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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
天空の島編

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第二百八十四話 ガンをつけよう

 イスカニルの森の中をドラゴンイーターを倒しつつ進行していった風音たちがエンジェリートの街を出てからドラゴニル造船所にたどり着くまでに三日ほどかかった。想定よりも時間がかかったのはドラゴンイーターの素材回収のためである。

 ともあれ、風音たちはドラゴニル造船所へとたどり着いた。そこはかつて竜船を建造し続け、大陸の足を生み出す聖地とまで言われていた。しかし今ではもうかつて造船所であったと思われる廃墟と廃棄された竜船があるだけの場所だ。

 モーフィアの話によれば、千年前の大戦時に竜船製造ラインの基幹部分が破壊され、700年前の悪魔襲撃の影響でメンテナンス機能すらも失われたのだという。

 結果、故障した竜船がここに送られるも修理は出来ず、壊れた竜船が大量廃棄されてこの地に放置されたそうだ。

 エルスタの浮遊王国の名が知られるまでの間、この浮遊島は竜の墓所という名でも呼ばれていたが、それはこの廃棄された造船所が由来なのである。



◎浮遊島 ドラゴニル造船所前 早朝


「ふー ようやく着いたねえ」

 造船所の少し手前で風音が伸びをしながら、そう口にした。

「ま、昨日まではずーっと素材回収しかしてなかったからな」

「一日就寝してもまだ疲れがとれませんわね」

 直樹の言葉にティアラが同意する。なにしろ彼らは昨日までの3日間、延々と歩いてはドラゴンイーターの素材を取り、歩いてはドラゴンイーターの素材を取りを繰り返してきたのだ。しかも寄生された飛竜ワイバーンも竜種である以上は、その素材はかなり高価な上に使える部位は多くある。そして基本的に冒険者というモノは切羽詰まってるわけでもなければ、倒した以上は素材はちゃんと手に入れるべきであるとされている。

「合計37体、寄生されてた飛竜ワイバーンなども含めれば二倍の74体か。ジンライくんしか倒してないけど凄い数になったわね」

 ルイーズの言葉にジンライは渋い顔をする。

「倒したと言ってもありゃ闘いとは呼べません。その上、素材はワシだって回収しとるんですから、余計に働いとりますよ」

『若返ったのだから、それぐらいはやるがよいさ』

 メフィルスの言葉にさらに渋い顔をしながらジンライは周囲を見る。

「それでカザネ、ここが造船所か。随分と年季の入ったところのようだが」

「そうだね。もう数百年単位で人が立ち入ってない場所らしいしね」

 風音たちはここに来るまでにモーフィアからこの造船所のことは聞いていた。この造船所にもヴォード遺跡と同じように守護者ガーディアンが存在しているそうで、700年前の天帝の塔分断以降はその守護者ガーディアンが暴走し来る者すべてに襲いかかるのだという。そのため鳥人族もここには訪れなくなり、そのまま数百年が経過しているとのことだった。


「一応、遠隔視で周囲を窺ってるんだけどね。ちょっと魔物は見当たらないな」

「こっちも同じくだ」

 風音の言葉に直樹も頷いた。直樹は遠見のネックレスによる『遠隔視』とスキル『察知』の合わせ技により風音よりも探査の精度が高いようである。

「ではどうする?」

「とりあえず探索してみよう。敵はアダマンスカルアシュラとあとデッカイ機械の竜らしいけど」

 モーフィアから聞いていた守護者ガーディアンの6本腕の骸骨はアダマンスカルアシュラだろうと風音は考えている。だが機械の竜というのはゲーム中でも見たことがない。蛇に近い東洋竜タイプらしいのだが風音には記憶になかった。

 ともあれ、姿が見えぬのでは仕方がない。周囲を警戒しつつ、風音たちは造船所の入り口から中へと入っていく。そして風音たちが目撃したのは石造りの古代の造船所と、そこに無惨に転がっている竜船の残骸たちの姿であった。



◎浮遊島 ドラゴニル造船所


「さーてと、バットラー13号さんは竜船を壊すか何かして動力球を手に入れてきてーって言っていたけれどさ」

 造船所の中に入って大小の廃棄竜船を見ながら風音は呟いた。

 その風音の言葉通りにバットラー13号は出来れば〜という程度の軽い感じで言ってきていた。そもそも彼らはロボットであり、自らの役割以外には基本興味がないようなのである。例え、明日島が壊れようと、彼らは自らの役割を全うするだけだろうし、鳥人族が滅びようと、ハイヴァーンが危機に陥ろうと、自分が壊れて役割が全うできなくなろうとあまり気にしないのだ。今回のことも風音たちが訪れたので、単純に修理の手伝いを頼もうかと軽く考えていただけのようであった。


(まあ、感覚が私らとは違うんだろうなあ)


 そんなことを考えながら風音は周囲を見渡す。 

「こういうのってなんか出そうな雰囲気だねえ」

「何かとはなんでしょう?」

 一緒に歩いているティアラが首を傾げる。

「んー死霊とかそんなの?」

 今となっては幽霊も普通に出る世界である。ゾンビだっているのだから、あまり怖がっても仕方がないかなぁ……と風音は考えながらティアラにはそう答えた。

「わたくしの炎であれば邪霊など一瞬で浄火してさしあげますわよ」

 その風音の言葉にティアラはグッと拳を握ってそう返す。ここ最近の炎の有翼天使フレイムパワーの活躍ぶりから、ティアラはやや好戦的になっていた。

「うん。出たらね」

 意気込んでいるティアラに風音も(ノってるなー)と思いながら、そう返事をする。あまりやる気になり過ぎて空回りしても困るが、ティアラが自爆特攻も可能な召喚騎士を操るアタッカーである以上は、消極的であるよりはイケイケの方が良いだろうと風音は考えていた。

「それにしても竜船が多いな。今大陸で稼働してるのなんてわずかだってのにさ。でも本当に中に動力球あんのか? 普通出るとき持ち出さねえ?」

 ライルの言葉に風音が「まあ、あるかどうかは探してみるしかないんだけどさ」と前置いてから答える。

「どうも守護者ガーディアンが暴走してからは、ここに入ってきた人間は船から出てくるとすぐさま襲われてたらしいんだよね。で、たいていの人はソレで殺されちゃってるし、逃げ出せても、二度と竜船には戻らない人がほとんどだったんだって」

 風音の言葉に、ジンライ以外はうわーという顔をした。それはつまり自分たちもその危険があるということである。

「でも、その守護者ガーディアンも見当たらないねえ」

 風音が眉間にしわを寄せながら、周囲を窺う。風音はアダマンスカルアシュラに一度ヴォード遺跡で奇襲されている。風音としても慎重になってしまうのは仕方のないことだった。

「ワシ等の隙を窺っておるのだろう。竜船に近づいた途端に後ろから刺される気がしてならんな。あのアダマンスカルアシュラが守護者ガーディアンなら、骨を分離させて竜船と竜船の間の僅かな隙間に隠れていてもおかしくはない」

「だねえ。さすがにこうもゴチャゴチャした場所だと不意うちされても対処し辛いし」

 ジンライの言葉に風音がため息をつく。アダマンスカルアシュラは風音の『直感』も『犬の嗅覚』も通用しない相手である。『アラーム』も動いていない相手では、反応はしない。

「ちょっと強引だけど、まとめて誘うしかないかな」

「何か策でもあるのか?」

「うん。ちょっとね」

 そうジンライに言って風音はスキル『情報連携』を使用して全員と意識を繋げる。そしてヴォード遺跡で手に入れた覇王の仮面を取り出した。

「姉貴、それは?」

「ヴォード遺跡の中で手に入れた『覇王の仮面』だよ。王の気配を纏わせる変身アイテム」

 そう言いながら風音はそれを直樹に見せた。その仮面の表面は黄金色に輝き、それはまるで王のようでもあり、悪鬼のようでもある造形だった。直樹はその仮面をみて、閻魔大王を細顔にしたようだと感じた。

「ちょっと、ビビらせて追い出してみる。戦闘準備よろしくっ!」

 そういって風音が仮面を被ると、仮面からはブワッと真っ赤な髪が出てきて流れた。それはまるで炎のように赤く、そして同時に風音の気配が圧倒的な何かに変わった。


「そんじゃ炙り出すよ。スキル・魔王の威圧!」

 

 風音のスキル発動により、周辺の空気が変わる。

 それは『魔王の威圧』スキルの全力発動。それも敵を討ち滅ぼすと言う風音の意思を乗せ、覇王の気配を漲らせた本気の魔王の威圧プレッシャー

 白き一団のメンバーは風音と『情報連携』で意識の同期を取ることによりソレからの干渉を逃れていたが、だが精神こそ護られていても外気にさらされている肉体はビリビリとソレを肌で感じている。


 そして、その威圧プレッシャーはもはや超常の域にまで到達し、物理領域へと干渉し世界の法則を塗り替えて行く。

 それは元凶たる風音を中心に大地を圧迫し、その重圧でクレーターを生み、大地を割るほど。さらに空気を震わせ衝撃波となって周囲を破壊し、竜巻を呼んで瓦礫を巻き上げていく。また、入り口の外の森からは一斉に鳥たちが飛び出し、森の動物や魔物たちが狂ったように叫びだした。それは警告。巨大な何か、圧倒的なる存在がそこにいると吠え続ける。


 そうした混沌の中、もっと影響を受けた存在がそこにはいた。


 それは竜船の残骸の隙間に隠れ、獲物が来るのを待っていた。油断し隙を見せるのを待っていた。背後に忍び寄り突き刺し殺すのを待っていた。だがそんな彼らも瞬時に理解したのだろう。おおよそ意思など持たないはずのソレが、世界に干渉するほどの威圧プレッシャーを受けて危機感を露わにして動いたのだ。


 それは30を超えるアダマンスカルアシュラ。彼らは一斉に隙間から這い出て、後方へと跳んだ。目の前の圧倒的な何かから離れようと、急ぎ跳び下がったのである。


 ソレを見ながら風音は仮面をとってニィッと笑う。少女は予定通りに炙り出せたことに歓喜していたのだ。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪

レベル:36

体力:145

魔力:304+420

筋力:67+20

俊敏力:71+14

持久力:38

知力:72

器用さ:47

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』


風音「ちなみにこの威圧系はようは睨みつけてビビらせるのを極限まで高めたものだから、私が愛らしくて可愛いらしくてか弱いプリチィな女の子であることを知ってる相手とかだと効き辛かったりするんだよね」

弓花「へー」

風音「逆に下手な噂に踊らされて私が怖い人だと勘違いしてたり、こりゃ勝てねえと思ってたり心が折れかかってたりしてる人相手だと良く効くんだよ。後は能力差がある相手には効きやすいし、ジンライさんみたいに心根が強い人には効き辛いかな」

弓花「へーへーへー」

風音「あれ、ノリ悪いね、弓花?」

弓花「私、お留守番だしねえ。まあ私はタツオとイチャイチャしてるから気にせず探索続けててください」

風音「何ですとー」

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