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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
マネーの黒豚編

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第三百五十八話 金額を告げよう

「はっはっは、元気な召喚獣ですな」

「おもっ、おもっ」

 笑うアングレーに対し、風音は顔をプルプルさせていた。なぜならば退かぬ、退かぬ、退しりぞかぬの精神のユッコネエがにゃーと鳴いてそのまま風音にもたれ掛かっていたからである。ようやく分かり合った主を離すまいとユッコネエはしっかりと抱きついていた。


「ユッコネエ、メッ!」


 しかし、さすがの風音も限界であり、お叱りの言葉を出さざるを得ない。ここはアングレーの屋敷で、風音コテージでもホテル内でもないのだ。甘えるにも場所をわきまえてもらわなければならない。そして、風音の「メッ」によりユッコネエはシュンッとなってその場に転がったのである。


「あーもう、後でね」

「にゃーう」


 風音の言葉に一定の理解を得たのか、とりあえずユッコネエも返事だけして丸くなるのであった。


「ふぅ、ごめんなさい。話の腰を折っちゃって」

「いえいえ。良いモノを見させていただきました」

 風音の言葉にアングレーはそう返す。話の腰を折られるくらいは別に構わないだろう。さきほどは風音は素でユッコネエと部屋から出ていこうとしたのだから。アングレーが引き留めていなければ、完全にこの商談のことを忘れていたに違いなかった。


「商売上、相手の人となりが見れると言うことは、とても大切なことです。まあ、それでなくともこの界隈でも有名な白き一団の皆様方にお会いできただけでも、話の種にはなりますしな」

 そう言ってアングレーはプハーと葉巻の煙を吹かし、白猫エリザベートを撫でる。エリザベートは気持ち良さそうになーごと鳴いた。

「界隈っていうと商人の?」

「ええ、そうです。何しろ、近年でもあまりみない大物のドラゴン、黒岩竜にクリスタルドラゴンや、それに闇の森生息のオダノブナガ種まで倒した方々ですから」

「いやーー」

 風音が照れる。だが弓花は「あー」という顔をした。その界隈で話題になったということはオチがすぐに予想できたからだ。

「我々としてもその素材が市場に出回るのをてぐすね引いて待っておりましたからな。まさかほとんど放出されないとは思いませんでしたが」

「いやーーー」

 風音の笑顔が固まる。確かに素材はその多くを自分たちで保管している。主に自分たちで使う用だが、風音は素材を集めると溜めるくせがあるのでなんとなくという部分も大きい。恨み言をいう商人も多いのだが、白き一団を恐れて抗議もされていないのが現状であった。ちなみに、ゼクシアハーツでも倉庫用に使っていた風音のプライベートエリアの宝箱の中は凄い状態になっていた。

 そして保管場所も保存方法もお金にも現在困ってないので尚更放出する理由もないのが現状である。パーティの中でもお金に困ることがあるのは風音だけで、それも今は懐が暖かいので気にしていない。

「ま、まあ、ほら、私も商人の端くれだしー。市場価格をってヤツ? を吊り上げようとかそんなカンジデスヨ?」

 風音が商人ギルド用のカードをホラホラと見せる。しかも言っていることは悪質であった。

「なるほど。お若いのに商人ギルドに加入しただけのことはありますな。放出する際には我がメッシ商会にもお声掛けをいただきたいモノです」

「うん。考えとく」

 アングレーの言葉に風音はとりあえず頷いた。頷くだけならただである。

「しかし、商人の心得があって、目先のお金に捉われない……ですか。そのお歳で中々出来ることではありませんな」

 確かに風音はお金には捉われていない。常にお金は風音から離れていく……という点ではアングレーの言葉は的確ではあった。

 そして風音が頭をブルブル振って、気持ちを切り替えて、そしてアングレーを見た。


「そ、それで、アングレーさん。今回、ここに来た理由は当然分かってるよね」

「ええ、私から持ちかけたものですし。色よい返事がいただけることを期待をしてはいるのですが?」

 アングレーが身を乗り出してそう口にする。だが風音は微妙な表情でアングレーに答える。

「申し訳ないけど、その気持ちには答えられないよ。私はあの温泉を手放す気はないからね」

 その言葉にアングレーは少し唸ってから口を開く。

「ふむ。とはいえ、簡単にそうですか……とも言えませんな。購入金額……についても申し上げさせては貰えませんか?」

「ふむ。というと……」

 風音の問いにアングレーの目が輝く。


「こちらには、1800万キリギアを即金で準備する用意があります」

 

 その言葉には風音の瞳がドルマークになった。単純な換算は出来ないが、大体20億円くらいである。なお、ここでの金額は源泉の権利のみならず、土地代なども含んでのこととなる。そして風音の瞳に映ったドルマークがゴールデンにしばらく輝いたが、すぐにそのドルマークは消えた。スキルの『精神攻撃完全防御』が働いたのかもしれない。


「ノーといえる勇気、大事だと思います」

「ふむ。ダメですか」


 アングレーが深くため息をついた。

「一応、マッカさんとの協議で、マッカさんと同様に源泉の利用権の販売は考えているんだけどね」

 その風音の言葉にはアングレーも「ええ、伺っています」と返す。アングレーもカザネ魔法温泉街に出資している人間である。風音を介さずともそれについての青写真はいくつかマッカと話はしてある。

「そちらは、このお話がなければ進めさせていただこうとは考えておりました。まあ、そうですな。確かに、あなた方の身につけているモノを見ればお金では動きそうもないですか」

 アングレーの視線が風音たちを見回した。身に着けているものはいずれも逸品ぞろい。特にジンライをランクSに押し上げた古イシュタリア文明の遺産と聞いている義手と、風音の持つ虹竜の指輪は金銭的価値で測れるものではない。軍隊にも抗せる性能の義手と、レインボーハートを見事に加工した一品。売りようによっては、あるいは売る相手によっては文字通り街一つ買えるようなシロモノだ。他にも最上位のアーティファクトやら魔法具やらを身に着けた姿は、見る者が見れば、目玉が飛び出すようなもののオンパレードだろう。

「こちらでも所有している貴重な魔法具なども融通できましたらとは思っていたのですが」

 その言葉には風音の鼻がピクッとなったが、しかし留まった。

「であれば、確かに利用権について話を進めていくとしましょう」

「うん。ごめんね」

 風音の言葉にはアングレーも笑顔で首を横に振りながら答える。

「何、ここで白き一団の皆様方と縁を持てただけでもこちらとしては万々歳でございますよ」

「そう思って貰えると良いけど」

 そして風音がそう口にした後、その横にいたルイーズが口を挟んだ。


「ところで、そちらは今ブラックポーションを集めているようなのだけれど、確かなのかしら?」

「ええ、この国を蝕む毒ですからな。あれは」


 アングレーが真顔で返す。

「すでにオウギから話は伺っていると聞いておりますが、恥ずかしい話ですが、一部の有力者にアレに憑かれている者が複数おるようでしてな。現時点で公的に禁止するのが出来ない状態なのですよ」

「それってのも酷い話だよね」

 風音の言葉にはアングレーも頷く。

「ええ、権力者の傲慢が民を苦しめておるのです。なのでわたくしどもが自主的に動いて回収しているわけですね」

 それがさきほどの風音たちが遭遇した民兵団なのだろう。

「それって捕まったりはしないものなの?」

 風音の言葉にはアングレーも「今のところは大丈夫です」と返した。

「一部の権力者によって所有の禁止を進められないだけで、各街においてもあれの問題は重々承知されてきております。表で動くのは我々ですが、協力はしていただいておりますよ。悪魔狩りの皆様方にも」

 その言葉にルイーズの眉が少しだけつり上がる。

「つまり、原料が何かを知っていると?」

「悪魔か、あるいはブラックポーションによって廃人となった人間と聞いていますな」

 それはある程度の知識があれば、自然とたどり着く答えではあった。

「能力的には魅力ではありますがね。能力のブーストにアストラル化。確かに素晴らしいものではありますが、負の方面に引かれすぎて、最終的にたどり着くのは亡霊と変わらぬ存在でしょう。まあ資質があれば違うかもしれませんが」

 そう答えるアングレーの言葉は風音たちの認識しているものと一致していた。

「それに送ってくるのがソルダードではね」

「ん? ソルダード、というか今の王様とは協力してたんじゃないの?」

 風音は不意にそう問いかけた。その言葉にアングレーはバツの悪い顔で笑った。

「ああ、知っていましたか。とはいえ、私も直接的な関わりはありませんよ。海洋ルートを通じて物資の融通をしていたのです。それも王国からの勅命で。そもそもこのメッシ商会は手伝った程度で、実際には海洋ルートはユルング商会の手のモノですので」

 なるほど……と、風音が頷いた。ゆっこ姉への連絡メールの内容がまた増えたようである。

「それと、これはお話しして良いものなのか……ということはあるのですが」

 アングレーはチラッとルイーズを見て、思案顔となる。その様子にルイーズの表情がさらに険しくなった。


『宿六、勿体ぶるのは止めておきな』


 そして膝の上で丸くなっているエリザベートから声がかかる。

「ぬ、またお前か。仕方ないですね」

『そっちのお姉さん、実際にはかなりカリカリ来てるからね。下手に触ると火傷するよ』

 その言葉を聞いてアングレーがルイーズを見ると、ルイーズはニッコリと笑っていた。そして(ああ、こりゃいかん)とアングレーもエリザベートの言葉に素直に従うことにする。

「ええ、実は悪魔狩りの方々の間で問題がありましてね。そちらのルイーズ様と同じキャンサー家の方々の一部が悪魔と繋がっているのでは……と言う話がありまして」

 そう言いながらルイーズをちらりと見るが、ルイーズは「続けて頂戴」と返した。

「ふたり拘束させていただいております。証拠となりそうなものはまだないのですがね」

「なるほど……まあ、しょうがないわね」

 その言葉にアングレーが安堵の顔を見せるが、続く言葉にその顔が凍り付いた。

「あらゆる手段を許容するから、殺してでも吐かせて頂戴」

 まるで当然のことのようにそうつぶやくルイーズにアングレー以外の人間もビクリとする。

「よ、よろしいので?」

「悪魔狩りでありながら悪魔と通じるなんて基本は即処刑対象よ。むしろ、役に立って死ねるのだから喜ぶべきよ」

 相変わらず実家にたいして辛辣なルイーズであった。

「なるほど。それは伝えておきましょう」

 アングレーも少し冷や汗をかきながら、そう答えた。


 そして、この場においての話はそれで終わりとなった。

 結局、源泉の権利の売買は行われず、特に何かしら決まることもなかったが、使用権についてはマッカと相談の上で対応するような話に纏まった。そして風音は自分は名ばかりオーナーなのでマッカと話が進むなら好きにしてもらって良いと返事をしておいたのである。

 その後はアングレーとは翌日に再度会って食事をしようという約束をし、風音たちはアングレーの用意する宿に案内されることとなったのである。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王・解放者リベレイター

装備:杖『白炎』・ドラグホーントンファー×2・竜喰らいし鬼軍の鎧(真)・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・白蓄魔器(改)×2・虹のネックレス・虹竜の指輪・天使の腕輪

レベル:38

体力:152+20

魔力:340+520

筋力:72+45

俊敏力:78+39

持久力:43+20

知力:75

器用さ:51

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』『ラビットスピード』『フレアミラージュ』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv4』『イージスシールド』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感:Lv2』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き:Lv2』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』『スパイダーウェブ』『ワイヤーカッター』『柔軟』


風音「そんじゃあユッコネエと遊んでこよう」

弓花「いってらっしゃい」

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