表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
天空の島編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

287/1136

第二百七十七話 無惨に散ろう

 それはあまりにも唐突だった。

 目の前に現れたその6本腕の骸骨は、突如として少女に馬乗りになって襲いかかり、その身を切り裂いたのだ。少女はいきなりの事態にパニックとなりもがいたがふりほどけない。隣にいた親友は一言も声も出せずに一瞬で喉を抉られ既に事切れていた。

 それはあまりにも突然の別れ。少女は自らの友のその凄惨な姿を見て絶叫する。無惨に切り裂かれた親友が、血塗れで崩れ落ちる愛すべき友が、少女の目の前で無惨な躯となって横たわっていた。その目にはもはや命の輝きはなく、淀んだ瞳は空の見えぬ薄汚れた天井を眺めていた。

 少女は吠えた。それは怒り、嘆き、悲しみ、それらをない交ぜにした叫びであった。突然訪れた相方の死は少女の心に修羅をも呼び起こす。

 しかし、目の前の骸骨はそんな少女の叫びなどに怯むことはない。眼球のない相貌から漏れる赤い光は目の前のそれをまるで恐れることもなく、ただ作業のように少女の腹へと刃を突き入れた。少女は腹部が熱くなるのを感じたが、だが今の少女は怒りが熱さを上回る。そしてその手の武器を振り上げて骸骨へと振り下ろした。何度も、何度も、何度も、何度も叫びながら殴り、だがそれも通じず、少女の身体は6本の腕のそれぞれの武器によって貫かれ、そのたびに少女は絶叫した。そして幾度となく切り裂かれた少女は、どうにか組み伏された状態から転げて逃げる。だが骸骨は止まらない。その少女の背に二本の槍を突き刺し、それでも動く少女にさらに残り4本の武器で抉り、切り裂き、砕く。

 だが少女は立ち上がる。痛かろう。辛かろう。しかし少女の中にあるのはただ先に殺された相棒の無念の死のみ。友の死を思って少女は叫び続けた。


「グリリンの仇ぃぃぃいいい!!!!」


 少女は爆弾を取り出すと、それを抱えたまま6本腕の骸骨へと特攻する。玉砕覚悟のバンザイアタック。少女はこの瞬間、神風となった。




 そして風音たちが逃げ出した背後から爆音が響いた。英霊アーチの神風特攻自爆攻撃が行われたようだ。

 それはすべては弓花の機転によるもの。風音がアダマンスカルアシュラの襲撃を受けたとき、後方にいた弓花は一瞬の判断で英霊の指輪を使って風音とアダマンスカルアシュラの間に英霊アーチを挟んだのである。

 その後、風音は突き飛ばされ、アーチはアダマンスカルアシュラに馬乗りにされた。ちなみにだが熊のグリリンは召喚時点でたまたまアダマンスカルアシュラの武器の軌道上にいたために喉を切って死んでいた。飛び出し危険である。

 

 そしてアーチがアダマンスカルアシュラを引きつけている隙に風音たちはその場から脱出したのであった。

「あー、そっか。まだ爆弾持ってたんだねえ」

 アーチはこのヴォード遺跡のアダマンスカルアシュラに対抗するために激炎爆弾という強力な消費タイプの魔法具を大量購入してショートカット用のボタン設定をしていた。アダマンスカルアシュラはコアがないために骨同士の結びつきが弱く、爆発系で吹き飛ばされると弱いのである。それを利用してアーチはこのヴォード遺跡を強引に攻略したのだ。

 そのストックがまだあったのだろう。ちなみに対黒岩竜戦時には炎属性は効かないので使ってなかったようだ。時々NPCが効かない属性の攻撃をするどころか回復させたり反射させたりして獅子身中の虫的になるゲームもあるが、ゼクシアハーツはそういう点では優秀だったのである。


「役に立ったわね。私の英霊!!」

「うん。そうだねえ」


 ドヤ顔の親友の言葉に、風音も助けられた身の上なので、そのまま頷いた。今回間違いなく風音は弓花に救われたのだ。だが、召喚した相手とは言え囮にして逃げ出すのは人としてどうなんだと思わなくもない。しかし緊急措置である。やむを得ない。そう思って心の中の罪悪感を風音は振り払うがアダマンスカルアシュラに馬乗りにされたまま小さくなっていくアーチの姿は当面忘れられそうもなかった。

 そう思う風音の耳にさらに何度かの爆発音が響きわたる。弓花の英霊アーチは見た目に反して体力を限界に近いところまで引き上げているので死に辛い。恐らくは騒ぎを聞きつけて集まったアダマンスカルアシュラたちにも自爆特攻を繰り返しているのだろう。地獄のような光景がそこには展開されているに違いなかった。

「いっしょに残って戦っても良かったのだがな」

「いや、あれに巻き込まれたくはないなー」

 ジンライの言葉の後にさらに爆発音が聞こえ、風音がそう返す。ジンライは黙った。さすがに自爆特攻する相手とはいっしょに戦いたくないらしい。


 ともあれ、危機は脱した。アーチは残り十日ほど過ぎないと再度呼べないが、まあ良い。寧ろ役に立ったことが奇跡であると。いや、前回も前々回も一応役には立ってはいるのだが。


「まあ、ともかくあの相手だと『犬の嗅覚』も『直感』も通じないみたいだね」

 しばらく離れてからフォーメーションが変更となった。スキルによる探査が難しいのであれば、目の行き届くジンライが先頭に移り、風音はユッコネエの横に並んで歩いていた。

「にゃー」

 なお、いつもと違う、風音と並んで歩くシチュエーションにユッコネエはご機嫌であった。スリスリと擦りよっている。そしてそれを見たジンライの心に醜い嫉妬の炎が燃え上がっていた。


(しかしさっきのはヤバかったなあ)


 風音はジンライの視線には気付かぬまま先ほどのことを思い返し、ブルッと震えた。


『ご自身のお力をあまり過信されませぬように』


 そして、いつしかツヴァーラ王国の王宮騎士団長のレイゲルに言われた言葉を思い出す。今では風音も、朝の特訓には参加し己の能力を磨くように努力はしているつもりだ。だが先ほどのはスキルに頼りすぎず、自身の目で確かめておけば対応も出来たかもしれないものだった。そう思い、風音も気を引き締め直す。


 ともあれ、アダマンスカルアシュラも油断さえなければ、単体ではそこまでの驚異ではない。あれの真価は集団でのラッシュ地獄にある。


「ジンライさん、仲間を呼ばれる前に顎を最初に外して」

「おうよっ」


 風音の指示に従い、ジンライがアダマンスカルアシュラの顎の接合部を突いて器用に外す。アダマンスカルアシュラが仲間を呼ぶ方法は顎をカタカタと鳴らす……である。それを外してしまえば、他の仲間が通りかからない限りは仲間を呼べない。

 その後、外すのは腰、肘、膝の部位である。肩や股関節部位を外すと手足が単体で飛びかかるのだ。風音のマテリアルシールドによって体勢を崩させてから弓花とジンライが切り崩す。部位が分かれても追っ手は来るが移動速度は大したことがないのでそのまま放置して逃げる……の繰り返しがヴォード遺跡の基本だ。

 単一の敵しかいないフィールドでパターンが決まってしまえば、以後の戦闘は単調となる。とはいえ油断は出来ない。ヴォード遺跡の恐ろしさとはその単調さに飽きた頃のミスが重なり、いくら倒しても減らない数の暴力に屈することなのだ。油断こそがこの遺跡の最大の敵である。


 その後も探索を続け、マップもある程度は埋まってきた。まだ上に登る階段は見つかっていないが宝箱は二つほど発見した。宝箱というか部屋の中にポツンとした箱があり、その中にアイテムがあったのである。

 それは魔力で産み出す物質生成装置であるらしい。ダンジョンのようにランダムではなく固定アイテムだがそれなりに強力なものが入っている。一定期間が過ぎれば強力なアイテムが復活する。だからこそここには何度もプレイヤーが訪れるし、油断して死亡する者も続出するのである。

 なお今回風音が手に入れたのは『紅蓮のマント』と『戦舞いの闘衣』というものだった。不滅のマントがあるので『紅蓮のマント』はとりあえずアイテムボックス行きだが『戦舞いの闘衣』はジンライが装備した。軽く、それなりに防御力があり、身体の動きを補助するそれはジンライの動きをさらに機敏にする。元々ジンライは攻撃を受けないように常に身軽にしていたために、動きやすければそれでよいと身に着けていた装備も大したものではなかった。だが、この『戦舞いの闘衣』はそうしたジンライのような戦士のための防具であるため、非常に着心地が良いようだった。


 そしておニューの装備に浮かれて歩くジンライ。さきほどの風音とユッコネエの仲の良さへの嫉妬も吹き飛んだジンライはスキップ混じりに遺跡の先へと進みだしたのだった。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪

レベル:36

体力:145

魔力:304+420

筋力:67+20

俊敏力:71+14

持久力:38

知力:72

器用さ:47

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』『リビングアーマー』『アラーム』


弓花「忍法・身代わりの術!!」

風音「ヒドイ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ