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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
オダノブナガ編

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第二百六十四話 間男になろう

『ウツケモノーーーー!!』

 キング・オダノブナガが風音とジークに向かって走ってくる。

「あっちはジークに任せる。出来れば仕留めて!」

「努力はしよう」

 召喚されたジークはそう口にして、任された敵を睨む。風音の要求する真のオダノブナガとなる前に倒しきるという条件は、例えジークであっても至難の業だ。

 防御力にモノを言わせた黒岩竜の時とは違い、対人に特化しているキング・オダノブナガは避けるし、剣も受けるのだ。これは相性の問題で、或いはゆっこ姉であれば諸共吹き飛ばすほどの大魔術で対処も出来ようが、戦士であるジークではそうもいかない。だが今、対等以上に戦えるのはジークしかいない。

 そして風音は向かってくるキングをジークに任せて、自分はジンライと弓花が挑もうとしているクィーン・オダノブナガへと向かう。こちらは体がデカい分攻撃が大味になる。剣の技量が異常に高いキングと違って、黒岩竜のように複数で挑めば与し易い相手だ。比較的に……ではあるが。


『センゴクブショウニョタイカッテティーエスジャナイデスカヤダー』


 クィーンの叫びにより凄まじい爆風が吹き荒れる。

「ぬう、なんてヤツよ」

「ジンライさん、雷神砲レールガンで行こうッ!」

「任せろっ」

 風音の言葉にジンライが応える。そして腰の袋から鋼鉄の弾を3つ取り出して右手の義手で握るとそれが手のひらから内側へと吸い込まれていった。

「装填した。ユッコネエ、連射で行くぞ」

「にゃーー」

 すでに何度かの特訓を経てユッコネエは、手のひらに収まるサイズの鉄球射出ならば耐えられる。それはジンライも同様だ。


「喰らえっ化け物めがっ」

 

 そして轟音が3発木霊する。激突する音は聞こえない。直後にジンライが舌打ちし、ジンライを乗せたユッコネエがダッシュでその場から飛び退いた。クィーンの爪が空を切る。

「あの巨体でよく動くね」

 その様子に風音も驚きの顔をしている。オダノブナガ・クィーンはジンライの雷神砲レールガンを避け、そのままジンライへと飛びかかったのだ。ジンライも発射直後は撃った衝撃でまともには動けない。ユッコネエの機転がなければ殺されていただろう。

(にしても、あれを避けるとは……)

 そう歯軋りしながら風音は周囲を見る。弓花の左手の負傷はさきほどハイヒールで軽くは治したが、ちゃんと回復させるには落ち着いたところで時間をかけなければ完治は出来ない。しかし負傷していた状態でも弓花を抜きにした戦いは厳しい。また銀狼はクロマルを除いてすでに切り裂かれて召喚解除されていた。そのクロマルも辛うじて参戦できている状態だ。

 対してジンライだが、さすがに疲労がバカには出来ない状況だったが、まだ余裕はあるようだった。しかしジンライの乗っているユッコネエは難しいようだ。ダメージを受けた場所から血が垂れてその動きも鈍っている。

 タツヨシくんドラグーンは盾役としては上手く動いている。

 そして、狂い鬼が予想以上に動いて善戦しているようだった。守り知らずの特攻攻撃。それが羽のブーストと高い防御力により生かされていた。

 しかし、そこまでやっても、それでもどうにか抑えているという状況だ。時間が経てばいずれは均衡は崩されるだろう。風音は崩される前にダメージは与えたい。


「みんな下がって、大技行くよーー!!」


 ここで撃つべきと決断した風音の言葉に全員が一気に下がる。風音は左の薬指にはまっているエンゲージリングに集中し、その結晶から七色の輝きを引き出していく。それを見たクィーンはその光が『危険なもの』だと瞬時に感じた。恐るべき何かがそこにいると判断したクィーンはすぐさま飛びかかるが、だが風音への攻撃よりも『ソレ』の顕現の方が速かった。


『グォオオオオオオオ!!!』


 そして指輪から放たれた七色の光の中からそのドラゴンは現れる。

 そのまま、風音を襲おうとするクィーンに対し両手でがっちりと掴んで咆哮した。その正体は虹色の竜気を持つ竜族の頂点、神竜帝ナーガである。そして風音はナーガへと拳を振り上げて声を出す。


「私の旦那様フルバースト、いっけーーー!!」


 その風音の合図と共に、神竜帝の額の角から、全身の水晶角のすべてから七色の光が発生し、それが一斉に放射される。


 神竜帝ナーガの最大の攻撃、ゼクシアハーツ内では『セブンスレイ・オーバーキル』と呼ばれるナーガの最大放射。七属性すべての光がクィーンを襲い、一気にその体を吹き飛ばす。

 そして放射が終わると同時にナーガの体が光の粒子と共に消えていく。


 この神竜帝ナーガを呼び出した風音の指輪は、ナーガが与えた虹竜の指輪というもの。それは神竜帝ナーガの心臓であるレインボーハートの核そのものである。そして、その指輪の効果はわずかな時間だけ、コアに記録された全盛期のナーガを呼び出せるというモノだった。

 その効力は見ての通りだ。RPG定番の、呪文として呼び出して攻撃をさせてすぐに消える……というお馴染みの召喚術に近い。

 もっとも竜気の供給は核自身のものを貯めて使用するので、もう戦闘では使えない。威力は見ての通りだが、この規模のモノを再度呼び出そうとすると10日はかかる。


「凄まじい威力だが……」


 ジンライもその威力に驚くが、だが吹き飛んだ先で未だ平然と蠢くそれを見て眉をひそめた。

 効いていないわけではないのだろう。足の何本かがちぎれ、その甲殻もひびが入っている部分が多々ある。だがクィーンの行動力を奪うほどではなかった。

 たった一撃でケリが付くとは思っていなかった風音だが、だが予想以上にダメージが少ないことに焦りを覚えていた。

 クィーンは未だその動き衰えぬ。であれば、キングはどうかと風音はジークとキングの戦いに視線を向けた。

 

(ジークの方も……やはり削りきれないか)


 ここから少し離れた場所ではキング・オダノブナガとジークの異常なまでの鍔迫り合いが展開されていた。余裕などないはずのジンライまでもが思わず魅入って「ほぅっ」と唸ったほどである。その直後に攻撃を喰らいそうになってユッコネエの猛抗議を受けていたが。


(……最悪、アレを呼ぶしかないけど)


 そして風音が心の中で口にしたアレとはセカンドキャラクター。風音の暗黒を司る魔神にして、闇の歴史に沈んだ死神のことである。

 しかし、それは最後の手段にしておきたい。アレは仲間など平気で巻き込みかねない。特に思春期特有の状態異常により直樹が風音を無視していた時期に生まれたモンスターだ。下手をすれば直樹を標的にしかねない怖さがある。

 もっともジークが時間切れで消えた場合、あれを出さない限り全滅なのも確かなことだ。そして風音が決めきれない想いをかかえたまま戦っている途中で、ついにそれが動き出した。


「あーもう、時間切れかぁあ!?」


 その様子を察知して風音が叫ぶがもう遅い。ジークが切り裂き、キングの左腕が宙に舞った時、ついにクィーンが雄叫びをあげた。そしてキングがジークから飛び退きクィーンへと走り出す。それは、もはや疑いようのない行動だ。


「いけない。雄と雌が合体しちゃう!?」

 風音の言葉に弓花が目を見開いた。

「キングとクィーン、雄と雌が合体する!?」

「合体、合体だと!? 雄と雌が合体するというのか!雄と雌が!!」

 ジンライも驚愕の顔で叫ぶ。

 なぜならば雄と雌が合体するのである。そう合体なのだ。それは雌雄合体というクィーンの体内にキングが入ることで半人半虫の形を取る真なるオダノブナガの形態。


 名をダイロクテンマオー・オダノブナガという。


 その圧倒的な機動力と、さらに強化されて伸びた斬馬刀風の爪の斬撃によりすべてを切り裂くレベル200を越える鎧虫類最強の存在。それが今目の前で完成されようとして、


「狂い鬼解除!そして再召喚狂い鬼!!」


 風音が突然狂い鬼の召喚を解除して、すぐさま召喚し直した。場所はキングとクィーンの間である。


「ぐぉおおおお!!!」


 そして狂い鬼はクィーンの合体口に右手をぶち込み、さらにクィーンの中に入ろうとしたキングの腹部らしきものを左手でガシッと掴んだ。キングとクィーンがともに叫び声をあげる。


「は、そうだよね。ゲームじゃないんだから合体を待たなくてもいいんだった」


 それは一瞬の直感を信じて、狂い鬼再召喚を行った風音の台詞。だが、そんな芸当が可能なのは瞬間的にどこでも召喚が可能な狂い鬼というイレギュラー存在があったからだ。だが対処が出来る以上は遠慮などはしない。


「狂い鬼、炎球だ。ぶちこめーーーー!!」


 風音がアイムの腕輪を通して、ドラゴンベアから手に入れたスキルを発動させる。そして狂い鬼が合体用挿入口にブチ込んでいる右手から炎球を放ちクィーンの内部を燃やし尽くす。その威力に、さきほどのセブンスレイなどの蓄積したダメージなども合わさりクィーンの腹部が爆発する。


「グォォオオオオオ!!!」


 さらに狂い鬼はキング・オダノブナガを文字通り投げ出すと、目の前にあったクィーンの首に手をかけてゴリッと折った。体内を破壊され、弛緩していたクィーンにはそれに抵抗する力はなく、なすがままに捻りきられる。

 そして投げ出されたキング・オダノブナガは自らのつがいの無惨な姿に怒り狂った。叫び声をあげて狂い鬼に特攻し斬馬刀の如き爪を振り上げて、竜鱗の防御すらものともせずにそのまま切り裂いた。

 それには狂い鬼も絶叫をあげながら召喚が解除されるが、だがクィーンもすでに絶命している。風音もクィーンのスキルが手に入ったのを確認すると声を張り上げた。


「狂い鬼が仕留めた。ジーク、ジンライさん、弓花!キングに集中攻撃ッ!!」

「「「応ッ!!」」」


 この機を逃すわけには行かない。風音の言葉に全員が応え、キング・オダノブナガへと特攻する。対するキングはその全身の甲殻が先ほどとは違い漆黒と黄金の輝きを放っていた。2メートルもなかった刀のような爪も、3メートルほどの巨大な斬馬刀に変化している。それはダイロクテンマオーモードそのもの。本来であればその変化に使用するエネルギーはクィーンから補給できるはずだったが、それはもう不可能となってしまった。

 しかしキング・オダノブナガはダイロクテンマオーへの変化をそのままに、風音達へと挑みかかる。敵も背水の陣である。気を抜けば意識が刈り取られそうなほどの凄まじい威圧感を発しながらキングが斬りかかってきた。


(力尽きるまで戦うつもりッ?) 


 風音はそのキングの覚悟を素直に賞賛する。クィーンの膨大な魔力があって初めて成立するダイロクテンマオーの力はキング単体では本来扱いきれるモノではない。今のキングでは数分と経たずに魔力が枯渇するだろう。だが、目の前の魔物はそれを恐れず、その剣速はまったく鈍ることなくこちらに挑みかかってくる。

 故に風音はその戦列からは一歩下がる。自分ではあの覚悟の斬撃には抗せない。そしてそれは今の弓花やクロマルにしても同様である。負傷を引きずってのあれとの斬り合いは難しい。そのまま戦っても足手まといだろうと判断し、悔しさをにじませて下がるしかなかった。なお、タツヨシくんドラグーンは初撃で弾き飛ばされている。雑魚い。

 そして今キングの前に残っているのはジークとジンライのみ。

 ジークは大翼の剣をモードチェンジさせ、ジンライに合わせて『至翼の槍』という槍の形態へと変形させていた。『武芸千般:極み』というスキルを持つジークは剣と同様に槍をも使いこなす。

 そうしてその場で3つの槍が舞い、次々とキング・オダノブナガを切り裂いていく。敵の魔力切れなど待てはしない。ジンライも途中で義手を外して生身の左で持つ一本だけで挑み始めた。それは義手である時よりも素早く、そして鋭い。素の自分とただ一本の槍が、ライノクスを破った瞬間をその身に再現させる。あの槍聖と呼ばれるライノクス大公が名付けた『一角獣ユニコーン』の二つ名の力が発揮される。それはわずかな間だが、確かに武芸の頂点に到達しているジークに並ぶ冴えを見せていた。

 であれば、如何に強靱な相手であろうとも敵ではないだろう。キング・オダノブナガは二人の頂点に挑まれ、削りきられ、そしてその首をはねられて鎧ごとコアを貫かれた。


 それはあまりにも素早く、風音の目には何が起きたのかが分からないほど。神狼化した弓花も辛うじて何が行われたかが把握できたか否かというほどの速度だった。


 そして二人の最強を前にキング・オダノブナガは崩れ落ちた。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪

レベル:36

体力:145

魔力:304+420

筋力:67+20

俊敏力:71+14

持久力:38

知力:72

器用さ:47

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『魔王の威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』『オッパイプラス』


弓花「なんかとんでもないモノがスキルに追加されてない?」

風音「爆乳来た?」

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