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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
マネーの黒豚編

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第三百四十九話 弟と別れよう

 風音がニーナのいる冒険者ギルドの酒場に立ち寄ったのはここ最近のこの辺りの近況が知りたかったからである。そしてニーナや酒場にいる冒険者たちに話を聞いたところ、耳に入ってきた。


1.ガーラたちのパーティは今もゴルド黄金遺跡を攻略中。パーティ内でごたごたはあるようだが元気ではいるようだとのことである。


2.ツヴァーラの王様が戴冠式を行い、正式に王様になるそうだ。


3.詳しいことは不明だがツヴァーラのお姫様が行方不明中。まあ、その真相は風音たちがよく知るところである。


4.ジャパネスの剣士ミナカはこちらには来ていない。


5.神託によりハイヴァーン公国で魔王が現れたとの噂。シジリの街での出現はまだ話が届いていないようである。


6.ウォンバードの街に天使様が出たという噂。この世のものとは思えない愛らしさの少女と言うことである。その話を聞いていたときに風音がにへらーと笑っていた。


7.ジローくんが勇者ではないかという噂あり。ジローくんは専用のとてつもなく太いエクスカリバーを持っているそうだ。詳細は不明。


8.ミンシアナ王国が勇者を捜しているとの話。魔王討伐を想定してのことかと各地で密かに話題になっている。


8.天使様とジローくんのどちらが本物の勇者ではないかという噂がある。またどちらがそうかで派閥が出来ている。


9.ブラックポーションが出回っている。冒険者ギルドから使用しないよう注意が回っているが、効力は確かで使用者は後を絶たないそうである。


10.ソルダード王国が情勢不安定。国境を抜けるのも難しいらしく、商人たちから王都の陰惨な状況が届くばかりだとのこと。


11.ジローくんの活躍を綴った伝記が発売されている。国外にまで売り出されているらしい。


12.ジローくんの活躍を記念してめでたくジローくん饅頭がこのウィンラードの街で現在発売中。カザネ饅頭は食べたら腹をこわしそう、なんか怖そうという事で廃案になった。


13.ジローくんが……


14.ジローくんの……


15.ジローくんは……



◎ウィンラードの街 宿屋リカルド


 ウィンラードの街に戻っての当日の夜。白き一団は宿に戻ってのパーティ会議を開催していた。

「そのジローってヤツの噂が多すぎんだろ」

 そして会議の話題の中心は直樹の一言がすべてであった。

「ここに来るまでにも確かに話題に上がってたことはあったけどな。この辺りの出身の冒険者ってだけあってエラい話題にあがってるな」

「そういえばお父さんもそのジローさんって人に心酔してたっけ」

 ライルとエミリィが続けてそう口にする。タツオも『スゴい人なのですかね?』と興味津々のようである。もっともそうでない者たちもいた。


「カザネよ」

「聞きたくない。聞きたくないよー」

「ひとりの男の人生を狂わせた気分はどうだ?」

「私だけのせいじゃあないよね、それ!?」

 ジンライの言葉にカザネが崩れ落ちた。やってしまった。やらかしてしまった。そう思った。さめざめと風音はそう思ってしまった。

「ああ、おまえだけのせいではないな。ワシがあのとき、止めておればこんなことには……」

 ちょっとした風音たちの悪ふざけでスターダムに上がってしまったジローくんは今やそのままスター街道を爆進中のようである。

「いや、でもさ。ひょっとしたら、ジローくんも何かに覚醒して強くなったのかもしれないし」

「ないな。あやつは正真正銘の凡人だ。それはお前もよく知っていよう」

 なにげに酷いコトを言うジンライだが、普通はたかだか数ヶ月で飛躍的に強くなることはない。風音や弓花が異常なだけなのだ。

「そもそも噂の大半がなんかスゴいっぽいって感じで実力を示しているとこがないのが怖いんだけど」

 弓花も顔がひきつっている。

「なんとも綱渡りの人生を生きてる感じだな」


 そんなやりとりの風音たちのボソボソ声に首を傾げている直樹だったが、話せる雰囲気でもないようだったのでひとりで窓の外を見ているルイーズに尋ねてみた。

「ルイーズさん。そのジローってヤツ、そんなにスゴい人なのか?」

 その直樹の言葉にルイーズはうーんと唸る。

「えーとね。あたしはあまり覚えていないのだけれど」

 そして直樹の下半身をちら見して、少し考えてから、

「あなたたちとは持っている器が違うと思うわ」

「そんなに……」

 ルイーズにそう断言された直樹とライルは情けない顔になった。

「でもそれは仕方のないことなのよ。彼のステージまであなたたちが到達することは生涯出来ないと思った方がいいわ。ええ、あまり覚えていないあたしでもそれぐらいは分かるの」

 そのルイーズの言葉に直樹とライルが戦慄する。ルイーズにそこまで言わせる男がこの世にいるなど思ってもみなかった。


 そんな後ろのやり取りは放っておいて、風音はグッと拳を握りしめて、どうにかせねばと考えた。

「確かに責任は私にもある。だから、私は今私にできることをしようと思う!」

「具体的にはどうする?」

 ジンライの問いに風音はニッと笑った。


 そして風音は翌日に飛竜便で、竜の里で加工してもらっていたオダノブナガ・アシガル甲冑と紅の水晶小太刀・信長式をジローに贈ることにした。アシガル装備は速度上昇効果もあり、紅の水晶小太刀・信長式は小回りの利く短い刀身の、紅水晶化を付与された武器である。これならば職業が斥候であるジローの力になるはずだと風音は考え贈ることにしたのだ。


 そして次の日に荷物を飛竜便に渡した風音は、そのままコンラッドの街へ。さらにはその翌日にはカザネ魔法温泉街(仮)に向かうこととなる。

 しかし、今回風音たちは途中で直樹、ライル、エミリィの三人とは二手に分かれることになっていた。



◎アルゴ山脈 山道入り口


「懐かしいなあ。ここで親方とグレイゴーレム狩りしたんだよねえ」


 もうそれは半年以上前のこと。風音と弓花が親方につれられてきた山の入り口がここである。ここから先にグレイゴーレムの生息地帯があり、さらに山中を進んだ先には何人たりとて立ち入ることが出来ぬと言われる不可侵の聖域、コーラル神殿が存在している。

 直樹はそこでアーティファクト『帰還の楔リターナーズ・ステイカー』を手に入れる必要があった。仮にダンジョンの最下層で元の世界に戻る穴があったとしても、こちら側に戻ってくるためにはそのアーティファクトが必須であったのだ。

 本来であれば魔族や単一属性持ちでなければ出来ない転移を可能とする『帰還の楔リターナーズ・ステイカー』は、現時点においては最重要入手目標である。


「そんで、直樹。さっきの人の報告だとこの山の上に登った人間は冒険者がグレイゴーレムの討伐にいったぐらいで、それ以外は特にいないらしいから、まあ『帰還の楔リターナーズ・ステイカー』はまだあるはずだよ」


 さっきの人とは、山道の入り口付近の小屋で見張りをしていた兵である。モーターマシラの騒動や温泉街などが出来つつあるための治安維持の見張り……という名目ではあるが、実際のところはコーラル神殿の人の立ち入りの調査、正確にはプレイヤーの捜索のための人員であるそうだ。

 また風音と弓花が最初に入ったシグナ遺跡も、今はミンシアナの王国軍が接収し調査に入っている。

 シグナ遺跡は失われた飛行魔術『フライ』を覚えられるグリモアフィールドの存在している遺跡である。ミンシアナ王国にとっての潜在的な価値は大きく、第一発見者である風音と弓花にも調査結果によっては何かしらの報酬が出ることになっていた。


「ま、だからそっちは特に問題なく手に入れられるはず。それよりも問題は……英霊、やっぱり手に入れるの?」


 風音の言葉には直樹も頷いた。それには風音も渋い顔をするしかなかった。風音は風音でかなり危険に無自覚で英霊ジークを手に入れたし、弓花のアーチは元が元であるのでほとんど問題はなかったのだが、直樹の英霊はかなり危険な存在だ。

 ゆっこ姉の英霊ユーケーのような魔術師系統の英霊が相手となると、範囲攻撃や一撃死など初心者殺しの能力を持つ場合がある。そうした相手では英霊を手に入れる前にプレイヤーが死ぬ可能性がグッと高くなる。

 実際ゆっこ姉も安全にユーケーを手に入れるためにレベルをかなり上げた後、ありったけの補助アイテムや魔法具などを持って挑んだそうである。


「あいつがいれば、確実に姉貴の力になれる」


 その言葉には風音は苦く笑う。風音としては直樹が無事であるなら自分がどうなっても構わないと、嘘偽りなく、そう思っている。しかし、弟もそれは同じであるらしい。


「ちょっと直樹しゃがんで」

「うん?」


 訝しげな顔で膝を落とす直樹に、風音は近づいてグッと直樹を抱きしめた。

 直樹は(うはっ)と思ってしまったが、姉の体が震えてるのを感じて、その気持ちもしぼむ。

「姉貴……?」

 直樹は風音の顔を見る。その顔は何かを我慢している顔だった。

「直樹も男の子なんだし、冒険者なんだしね」

 そして、その震えは恐怖から来るものだろうと直樹は悟る。

「お姉ちゃんは止めないし、直樹を信じてる」

 止めたいけど、それをしない。信じているという気持ちに嘘はないのだろう。だがきっと不安なのだ。最愛の弟とこれが最後かも知れないと思うと、風音は不安で仕方なかった。


「だから直樹、死なないでね」

「うん。姉貴、あんがと」


 直樹は微笑んで、潤んだ瞳の姉を抱きしめ返した。


(本当に……あーもう)

 直樹はそれを呪いのように思う。以前に「お姉ちゃん、嫌いになっちゃったのぉ?」と泣いて抱きつかれたときに姉に心を奪われたことのある直樹は、ここでもまた再度ハートをガッチリと掴まれてしまった。自分は本当に、この腕の中にいる人が好きなのだと思ってしまう。


 そして泣きそうな姉を不安にさせないよう、笑顔で直樹は自ら風音から離れる。そのままハイヴァーンで出会った仲間たちと共にアルゴ山脈を登り始める。向かう先はコーラル神殿、そこで直樹は新たなる力と出会うこととなる。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王・解放者リベレイター

装備:杖『白炎』・ドラグホーントンファー×2・竜喰らいし鬼軍の鎧(真)・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・白蓄魔器(改)×2・虹のネックレス・虹竜の指輪・天使の腕輪

レベル:38

体力:152+20

魔力:340+520

筋力:72+45

俊敏力:78+39

持久力:43+20

知力:75

器用さ:51

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』『ラビットスピード』『フレアミラージュ』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv4』『イージスシールド』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感:Lv2』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き:Lv2』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』『スパイダーウェブ』『ワイヤーカッター』


風音「あーもう、恥ずかしいところを見せちった。ブラコンとか思われたかなぁ……」

弓花「いや、アンタよりも直樹の病状が大幅に進行したことの方が気がかりだわ」

風音「……??」

弓花「いや、なんでもない。忘れて」

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