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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
紅玉獣編

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第三十六話 特注品を受け取ろう

◎ウィンラードの街 商業区


「ふんふんふ〜ん」


 パーティも新メンバーを迎え俄然やる気の出てきた風音は街を出る前に作成を頼んでいた装備を受け取りにバトロア工房に向かっていた。

(さあて、どんな具合にできてるかなあ)

 狂い鬼の角を加工した逸品。スキルとの組み合わせで更なる破壊力を生むであろうそれを一刻も早く受け取りたくて仕方がない…のだが

「あれ、ギャオにメロウさん」

「げ、カザネ」

「あらカザネじゃない。一週間ぶりくらいね」

「うん。お久しぶり〜。ギャオと仲直りできたんだねえ」

 そう口にする風音にメロウも恥ずかしそうに笑う。

「うーん。まあねえ。こいつもちょっとは反省してるみたいだし…ねえ」

「お、おうよ。あったりめえよ」

 そう返すギャオの顔が青い。あとメロウに見えないように必死でシッシッと手振りで行なっている。

(あん。いったい何の…あ)

 眉をひそめる風音だが、あることに気付いてしまった。

(これ、ニーナじゃない方の…ハッ!?)

 風音がギャオについている別の女の匂いに気付いたことを、メロウに気付かれた。

「どうしたのカザネ?」

 目のハイライトが消えたメロウが尋ねる。

「い、いや、なんでもないよ」

 深淵の瞳が風音を、そしてギャオを見る。

「なんでもないの?」

(怖い。なに、この怖い人? と言うかその目、私も疑われてますか!?)

 そんなことはないと思いたいが、ここで話さなければ命が危ないと風音は感じた。

「え、えーとですね。ギャオはどうしてまた別の女の人のにおいがついてるのかなーって」

 風音は冷や汗をかきながらにこりと尋ねる。

「あ、てめえ」

「へえ、なんでだろうねえ。ねえ、ギャオ?」

「ちょっと待ってくれよメロウさん、そんなのこのお子さまの嘘に決まってるじゃないですか」

「カザネありがとね。また『今度も』よろしくね」

「了解であります。サー」

「お子様テメエエエ」

「うるせぇ。こっちだって命が惜しいんじゃボケがぁ。バレたくなきゃ他の女の匂いつけて私に近付くんじゃねえ」

 ズルズルと引きずられていくギャオを見ながら風音は今のことは忘れることにして工房に向かっていった。


 ちなみにその場にいた人に『他の女の匂いつけて私に近付くんじゃねえ』という言葉のみをクローズアップされて伝聞として伝えられてしまい別の騒動が発生するが、それはまた後ほどの話である。



◎ウィンラードの街 バトロア工房


「やあ久しぶりカザネ」

「うん、モンドリーさんもオヒサ」

 バトロア工房では風音の出迎えにモンドリーが来ていた。

「親方は今日はいないの?」

「3日前から王都に呼ばれて出てるんだよ。カザネに頼まれていたものも一緒に持って帰れそうだって話だよ」

「ふーん。そいつは楽しみな話だねえ」

 風音が頼んでいたものとはゴーレム使い用の補助アイテムの材料である。現在ゴーレムに関する技術はトゥーレ王国が軍事機密として囲い込んでるらしいのだが、材料は分かっているのでバトロア工房で作成を依頼している。

「鎧の方は蛇腹っていったっけ? ドワーフの職人達に今検討してもらってる。目処はつきそうだって言ってたけど、とても千年前の技術とは思えないよ」

「まったくだね」

 ある程度のデザインは風音が思い出しながら書いた設計図に沿って作られる。自分デザインの武装なんて素敵じゃないかと風音は思う。

「それでもう一つの方はもうできてるんだよね?」

 風音はさきほどからモンドリーの横にあるものをチロチロと見ていた。そのキョロキョロと興味を隠し切れない視線に和みつつもモンドリーはそれを風音の前に置いた。

「うん。これだ」

 モンドリーは包みを開き中を見せる。そこにあったのは黒いレッグアーマーだった。

「狂い鬼の角を加工したレッグアーマー『狂鬼の甲冑靴』。普通のオーガの角よりも遙かに硬くてね。素材を加工するのに随分と手間取ったみたいだよ」

「おー」

 目を輝かせて受け取る様は誕生日プレゼントを受け取る子供のそれであったが、受け取ったものは主に魔物を蹴り殺す凶器だ。

(キリングレッグの威力増強と刃物相手にもこれで気にせずに打ち込めるなあ)

 考えてることも物騒この上ない。

「これでオーガ討伐にも身が入るよ」

「うん、頑張ってね」

 工房としても材料の流通が滞りそうな現状は看過できない。モンドリーも風音の活躍には期待していた。


 その後風音はモンドリーに冒険者用の衣服屋を紹介してもらい、そこで不滅の布団を加工してマントに仕立て上げてもらう。

 見た目、高級素材の純白のマントの上に汚れず切れず。それは防刃効果もあり、炎なども通さないということでもある。もっともまったく切れないため折り込み金属の留め具を挟み込んで形を整えるという工夫が必要だったのだが。



◎ウィンラードの街 宿屋リカルド


「これが噂の不滅の布団か」

 風音が如何にも高級ですというようなマントを着て帰ってきたので尋ねてみると元不滅の布団だと聞き、肌触りを弓花は楽しんでいた。

「噂になってるの?」

「ええ、コーラル神殿が攻略されてそういう布団をあんたが手に入れてきたってね」

 噂早いな…と風音は思うが、その噂はコンラッドの酒場で発生したものだし、ウィンラードでの噂の出元は風音と共に護衛していた冒険者たちである。

「それじゃあ弓花の分も用意したから」

 風音はアイテムボックスからもう一組の元不滅の布団、現不滅のマントを取り出した。

「マ・ジ・で!?」

 弓花はそれを急いで着込み、肌触りを楽しんでいる。どうもとても気にいったようだった。

「この宿屋の布団よりも良いなあ。これ着て寝るかなあ」

「まったく汚れないからね。別に問題ないでしょ。ホントになんで汚れないんだろ?」

 謎である。


 そして弓花が不滅のマントの肌触りを楽しんでしばらくした後、風音がようやく話を切りだした。


「それが英霊召喚の指輪か」

 弓花は風音の人差し指にある指輪を眺めてつぶやく。

「シンプルでいいなあ。私も二周目しとくんだった」

「こういう事態が想定できてれば是非ともしてもらいたかったよ。まあ私の他にも周回プレイヤーは存在しているみたいだけどね」

「アーティファクトが5つなかったって話だよね」

「うん。ひとつはすぐ見つかったけど。それとプレイヤーらしき人物の白骨死体もあった」

 弓花が神妙に尋ねる。

「やっぱり死んだら元の世界に帰れるとかってないのかな?」

「少なくともこの肉体は戻れないみたいだね。いっそ姿がゲームキャラクターだったら可能性はあったかもしれないけどどう考えても自前だもの」

「だよねえ。ハァ」

 風音はかなり早い段階からそこらへんは割り切っていたが弓花はそうでもないようだった。

「残り4つのアーティファクトを持ち去ったのは周回プレイヤーで間違いないと思う。問題なのは私の前に最後にコーラル神殿に訪れた周回プレイヤーは恐らく一年前だったこと」

 その間に誰かが入っているなら無限の鍵はその別の誰かに回収されているはずだというのが風音の主張だ。

「私は風音の一週間前にここに来たんだよね」

「でも私の記憶では私がここに飛ばされる当日に弓花に会ってるはずなんだ」

「その会ったって記憶は私とも一致している」

 ここまでは弓花と出会った日に話はすり合わせてある。

「前回の周回プレイヤーがコーラル神殿に訪れたのは1年前。他にも4人訪れた人がいるとして、それぞれがどれくらい前に来て、一番最初にこの世界に飛ばされたプレイヤーがここに来たのっていったいいつぐらい前なんだろうね」

 その答えを弓花は持っていない。風音にも分からない。


「私たちが元の世界からこちらに来るまでの間にいったいどれくらいの時間が過ぎているんだろう?」


 それが二人には分からない。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・レザージャケット・鉄の小手・布の服・皮のズボン・狂鬼の甲冑靴・不滅のマント・ポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪

レベル:19

体力:64

魔力:107+300

筋力:25

俊敏力:18

持久力:14

知力:27

器用さ:19

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』

スキル:『ゴブリン語』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー』『突進』『炎の理:二章』『癒しの理:二章』『空中跳び』『キリングレッグ』『フィアボイス』『インビジブル』


風音「量子コンピュータのクロックアップした仮想世界という設定ならまだ可能性はあるかも」

弓花「ここは別次元でそれぞれの元の世界に帰れるという設定はどうかな?」

風音「実は私たちはコピーされた存在で本物は普通に生きてる説」

弓花「それ、私たちが戻れないから却下」

風音「却下いうてもねえ」

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