表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
ブラックフォレスト編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

338/1136

第三百二十七話 森へ行こう

 酒場でひと騒ぎしたその翌日。風音たちは早朝訓練と朝食を終えた後、ウォンバードの街へと向かうヨハンとマーゴと馬車の停留所でお別れの挨拶をした。すでにパーティ登録は完了しておりメールのやりとりも可能である。何かあったら互いに連絡を取ろうということを伝えあって風音たちはグラサンふたり組と別れたのであった。


 その後は自由行動時間である。風音たちは直樹やジンライ、ルイーズたちと別れて、女子組で買い物を決行。まあ女子だけで買わにゃならんものとか色々とあるのである。他のプレイヤーが広めたのだろうか、幸いなことにそうした方面で風音たちが苦労したことはあまりないのだが。現代知識チート万歳とかそんな感じなのだろう。


 そして風音たちが買うものも買い、宿に戻ってみると、そこでライルと共に待っていた直樹の手には冒険者ギルドからの依頼書が握られていたのであった。



◎シジリの街 ボルシーサーの宿


「直樹、それは?」

 風音は、直樹がペラペラと持っている依頼書を見ながら尋ねる。

「依頼書。あ、もちろんまだ受けてはいないぜ」

 直樹も姉……というよりはパーティのリーダーに断りもなく、クエストの依頼を受けたりするつもりはないのだろう。

 もっとも現時点で、戴冠式まではまだ一ヶ月はある。個別に依頼を受けたいというのであれば、風音としてもそれもまた良しではあったが、そういうわけでもないようだった。

「いやさ。冒険者ギルドにいったらちょっと泣きつかれてさ。とりあえず仲間と相談するって話だけして、こいつを持ってきたんだけどさ」

 どうやら直樹は知人からその依頼を持ち掛けられたようである。

 直樹は風音たちと出会う前はこのシジリの街に滞在していた。そしてジンソード酒場の用心棒を受けながら、冒険者としても行動していたため、この街でもそこそこ顔が広い。もっとわかりやすく言えば、コミュ力高いイケメンはモテまくりの大人気であったのだ。

「結構面倒ごとっぽくてさ。ちょっと見てくれないか」

 そういう直樹から風音は依頼書を手渡され、中身を確認する。そこにエミリィの視線が直樹に突き刺ささった。

「ねえナオキィ、その泣きついてきたのって、受付嬢よね」

「まあ……なぁ」

「まさか。首についてる口紅の跡もその受付嬢のなの?」

「あ? 本当かよ。いや、これはオーガンのところの」

 それはオーガンの庇護化にある歓楽街の店の女性と会ったときに巫山戯てつけられたものであった。後ろにいるライルもよくよく見ればキスマークが頬についていてニヘラーとしていた。

「あーそー、そうなんだー。へー」

 そしてエミリィの冷たい言葉とティアラの悲しげな目線が直樹に向けられた。風音はそんな直樹の言葉に(ああ、見栄張っちゃって……)と残念な子を見る目になっていた。一方で弓花はどうでも良さげだった。あと、ライルが幸せそうなので(良かったねえ)となま暖かい目で見ていた。それは年上の男の子に対する女子高生の所作ではない気がするが、完全にガンチューにないようなので仕方がないといえばない。

「いや、なんにもなかったぞ。なかったからな姉貴」

 姉の視線がいちいち気になる直樹の言葉に、しかし風音は慈愛に満ちていた顔をして頷いていた。

(分かってる。分かってるよお。キスマーク、頑張って自分で描いたんだよねぇ)

 そんななま暖かい優しさを滲ませながら、うんうんと頷いていたのであった。

「ま、まあ分かってくれればいいんだよ」

 そして姉が自分の言葉を信じてくれているのだと受け取った直樹は若干安心して「ふぅっ」と息を吐いた。直樹も風音さえいなければエミリィとティアラの嫉妬心にも気付けたはずだろうが、姉の信頼を得たと感じた直樹はそこで「良し」と自己完結してしまった。罪作りな男である。

「それでその依頼ってのが黒い石の森のクエストなんだけどな」

「マッドスパイダーの討伐って書いてあるね」

 黒い石の森は、オーガなどが生息していると言われている黒水晶が採れる場所である。

「そうなんだよ。ここ最近、オーガの数が減少したせいで闇の森からマッドスパイダーが流れてきたらしくてさ」

「黒い石の森って確か狂い鬼の時の……」

 弓花が思い出して、そう呟いた。その言葉には風音も頷いた。

「そうだね。確か、狂い鬼はその森から仲間を連れてウィンラードの街を襲ったんだよね」

 ウィンラードの街を襲った『狂鬼群討伐』と呼ばれるオーガの侵攻。鬼殺し姫の名が世に知られるキッカケとなったソレは黒い石の森に暮らしていたオーガたちが中心の群れであった。

 そしてその話を聞いて、風音の身につけている、黒い筋肉のような有機的な形となった『竜喰らいし鬼王の脚甲』が震えていた。

「ん、反応してるの?」

 その様子が目に入った弓花が風音に尋ねる。

「うーん。自分の縄張りが荒らされてるのを怒ってるみたいだね。この地域のオーガとマッドスパイダーはかなり不仲らしいよ」

 『竜喰らいし鬼王の脚甲』から伝わってくるイメージを元に風音がそう答える。

「ミンシアナでもそこそこの闇の森が、その先にあるからな」

 ハイヴァーンでは浮遊島の直下にあった闇の森だが、通常の闇の森というのは人里離れた奥地に存在しているモノである。魔素の濃さによって同じ森の中でも魔物の種類も変わってくる。比較的魔素の薄いエリアならば、そこまで強力ではない魔物も生息しているのである。

「その森の入り口付近がマッドスパイダーの生息地で、黒い石の森のオーガとは前から争うことも多かったらしいからな」

 その光景は何度も目撃されて、冒険者から冒険者ギルドに報告が入っていたのを直樹は受付嬢から聞いていた。

「ふうん。ランク的にはB以上って書いてあるのね」

 それはマッドスパイダーという魔物がそれだけ危険視されているということでもあった。

「ああ。オーガも減ってそこそこの冒険者も去った後らしくてさ。対応できるのが少ないんだとさ」

「そんで、お鉢が廻ってきたわけか」

「以前にも世話になってるからな。受けてやりたいんだけど」

 直樹が口にした『以前にも世話になってる』と言うところで、エミリィとティアラがビキビキとなっているが、風音も直樹も気がつかない。弓花とライルは我関せずの心だった。

「分かった。ジンライさんたちが戻ってきたら、聞いてみよう。問題なければ、この依頼を受けるよ」

 風音としても新規のスキル習得のチャンスである。そろそろレベルも上がりそうな感じなので受けない理由はなかった。

 そしてジンライがそんな美味しい依頼を拒否するはずもなく、一行は黒い石の森に向かうこととなった。



◎ミンシアナ王国 黒い石の森への道


「カザネよ。ワシは真面目に生きるぞ」

「え、うん? 頑張っ……て?」


 サンダーチャリオットの御者席にはジンライと、珍しくその横に風音がいた。そして突然のジンライの意を決したようなその宣言を聞いて首を傾げつつも、まあ真面目に生きると言うこと自体は良いことだなと頷いたのであった。

 実のところ、ジンライはマーゴに味見を許可した風音の反応に大変ショックを受けていたのだ。そして己の行動を省みて反省していたのであった。

 つまり今の言葉は、ジンライなりのケジメであった。要約すると、おじいちゃん、真面目に頑張りますから見捨てないでくださいという意味である。それは孫のように思っている娘に嫌われたらどうしようという不安から来る言葉だった。実の孫に対してそうした思いが一切わかない辺り、やはりこの男は人間失格ではあるのだが、それを許してきた周囲も悪い。人というモノは環境が造るのだ。

 そんな二人の様子をタツオとユッコネエが馬車の上で「くわー」「にゃー」とふたり仲良く鳴きながら見ていた。

 そして、黒い石の森が見えてくる。先行して見に行っていた直樹とライルがヒッポーくんで戻ってくるのが見えて、風音は手を振った。


「おーい、どぉーー?」


 戻ってきて馬車の横にヒッポーくんを併走させる直樹がその風音の言葉に首を横に振る。

「酷い有様だった。森ん中が蜘蛛の巣だらけだわ」

 直樹はかなり森に近い位置で遠隔視を用いて状況を探ったのだが、森はもう入り口の付近まで蜘蛛の巣で覆われた状況であったのだった。

「厄介だねえ」

 中に入った何組かの冒険者たちが戻ってきてないらしいとは聞いていたが、想像以上の状態のようであった。

 マッドスパイダーは真正面から戦えばオーガより若干劣る程度には強力な魔物ではあるが、自分の領域内での活動となるとかなり厄介で、その上に仲間を呼ぶ習性もある。

「いっそ、森を焼いちゃうってのは……なしだよねえ?」

「木が死んでればありかも知れないけど巣がかかってるだけで問題はなさそうだったからな」

 この黒い石の森で採れる黒水晶とは、黒石樹と呼ばれる木の樹液が結晶化したものである。木を燃やしてしまえば当然黒水晶を取ることが出来なくなる。


 ともあれ、風音たちは一旦は森の入り口まで行って様子を見ようと言うことになったのだった。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪・天使の腕輪

レベル:36

体力:145

魔力:304+420

筋力:67+20

俊敏力:71+14

持久力:38

知力:72

器用さ:47

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv4』『イージスシールド』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』


風音「普通のお仕事来たね」

弓花「なんだか大がかりな話になってるようだけどね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ