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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
天空の島編

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第二百七十一話 昔話を聞こう

「悪魔?」

 風音たちの険しい表情に、モーフィアは「伝承ではだがな」と前置く。何しろ遙か昔の出来事だ。モーフィアとて一族に伝わる話を知っているだけで、実際に見たわけではない。

「かつてこの浮遊島オルソレイは千年前の大戦を乗り越えた後、鳥人族を中心に栄えていたと聞いている。だが700年ほど前に悪魔に塔を奪われたらしい」

「抵抗は出来んかったのか?」

 ジンライに当然の疑問が湧く。

「無論したのだろうな。しかし悪魔は鳥人族とは戦わず塔から島を切り離し分断したそうだ。長剣のたった一振りでな」

「長剣で一振り……」

 その言葉に風音は、あの悪魔王『雪人』の持つアーティファクト『時空の覇剣ディメンジョンソード』を思い出した。あれは切断距離を問わない武器であった。もちろん、ゲーム中ではあくまでもシステムに沿った攻撃しかできないが、ここでならば『設定通り』の能力が発揮できるのではないか……と。

(いや、実際に、その悪魔が悪魔王だったとしてもだからどうって話ではあるけど)

「何か、思い当たることでもあるのか?」

 考え込んでいる風音にモーフィアが尋ねる。魔王の知識であれば、もしや、その悪魔のことも知っているのでは……と思ったのである。

「え、いや。なんでもないよ。話続けてもらえる?」

 しかしモーフィアの問いに風音は慌ててそう答えた。確証も何もない予測である。後でアオには伝えておこうとは思ったが、今モーフィアに話せるほどのことは何もない。そしてモーフィアも多少訝しい顔はしたものの、風音の言葉の通りに話を戻した。

「まぁ、いいだろう。悪魔によって切り離された島は、その後、大陸中を何十年とあてもなく移動していたそうだ。そしていくつかの地を進むうちにここに止まったと聞いている。ここのナーガラインから流れる魔素の流れが島と相性が良かったのだろうな」

 安定した魔素の供給が可能となったために、浮遊島も動きを止めたのだろう……とモーフィアは言う。

「しかし魔素が強すぎるせいか、島のあちこちで魔物が大量発生し、エンジェリートの街の中でさえも魔物が湧いてきてしまったのだ。そして、どのような対策をとっても魔物の出現は止められず、ついには鳥人族は街を捨てて、このフォルンの村などのいくつかの土地に住処を移動することになったわけだな」

「つまりエンジェリートの街ってダンジョン化してるってこと?」

 その風音の言葉にはジンライが返答をする。

「いや、この場合はミンシアナにあったムルアージの廃都に近い現象だろうな。ダンジョンではないが、魔物は生み出され続ける。魔素が濃いと起こるのだが、すでに700年は経過しているのだとすれば核が存在していてもおかしくはなさそうだな」

「核? それってダンジョンのコアの心臓球みたいなもの?」

 風音がジンライの言葉に首を傾げる。だがジンライは首を横に振った。

「いや、あれよりはもっと純粋な魔素の固まりだ。名を魔生石といって循環する魔素の流れの集まるところで結晶化して魔物を産み出すものだ。それを破壊すれば、流れが一時的には消滅するかもしれんが」

 ジンライのその説明にはモーフィアも「そうだな」と答えた。

「確かに我々の一族もその可能性を考え、長年魔生石を探してきた。一時的にでも街から魔物の発生がなくなれば、対策を打つことも出来るからな」

「でも今も魔物が発生してるって事は……見つかってないんだよね」

「そうだ。地上は探せるところは探したが何もなかった。であれば地中深くに埋まっている可能性もあるのだが、目星でもなければ穴を掘ることも出来ん」

 その言葉には風音も「なーるー」と考え込んだ。そして、これまでのことを思い出して、どうにかなるんじゃないかと思ったのだ。

「まあ、とりあえず行ってみて、そんで街の様子を見てみようか。もしかするとなんとかなるかもしれないし」

 その風音の言葉に一同は頷く。モーフィアも風音の意図することまでは分からなかったが、目の前のジンライを、そして若い鳥人族が魔王と呼んでいた風音を見て実力的には問題ないだろうと考え、案内役をかって出ることにした。


 ちなみに、住む場所については街の離れにコテージを建てさせてもらう許可を取り、風音コテージを呼び出した。もちろん鳥人族たちが目を丸くしていたが、いつものことである。

 しかし「これが地上の民の力なのか」と、口にするモーフィアにはライルたちが猛抗議をしていた。この水準を一般の人間のものだと思われてはたまらないのである。

 そして一行は、コテージで夜を過ごし、翌朝には村の外れでいつも通りの早朝訓練を行っていた。

 なお、その際に魔王カザネリアンと直樹の二刀流の修行を見たモーフィアが「あれが魔王の真の姿か」と口ずさんでいたが、そんなことは風音は知らない。今日も風音はゴーイングマイウェイで生きているのである。



◎エンジェリートの街への道 朝


「今日も良い天気だねえ」

 パカランパカランと黒い巨体のヒポ丸くんが走る。そのヒポ丸くんには風音とティアラ、弓花が乗っている。また風音の背中にタツオ(黒竜装備)がへばりつき、その彼女らの後ろに3体のヒッポーくんがついてきている。

 そして『ヒッポーくんハイ』にジンライとルイーズ(+メフィルス)、並んで『ヒッポーくんクリア』に直樹とライル、最後に新たにクリスタルドラゴン素材の竜晶石と余りのチャイルドストーンから作り出した水晶馬『ヒッポーくんクリス』にはエミリィとモーフィアを乗せていた。

 エンジェリートの街への道はあまり広くはなく、馬車での移動は困難であったためにゴーレム馬のみでいくことになったのである。

 ちなみにタツヨシくんドラグーンとノーマルは風音のアイテムボックスの中に入っている。今の拡張機能の付いた風音のアイテムボックスならばそのぐらいのムチャは通るのである。


「しかし、この透明の馬はこんな道まで平然と通れるのか。それに周囲に魔物たちの気配がしないのもこの馬の力だろうか?」

 そう言って首を捻るモーフィアに、モーフィアと共にヒッポーくんクリスに乗っているエミリィが答える。

「それは多分、一番前のカザネたちのヒポ丸くんが原因ですね。あの胸からでている衝角が高ランクのドラゴンのモノで、あれから発する竜気の気配が弱い魔物を寄りつかせないらしいんです」

「なるほど。確かに暴力的な気配がアレには漂っているな」

 エミリィの説明にはモーフィアも納得した。モーフィアもあの漆黒の全身甲冑馬からは見た目以上の威圧感を感じていたのだ。

(やはり魔王という存在は侮れないということか。おとぎ話のものとばかり考えていたが)

 そして風音魔王説は益々濃厚となっていく。

「まあ、うちは色々と特殊ですから、これを地上の人間の普通とか思わないでくださいね」

「承知した」

 さすがにモーフィアも地上人がみんな、この水準だとは思いたくなかったので少し安心した。そして、モーフィアはエミリィの背負っている弓に目がいった。その弓からヒポ丸くんの衝角と同じ気配を感じたためである。

「ところでその弓だが、それはあの角と同じものなのかな?」

「ええ、よく分かりましたね」

 エミリィはモーフィアの洞察力に感心した。

「漂う空気が似ているからな。私も竜弓使いではあるが、その弓は普通ではないモノを感じる」

 この周辺では飛竜ワイヴァーンが多く生息している。モーフィアの弓はかつて自分で倒した飛竜ワイヴァーンの上位種のモノを加工して作ったものだ。しかしモーフィアにはエミリィの弓はもっと恐ろしい力を持っているように感じられた。

「まあ普通ではないというと、これは魔道弓でもありますから魔力も通しやすいように魔鋼を補強に使用しているんです。ですから普通の竜弓とは違いますけど」

 それにはモーフィアが「なるほど。魔術を乗せるための加工がしてあるのか」と感心する。魔道弓という概念はモーフィアたちにはない。そしてエミリィがそんなモーフィアを見て、少し躊躇いがちに尋ねる。

「でもモーフィアさんは竜弓の使い手だったんですね」

「この辺りは飛竜ワイバーンが多くいる。自然と強い弓を求めれば、竜弓に行き着くだけのことだ」

「私、この弓の使いかたがまだよく分からなくて。今もただ矢に竜気を乗せるだけしか出来ないですし」

 エミリィはこの竜翼弓を手に入れてからというもの、自分の力で上手く物事を達成出来たと思うことがほとんどなかった。

 高難易度の魔物との遭遇の連続に自分の魔術を乗せた矢の効きは弱く、結果として魔術の工夫よりも威力向上に集中せざるを得なくなり、その威力も竜牙鋼の矢の力に頼った感が否めない。

 実のところ、前線を任せられるかどうかと不安定な実力である直樹とライルよりもプラスアルファとして見れるエミリィの戦力は単純に歓迎されるものではあるのだが、エミリィはそれが自分の力ではないと考えている。

 そしてエミリィはこの竜翼弓の『竜気を扱った弓術』というものをまったく出来ていなかった。これは単純に教えられる人間がいなかったという事情もある。竜の里で竜人に尋ねてもみたが、自身の竜気を発生させて扱う竜人の感覚的な教えはエミリィには理解できなかった。その自分の得物を上手く扱えないことこそがエミリィが上手くできていないと考える原因でもあったのだ。

 対してモーフィアも竜翼弓の、その作りこそ凡庸ではあるモノの、構成された素材のポテンシャルの高さは見ていてハッキリと理解できていた。そして今朝方に見たエミリィの実力には彼自身も引っかかる部分を感じていたのだ。

 そしてせっかくの得物を生かせないのであれば確かにそれは残念なことだと思い、モーフィアは自分からエミリィへの指導と竜翼弓の調整を願い出た。そこには単純にその弓への興味もあったのだが、ともあれそれはどちらにとっても良い提案であったため、エミリィも快く承諾した。新たなる師弟関係がここに生まれたのであった。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪

レベル:36

体力:145

魔力:304+420

筋力:67+20

俊敏力:71+14

持久力:38

知力:72

器用さ:47

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』


弓花「エミリィとモーフィアさんがいい感じで話してる。恋が芽生える?」

風音「恋愛脳乙」

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