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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
マネーの黒豚編

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第三百五十三話 加勢をしよう

 ザックスは目の前をよぎった突然の雷光と轟音に愕然とした。

 それは確かに速かった。だが見た限り、魔術の光撃の速度としてはそうでもないようでもあった。

 しかし跳ね飛ばされたランドオクトパスを見ればその威力は一目瞭然であろう。まるでミノタウロスの攻撃を喰らった冒険者のように魔物たちは勢いよく弾き飛ばされていた。

 それは魔物にのみ当たったから良かったものの、あれが自分たちに直撃していたら確実に全滅だっただろう。そう思うザックスの背筋に冷たいものが走る。だが、現実にはザックスらには当たらず、魔物だけが倒されたのも事実である。


(これは……魔物だけを狙ったということは、誰かが加勢に来てくれたのか?)


 あんな魔術は見たことも聞いたこともないザックスだったが、しかしただの偶然でこのような状況になるはずもない。であれば自分たちは助かったのか……とザックスが考えた途端に、その雷光の塊がキキィッと反転したかと思うと、一斉に爆発したかのように光ってそのまま雷光が散って消えた。そして中からバチバチと紫の放電をしている黒い馬と、屋根の上に巨大な猫が乗っている黒い馬車が現れたのである。


「……だけじゃなく、猫の上に小さなドラゴン?」


 ザックスがそう呟く。そう猫の上には黒竜の子供らしきものもいた。ザックスが呆然としていると、その小さなドラゴンは突然光線を放って馬車に近付いてきていたランドオクトパスを薙ぎ払ったのである。さらにはだ。


「加勢するよッ」

『加勢しますッ』


 雷光の馬車の走ってきたミンシアナの方角から小さな天使と炎の天使、それと雷の塊が舞い降り、ザックスたちに言葉通りの加勢をしだした。


 そして馬車の中からも男と少女とおぼしき者たちが飛び出し、男は馬車の上にいた巨大な猫に乗り、骸骨の騎士を呼びだして戦いはじめ、それを追うように少女も黒い狼と共にランドオクトパスを蹴散らし始めた。


「こちらはもうダメね。こっちは息がある。カザネ、一緒にハイヒールをかけるわよ」

「はいなっ」


 そして馬車からやってきた巨大な乳を持つエルフの女性を見てザックスは目を丸くする。

「ルイーズ姉さん!?」

 それはザックスの知った顔だった。かつてザックスが若い頃に何度かパーティに参加してもらったこともある熟練の女冒険者の姿がそこにあったのである。もうずいぶんと昔に会ったきりだが、その女性はエルフであるため、ザックスがかつて見た時とまるで変わらぬ姿でそこに立っていた。


「うん? どなた……ええと、ああ、あんたザックス?」

「そうです。俺です。ザックスです。」

 すでに10年経っている。若造だった自分も随分と変わっていた筈だとは思っていたが、ルイーズは覚えていたようだった。こんな状況なのに、ザックスの心中は懐かしい気持ちと安堵の気持ちで溢れていた。


「ま、アンタみたいに穴が空くほどあたしの胸を凝視していたのってのは、さすがにそうはいないからねえ」


 そしてルイーズが軽口を叩くとザックスの仲間たちが笑う。絶望的な気持ちはもう晴れているようだ。


「笑うなお前等。見れば分かるだろ、俺の気持ちが」


 ザックスは顔を赤くしながらそう仲間たちに反論する。そしてルイーズの胸に視線を向けた仲間たちも「ああ」と頷いていた。暴力的なものがそこにはあったのだ。パーティには女性も混じっていたが、自分の小振りなモノを見て諦めたような顔をする。

 しかしザックスは次のルイーズの指摘には冷や水をぶっかけられた気持ちになった。


「それよりもアンタ、よくないものをやってるみたいね」


 ザックスがルイーズを見ると、その視線は明らかに敵に向ける類のモノだった。だがそれはザックスではなく、ザックスの中を見ているような視線であったが、それでもザックスが身が凍る思いであったには違いない。

「あ、ああ……それは」

 ザックスが口ごもる中、天使のチンチクリンが「それよりもこっちー」と抗議している。


「そっちの人は今回だけだから、あとあとー」


 その言葉にもザックスはギョッとした。ザックスは二人が口にしたのは『ブラックポーション』のことだろうとは理解していた。だが天使のチンチクリンは『ブラックポーション』の使用を『今回だけ』だと知っていたのだ。

 しかし、現状がそれを確認している余裕がないのも事実。戦闘の途中で巨大な黒い鬼が飛び出してきたのを見て、さらにザックスたちが驚くことになるが、それはチンチクリンの召喚体であったらしく、ランドオクトパスを黒い棍棒で次々とどつき回っていた。


 そして白き一団とザックスレイブンの共闘によりランドオクトパスの群れは次々と駆逐され、わずかな時間で戦闘は終了したのであった。



  **********



「つっ!?」

 戦闘終了後、ザックスはひとり馬車の陰にもたれ掛かっていた。

 現在は意識を取り戻したモルドアが白き一団の加勢に感謝の言葉を並べ立てているようだ。死んだ冒険者たちはそのほとんどが、ザックスたちとは別の、まだ若い冒険者たちのパーティであった、だがザックスの仲間たちも2人、亡くなった。

 その遺体の処理を仲間たちに任せてザックスはひとり休んでいた。顔色は悪く、脂汗が流れている。だが現在は戦闘後の処理で忙しい状況だ。故にザックスはその状況から離れて休みをとっていた。


「あら、随分と苦しそうねえ」


 その休んでいるザックスに声がかかる。

「……ルイーズ姉さん」

 ザックスがその声の方に振り向くとそこにいたのはルイーズだった。

「今回のことはありがとうございました」

 そのルイーズにザックスは心からそう礼を言う。キャラバンを見捨てるという不義理を働かなくて済んだこと、仲間たちが全滅せずにすんだこと等、感謝する事はたくさんあった。だがルイーズは笑って首を横に振る。

「そんなのはいいわよ。うちのリーダーの指示なんだから、礼ならリーダーに言ってね」

「ああ、あの天使の子ですか。いや、もちろん礼はしますが」

「それよりも、腕を見せなさい」

 そういってルイーズはザックスの右腕を強引に掴んで持ち上げた。


「いたたた」


 ザックスはその痛みに思わず声を上げるが、ルイーズの視線は右腕に釘付けとなっている。その腕は今や黒く染まっていた。腕の中を黒い何かが脈打ち、そして指先は若干透けていた。それは肉質が霊質に変質しつつあるということであった。つまりはアストラル化である。


「随分と高濃度のブラックポーションを飲んじゃったらしいわね」

 呆れたように口にするルイーズに、ザックスは咎められた子供のような情けない顔をする。

「やっぱり知ってましたか」

 戦闘中の反応でそうだろうとは思っていたが、ルイーズはザックスがブラックポーションを飲んでいることに気付いていた。

「まあね。高濃度の負のアストラル体をその身に取り込んだことによる急激な浸食が起きてるわ。毒が肉体を蝕んでアストラル化が進んでいる。アンタ、このままだと糸のほつれた服みたいに肉体が拡散して死ぬわよ」

 そのルイーズの宣告にザックスがギョッとするが、そのまま力なく笑う。

「副作用があるって知ってたんですがね。ま、あのままでは逃げきれたかも分かりませんでしたし。あんたたちが助けにくる時間を稼げたって考えりゃ、悪くないかもしれないですね」

 少なくとも仲間が全滅せずに済んだのだからザックスとしては良しと考えていた。いや、考えざるを得なかったと言うべきか。ザックスの中にいる黒いモノは症状の重い腕だけではない。両足にも『いる』のを感じるし、他にも全身に回っているようでもある。実際にザックスの体は部分的にいくつも黒ずんでおり、腕を切り落とせばどうにかなるとも思えなかった。

(適性不全か……)

 ブラックポーションを買ったときに話は聞いていた。相性が悪ければ死に至ると。それでも万が一の時のための切り札としては取っておきたくてザックスは購入した。結果としてはそれは役に立ったが、自分はこのまま死ぬだろうと、そして目の前の女性はそれを確定付けた。そんな風に考えていたザックスの頭をルイーズはパーンとはたいた。

「ほら、情けない顔しないの」

「けどよ、この腕見てると震え止まんないんですよ。もう後戻りできないって思うと」

 ザックスは右手を出す。黒ずんだその手の感覚はザックスにはもうない。自分がゆっくりと死に向かって進んでいくのに止められない。そんな恐怖を感じていた。だがルイーズは首を横に振って笑う。

「いえ。まだ、十分間に合うわ」

「本当ですか?」

 その言葉にザックスは思わず顔を上げる。

「ええ。あなた、再生癒術を受けるだけのお金はある?」

「今まで貯めた分でなんとか……けど、それで治るんですか?」

「時間が経過してたのならダメだったけど、幸いまだアストラル体になってすぐだから形も整ってる。あたしがその体の中の毒を抜き取るから、癒術院か神殿ででも良いからあんたはすぐに再生癒術を受けなさい。少し後遺症が残るかもしれないけど、それでなんとかなるはずよ」

 再生癒術は破損した肉体をアストラル体の情報を元に再生する術のことである。アストラル体ごと腕を喰われたジンライとは違い、ザックスは元に戻る見込みがあるということなのだろう。

「毒さえ抜いとけば、最悪腕を切れば命は助かるわ。どうしても治療が受けられないようだったら、そっちも検討しておきなさい」


「それは……ああ、分かった。ルイーズ姉さん、ありがとう」


 ザックスは涙ぐみながらそう口にすると、もたれ掛かっていた体をずり落とし、そのまま地面にペタリと座り込んで嗚咽した。ルイーズの言葉を聞いて安心したのだろう。ザックスのここまでの気持ちが堰を切って一気に涙となって零れ出したのだった。


名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王・解放者リベレイター

装備:杖『白炎』・ドラグホーントンファー×2・竜喰らいし鬼軍の鎧(真)・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・白蓄魔器(改)×2・虹のネックレス・虹竜の指輪・天使の腕輪

レベル:38

体力:152+20

魔力:340+520

筋力:72+45

俊敏力:78+39

持久力:43+20

知力:75

器用さ:51

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』『ラビットスピード』『フレアミラージュ』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv4』『イージスシールド』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感:Lv2』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き:Lv2』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』『スパイダーウェブ』『ワイヤーカッター』『柔軟』


弓花「今回もスキル手に入ったの?」

風音「うん。『柔軟』だね。前屈して地面に手がつくようになったよ」

弓花「え?」


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