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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
死霊王の憂鬱編

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第三百二十三話 悪魔を倒そう

 上位悪魔マーモンミーモンは大悪魔集団『七つの大罪』と呼ばれる者の一人、色欲ルクスリアゼクウの配下である。

 マーモンミーモンも望んでゼクウの下についたわけではないが、マーモンミーモンはあの老人に逆らうことは出来ない。絶対服従という重い制約がマーモンミーモンにはかけられており、その魂にはもはや自由はないといって良かった。

 そしてマーモンミーモンは今、指令を与えられてミンシアナの辺境へと来ていた。詳細は不明だが、ミンシアナにある廃都に住み着く死霊王ヨハンという者が、今後の計画の進行に悪影響を及ぼす可能性があるとの報告が上がってきた為であった。


『まったく面倒なことだね/まったく厄介なことだね』


 愛し合う男女が悪魔化したマーモンミーモンの二つの首から声が漏れる。

 ハイヴァーンから竜船に乗ってやってきたマーモンミーモンだったが、ここまでの旅路は順風満帆とは言い難かった。

 ハイヴァーン公国のリザレクトの街に辿り着いたマーモンミーモンは運悪く白き一団という、以前に『七つの大罪』と戦ったという冒険者の集団と接触しかけていた。

 自分たちの側ではない悪魔狩りが在籍し、リーダーである鬼殺し姫は悪魔を臭いで嗅ぎ分けるという。事実か否かは不明だが、近付かぬよう忠告はされている。人間との戦闘で後れを取るとは思わないが、見つかるのは面倒そうだった。

 なのでわざわざ船を遅らせて乗ったのだが、降りてみると対悪魔の厳戒態勢の真っ直中であったのだ。原因は先にウォンバードの街にたどり着いていた白き一団がブラックポーションの密輸を発見したことらしい。それを聞き、マーモンミーモンは舌打ちをした。マーモンミーモンはブラックポーションのことも白き一団のことも知らない。余計なことに時間をとられることにマーモンミーモンは苛立っていた。

 そしてウォンバードの警戒網は、悪魔としては上位に位置するマーモンミーモンでも抜けるのは厳しいと感じるほどであったが、街にいる悪魔信奉者の力も借りて無事ウォンバードの街を出ることはできた。

 旅の途中、雷の化け物が爆走して真横を通り過ぎたときには肝が冷えたが、まったくマーモンミーモンには眼中なかったようで特に問題が発生しなかったのは運が良かったというべきだろうか。

 もっとも立ち寄ったウルグスカのダンジョン前市場でも、雷の化け物の話題は広まっており、旅人の格好でいたマーモンミーモンも声をかけられ、たいそう困惑することとなる。騒がしいところに近付きたくないマーモンミーモンにとっては、あまりうれしくない事態であったが、それは続いてのシジリの街でも同様の状況だった。いや、そちらは街としても古く、冒険者やアウターなどがこぞって雷の化け物、這い寄る稲妻というらしい魔物を調べており、余計にマーモンミーモンは時間をとられることとなったのである。


『這い寄る稲妻か/魔物かしら』


 結局、それが自分たちの目的地であるムルアージの廃都に向かったということを知ったマーモンミーモンは非常に不安ではあったが、しかし彼らは受けた命令に従うように強制されている。逃げ出すことはできない。


『あれに勝てるか/見た目ほどのものではないかも』


 マーモンミーモンは自問自答する。確かにあの雷の化け物は派手に走っていたが、だが放電自体はそこまで強力な魔力ではないとマーモンミーモンは把握していた。無論、周囲の放電だけが攻撃のすべてではないだろうが、しかし自分たちが本気を出せば倒せぬ相手ではないと感じていたのだ。

 それよりも問題なのはランクSが護衛についていると言うことだろう。

 冒険者ギルドに飼っていた悪魔信奉者からの情報であったが、情報を流した信奉者は捕まったらしいのだ。

 ここ数ヶ月、ギルドマスターを悪魔に殺されたハイヴァーンの冒険者ギルドは他のどこよりも本気で悪魔に対して動いていた。そして信奉者は発見されて、ハイヴァーンの冒険者ギルドの情報ルートをすべて潰されたとマーモンミーモンは聞いている。


『間抜けはどこにでもいるか/使う私たちも間抜けと言えた』


『違いない/違いない』


 男女の笑いが漏れ、そして廃都の中へと入っていく。


『ふむ?/あら?』


 そして中に入った途端に感じた違和感。

 まったく薄い気配ではあったが、恐らくはアストラル体でも感覚が鋭敏でもなければ気付けないほどの結界。それを感じた途端に周囲の魔力がズルズルとマーモンミーモンにと吸い寄せられてくるのが把握できた。


(こちらを認識して術式の構築を行っている?/自動追尾。これがランクSか?)

 悪魔の抵抗力を平然と食い破るほどの完璧な構築の術式に、マーモンミーモンはこれを破るのは難しいと判断する。


『引き受けよう/お願いするわ』

 そしてマーモンミーモンは術のすべてを片方の男性の人格に集中させ、本体の操作を女性の人格のみに変えた。


『筋が飛んでる? ハハハハハハハハハ/これが自動的な術式だとすれば、まだ気付かれてはいないかしら』


 女性のマーモンミーモンがそう口にしながら、周りを窺う。気配はない。男性の人格は妙な幻覚に惑わされていて使い物にならない。戦力は半減だが、ランクSと言えど所詮は人間。こうして手札を封じた以上はまともに勝負すれば結果は決まりきっている……と考えていたマーモンミーモンはさらなる違和感に気付いた。


 身体が動かない。がっしりと不可視の何かに掴まれている。


『卵をかけなければ。新鮮なヤツだ!/なによ、これ!?』


「はーい。つっかまえたーー」


 そして気が付けば、目の前には身長の高いオカマが立っていた。なぜかポーズを取っている。それは荒ぶる鷹を思わせた。細身ではあるが、その肉体は確かに鍛え上げられた頑強なもの。

 そしてアストラル体としての感覚で見れば、今自分を掴んでいるのは目の前のオカマの魔力によるものだと気付いた。しかし、その魔力量はあまりにも大きい。


(マッスルバンザーイイ/魔力を自在に動かして、まるで粘土のように!?)


 マーモンミーモンが驚くのは無理もない。とても人間とは思えない量の魔力を発しながら、目の前の化け物はそれをまるで粘土のように形を変えて、自分を捕らえているのだ。それは凄まじく強固な、アストラル体である自分すらをもしのぐほどに完璧に構築された魔力体。

 未だ、男の人格が術を破れないのだから、話に聞いていた広範囲幻術がブラフだったということはないのだろう。だが、それだけではなかったのだ。

 ランクS冒険者マーゴ・ベルベット。その実力はマーモンミーモンが聞いていただけのモノでは……


「そんじゃあ、やっちゃってえ。かっざねちゃ~ん」

 だがマーモンミーモンの思考はマーゴの声でとぎれる。そしてふと気付いた。


『ヒャッハーーー/なんだ、あれは!?』


 空に『何か』いる。


「あーいよーーーー」


 それは翼を広げて宙を舞うちんちくりんだった。


(マッスルエンジェー/あれは……天使ですって?)


 そしてマーモンミーモンはウォンバードの街で聞いた天使様の噂を思い出す。それは確か白き一団のボスである鬼殺し姫の……


 しかし、マーモンミーモンの思考はそれ以上は続かなかった。


 空より飛来する白き光。それは吸収されて怨念の塊となった数百の魂ごとマーモンミーモンという悪魔をたった一撃で消失し尽くしたのであった。



  **********



「これは、酷いわねえ」

 マーゴは目の前の惨状をそう評価した。

 周囲の建物は崩壊し、巨大で深いクレーターがそこには出来ていた。

 それは白き一団のリーダーである風音の新必殺技『カザネバズーカ・テラバスター』による被害であった。それは、いつか地球を真っ二つにしたいという願いが込められた技である。

 この技はネオバズーカをさらに強化したもので、スキル『ブースト』も追加した速度&威力強化、さらには遠隔視によるTPSサードパーソンシューター的視点、そして天使化による飛翔とファイアブーストによる微調整により命中力強化がはかられていた。その上に今回は『魂を砕く刃』によって悪魔への攻撃力補正が極大レベルで上昇している。

 例え『七つの大罪』クラスでも当たれば、消滅は免れない威力であろう。


 ここ最近は魔物相手の戦闘こそほとんどないものの、風音たちが何もしていなかったわけではない。寧ろ、ただ魔物と戦うよりも厳しく訓練には挑んでいるわけで、戦力という点では強化され続けているといっても良い。


 その結果がこの有様である。


「やりすぎだろう」

 ジンライの自分も戦いたかった感バリバリの非難の視線に風音もアハハハハと乾いた笑いで返す。マーゴの能力によって防御すらもさせてもらえず直撃を食らったマーモンミーモンはもはや跡形もなかったのだ。

「いや、それにしてもマーゴさんも凄かったね。そんな魔力量持った人、私初めて見たよ」

「そっちこそ、想像以上だったわよん」

 マーゴの言葉に風音が「へへへ」と笑う。

 そしてマーゴの能力も恐るべきものだろう。魔力そのものを粘土のように操って攻防一体の武器とするのも驚きだが、それを成せるほどの異常に強固な魔法の構築力と、湯水のように使用できる魔力量も驚異である。

 風音が最初に受けた攻撃も幻術であったからスキルで防げただけで、麻痺や毒などの魔術であれば、おそらくは効果があったに違いない。つまりは白き一団は目の前のオカマに対して全滅していた可能性が高いのである。


 ともあれ、マーゴの任務もこれで一段落というところだろう。ランクSの実力も知れたことは風音にとっても収穫だったと言える。


 そうして、ひとまずの厄介ごとは終了した。しかし、現在の状況を把握するには今より二日前、つまりはヨハンと再会した日へと物語を一度戻す必要があったのである。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪・天使の腕輪

レベル:36

体力:145

魔力:304+420

筋力:67+20

俊敏力:71+14

持久力:38

知力:72

器用さ:47

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv4』『イージスシールド』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』


風音「話の流れがややこしいかな。今話は廃都に来た二日後で、次話は前話の続きから今話の続きに合流って感じになるよ」

弓花「ねえ、風音。あのオカマの人、やたら強くない?」

風音「個人だと最強の一角に入るってジンライさんが言ってた。今後実際に戦う機会があるとは思えないけど、まあ魔力を使ってるわけだから、実は私の持ってる魔法殺しの剣で対抗は出来る……んじゃないかな?」

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