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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
マネーの黒豚編

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第三百五十一話 チンチクリンを抱きしめよう

あけおめ

◎アルゴ山脈 山中 夜


 ガシャーン、ガシャーンと何かの足音が聞こえる。

 時間はすでに夜にさしかかっているが、真っ暗闇の山の、それも吹雪の中を、太陽光に似たやけに明るい光が輝いていた。それがわずかずつではあるがゆっくりとゆっくりと進んでいた。

 その光り輝く何かとは巨大な岩の怪物、つまりはゴーレムだった。頭部にある一つ目を光り輝かせながら、それは雪の中をゆっくりと進んでいく。それは山頂を目指して突き進んでいるようだった。

 そしてその巨大なゴーレムの中には、外からは見えぬが3人の男女が乗り込んでいた。


(ロボットっぽいけど……操縦桿とかもないし、デパートの上で100円でウィンウィン動くやつみたいだなぁ)

 そんなことを直樹が思っている横でライルが身に纏ってるマントをしげしげと見ていた。

「外の不滅の水晶灯も大概だけど、しかしこのマントも不思議だよな。炎が出てるのに、あったけえけど熱くもない」

「かなり上位の魔法具らしいしな。でも確か浮遊島の宝箱ってリポップするって話だからまた行ったらあるんじゃないかな?」

 ライルの言葉に直樹がそう答える。浮遊島のヴォード遺跡に設置してある宝箱は設計図を元に魔力体を固定化し物質化するという、恐ろしく高度な錬金装置である。風音たちが手に入れた大量のアダマンチウム装備や骨もそうして永き時の末に生み出され続けてきたものであり、天然物のアダマンチウムではなかった。

「マジかよ。じゃあ、次浮遊島に行ったら俺たちも取りに行こうぜ?」

 そのライルの言葉にはエミリィが口を出す。

「アダマンスカルアシュラが大量に襲ってくるそうよ。兄さんでそれ対処できるの?」

 妹の言葉にはライルも「いや、無理かも……」と返す。

「無理かもっていうか無理だ。姉貴たちでも囲まれるとヤバいって言ってたしな」

 浮遊島のヴォード遺跡での問題はアダマンスカルアシュラの戦闘力だけではなく、次から次へと湧いてきて、あの狭いダンジョン内で身動きがとれなくなることなのだという。例えレベルカンストのプレイヤーでもハマると死ぬほどのものなのだ。

「ま、そもそも俺たちじゃあ浮遊島まで単独ではいけないしな。あ、あの小型の竜船があれば問題ないのか」

「ナオキー、飛竜やグリフォンの群れとぶつからなければっていう問題もあるでしょ?」

 直樹の提案を再度エミリィが打ち砕く。「だよなー」とライルが頷いている。


(まあ、グリフォンも『操者の魔剣エクス』での魔剣の遠隔操作なら……)


 と直樹は反論しようと思ったが、やれてせいぜい一、二匹。それも竜船の操縦も並行となれば、難易度は格段に増す。飛竜ワイバーン相手では尚更だ。


「難しいか」

「何がだ?」

「なんでもないさ」


 ライルの言葉に直樹ははぐらかして答える。出来ないことを口にしても仕方がない。そして、そんな話をしているところに直樹が「あっ」と声を上げた。

「どうした?」

「姉貴からメールが来た」

 そういって直樹は何もない空間に指をチョンチョンとし始める。ライルとエミリィには見えてないが、そこには直樹の姉からの手紙のようなモノがあるのだろう。直樹の視線が上の空間から下の空間まで降りていく。


「姉貴たち、今から温泉だってさ」

「うらやましいなぁ」

 その直樹の言葉にエミリィが少しため息をついた。

 ここ数時間ずっとこのゴーレムの中にこもりっきりなのだ。外は吹雪でまったく見えた状況ではないし、いい加減ジッとしてるのも疲れてきた。

「姉貴のマップからすればもう少しなんだけどな」

 直樹は風音と共有したウィンドウのマップを見ながらそう返した。予定ではもう到着しても良いのだが、外の吹雪の強さのせいでこのゴーレム『サンガクくんスーパー』も歩みが遅くなっているようだった。


「ま、本番はこれからなんだ。今はのんびりさせてもらうさ」

「お前はな。俺らは待ち惚けだ」

 直樹の言葉にライルがそうぼやく。

「それでも着いてきてくれるんだから、お前等は良い仲間だよ」

 その直樹の言葉にバーンズ兄妹も笑い合う。


 そしてゴーレムは山中をノッシリと進んでいく。命の気配のない暗闇の先をゆっくりと、ゆっくりと、だが確実に進んでいく。



◎カザネ魔法温泉街 大浴場


「これが人間の叡智の力だーーーー!!」


 直樹たちが雪の中で笑い合っている頃、風音はスッポンポンの大股開きの仁王立ちのまま、浴場の入り口で高笑いをしていた。わずかな膨らみしかないほぼまっ平らな胸を張って誇らしげに笑う風音ではあったが目の前のソレは確かに誇るだけのことはあるようだった。


 それはマッカの提案によって行われたことである。

 マッカの提案とはつまりゆっこ姉デザインの神殿風大浴場の改築であった。風音のゴーレムメーカーによりもっと素晴らしいものにならないかと、それによって報酬を支払うというのはどうだろうかという話になり、風音は俄然やる気になった。ちなみにこの街で得られる風音の収益については、契約そのものが詰められておらず現時点では保留となっていた。落ち着いた段階でどうにかしようとはチンチクリンの言葉である。


 そして風音が作り上げたのがこの水晶露天風呂であった。

 天井は吹き抜けのままだが、クリスタルの網がかかっており、魔物が仮に襲来しても防いでくれるようになっている様だ。

 壁の部分はコーティングによる鏡面加工で鏡となっており、内部の反射により以前よりも広くなった浴場がさらに広く見えていた。

 それ以外の表面的な部分はすべて水晶化により透明になった。地面の岩場まで透けて見えて、まるで空中を歩いているような気分になる浴場である。

 また、用意させたチャイルドストーン動力により蛇口やシャワーも自動的に動くようになった。さらには浴場の中心に口からジャブジャブと温泉水を出してくる、風音の竜体化を模した、巨大で透明な見事なドラゴン像も設置された。

 もはやそれはひとつの芸術と言っても良かった。マッカはそのあまりの出来映えに声も出ない。一緒にやってきた領主の館(仮)の侍女や、警護団の団員となっていた魔術師のマカなどもあんぐりと口を開けてその浴場を見ていた。

 ちなみに着替え室にはチャイルドストーン動力による扇風機なるものまでも設置されている。ドライヤーは現在考案中ではあるが、熱量調整が難しいようで、風音の次の課題となっていた。


「これは……まさか、幻術でもかけられたわけではございませんわよね?」

 そういって自分のほっぺたをひねるマッカであったが幻術でも夢でもないようである。

「これは……やりすぎじゃないかしら」

 ルイーズがそう口にするが、無理もない。これはもはや人の世のモノとは思えない美しさだ。人が死ぬとたどり着くとされる神々の住まう領域『天空の草原』。ここはその領域に存在するという宝玉の丘を具現しているかのような場所であった。

「良い仕事をしたよ、私は」

「まあ、良い仕事ではあるわね」

 弓花も半分呆れつつも、その光景には見ほれている。総魔力860を誇る風音の魔力をほぼすべて使い切り、さらには提供されたチャイルドストーンを惜しみなく使用した結果がこれである。その金銭的価値は計り知れない。いくら出せば良いのだろうとマッカはその光景に見惚れながらも冷や汗がダクダクと出ていた。


「さすがカザネですわ」


 そんな状況の中、ひとり金縛りを抜けたティアラは後ろから風音に抱きついて持ち上げ、浴場の中に入っていく。まあ、立ってられると邪魔なので。

 そして後ろで待っていたマッカたちもゾロゾロと中に入っていった。にゃーとユッコネエも続けて入っていった。そしてザブーンとそのまま湯船に飛び込んだ。ユッコネエも今や温泉大好き猫である。召喚体なので湯冷めとかも気にしないし、抜け毛も召喚を解けば消えるので、衛生的にも問題はない。そう言う点では非常に便利な体である。


「あれ、ティアラ?」

 そして抱えられたまま猫のようにおとなしい風音は気付いた。


(ふふふ、そうですわカザネ。わたくし、ずいぶんと鍛えましたの。もうカザネを持ち上げてもそんなに苦ではありませんわ。ああ、ゆで卵みたいな良い肌触り。可愛いですわ。最高ですわ。プニプニですわ)


 日頃鍛え続けているティアラは風音を抱き締めながら、そんなことを考えていたが、風音の認識はそのティアラの思いとは遠く離れていた。風音は背中に押しつけられた肉の量が違うことに気付き、戦慄していたのである。


(また……デカくなっているだと……)


 明らかに増量している。最近ここまでキューッと抱きつかれたことはなかったから、気付かなかった、或いは気付かない振りをしていたのだが、さすがにここまでギューギュー押しつけられては気付いてしまう。


(ツヴァーラのお姫様は化け物か!?)


 そう、風音とティアラはもはや別の生き物のように一部分が違いすぎた。分からない。風音には何故ここまで世の中が理不尽なのかが分からない。

「ねえ、ティアラ。私とティアラって同じもの食べてるよね?」

「え? ええ、風音の方が少し食欲旺盛で、よくは食べてるとは思いますけど?」

 ティアラの言葉に風音は自分の認識が間違ってはいないことを悟る。なのになぜこの差が生まれるのか。多く食べているはずなら、もっと詰まっても良いのではないか。そう思うと風音は悲しくなった。


 ちなみにタツオは風呂場なので黒炎装備を脱いでの入浴となるため、今回はジンライとメフィルスとともに3人で男風呂の方に入っていた。


「隣が騒がしいようですな」

『いつものことよのぉ』

『母上の声がしますねー』


 男衆の入浴は静かであった。年寄り二人に達観した子供一匹では無理もないが。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王・解放者リベレイター

装備:杖『白炎』・ドラグホーントンファー×2・竜喰らいし鬼軍の鎧(真)・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・白蓄魔器(改)×2・虹のネックレス・虹竜の指輪・天使の腕輪

レベル:38

体力:152+20

魔力:340+520

筋力:72+45

俊敏力:78+39

持久力:43+20

知力:75

器用さ:51

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』『ラビットスピード』『フレアミラージュ』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv4』『イージスシールド』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感:Lv2』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き:Lv2』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』『スパイダーウェブ』『ワイヤーカッター』


風音「弓花もティアラもなんで育つかなぁ。なんで私は育たないのかなぁ。吸い取られてるのかなぁ」

弓花「吸い取るほどないじゃん。って、ゴメン。私が悪かったから叩かないで」

風音「うううううーーーー!!!」

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