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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
マネーの黒豚編

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第三百五十四話 ウーミンに入ろう

 戦闘終了後、風音たちはランドオクトパスからグリフォントンビという麻痺毒のあるクチバシの素材回収に入っていた。併せてルイーズはザックスの内部にある毒、悪魔のアストラル体の除去手術を行うこととなったのだ。


「ァアアアアアアアアアアア!!!」


 そしてこの悲鳴である。口を布で塞いでも叫び声が漏れる。先ほどから風音が用意した手術用の簡易小屋の中からザックスの悲鳴が響き渡り、風音たちは戦々恐々としながら回収作業を行っていたのである。

「お、おい。いや、あの。リーダー、大丈夫……なんですかね?」

 その悲鳴に耐えきれなくなったのか。いかにもチンピラ風の男が風音にザックスのことを問いかけた。

 そして風音もあの悲鳴じゃあしょうがないよなぁ……と思いつつ、さきほどルイーズに聞かされたことをそのまま口にする。

「なんか、ザックスさんの全身をブラックポーションの中身が駆け巡って、アストラル体と同化……というよりも浸食しようと動いてるらしいんだよね。今ルイーズさんはそれを切り離して体から抜き取ってるらしいから、そりゃあキツいと思うよ」

 ルイーズの話では、まさしく身を切り裂く痛みを感じるらしい。

 一応の対策として風音は叡智のサークレットをザックスに貸していた。ルイーズの治療ならば問題ないだろうという話だったが、精神が崩壊しそうな場合に叡智のサークレットの精神状態異常消去の効果が役立つはずであった。

「ま、ルイーズさんは専門家だから、任せておけば大丈夫だよ」

 その言葉にチンピラ(仮)も「はぁ、分かりました」と返し、再びランドオクトパスからの素材回収に戻っていった。


(それにしてもこれ、タコだよなあ)


 風音がランドオクトパスの死骸の足を開いて、黒岩竜の牙を加工したナイフでサクサクッとクチバシ部分を取っていく。これが討伐証明部位であり、このランドオクトパスの唯一の換金用素材ともなる。

 焼いて食えないかとも聞いてみたが、海のタコは食べることが出来るらしいが、このランドオクトパスは臭くて不味くて食えたものではないとのことだった。実際風音のスキル『食材の目利き』も反応がない。勿体ないが、試しに食ってみるのも止めた方が良さげである。残念だ。


 その後、手術が完了したザックスは気絶して倒れてしまったが、斑に黒ずんだ体は元に戻っており、手術は成功したようである。

 またザックスの腕には封印用の呪布が巻かれていた。ルイーズの説明に依れば、これによってアストラル化した腕が崩れてしまうのを抑えているのだということであった。悪魔のアストラル体を除去してもその肉体が不安定なのは変わりがなく、再生癒術は早急に受けた方がよいとルイーズは口にしていた。

 ちなみに、風音たちの救助については今回の護衛報酬折半で話が付いた。またザックスレイブンと一緒に護衛を務めていたパーティ『ソードライダー』は後衛の2人を抜かし全滅していた。残された魔術師と弓使いの二人とも戦闘後には口を開くのも難しいくらいに放心した状態だったが、その後、仲間の遺体を焼く頃までには正気を取り戻し、風音たちに礼を言えるまでには回復していたようだった。


 そうした流れの後、風音たちはキャラバンの護衛を請け負いながら、ウーミンの街へと向かうこととなった。もっともキャラバンの速度にあわせたのでその日は街にたどり着くことなく野営となり、風音は空気を読まずにその場で風音コテージを出してザックスたちを驚愕させていた。


 実は前回のマッドスパイダー戦後に救出した冒険者たちをコテージに招く際に4階の大部屋を使用したのだが、治療のために招いたとはいえ用意できたのは殺風景な大部屋。なので風音としてはおもてなし力が足りなかったのではないかと反省していた。

 そのため風音は設計を見直し、さらにもう一階増築して客室も入れることにしたのである。風音はそれを自慢……もとい、使用してもらいたくて仕方がなかったので、今回は良い機会だと考えてバーンとザックスたちの前に出したというわけであった。

 ちなみに現時点における風音コテージは15メートル四方、つまりは225平方メートル、高さ20メートルの5階・屋上付きとなっている。

 内部の構成は一階が倉庫、二階がリビングやキッチン等、三階がプライベートルーム、4階が客室と大浴場、5階が大部屋となっており、屋上には噴水やテーブル一式などが用意された休憩スペースとなっている。

 要は4階を増やして浴場もそちらに移し変えて、三階と四階を区切りにプライベートエリアとゲストエリアを分けた形に変更したのである。なお移動についても各階へはエレベータでの直接移動のみに変更となった。

 プライベートルームもそうだが、問題なのは一階の倉庫なのだ。コーラル神殿の不滅装備を持ち出せるだけ持ち出すために、直樹が持って行った不思議な倉庫は現在空である。そして中に入っていた荷物はコテージの倉庫にすべて移し変えていた。

 風音たちがここまで集めたレア素材などがすべて入っているため、特に商人がそれを見てしまったらよこしまなる思いに駆られないとも限らない。故に現在は倉庫に入るのは外の倉庫入り口からか、二階のプライベートエリアから下りるしかないように変更し、見張りにタツヨシくんたちも配備していた。


 そんな突然現れた巨大な建物を目の前で見せられたザックスや商人のモルドアの気持ちがいかほどのモノだったかについては察するに余りあるだろう。

 中に入った後の驚きの方が大きかったかも知れないが、ともあれ風音たちはその夜は風音コテージの中で過ごし、翌日には交易都市ウーミンにたどり着いたのであった。



◎交易都市ウーミン 冒険者ギルド事務所


「今回は助かった。本当に感謝する」


 風音たちは街にはいるとひとまずは冒険者ギルドに行き、クエスト報酬を受け取った。そしてその段階でザックスたちパーティ『ザックスレイブン』と『ソードライダー』の面々が改めて白き一団へ礼を言ってきたのであった。


「ザックス、2〜3日は安静にしてから治療を受けるのよ。あんたのアストラル体は毒と切り離したときに損傷してるから、治療はそれが回復してからだからね」

「はい、了解です。何から何まですんません、ルイーズ姉さん」


 ルイーズのその言葉に改めてザックスが頭を下げる。ちなみにそんな低姿勢な感じでありながら、おっぱいをちら見しているところを見るとこの男はオッパイソムリエであり、風音の敵であるようだった。女の価値とはそんなところだけで決まるものではないと風音は主張したい。しかし主張したい人間こそがもっともこだわっているというのもまた、よくある話ではあった。


 そして、風音たちもそろそろ事務所を出て、アングレーのいるというメッシ商会の事務所に向かおうという時に、外から突然、兵たちが入ってきたのである。


「なに?」


 唐突に事務所に入ってきた兵たちは風音やザックスたちを取り囲み、槍を突き出した。

 風音は近接戦の出来ないティアラをカバーする形で前に立ち、目を細めて突然入ってきた兵たちを見る。ジンライもメフィルスを抱えたルイーズをカバーし、弓花はひとりいつでも飛び出せるように構えていた。風音の頭の上に乗ったタツオがくわーっと鳴いて兵たちを睨む。外からはユッコネエの「フーーッ」という声も聞こえてきた。どうやら外の馬車も囲まれているようである。

 また、風音は魔王の威圧こそかけていなかったが、敵意に似たものを受けたことで白いマントの下の鎧が反応し強烈な殺気を放っていた。狂い鬼もいつでも飛び出すべく、猛っているようだった。

 その強烈な気配に圧された兵たちであったが、だが構えを解こうとはしない。そして兵たちの隊長らしき人物が風音の前に立ち、こう告げたのだ。


「お前等にはブラックポーションをこの街に持ち込んだ疑いがある。すぐさま、武装を解いて我々に同行するのだ!」



  **********



 そして風音が冒険者事務所で兵たちに囲まれている同時刻、交易都市ウーミンのとある場所では一人の少年と、それに付きそう奇妙な鎧を着た老人がいた。


「へぇ、風音たち、来たんだ。そりゃあ、運がなかったというか、本当にイベントを逃さない人たちだねえ」


 そこは水のあふれる場所であった。山脈から流れてきた水の流れる地下の川。ウーミンの水資源であるそこの前で少年はそう口にして微笑んでいる。

「どうする? ユキトからは連中には関わらぬようにと聞いているが?」

 少年の横にいる老人がそう口にする。

 老人のいう連中とは冒険者パーティ『白き一団』のことだろう。

 七つの大罪である傲慢『ディアボ』を封印し、怠惰『ゾアラル』を滅ぼし、竜の里でも強欲『エイジ』を打ち倒した。さらにはミンシアナで嫉妬『ゴーア』を倒したとされるアオとも親交の深く、また色欲『ゼクウ』の身内もいる連中だ。


 老人と少年にとっては大変縁の深い集団であった。


 だが彼らは所詮は冒険者だ。組織を纏める存在ではなく、脅威度は高いが影響度は低い存在として現時点では関わらないように大罪の配下の悪魔たちには通達されていた。リーダーの風音は悪魔の臭いを嗅ぎ取ることが出来、さらにはプレイヤーという悪魔の天敵が三人もいることも二の足を踏ませる要因ではあった。

 これからの状況を考えれば接触を控えることが被害を最小限に抑えることに繋がると結論が出ていたはずだった。

「おや、彼らとやり合ってみたくはないの?」

 挑発するかのような少年の言葉に老人が「ふむ」と口にする。

「やり合うか。出来ればひとり引導を渡してやりたい男はおるがな」

 その老人の言葉に少年が頷く。

「まあ、あなたならそういうと思ってたよ。うん、彼らもどれくらいここにいるか分からないしね。少し早いけど取りかかろうか。だって」


 そして少年は酷くうれしそうな笑みを浮かべながら目の前の川を見た。そこに映るのは少年と老人。その少年の名はエイジという。少年の姿をした、かつて風音たちとも戦った悪魔の一体である。そして『槍を二本』持った老人の名は……


「僕も彼らとは遊びたいからさ。ねえ『ジンライ』さん?」

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王・解放者リベレイター

装備:杖『白炎』・ドラグホーントンファー×2・竜喰らいし鬼軍の鎧(真)・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・白蓄魔器(改)×2・虹のネックレス・虹竜の指輪・天使の腕輪

レベル:38

体力:152+20

魔力:340+520

筋力:72+45

俊敏力:78+39

持久力:43+20

知力:75

器用さ:51

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』『ラビットスピード』『フレアミラージュ』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv4』『イージスシールド』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感:Lv2』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き:Lv2』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』『スパイダーウェブ』『ワイヤーカッター』『柔軟』


風音「???」

弓花「???」

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