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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
狂者達の宴編

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第三百八十七話 合流をしよう

◎ミンシアナ王国 カザネ魔法温泉街


「うーん、37棟か。今回はこれで打ち止めだね」

 デンと立ち並ぶ家々を見ながら風音がそう口にする。

「まあ、カザネ様には共同宿泊所も用意してもらいましたし、当面の問題はございませんわ」

 風音の言葉にマッカがそう返す。ここまででも十分に驚異である。前日まではここは更地どころか、まったく手つかずの土地であったのだ。一軒家をこの数造ってしまうこともトンでもないことではあるが、ゴーレムメーカーによる整地だけでも十分に有用なスキルであった。

 そして風音が打ち止めと言った通り、家造りは領主様の一身上の都合によりいったんストップである。もっとも出来た一軒家は二階建てで内部の仕切りもなく、二家族か三家族で共同で使用すればひとまずは行き渡る。

 他の人間は風音が追加で用意した共同宿泊所で過ごせば当面は問題もない。この共同宿泊所は、住居と言うには簡素すぎる四角い箱ではあるが、四方にドアを付けて、かまどやベッド台も複数用意し、水晶化で造ったガラス窓もあり、換気窓はあるが隙間風が吹かないような構造にもなっている。その建物は現在のウーミンからやってきた住民の家ナシの状態から考えれば、十分すぎるほどの機能を持っていたのであった。


「いやぁ、元々うちらぁ、あばら屋でもやってけますんで気にせずにいってくだせぇ。お仲間のピンチなんでしょう?」


 そう口を開いたのは、ウーミンの元アウターで、唯一生き残ったアウターファミリーの頭だった。名をヤマルと云い、ウーミンのアウターファミリーでは唯一ブラックポーションの売買から外されていたために無事だった男である。

 そのヤマルが「そうだな、みんなッ!」との後ろに控えていた元アウターたちに声をかけると、その場の男たちも「応っ」と声を揃えて返してきた。今では彼らもヤマルを中心に警護団や作業員の一員として、カザネ魔法温泉街に組み込まれている。しかしその彼らを見てカザネの気持ちは微妙なものになっていた。


(おかしい。私は街の領主様になったハズなのに?)


 何故か、山賊の親分になった気分である。


 なお、現在の状況ではあるが、弓花たちからザウルス系の竜であるブルートゥザ討伐の話を聞いた風音はその討伐に向かうことをすぐさま決めていた。

 せっかくの戴冠式、祝いの場だ。その舞台の裏で悲劇など起こって欲しくはないし、何よりティアラの成長を伝える良い土産話にもなるだろう。

 もっとも、家の建造の続きとヒルコの治療も順次行うことを考えると戴冠式までは非常に過密なスケジュールとなりそうだが、毎日直樹の『帰還の楔リターナーズ・ステイカー』で移動すれば、なんとかなるかと風音は考えていた。


「そんじゃあ、ヒポ丸くんたちも『大型格納スペース』に収納したし、直樹もタツオも準備はいい? ユッコネエは繭忘れちゃ駄目だよ」


「おうよ」『はいです』「にゃー」


 風音の言葉に各員返事をすると「そんじゃしゅっぱーーつ」という風音の言葉と共に、直樹がアーティファクトを発動させて風音たちの姿は光と共に消えていった。


「……消えた」


 その様子をその場にいたマッカ、ヤマル、キンバリーたちが呆然と見ていた。事前に話には聞いていたのだが、それでも信じられなかったのだ。

 単一属性魔術『転移』は本来、人の身では使えないはずの魔術だ。それは悪魔や精霊のように己の属性を一つに固定することが可能な種族だけが行える特殊な魔術なのである。その、この世界の非常識を目の前で見せられたマッカたちは知らされてなお唖然とせざるを得なかった。

 なお、この『転移』術は直樹以外には『帰還の楔リターナーズ・ステイカー』が使用できない以上、盗まれる心配はない。

 その能力を知った誰かに利用される可能性も今の風音たちの立場を考えれば低いだろうと思われた。何より、今後も頻繁に『帰還の楔リターナーズ・ステイカー』を利用して魔法温泉街に戻ることを考えれば、マッカたちには知っておいてもらう方が良いと判断して見せることにしていたのである。


 ともあれ、風音たちは去った。そして行き先は当然弓花たちの元である。



◎トルダ温泉街 ルイーズホテル


 時刻は弓花のウィンドウの時計では20時を回っていた。

 この世界の基準では、そろそろ布団に入って寝る時間ではあるが、白き一団の面々は全員が一カ所に集まって、踊り続けるクリスタル風音ちゃん人形の前でリーダーたちの到着を待っていた。


「ずっと踊ってるわね」

「かわいいですわねえ」


 呆れたような表情の弓花に対し、ティアラはいつまでも目をきらきらしてその踊りを見ている。パパンがパンとさきほどからクリスタル風音ちゃん人形は踊り続けていた。まるで主が来ることを見越したように踊り続けていた。


「あ?」


 そして、その踊りが最高潮になったとき、クリスタル風音ちゃん人形に刻まれていた刻印が光り出したのである。


「いよいよか」

「だわね」


 ジンライの言葉にルイーズが頷く。やがて刻印からは眩い光の柱が浮かび上がり、その中から4つの光の玉が飛び出し、次第に別の形を取ってゆく。


 それはやがて人や猫や竜、つまりは風音、直樹、ユッコネエにタツオへと変わっていく。


「ほっと」「うぉっ」「にゃー」『おお、凄いです』


 そして光の塊だった風音たちが完全な形になるにつれて魔力光は消えゆき、光が消失したのと同時に宙に浮いていた転移組はゆっくりとその場に降りたったのだった。


「おっひさー」

 そして体中に纏わり付いていた魔力光が消えてゆくと風音は、久方ぶりの仲間たちに向かってグッと親指を突き立てて挨拶をした。

「はいはい。久しぶりー」

 相変わらずな親友に弓花が力が抜けて手を振っている横で、ティアラが飛び出して風音に抱きついていた。エミリィとライルも直樹に駆け寄っている。


「なんとワシのための繭だというのか」

「にゃ、にゃー」

「おお、なんというヤツだ。ユッコネエ、ワシは嬉しいぞ」


 そしてジンライはユッコネエと会話をしていた。長年の経験により洞察力が極限まで高められていたジンライはユッコネエの云いたいことが分かるようである。


「ああ、やっぱり全員揃ってる方がいいわね」

 その様子を見ながら呟いたルイーズの言葉には弓花も頷いた。

 ここ一週間の旅は確かに悪いものではなかったが、物足りなさも感じていた。そして、その原因がここで明らかになった。やはりこのチンチクリンな親友がそばにいてこその白き一団だと弓花は改めて認識したのである。


 なお、直樹については微妙だと弓花は思っていた。というか、もうどっちかとくっついてくれれば自分の負担も減るんじゃないかなと半ば本気で考えていたが、こればかりは当人同士の問題であり、弓花も口を出す気はない。というか出しても悪い方向にしか話が進まない気がした。ちなみにルイーズはあれから3ヶ月経つが何も問題ないそうで直樹のエクスカリバーは不発だったようである。


「そんで、話を弓花から少しは聞いたけど、実際どんな状況なの?」


 そして久方ぶりの再会の後、互いの近況を話し終えると風音がそう尋ねた。ブルートゥザが5匹出てきて倒さないと周辺の街が危険だとまではメールで聞いてはいたが、魔物の状況についての詳しい話を風音は知らない。

 それにはルイーズも「ちょっと待ってて」と言いながら、ホテルの従業員に地図を持ってきてもらい、テーブルの上に広げた。そして、まずはどこにいるかの説明を始める。


「ええと、トルダ温泉街がここで、オルドロックの街がここ、ジランの街がここね」


 そう、指を指しながらルイーズは風音に説明していく。

「問題の森はここのユイヘサルの森ね。さらに奥のセラバル森林群は闇の森をいくつか抱えてる場所でね。時折、強力なのがやってくることがあるのよね。とはいっても今回のはかなりの大物で、そうそうある話じゃあないけどね」

「今回の敵はブルートゥザか。森の中だとちょっと厳しいね」

「突進する相手なら遮蔽物の多い森の方が良いんじゃねえの?」

 ライルが挙手してそう尋ねる。ハイヴァーンは森林の多い土地で、巨体でパワーでぶつかってくる敵にはライルたちは森のなかに入ってかき回す戦法を取ることも少なくなかった。だが風音は首を横に振る。

「こいつに限って云えば、それはあまり意味がないんだよね」

「あれはパワーが強すぎて木々など気にせずになぎ倒すからな。むしろ、ワシらが足を取られる分、追いつめられやすいのだ」

 風音の言葉にジンライが同意する。その言葉にライルが眉をひそめた。

「そりゃすげえ怪力だな」

「地力は地核竜を遥かに上回る。それが5体。なかなかの相手だな」

「でも雷神砲レールガンで撃てばどうにかなるんじゃないかな? 相手も巨体なら命中力低くてもそこそこ当たると思うけど」

「正面からでは雷神砲レールガンですら威力は期待できんだろうな」

 エミリィの言葉には、ジンライはそう答える。

「ブルートゥザの盾は強固なだけでなく反発特性があるからねえ。あれの素材だけでも相当な額になるみたいだよ。盾や鎧、大斧とかも作れるんだったかな」

 風音は自分の記憶を思い出しながら、そう答える。

「一体だけなら雷神砲レールガンを集中的にぶつければいけるかもしれないけど、5体となると厳しいね」

 そして、そう付け加えた。つまり雷神砲レールガンの連続砲撃だけで倒すのは難しいということである。

「結局のところ、盾のような頭部の骨格の後ろ首より下を狙うしかないんだよね。まあそれが難しいんだけど」

(あれには私も何度も死んだよなあ)

 弓花は元の世界の、ゼクシアハーツをやっていた頃を思い出す。結局、弓花の操るアーチでは首より後ろのダメージの通りやすい部分まで攻撃が届かず、いつも殺されていた。

「そんで、戦力としてはどうなの? 私たち以外はいないわけ?」

 それはそれで当然の問いである。そして、その風音の問いにはジンライが答える。

「ツヴァーラ軍は現在街周辺の警戒で離れられんのでな。冒険者のランクAが2組。Bが1組ついてくる予定だ」

「少ないね。絞った?」

 風音の言葉にジンライが頷く。

「犠牲を前提に考えればランクBももっと呼ぶんだがな。いらんだろ?」

 ブルートゥザは突進が強力な魔物だ。数を揃えてまとめて巻き込まれれば一大事になりかねない。風音たちはここまで常に少数精鋭で挑み、犠牲を抑えて戦ってきている。それは今回も同様で行くつもりだった。


「それにしてもな」

 ジンライたちとクエストの確認と戦いの手順を話し合っている風音たちの様子を直樹は外から見ながら呟いていた。

「なんだよ、ニヤニヤして」

 ライルが久方ぶりの親友がニヤニヤと姉を見ているのを見て、思わず尋ねる。後ろめたいことがあれば普段ポーカーフェイスを装う親友が普通に笑っているので(ああ、気持ち悪くない方の笑いだな)と判断したのであった。


「いや、ここしばらくは姉貴のあんな活き活きとした顔見てなかったなと思ってさ」

「そうなのか?」


 ライルの問いに直樹は深く頷いた。誰かのために頑張って動いている姉も嫌いではないが、しかしあまり楽しそうとも思えなかった。翼を封じられた窮屈さを感じていたのだ。やはり、こうしている姉を見ている方が良いと直樹は感じていたのだった。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王・解放者リベレイター・守護者

装備:杖『白炎』・ドラグホーントンファー×2・竜喰らいし鬼軍の鎧(真)・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・白蓄魔器(改)×2・虹のネックレス・虹竜の指輪・天使の腕輪

レベル:39

体力:155+20

魔力:363+520

筋力:78+45

俊敏力:80+39

持久力:44+20

知力:75

器用さ:53

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』『ラビットスピード』『フレアミラージュ』

スキル:『キックの悪魔』『蹴斬波』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv4』『イージスシールド』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感:Lv2』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き:Lv2』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』『スパイダーウェブ』『ワイヤーカッター』『柔軟』『魔力吸収』


弓花「おひさ〜」

風音「つっても毎日メールでやりとりしてたけどね」

弓花「まあね。それ言うとゆっこ姉とも、あとあんたはナーガ様と毎日やりとりはしてるんだよね」

風音「うん。旦那様はシャイだから基本返事は少ないけど、ちゃんと私のことを考えて送ってくれるんだよね。最近だとタツオも食事がそろそろ出来る時期だし、そのメニューをどうしようかって話題が続いてるよ」

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