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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
死霊王の憂鬱編

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第三百十八話 大急ぎで行こう

 さて、めでたく(?)ウォンバードの街からの離脱を完了した風音達はウルグスカのダンジョン前市場に向けて馬車を走らせていた。市場の付近で一度夜を明かし、そして翌日にシジリの街へ到着という予定である。

 そして風音とルイーズは竜船管理局内に籠もっていたため、外の情報をあまり掴んでいないとのことであったので、馬車内でメンバーが知り得た情報の交換を行うこととなったのであった。


「そんで、私とルイーズさんがふたりで監獄のような場所に閉じこめられてる間に何か情報はあったの?」

 ウォンバードの街については一先ず置いておくことにして、風音は馬車内を見渡しながらそう尋ねた。


(監獄……?)

(俺、クラークさんが涙目で買い出しに行ってたの見てるぜ)

(随分と部屋も改築してたらしいわよ)


 そんな陰口にも風音は耳を塞ぎ、まずは挙手した直樹に「はい、どーぞ」と指をさす。そして姉に良いところを見せたいのだろう。直樹は張り切って答える。


「姉貴が気にしていたミナカさんなんだけど今はこの街にはいないみたいだぜ」

 予想していた答えではある。あの街にいたのなら管理局に会いに来てくれるぐらいはしただろうと風音もルイーズと話していたのだ。

「大闘技会の後にこっちについてからはギルドの討伐依頼をいくつかこなしたらしいんだけどさ。しばらくしたら出てったらしい」

「なーるほど。まあ、定住じゃない冒険者ならそんなもんか。どこ行ったのかは分かる?」

 風音の言葉に直樹は首を振る。

「王都の方に向かうって言ってたらしいけど、それ以降は分かんないな。王都のギルドで聞いてみるしかないんじゃないかな」

 ここウォンバードで出会い、大闘技会終了までをいっしょに過ごしていた東方の国ジャパネスの少女ミナカ・ライドウ。風音にとっても再会するのが楽しみな相手でもあるが現時点ではつまり居場所は不明ということだった。

 もっとも会わねばならない用事があるわけでもないため、特に掘り下げる必要もない。なので続いて手を挙げたエミリィに風音は話を振ることにした。

「こっちで聞いたのはブラックポーション関係よ。ギルドの方でも情報を集めてたらしいんだけどミンシアナ王国内でも思ったよりも広まってるみたいなのよね。王都でも売人が何人か捕まったって聞いてるわ」

 その話には特にルイーズが眉をひそめる。

「やっぱりこの竜船経由かな?」

 風音の言葉にはエミリィは首を傾げた。

「うーん。さすがに冒険者ギルドでもそこまでは分からないみたいだったけど。そもそも竜船経由はカザネが暴くまでは知られてなかったわけだし、今はまだ竜船経由での密輸自体が伏せられてるから」

 竜船管理局としても局員が隠れてブラックポーションを運んでいたことをそう簡単には公には出来ないのだろう。もっともこの国のトップであるゆっこ姉にはすでに知れ渡っているため、竜船管理局という組織にミンシアナがどう裁きが下すのかは分からない。風音たちが拘束という名目で竜船管理局にいる間に至れり尽くせりだったのは、ゆっこ姉とのパイプのある風音に対しての印象を良くするためでもあったわけだ。

「まあ、ソルダードが製造元であるなら、正規ルート以外でもミンシアナに持ち出すのは難しくはないでしょうし、竜船はあくまでルートの一つと考えた方が良いんじゃないかしらね」

 そこまで口にした後で、ルイーズが思い出したように声を出した。

「ああ、そうだ。ブラックポーションなんだけど、あれ。多分原料は人間だから、絶対に手を出さないようにしてね」

 御者席で運転しているジンライと、ルイーズから話は聞いていたメフィルス以外の全員がギョッとしてルイーズを見た。

『余は見ておらんが、あのヒルコと戦ったときに白い仮面が出てきておったのだろう。ありゃ、取り込まれた人間の魂が具象化したものだ。ペルソナとも呼ぶがの』

 ルイーズの腕の中にいるメフィルスがそうルイーズの言葉に付け加える。

「ペルソナ……」

 ゲンゾーもヒルコになった後に白い顔を出していたし、竜の里を襲った魔物たちにも白い仮面は付いていた。

「竜船での件は、あのナザレという男が持っていた白い仮面ペルソナを呼び水にしてブラックポーション内に沈殿していた他の魂が活性化したのが原因のようなのよね」

「でも、あのナザレってのはその場で殺されたんだよな」

 直樹の疑問の言葉にはルイーズも頷いた。

「そうね。制御できるとでも思ってたのかもしれない。まあ、最終的に取り込まれて一部にはなってたじゃない」

 確かに、あのいくつかの白い仮面の中にはナザレの顔もあった。

「悪魔の臭いもなかったし、普通の人だったのに」

「だからこそ運び屋に選別されたんでしょうね。それに悪魔の力を欲する者はどこにだって少なからずいるわ。数少ない不老長寿の道の一つだしね」

 精神生命アストラル体への安定変異。寿命のないモノに至る方法として悪魔化は実証された手段でもある。

「だからこそ、ブラックポーションは危険なわけよ」

 ルイーズはブラックポーションが自身を悪魔へと変える薬などと広まることを恐れていた。下手をすれば我先にと使用するバカが一斉に発生しかねない。

「悪魔の眷族化なんて奴隷以下のものなのにね」

「ルイーズ姉さん、それでブラックポーションの原料が人っていうのは?」

「ああ、ごめんなさい。脱線したわね。と言っても言葉通りよ。多分ブラックポーションを使用してアストラル化した廃人を原料に何かの液体と混ぜ合わせて造ってるんだと思う」

 ジンライの問いにルイーズがおぞましい結論を口にする。

『無数の小さな白い仮面は混ぜ合わされた連中の魂が分断してかき混ぜられた結果かの?』

「でしょうね。ひとりの意識に引っ張られるよりは無数の意識が混ざり合ってる状態の方が使用者も保つだろうし」

 その場にいる全員の顔に嫌悪感が現れているが、だからと言ってどうできるというわけでもない。風音も嫌そうな顔をしながら、その場の会話で気になった部分を尋ねる。

「うーん、原料は悪魔化した人だとしてさ。それじゃあ混ぜ合わさった液体って何なの?」

「そりゃあ魔力が溶けやすい液体……かしらね?」

「魔力というとマナポーションみたいな?」

 風音もピンチの時に使用する切り札的なヤツである。だがルイーズは首を横に振る。

「そうだけどあれは希少過ぎて量産には向かないものだわ」

「だったら聖水なんかはどうかなルイーズさん?」

 続けてのエミリィの問いにもルイーズは首を横に振った。

「そりゃ聖水は聖霊様を呼び出す媒介にも使えるし方向性は合ってるけど聖属性の水を悪魔に使ったら消滅するわ」

「なるほど。そりゃそうか」

 当然の話ではある。魔力を含む液体、何か記憶に引っかかるモノがあるのだが風音はとりあえずそれを置いておくことにした。

「そんじゃ他、なんかないの?」

「そういやランクSの冒険者が廃都に向かったってのがあったな」

 風音の言葉を受けてのライルの報告に風音たちがビクッと顔を上げた。

「え、なに?」

 その反応にライルが「あれっ?」という顔をする。ジンライは孫の顔を見ながら苦笑する。

「カザネよ。ライルにはムルアージにいるヨハンのこと伝えてはいなかったのか?」

 対して風音も苦笑いだ。

「いやーシジリの街から離れたところにいる知り合いってのは言ってたと思うけど」

「ああ、それは聞いたけどよ。んん? もしかして廃都に住んでるのか? 死霊王って凶悪なのがいるところだろ、そこ?」

 ライルは状況がまったく分かっていないようだった。ちなみにエミリィは知っているようで「あちゃー」という顔をしていた。女の子ネットワークの情報交換はバカに出来ないのだ。

「まあ、凶悪かどうかはともかくいるね」

「ランクSが動いたってんだから、当然それを退治しに行ったんだろうって話になってたんだけどさ」

 ライルの言葉にさらに周囲の空気が重くなる。ライルの目が失敗したかな~とキョドってるが、これはお手柄というべきだろう。知らずにノンビリ移動してたら手遅れになっている可能性があった。もっとも今の時点から急いで間に合うのかも現時点では分からないが。

 ともあれ御者席に並んで座っているジンライから「よくやった」と肩を叩かれたことでライルの緊張もようやく解けたようだった。人間としては尊敬できないが、武人としてはライルにとっては神様のような立場のジンライからのお褒めの言葉である。そしてライルは小さくコブシを握りしめて小さく「よっしゃ」と呟いた。


「どうする?」


 そしてそんなライルの心情はさておき、現状の問題はヨハンである。当然、ジンライはリーダーである風音を見て、その指示を仰ぐ。

「どうするも何もとりあえずは行くっきゃないでしょ。ヨハンが悪さしてるとは思えないけど死霊王って肩書きはマジもんだからね」

「狙ってくる方もいるかもしれませんわね」

 ティアラも神妙な顔でそう口にした。ヨハンは骨しかない人物であったが、温厚で争いを好みそうもない性格だった。それに理不尽に暴力が向かうかもしれないと思うと、焦る気持ちが加速していく。

「どのみち、ルートはシジリの街を経由した方が早い。ライル、その話はいつのことだ?」

「冒険者ギルドで聞いたのは昨日だけど、出てったのは5日くらい前だって聞いたぜ」

「ギリギリかな?」

 風音がそう口にした。ウォンバードの街からムルアージの廃都まで普通の馬車で最速で進むなら街や村を乗り継いでも大体5日ほどであろう。すでにたどり着いている可能性もあるし、相手が急いでいなければヒポ丸くんとサンダーチャリオットなら間に合うかもしれない。

「微妙だな。飛ばすか」

「ん、了承。最速で行こう」

「了解だリーダー!!」

 ジンライの顔から凶暴な笑みが洩れる。ヒポ丸くんの久方ぶりの全力走行を許可されたのだ。馬車の中から呻き声が漏れるが今回は反対する者はいない。


 そしてその日が伝説の魔物『這い寄る稲妻』がミンシアナ王国内でも観測されることとなる最初の日となったのであった。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪・天使の腕輪

レベル:36

体力:145

魔力:304+420

筋力:67+20

俊敏力:71+14

持久力:38

知力:72

器用さ:47

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv4』『イージスシールド』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』『精神攻撃完全防御』


弓花「次回から爆走伝説~特攻の迅雷~が始まります」

風音「始まりません。というか、そのフリは一回あればいいから」

弓花「ショボン」

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