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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
マネーの黒豚編

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第三百七十一話 分担をしよう

 風音が疲れ果てた仲間たちの元に駆け寄ると、弓花はリザレクトの街以来のションボリモードになって体操座りをしていた。しかし風音の姿を見た弓花は気を取り直して立ち上がった。


「ああ、風音。おかえり。ちゃんと戻ってこれたんだ」


 風音が先ほどの光景を見ていたとは気付いていない弓花は、何事もなかったかのように、そう返した。さすがに顔の強ばりは隠せないが、その場にいる全員が、元凶もすでに消滅していることもあって、ともかく勝ったことだけを喜ぼうとひきつって笑っていた。

 爆弾を抱えて延々と自爆特攻を行った誰かの召喚体のことなど、一刻も早く忘れるに限るのだ。いや、もう忘れた。


「おや、全員揃って……いや、ナオキたちがおらんか」


 そしてその場にジンライも戻ってきた。


「あれ、ジンライさん。どこに行ってたの?」

 風音も空気のおかしな相手よりも平常運転のジンライの方が話しやすいと見て、そう言葉を返した。それにはジンライも多少考えた後で風音に返す。

「うむ。厄介な敵がおったのでそれを受け持っていたのだが、逃げられてな」

「逃げられた?」

「まあ、仲間が全滅したんで撤収せざるを得んとかいっておったがな」


 そうジンライの言葉の通り、オールドジンライはすでに退却していた。

 悪魔二体撤退に、しもべのドラゴンが消滅してもジンライとの決着を優先したかったオールドジンライではあったが、しかし仮初めとは云え、主の悪魔が去った以上はオールドジンライも物理的な制約でその場に留まれなくなったようだった。


「まあ、いい。ユミカ、あのドラゴンを相手におまえたちも良くやったぞ」


 ジンライもそうやって弟子を褒めることも忘れてはいなかったが、対してのユミカの顔は冴えない。そのことにジンライが首を傾げるが、風音は気にしないことにして全員を集めて状況の確認となった。


 まず今回の件の首謀者は七つの大罪のエイジとジルベールであること。そしてそのふたりは風音と直樹たちですでに追い払っていることを風音は全員に告げる。アングレーやザックスたちは七つの大罪を知らなかったが、だがブラックポーションが広まったことに悪魔が関与していることには気付いてはいたので、特に疑問を挟むこともなく、風音の言葉を聞いていた。


 ジンライはそれに付け加えて悪魔の配下であった男も去ったことを告げる。そして当然ユミカたちによりドラゴンも倒され、現時点においては、黒幕と見られる中心人物らは全員が街から撤退しているようだった。


 そして残りの問題は、街の外から迫ってきているオドイートリーチの群れと、街の中の悪魔ヒルコの暴走ではあるのだが……


「街の外には私とジンライさんで行って手助けをしてくるよ」

「あら、ふたりだけ? あたしたちはそっちはいいのかしら?」

 風音の言葉にルイーズが質問をする。場合によってはルイーズもジャッジメントボルトで数を減らすことも出来る。

「んー、ルイーズさんは直樹たちと一緒に、ヒルコの方の対応をお願いしたいんだよね」

「ナオキと?」

 風音の言葉にルイーズが首を傾げる。ヒルコへの対応で、直樹の名が出たことの意味が分からないようだった。

「直樹の召喚する英霊なら、ヒルコ化を元に戻せるかもしれないんだよ。まあ確実ではないんだけど」

「そんなことが……」

 半信半疑のルイーズだが、風音はそのルイーズにではなく、弓花に対して声をかける。

「弓花、ゼクシアハーツのメインシナリオの中盤で街の人が魔獣に変わるシナリオがあるのを覚えてる?」

 そう言われて弓花も自分の記憶の中のゼクシアハーツの内容を思い出していく。

「えーと、攻略本を見ながら進めたんでうろ覚えだけど、生命樹の聖水を振りかけて元に戻すシナリオだったっけ?」

「そう。ヒーラーの系統だと、生命樹の聖水を使わずに『天よりの光ヤコブズラダー』ってスペルを覚えて直す追加シナリオがあるんだけどさ。まあ、メインをクリアしてれば修得してるイベント用スペルなんだよ」

 ルイーズも会話の内容まではあまり把握できていないが『生命樹の聖水』『天よりの光ヤコブズラダー』のどちらも名前だけは知ってはいる。後者のモノはすでに失われた魔術で、悪魔狩りが数百年躍起になって探しているものだった。


「じゃあ、それを使えばヒルコ化してる人を助けられるってんですかい?」

 話を聞いていた冒険者のザックスが横から声をかける。

「多分。だけど、直樹がそれを召喚できるのは10分だけだよ。変化した全員を救うことは出来ないし、確実に治せるわけでもない。倒したヒルコも同じくね」

 風音の言葉にザックスが苦い顔をする。ここにいたるまでにヒルコとなった人間を何度も手に掛けている。

「すでにヒルコで固定されてれば終わりだし、次に呼び出せるのは当分あとになるから10分で出来るだけ救わないといけない。これは人助けではあるけど、今生き残ってる人を護るために数を減らすことを優先しないと駄目なんだよ」

 リーダーであるが故に風音はそう断ずる。胃が痛くて口の奥から酸っぱいモノがこみ上げそうな感じではあるが、決断の遅れはより多くの犠牲を生むことは今も遠隔視で状況を確認中の風音には分かっている。


 その後ろではアングレーとオウギがボソボソと話している。


(今の言葉の意味が分かるか?)

(ええ、もう50年は前のことですが、ワシはそのシナリオを進めてる途中でしたからな。しかし10分で街を網羅するのは難しいですな。街の地図はお持ちですか?)

(ふむ。そうか)


「カザネさん、私が街の地図を持っておりますがご入り用ですかな?」

「ああ、是非とも」


 そしてアングレーの差し出した地図を広げ、風音は遠隔視で俯瞰的に見た状況を元にペンでヒルコの分布図の印を付ける。


「多いのは東南のボロボロの建物が多いところと、後は変に派手な建物の多いところ。それと中央のこの先にある領主の館周辺が避難してる人に寄ってきてヒルコが集まってる。アングレーさんの屋敷の周囲にも多いけど、こっちはブラックポーションから発生したモノのようだから置いとくね」

「回収してたのを纏めて管理してたのがいかんかったんですかなぁ。これからはそれも考えないと」

『面倒な話だねえ』

 嘆息するアングレーの頭の上にいる白猫エリザベートがそう口にする。


「うーん。状況は分かったけど、一度で良いから領主の館内に英霊を立ち寄らせてもらえる?」

 地図を見ながらルイーズが難しい顔をしながら風音に聞いた。

「いいけど、なんで?」

「ザックスたちに聞いた話なんだけど、まだヒルコ化してないけど危険な状態の人たちもいるらしくてね。今は隔離されてるのよ。伝説の『天よりの光ヤコブズラダー』なら多分、その人たちを確実に治せると思うの」

 その言葉には「それなら」と風音も頷いた。

「んー、了解。直樹はまだ召喚院にいるみたいだから、弓花のチャットと連携をとって、ルイーズさんの一番良い方で動いてもらえれば良いと思う。あっと、弓花?」

「なによ?」

「これマナポーション。手持ちだと4本しかないけど直樹に渡してくれる?」

 そう言って風音がアイテムボックスからマナポーションを取り出した。

「良いけど何に使うの?」

「直樹の英霊フーネのレベルは120くらいだけど乱発すればすぐに魔力も枯渇するだろうし回復手段は必要だからさ。道具屋に在庫があるかどうか探って、あればそれも渡しておいてほしいんだ」

「ん、了解。じゃあ、急いだ方が良いね」

 そう言って弓花はウィンドウを開いて直樹に連絡を取り始める。

「それじゃあ、ザックス。あなたたちは領主の館に行って、ヒルコ化しそうなのを集めさせてもらえる?」

「はい。了解です。それで街の人間救えるんなら是非に」

 ルイーズの言葉にザックスとその仲間たちが頷いた。絶望の中で見つかったようやくの光の筋だ。逃す気は当然ない。そしてソレを聞いてアングレーも口を開いた。

「オウギ。お前も領主の館へは一緒に行ってやれ」

「良いのですかな?」

 オウギの問いにアングレーが頷く。

「領主のモーラントとはお前も知己だろう。滞りなく話が進むようにしておいてくれ」

「して、アングレー殿はどちらに?」

 オウギのさらなる質問には、アングレーは風音たちを見る。

「私はカザネさんとジンライ殿と一緒に外に行こう。外の兵と連携をとるなら仲介役も必要だろう」

『護衛ならあたしがいるから大丈夫よん』

 フリフリとしっぽを振りながらエリザベートがそう言う。その言葉にオウギも頷く。

「なら任せましょう。風音さん方もソレでよいかな?」

「うん。そうしてもらえるなら願ったりだね。ユッコネエも良い?」

「にゃー」

 アングレーの身体はまん丸でかなりの重さだが、今のユッコネエならば問題はなさそうだった。サイズこそ以前よりも多少大きくなった程度だが、金毛に六又となり、貫禄も出ているようにも思えた。

「ユッコネエもまた随分と美しくなったな。ふ、触れても良いかユッコネエ」

「にゃにゃー」

 ユッコネエの許しを得て、ジンライはユッコネエに抱きついた。オールドジンライとかそんなものよりもユッコネエである。確かにパートナー解散とは言ったが、もふらぬとは言っていない。そしてジンライは己の桃源郷へと旅立っていくのであった。


「それじゃあ私とジンライさんにアングレーさんとエリザベートは外。弓花、ティアラにルイーズさんは一度召喚院で直樹と合流後にヒルコ対策。ヒポ丸くんならすぐにいけるはずだから。オウギさんとザックスさんたちは領主の館に向かって、さきほど言ったことの準備をお願い」


 その言葉に全員が返事をする。


「みんな、今出来ることをしよう。そして、乗り切ろう。そんじゃ行くよッ!」


 そして風音の言葉と共に全員が動き出す。遠隔視ですでにオドイートリーチの姿は見え始めている。風音はジンライとアングレーと共にユッコネエに乗って、すぐさま街の外へと向かっていった。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王・解放者リベレイター

装備:杖『白炎』・ドラグホーントンファー×2・竜喰らいし鬼軍の鎧(真)・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・白蓄魔器(改)×2・虹のネックレス・虹竜の指輪・天使の腕輪

レベル:38

体力:152+20

魔力:340+520

筋力:72+45

俊敏力:78+39

持久力:43+20

知力:75

器用さ:51

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』『ラビットスピード』『フレアミラージュ』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv4』『イージスシールド』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感:Lv2』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き:Lv2』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』『スパイダーウェブ』『ワイヤーカッター』『柔軟』


弓花「あれ……師匠って確か数時間前に『ワシはもう、ユッコネエには乗らん』って啖呵切ってなかったっけ?」

風音「ん? 特に気にもせずに、なんだかすごくうれしそうに乗ってたよ」


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