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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
天空の島編

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第二百六十九話 天使っぽいのと会おう

 鳥人族の戦士マシューが白き一団を発見したのは偶然ではなかった。

 それはここ一週間ほど前に突如現れた巨大なドラゴンが鳥人族の狩り場に現れたことが原因だった。巨体であるにも関わらず神出鬼没なそのドラゴンは時折彼らの狩り場である島の北端に現れては獲物を喰らい去っていくのだ。

 そもそも全長30メートルを超えるドラゴンなど彼らは見たことも聞いたこともなかった。そんな危険な魔物がいるのに当然狩りなど出来るわけがない。こちらから襲っても返り討ちにあうのは間違いないし、怒りに触れれば、或いは自分たちの所在を知られるだけでも村ごと壊滅されかねない危険があった。故に止むなく監視という消極的な方法を取らざるを得なかったのである。

 といっても、相手はすぐさま姿を消してしまう。なのでこの付近を鳥人族の戦士であるマシューたちは4人で偵察にあたっていたわけだが、ついさきほどあの巨竜の姿が発見され、それは北端に降りたのである。

 そして彼らがそれを追ってたどり着いてみれば、そこには翼のない人間たち『人族』が巨竜と共にいた。人族と巨竜が何故一緒にいるのかと警戒していると人族の少女が巨竜に話しかけると巨竜はすぐさま飛び去り、そのまま北の空に消えていったのだ。


 それを見てマシューは「あの人族が巨竜を操っている」と判断してしまった。ドラゴンを操り、外から村の平和を脅かしに来た人族。それはマシューにとって許し難いものに見えたのだ。

 であれば、まずは人間を捕らえようと血気盛んなマシューは考えたのである。あれらを捕まえて無理矢理にでも巨竜に狩り場に近づかないように命令をさせれば良いと考えてしまった。それに相手は女子供がほとんどだ。どうにも手強そうな男もいるが、それを封じればどうとでもなると考えた。そしてマシューは乗り気ではない仲間たちに指示を出して横一列に並び、殺しはしないまでも男を戦闘不能に追い込む一発を射とうとして、


「あー、そりゃ、ダメだよ」


 突然現れた銀髪の狼女に襲われた。一瞬で地面に叩きつけられ、その場で槍を突きつけられたのだ。そして気が付けば仲間たちも三体の銀色の狼に襲われて、抑えつけられていた。それは一瞬の出来事だった。

 こうしてマシューたち、鳥人族の戦士たちは僅かな間に全員お縄になったのである。



  **********



「ジンライさんを射ろうとしてたんだ。じゃあ仕方ないね」

 ゴーレムメーカーの腕型ゴーレムテバサキさんにより不埒な襲撃者は掴みあげられ拘束されている。その前で風音は弓花に事情を聞いて、そう返した。

 ジンライが言うには殺意はなかったそうだが、射ろうとした時点で問題外である。それは殺さずとも捕らえられると相手が判断しただけのことで生殺与奪の権利を彼らが握っていたと認識したのには違いない。


 なお、風音たちが鳥人族の接近に気付いたキッカケはいつも通りの風音の『犬の嗅覚』である。今やアストラル体も察知できる風音の嗅覚から逃れる事は難しい。そして、その鳥人族はどうにもこちらを監視しているようだが、ドラゴンがいなくなった途端に一人の鳥人族の意識が警戒心から敵意に変わったのだ。

 このまま敵対行動を取る可能性は高く、やむなく弓花に神狼化のスニークスキルでこっそり近づいてもらったのだが、ついた途端にリーダーらしき人物がジンライに弓引こうとしたのを見て弓花は即時決断した。


 とっとと捕まえよう……と。そして現在に至るのである。


「ま、ワシが矢の一本で大人しくなるわけもないがな」

 とはジンライの言葉。ジンライはジンライで矢が来る気配は察知していたので、実際射られてもまず当たることはなかっただろう。だが、それは許して良い理由にはならないのだ。

「しかし、貴様等も戦士であるならば、戦士に弓を引く意味は分かっていような」

 ジンライが捕らえた鳥人族の前に立ち、全身を貫くような氷の視線を向けている。それに一緒に捕らわれている三人が顔を青くしているが、しかしマシューだけはジンライをにらみ返した。鳥人族の戦士としての矜持が敵に弱音を見せることを許さなかったのだろうが、しかしそれは逆効果だ。

「なるほど、多少はやれるようだが、カザネ」

「あいよーー」

 ジンライの合図に風音が前に出る。

 それにはマシューも首を傾げた。チンチクリンが前に出て何をするのかと思えば……と。


「スキル・魔王の威圧」


 絶叫がその場にとどろいた。

 『魔王の威圧』は、パッシブスキル『偽りの威圧』の上位スキルであるため、『偽りの威圧』同様にパッシブで全方位に発せる事が可能だ。しかしこのスキルは指向性を持ったアクティブスキルとしても扱えるのである。その指向性とは視線の先。出力は50パーセントほどであったがマシューは風音の視線を受けて見事なアヘ顔となってしまった。おっさんがアヘ顔となったのだ。当然見苦しいだけであった。


(あ、やりすぎた)


 ジンライは気にしていないが、それを見て風音は(うわー)という顔となった。まあ、風音もジンライが射たれそうになったと知って怒っているのでマシューに対しての同情はない。なので、これは純粋に己の判断ミスを反省しているだけではあるが。


 そんなやりすぎた感のある自分の行動を反省しつつ、風音は使い物にならなくなったマシューの横に視線を移す。そしてマシュー以外の三人は大人しくしているし、脅しも必要ないだろうと考え、敵意はないと示すようにニンマリと笑って笑顔を向けた。


 その風音の『悪魔の笑み』に三人の鳥人族は顔は青を通り越して白くなった。彼らの耳にはハッキリと聞こえたのである。


『次はお前の番だ!』


 ……と。それは風音の口から言葉に出なくとも彼らには聞こえたのである。そして辛うじてスキル発動の言葉が聞こえた彼らは目の前の少女の正体にも気付いていた。


 「魔王……」と彼らの一人が口にした。


 そう、目の前の少女は魔王の力でマシューをアヘ顔にしたのだ。それはそれで事実ではあるが、彼らはその推察のさらに先を想像した。つまりそれは目の前の少女こそが魔王であると。魔王はマシュー同様に自分たちをもアヘ顔にしてしまうことが可能なのだろうと。そして彼らはアヘ顔となったマシューを見る。


(((いやだ。ああはなりたくない!?)))


 そしてその後、彼らが涙目で洗いざらいしゃべったのは言うまでもないことであった。

 そもそも鳥人族の彼らにはここにいる理由を秘密にしなければならない理由などない。先に戦闘の意志を示したのは自分たちで、その場で殺されなかったのだから文句を付ける筋合いもないのである。その上でマシューが従順の意志を示さず睨み返したのはよけいなことだった。マシューからすれば敵に捕らわれるぐらいならば……という意志があったのかもしれないが。


 そんなわけで風音たちは鳥人族とのコミュニケーションに無事成功したのである。



◎エルスタの浮遊王国 フォルンの村への道


 風音たちが鳥人族を捕らえた後、鳥人族の若い戦士たちの話を聞いた風音たちがまずしたことは誤解を解くことだった。

 先ほどまでいた蒼穹竜パイモンは風音たちの使役する竜でもないし、使役出来るような竜でもない。あれはナーガと同クラスの神竜であるのだ。

 そして風音たちはこの島に探索に来た冒険者で、別れたパイモンは目的地があるのでもう戻ってこない旨を伝え、そして村への案内をお願いした。

 この島に鳥人族がまだ生きていてコミュニティを作っているようである。風音たちも傍若無人な無法者ではないし島を荒らそうという気もない。彼らにとってそれが許されない行為であるならば、退くのも判断の一つとしていた。


「カザネ様、もうじき村に着きますからねえ。何か言う奴は私がサクッと射ってやりますからご安心ください」

「うん、ありがとう」

 風音は冷や汗をかきながら、目の前で自分に笑顔を振りまくマシューに返事をする。

 どうやら薬が効きすぎたらしい。そもそも魔王というものは魔力を扱う支配階級ドミネイトクラスの存在全般を指す。種族や人族か魔族であるかもあまり関係はないのだ。『魔王の威圧』はその魔王を冠する能力なのだから、そうした概念が含まれた力が付与されていてもおかしくはない。

 そしてマシューはその心に風音への畏敬の念を刻まれてしまったようである。畏敬、つまりおそれ、うやまう……という神などに対する意識そのもの。これは上位存在に対する下位存在の当然の意識の有り様なだけで魔術による精神支配ではないので解除も出来ない。マシューは風音アゲ一択の男となってしまった。

 ちなみにフィアボイス、ドラゴンフェロモンなどのスキルなどとも併せて考えてみれば、風音は能力的には既に魔王にカテゴライズされる存在である。だが、現時点ではスキルを正確に把握してるのは風音だけであるし、当然そのことを気付いている者はいない。神様を抜かせばではあるが。

 そして一緒にいる鳥人族の三人はマシューのアヘ顔にも驚愕したが、その後の変わりようにも恐怖し、風音を見てぼそりと「ま、魔王様」と呟いていた。

 また風音や最初に襲撃した弓花、そしてどこか近寄りがたい気配を放つティアラには話しかけない鳥人族の若い戦士たちも一緒に歩いている直樹やライル、エミリィなどとは普通に話せているようである。歳が近いこともあるし、普通に話せる相手がいることに彼らも安堵しているようだった。

 理不尽だ……と風音がブンむくれたが、マシューが「射ますか?」と尋ねてきたので、首を振って普通の表情になるように努めていた。


 ちなみに現在、風音たちは徒歩である。風音はヒポ丸くんを呼んで馬車移動にしようと口にしていたが、それはさすがに止められた。あれでは警戒心を招きすぎると仲間からは非難轟々だったのである。

 その反応に風音とジンライが「カッコいいのに」「強そうなのに」とションボリとしたのは言うまでもない。ちなみにライルも二人に近い気分だったが日和見主義なので何もいわなかった。そこらへんが直樹に美味しいところを取られる原因であろうか。


 そして、徒歩1時間を越えたところで、ようやく村の姿が見え始めた。鳥人族の住まう『フォルンの村』である。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪

レベル:36

体力:145

魔力:304+420

筋力:67+20

俊敏力:71+14

持久力:38

知力:72

器用さ:47

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』


弓花「怖いな、魔王の威圧……」

風音「マシューさんが従順になりすぎてて怖い」

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