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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
死霊王の憂鬱編

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第三百十九話 廃都に着こう

 シジリの街に向かう途中、風音はゆっこ姉にメールを送っていた。ヨハンについては以前にゆっこ姉に状況を説明し助けてもらえるようにお願いしていたのだ。しかし帰ってきた返事によればランクSが動いているという話はゆっこ姉も知らなかったようである。

 ゆっこ姉からも積極的に情報を集めてみるとはメールには書いてあったが、現状では距離の近い風音達の方がどうあっても対応は早い。なので風音はひとまずゆっこ姉には、ある程度好きにやるのでフォローをお願いとだけ口約束でとっておいた。根回しは大事である。



◎ミンシアナ王国 シジリの街 ジンソード酒場 昼前


 その日、直樹の友人であり、シジリの街のアウターファミリーのひとつ『ジンソード』のボスのオーガンは遅い朝食をとっていた。いつも通りにウォンバードの街から取り寄せたニュースペーパーを手にとりながらの行儀の悪い食事であったがそれを咎めるモノはここにはいない。


「ふぁ、竜船に悪魔ねえ」


 あくびをかみ殺しながらもオーガンの目はニュースペーパーの内容を流し見ている。そしてその記事にはオーガンがよく知る人物たちの名前が載っていた。

(なるほどな。ライルとエミリィも白き一団に加入してるわけか)

 オーガンにも、ハイヴァーンでの風音たちの活躍は多少耳に入ってはいるが、当然ミンシアナにいる身では詳しいことは分からない。最近でも白き一団の槍使いの女が、魔物200匹とボスの狼をその場で食い殺したとかいう信じられない話ぐらいは噂で聞いて知ってはいたオーガンだったが、白き一団の詳細な情報が入ってきたのは大闘技会以来であったのだ。

 そしてニュースペーパーには白き一団のメンバーの名前もすべて載っていた。その中には直樹はもちろん、ライルやエミリィの名前もあったのであった。

「貨物室に潜んでいた悪魔を発見し、からくも撃退することに成功した……か。あの風音の姉さんもミンシアナよりも派手に動き回ってやがるな」

 直樹はともかくライルとエミリィがあのパーティでやっていけるのかはオーガンには激しく疑問ではある。しかし、ミンシアナに着いたという事はこちらにも立ち寄るだろうし、土産話を期待しても良いかなと一人笑みを浮かべていた。


 と、そのときである。外からバタバタと走る音が聞こえたかと思うと、バンッと酒場の扉が開かれた。


「兄貴、大変です!」

「なんだ、藪から棒に。何かあったか?」


 突然の声に酒場で他に食事をとっていた客が入り口に一斉に視線を向ける。オーガンはニュースペーパーを下ろし、部下である男に怒鳴って返した。


「ハイヴァーンで出たっていう『這い寄る稲妻』がこっちに向かってきてます。ありゃヤベエ。逃げねえとこの街なんて一溜まりもないですぜ」

 オーガンの部下はそうまくし立てる。

「這い寄る稲妻?」

 それは少し前にハイヴァーンで騒がれた幻の魔物のことだ。雷を纏い、大地を異常な速度で走る新種の魔物。人を避ける、子供を前にすると止まる、魔物の群れに特攻するなどのよく分からない与太話もあるが、上位精霊クラスのアストラル系の魔物だろうとはオーガンも聞いていた。

 もっとも所詮はハイヴァーンでのこと。竜船で移動するわけでもなし、国を二つ跨いだここまで来るようなものでもないだろうと思っていたのだが。


「そりゃ、マジか?」

「冗談でこんなこと言いませんて。街道沿いに街に向かって進んでいて、もう間近まで迫ってます」


 その会話の途中も酒場の外ではドドドドドと何か音がしている。


「バカな。速すぎる!?」

「チッ」


 オーガンはニュースペーパーをテーブルの上に置くと、急ぎ酒場の外に出る。すると、まるで雷鳴の如き轟音が確かに聞こえてきて、街の外で何かの光が見えて、そして音が次第に去っていった。


「あん。今のがそうか?」

「は、はい。多分」


 そして少しすると別の部下が戻ってきて、『這い寄る稲妻』は街を避けて通り過ぎ、そのままムルアージの廃都の方に向かっていったとの報告が届いたのである。まったくワケの分からない話であったが、ひとまずは危機は去ったらしい。


「あのランクSのことといい、悪魔やブラックポーションといい、ああ、神託ってのもあったか。まったくキナくせえ状況になってるみたいだな」


 部下の報告を聞きながら、オーガンはひとり呟いた。何かが起ころうとしている……と、そう考えながら。



◎ムルアージの廃都 正門前 夕方


 キキィイっという音と共に、轟音が消え、放電現象も消えたかと思えば、ヒポ丸くんとサンダーチャリオットが廃都の前に着いていた。地面が煙をあげている。過去に飛べそうな感じであった。

 そして、扉が開くとそこからはゾンビのようにグテッとした白き一団の面々が降りてきたのである。


「ふむ。夜通し走ってきたからといって、その程度で音をあげるとは情けない」

 ハイテンションのジンライがそういうが、どうもスピードに酔っている状態である。血がたぎり止まない状態だが、恐らく一押しすればグッタリくるのではないか。そんな気配を感じさせている。

「いや、さすがに私もこれはキツいかも」

 いつもならジンライ側にいる風音だが、今はグッテリしていた。確かにサンダーチャリオットの車体も車輪も大きくなって、速度が速くなっても安定性は増したが時速150キロの速度を快適に過ごすには路面が悪すぎるのである。

 もっともタツオは平気なようで、風音の頭の上でのんきにくわーっと鳴いている。竜族は丈夫だ。


 今回、風音たちは当初の予定であるウルグスカのダンジョン前市場には立ち寄らず、夜通しで馬車を走らせながら急ぎムルアージの廃都へと向かったのだった。そして人目を気にせず爆走し続けた結果、僅か1日半でウォンバードの街からここまでたどり着いていた。途中、仮眠を取らせるために寝れる速度ぐらいまでスピードを落としたり、風音とジンライが操縦を交代したりもしたが、それでも飛竜便に匹敵する速さである。それに途中馬車を追い越したり、旅人の前を通り過ぎたりもしたので、また色々と噂が飛び交いそうであった。そうして多大な犠牲を払うことにより、風音たちは今ムルアージの廃都にたどり着いたのだった。


 ともあれ、目的地であるムルアージの廃都には到着したので風音は良しとした。もっともそれは叡智のサークレットによって酔いもすぐに覚めた風音だからこその判断だ。他のメンバーはゲロりそうだがそれは気合いでどうにかするしかなかった。


「これでランクSの人を追い越してるんなら良いけど」

 風音が街を見ながら、そう口にする。

「実際にいってみないと分からんさ」

「ごもっともで」

 そしてジンライの率直な言葉に風音は肩をすくめながら、仲間たちを促して廃都の中に入っていくのであった。



◎ムルアージの廃都 中央通り


「それにしても、すごいわねえ」

 廃都に入った途端にルイーズが驚きの声を上げる。

 それは確かに驚くべきことだったのだ。以前に来たときとは街の空気がまるで違っていた。

「以前に来たときの重苦しい空気が完全に消えてますわね」

 ティアラも目をパチクリさせて周囲を見ている。

 かつて来たときは、街全体に呪いのような重い空気が漂っていたのだが、今はもう完全にその気配はない。恐らくは魔物なども出てくることはないだろうというほどに澄み切っていた。

「浄化された? でもこんなのほとんど神の奇跡に近いわよ」

 都市そのものの浄化。ここまでの規模でのものだと高位の神官たちを多数呼び寄せても不可能に近いだろう。

「ま、詳しいことはヨハンさんに聞けばいいんじゃない?」

 その風音の言葉にルイーズは頷く。

 確かにこの状況を知っていそうな人物と言えば、ヨハンぐらいしか思い当たらなかったのだ。


(筋肉……が生えてる?)


 そして歩いている途中、直樹は自分の目の前の荒れた花壇にたくましい上腕二頭筋が目立つ腕が生えていることに気が付いた。均等に並んで五本生えている。もっともこんな荒れたところに生えているのは不思議ではあるが珍しい話でもない。大豆を埋めて生卵をまいておけば筋肉は生える。それはこの世界では常識の話だった。

 そう直樹は考え、特に気にもせずに仲間たちとともに先に歩きだした。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪・天使の腕輪

レベル:36

体力:145

魔力:304+420

筋力:67+20

俊敏力:71+14

持久力:38

知力:72

器用さ:47

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv4』『イージスシールド』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』


弓花「うっぷ」

風音「近付くなーー」

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