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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
マネーの黒豚編

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第三百七十四話 光を当てよう

「突撃!突撃ぃぃい!!」


 やけくそのようなルガー軍団長の叫び声に従って、リンドー王国軍の約1000名の兵たちが次々とオドイートリーチの群れに突撃していく。

 どこか狐につままれたような顔の兵士たちではあったが、現在の状況は一刻前に比べれば奇跡が起きたとしか思えないような、彼らにとって有利な形へと変わってきていた。

 オドイートリーチの群れは、さきほどの風音のメガビームや魔王の威圧、そしてジンライの雷神砲レールガン等によって、もはや統制を失い、その動きを大きく鈍らせていたのだ。そして風音が魔物たちのボスであるジャイアントマナイートリーチを引き受けているために、魔物たちは態勢を立て直すこともできず、その動きが散漫になっている。

 そんな戸惑い続ける魔物たちなど、日頃鍛え上げた兵士たちにとっては絶好の獲物だろう。だが、彼らは決して気楽な気持ちで戦えているわけではない。さきほどの雷神砲レールガンショックと、現時点においても魔物たちの先から押し寄せてくる異常な威圧プレッシャーを受けており、とても楽観していられる状況ではなかったのだ。


 そして、そんな魔物たちとの戦いの中でも一際目立っていたのが、最前線にいるSランク冒険者の男と化け物たちのパーティだ。二槍を振り回す男と骸骨戦士、巨大なリビングアーマー、さらには巨大な骸骨の集合体が、オドイートリーチを狩り続けている。その後衛には、これまたリビングアーマーらしき鎧たちが、投擲を行い、また健気に投擲用の岩を手渡し続けている鎧もいた。


 無双状態で戦い続けるその集団に、兵たちは決して近づこうとはしなかった。先ほどの圧倒的な破壊力。そして見れば分かる個人としての武力、集団としての戦闘力を前に、兵たちは巻き込まれまいと戦々恐々としながら離れて戦っていたのである。


 もっとも全体的に見れば討伐は順調に進んでいる。ルガー軍団長の指揮の元、リンドー王国軍は気力を振り絞って進軍し続け、魔物の群れを駆逐し続けていった。



  **********



 そして、ジンライたちがオドイートリーチを狩り続けているさらにその先、強力な威圧プレッシャーが放たれ続けているオドイートリーチの群れの中心の上空では一匹のドラゴンが魔物たちへとブレスを吹き続けていた。


「にゃああああああ!!!」


 それはドラゴンとなったユッコネエのブレス。そのブレスの正体は光り輝く高温ガス。太陽属性のドラゴンからという非常に珍しいが絶対に受けたくはないブレスが、風音たちの周囲にいるオドイートリーチを焼き尽くしてゆく。

 魔生石を得て進化したユッコネエは風音のスキルを使用することができる。しかし、それはただコピーというわけではなく、ユッコネエの特性に沿った能力を発現する。それがこの黄金の水晶竜化であった。

 

『ヴベバァァァアアア!』


 対して、声なのかよく分からない叫びをあげながら黒い巨大なヒルが、配下のオドイートリーチたちを風音たちに特攻させ続けている。


「グォォオオオオオオ!!」


 しかし、風音の前にいるのは、狂い鬼と23体のダークオーガの群れである。その黒い筋肉の壁の前では、オドイートリーチの攻撃など効くはずもなく、オドイートリーチの固有能力である体内魔力オド吸収も、オーガたちの耐性を前に意味をなしてはいない。さすがに全身くまなく食いつかれれば別だろうが、この暴力の化身たちが大人しくしているはずもなく、文字通りにオドイートリーチたちは蹴散らされ続けていた。


「にゃあっ」


 そして、ブレスを吐き続けたことで魔力の底が尽きたユッコネエが猫の姿に戻って風音の元に降りてきた。竜体化そのものはコストパフォーマンスは悪くないのだが、ブレスの消費魔力は高い。ユッコネエの魔力ではブレスを吐き続けるのは厳しいようだった。


「お疲れ、ユッコネエ」

「にゃー」


 魔力切れで若干億劫そうなユッコネエではあったが、風音に声をかけられると、まだやれると胸を張った。そして、狂い鬼に負けていられないと鼻息粗くして、前へと出る。そのユッコネエの心意気に風音も笑みを浮かべながら状況を注視する。


(さてと、あの黒いのを倒さないことには、勢いが完全に切れることはないみたいだね)


 風音は目を細めて、目の前の魔物の壁を睨んだ。さきほど姿を見せた巨大黒ヒルの『ジャイアントマナイートリーチ』はこのヒルたちの壁の先にまた隠れてしまっていた。さきほどから突破を試みてはいるが、なかなか先に進めないでいるのだ。

 そして現在風音は、全力で『魔王の威圧』を放ち続けていた。実はその影響で離れて戦っているリンドー王国の兵までもが何人か倒れていたりもするのだが、しかし風音たちが魔物たちの中心で生きているのは、そしてリンドー王国軍が楽に魔物を狩れているのはひとえに『魔王の威圧』によって元凶である巨大黒ヒル『ジャイアントマナイートリーチ』の支配力をここで抑えているからにほかならない。

 そうでなければ、物量によって風音たちは押しつぶされ、リンドー王国軍の情勢も今よりも遙かに悪い状態になっていただろう。


「よし。やっぱり一気に崩すしかないか。ユッコネエ、今から狂い鬼のところにいって連携でぶっつぶすよ」

「にゃ、にゃー!」


 風音に狂い鬼との連携を告げられたユッコネエは若干の抗議の声を上げる。それは自分と風音の連携だけでいけると言いたいようではあったが、風音はユッコネエの頭を撫でながら、諭すように言った。


「仲間だからね。いっしょにやろっ!」


 現状、狂い鬼だけではオドイーチリーチの壁を抜けるのは難しい。かといって風音とユッコネエだけでも厳しいだろうと風音は見ていた。ここを抜けるには三位一体での連携が必要だと判断する。


「うー……にゃぁ」


 そして、その風音の言葉にはユッコネエも従うしかなかった。主を困らせたいわけではないのだ。自分の我が侭で台無しにしたいわけでもない。

 そしてユッコネエも意を決して風音と共に前線で戦っている狂い鬼に向かって走っていく。オドイートリーチの壁を抜け、ジャイアントマナイートリーチを倒すために。実力で風音の隣にいることを示すために。



  **********



 そうして街の外の戦場で風音とジンライたちが暴れ回っている頃、街の中ではフライの魔術でフーネと直樹が飛び回っていた。


「フーネ、今度はこっちだ!」

「うん、分かったよ。直樹のために私がんばる!」


 地図を見ながらの直樹の指示にフーネは従い、『天よりの光ヤコブズラダー』を道に並び立つヒルコたちにかけてゆく。


 それをスラム街から歓楽街へとヒポ丸くんで追いついた弓花が苦虫を噛み潰したような顔をして見ている。口からは「キモいわーキモいわーマジキモいわー」と声が漏れていた。その横でティアラが首を傾げながら弓花に尋ねる。


「あれ、カザネですの?」

「違うけど、真似てる。キャラクターメイキングに38時間かけたって言ってたな、あのバカは」


 そんなことを話している弓花とティアラの横では水晶馬に乗ったエミリィとライルがふたりで話し合っていた。


「確かフーネタンってナオキは言ってたけど、カザネに似てるのはナオキの一族のご先祖か何かだからかな?」

 もやもやしたものを抱えながらのエミリィの問いにライルは首をひねりながら答える。

「さあな。まあ、顔が似てるってことは血筋が繋がってるってえことなんだろうけどな。直樹の婆さんかもっと前のご先祖さんなんじゃねえのかな。けどなんつーか、イタそうな女だな」


 ライルはフーネの言動と直樹への接触具合がどうにもキツいなーと思いながら見ていた。あまりキャピキャピしているのはライルの好みではない。

 そしてエミリィとライルの会話の中で出てきたように彼らの認識からすれば、人の召喚体というものは基本的には英雄霊か先祖霊などを呼び出すものというのは一般的な見方である。そして直樹が呼び出したフーネ『タン』という召喚体が直樹の姉の風音のそっくりさんであるならば、必然的にそれは先祖霊だろうという結論になっていた。


(でも、ナオキもデレデレし過ぎ。お婆ちゃん子だったのかしら)


 エミリィの脳は相変わらず真実にフィルターをかけているようである。


 もっとも、そんな風に話している弓花やエミリィたちも、今は回復した人たちの救助の指示という作業が残っている。

 周囲に散らばってヒルコの対応に当たっている冒険者に声をかけ、そしてヒルコから戻って倒れている人々の救助をお願いしていくのである。スラム地区ではすでに民兵団が中心となって、救助作業に当たっていた。


 だが、その中でもルイーズは作業に参加せず、フーネの『天よりの光ヤコブズラダー』を決して見逃すまいと見続けていた。


(やはり、効果に差があるわね。浸食率の問題か、時間か、耐性か……相性ってのは大きいのかも)


 やはり英霊フーネの『天よりの光ヤコブズラダー』であっても回復率100パーセントとはいかない。だが、それでも確実な安らぎはもたらすのだろう。ヒルコたちがまるで救いを求めるように、フーネに向かって走ってくる。そして回復しなかったヒルコも、その場で分解し消失はしていくのだ。

 それは負の想念となって悪霊のように存在し続けるよりはずっとマシな結末だろうとはルイーズは思う。


「クソッ、タイムリミットが迫ってる。フーネ、そこの一通りを治したら、後は中央までひとっ飛びだ」

「うん、私やるよっ!」


 キンキンと響く声でフーネはナオキにそう返し、5本目のマナポーションを飲み干す。タイムリミットは後3分。残り時間でどこまで救えるか、それが問題だった。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王・解放者リベレイター

装備:杖『白炎』・ドラグホーントンファー×2・竜喰らいし鬼軍の鎧(真)・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・白蓄魔器(改)×2・虹のネックレス・虹竜の指輪・天使の腕輪

レベル:38

体力:152+20

魔力:340+520

筋力:72+45

俊敏力:78+39

持久力:43+20

知力:75

器用さ:51

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』『ラビットスピード』『フレアミラージュ』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv4』『イージスシールド』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感:Lv2』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き:Lv2』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』『スパイダーウェブ』『ワイヤーカッター』『柔軟』『体内魔力オド吸収』


弓花「残り一話で戦いも決着かな」

風音「あー、今回はしんどかったなぁ」

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