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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
魔王新生編

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第二百九十八話 対戦をしよう

 白き一団が東の竜の里に戻ってきた日のその翌日、大竜御殿の中庭では、英霊ジークと隻腕の状態のジンライが互いに槍を構えてぶつかり合っていた。それはオダノブナガ戦の後に風音がジンライと交わした約束が果たされたものだった。


 ジンライは英霊ジークの槍の腕を、この世界の槍術の極みと認識している。自分がそれに届くか否かを確かめたいと、心底思っていたのだ。そしてそれは確かに叶った。だが、その頂はやはり高かったのだ。


「ぬぅぉお!」


 あの悪魔エイジを切り刻んだ槍術『千の閃き』をジンライが放つ。それを目の前の英霊ジークは至翼の槍リーンですべて弾いていく。

 『千の閃き』は槍術最速の突き『閃』の連撃である。にも関わらず、英霊ジークの表情には焦りはない。そのすべてを涼しい顔で防ぎきっている。


「しっ!」


 限界まで神経をすり減らしながら繰り出すジンライに、しかし英霊ジークは僅かばかり前に進んで、そのままジンライの槍の先に自らの槍の先でぶつけて打ち止めたのだ。そして均衡状態が生まれる。


(ぬっ、動けぬ)


 ジンライが戦慄する。相手の力の加減が絶妙過ぎると。押してもビクともせず、だが退けばそのまま押し込められるのは確実。その恐るべき手練れの技量にジンライの背筋が凍る。しかし、だからこそ対峙する意味があるのだ。

 そしてジンライの心にわずかな揺らぎがあったのか、バシンッと空気が震え、ジンライが強く弾かれる形でその均衡は崩れた。

 弾かれたジンライは無理矢理に踏ん張り、前へと踏み出す。


(正攻法ではまるで歯が立たんな)

 ジンライは頭を切り替える、相手が格上なのは分かっていたこと。正面からでは分が悪いと。


「ならばッ!」


 グラリとジンライが揺れたかと思えば、一瞬でその姿が消える。クノイチのイリアより教わった忍術『隠形歩』、それを極めたジンライは目の前の視界からすら瞬時に姿を消すことも可能だ。だがそれも一瞬、


「ぐっ!?」

「悪くはないが」


 気がつけばジンライが地面に突っ伏していた。

「師匠ッ!?」

 弓花の声が響いた。弓花から見ても完全にジンライが姿を消していたように見えていた。しかしジークにはジンライの軌跡が見えていたようだ。

「我は叡智のサークレットの遠隔視の力を持つ。それは視界外までをも見通すのだ。故にその手の技は効かんのだよ」

 遠隔視による擬似的な三人称視点の操作。背後すらも『見えている』が故に英霊ジークに死角はない。なおかつジークは全状態異常無効、魔法反射、体力ほぼ最高にまで鍛え上げ、その防御力は鉄壁どころか金剛石をも上回るのである。防御中心に鍛えすぎたために火力不足が否めないジークではあるが、その技量は人類最高レベルに匹敵するのだから、鍛え上げられた英霊の強さというものがいかに異常であるかが窺えた。

 しかし、そんな英霊ジークを前にしても、地に這いつくばったジンライの目の光は失われてはいなかった。そして、そのままの体勢から白の竜牙槍『神喰』を突き上げる。そのジンライの気力に呼応してか『神喰』は白く輝き、ジークへと迫った。

 常であればその一撃は相手に確実に通っていただろう。無理だと思われるような体勢からの強力なひと突きだ。しかし、その一撃をもジークは易々と避けてしまう。


(届かぬか!?)


 悪魔エイジとの戦いを経て、ライノクスから初の一勝を得て、そして闇の森の魔物をも打ち破ったジンライの力を以てしても届かない。英霊ジークは目の前にいるのに、槍を届かせることが酷く遠い。だが身体は動く。再び立ち上がり、構えて、そして突く。

 そんな、ここまで一方的な展開であるにも関わらず、実のところ槍の技量に置いては両者にはそこまでの差はなかった。ジンライは確かにその領域に届いている。それはこの闘いを見ているライノクスの食いつくような視線からも明らかではある。

 だが、それ以外の『すべて』がジンライには足りない。しかし、だからといってジンライがジークと同じような道を歩むことは不可能な話だ。それは本来人の身であるならば数百年という年月を経ても到達し得ぬほどのもの。故にジンライは己のすべてを槍に注ぐしか勝ち目はない。


「うぉおおおお!!!」


 ジンライが叫ぶ。届け、届けと槍を突き出す。

 しかし、そのすべてを英霊ジークは避け、受け、いなし、時には叩きつけ、地面を転がせ、這わせる。槍の技量において両者の実力に差はない。だが勝てない。そして英霊ジークに万が一というミスはない。彼は戦闘中、常に最高のパフォーマンスを維持し続ける。機械のように。


 だからこそ、それに届かせるにはジンライ自身が今よりも一歩先へと進まなければならなかった。ただひたすらに、研ぎ澄まし、研ぎ澄まし、研ぎ澄まし続ける。

 己の槍から、それを握る腕、力を絞り出す肉体、支える足、それらすべてがただひとつの突き刺す存在へと変じていく。


 そう、ただ純粋に、己を突き立てようと、ジンライは『その認識』にすべてを注いだ。そうしたものになろうと極めた。

 そして届いたのだ。


 カンッと音がした。


「ッ!?」


 それは僅かにだが、確かに英霊ジークの鎧にジンライの槍が当たっていた。槍から発せられた白い光が周囲に散るなか、確かにジークの鎧に槍が当たり、傷が付けられていた。

 周囲で見ていた風音達には何が起きたのかを正確に把握できたかどうか。ジンライの闘気と黒岩竜の竜気、そしてグングニルの神気が混ざり合い、その気の絡み合った竜巻が、まるで一本の巨大な角のように一点へと向かって纏まり、恐るべき一撃へと昇華したという事実。


「見事」

「ふむ。当たっただけ……それだけがここまで遠いか」


 ジンライは朦朧とする意識の中、そう呟いた。だがその顔は、満足そうではあった。

「ただの人の身でここまで届くことこそが異常と知るべきだな。まあ、良い」

 時間はジャストだ。英霊ジークの召喚時間は終わり、そして光の粒子となって消えていく。


「最後の突き、アレだけは確かに我を超えた。『一角獣ユニコーン』、与えられた二つ名、それをその技の名と成すといい」


 その言葉と共にジークは消え去り、


「承った」


 そう言ってジンライもその場で崩れ落ちた。悪魔の戦いで開眼したその超絶的な技量も肝心のジンライの肉体がついていけていない。それがジンライの限界であり弱点でもあった。だが、今は満足しているようであった。


 こうして、ジンライが望んだ夢の時間は終わりを迎えた。


 神竜帝ナーガのコアが代わった翌日、風音に頼み込んで呼んだ英霊ジークとの戦いは、ほぼ完敗。しかし、わずかに鎧に傷を付けることにジンライは成功する。


 その戦いを見ていたライノクスと、喚ばれて一緒に観戦していたジン・バハルが風音の方を目を輝かせて見ている。その意味するところが分かっている風音は首を横に振る。

「あー、もっかい呼び出すにはしばらくかかるんでパスで」

 がっくりとライノクスとジン・バハルが肩を落とした。目の前であれだけの勝負を見せつけられたのだ。血がたぎって仕方がないのだろう。なので、弓花とライルがその場で連行されて強制試合となったのだった。普段は黙々訓練に励んでいる弓花が久方ぶりに悲鳴を上げていた。


 なお、神狼化から化生の巫女スキル『深化』でさらなる変化を遂げた弓花を相手にはさすがにライノクスも手こずっていたようだ。だが、その速度とパワーに慣れてすぐに対応し始めたライノクスはやはりただの童貞ではないのだろう。現時点においては確かにこのライノクスはジンライ以上の化け物であることを弓花は実感した。


 ちなみにスキル『深化』とはステータスがさらに上昇する上にケモ度が大幅に上昇するスキルである。

 これが発動した弓花の見た目は、服を着ているがデカイ銀色の狼が立っているだけという感じである。足の関節具合とかがもう人ではなかった。

 そして「もっふもふやないかー」と風音大歓喜であった。普段、相棒であると定義付けているユッコネエをもふったりはしない風音は弓花でもふもふしまくったのである。


 その横ではユッコネエが「かめへんでぇ」「ばっちこいやー」という意気込みで仰向けの大の字で構えていたが、結局風音は飛び込まずタツオがボフンッと乗ったのでユッコネエは「にゃー」と鳴いた。戦士として扱われるのは本望だがたまにはご主人とも戯れたいユッコネエであったのだ。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪・天使の腕輪

レベル:36

体力:145

魔力:304+420

筋力:67+20

俊敏力:71+14

持久力:38

知力:72

器用さ:47

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『イージスシールド』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』『六刀流』


弓花「神狼の『深化』は基礎能力上昇というところかな。後クロマルたちが合体する」

風音「竜人化はスキル増えるよね。見た目、リザードマンよりトカゲっぽいけど」

弓花「うーん、翼が生えて飛べるようになるしね」

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