』『突進』『炎の理:二章』『癒しの理:二章』『空中跳び』『キリングレッグ』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』


風音「というかさ、ジンライさんの噂って嘘ではないよね」

弓花「そういやそうね」

風音「ちなみに『身軽』は常時発動のパッシブスキルで文字通りの能力だよ」

弓花「そろそろ職種を魔法剣士から何か別のに変えたら?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ