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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
オダノブナガ編

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第二百六十三話 本命を招こう

 弓花達が相対したオダノブナガ・ブレードは三体。戦闘時の成り行きで二体をジンライと黒メタルミノスが引き受け、残り一体を弓花とタツヨシくんドラグーンが受け持つ方向で戦闘が進んでいったのは、弓花にとっては運の良いことだったのだろう。さしもの弓花もこれを二体相手というのは難しいと感じていた。

 

『テンカトォォオイイイツゥゥウ!!!』


 目の前でタツヨシくんドラグーンのバルディッシュとオダノブナガ・ブレードが激突し火花が散る。タツヨシくんドラグーンはオダノブナガ・ブレードの攻撃に防戦一方となっているが元々ドラグーンの外骨格は黒岩竜の骨と鱗で出来ている。内部も不滅のカーテンなどで補強されており実は防御力だけはパーティの中でもっとも高い。なのでドラグーンもダメージこそ与えられないモノの、弓花や銀狼達のための囮としては十分に役立っていた。そしてそのタツヨシくんドラグーンを地面にめり込ませるぐらいにブレードの攻撃は勢いを増していく。しかし周囲にいる魔狼達がブレードの攻勢をそのまま許すわけもなかった。


『アォォオオオン!!!』


 三重の遠吠えと共に銀色の弾丸がオダノブナガ・ブレードを襲う。

 魔狼の突進攻撃『ブラックブリット』は『シルバーブリット』という3発の銀の弾丸へと変わっていた。3方向からの強烈な突進にブレードの体勢が崩され、その隙を弓花は見逃さない。


「つぇええい!!」

『テンカフブーーー!!』


 弓花の一撃はオダノブナガ・ブレードの右腕の関節部を正確に貫き、巨大な刃のような爪が宙を舞った。そしてブレードの左手の爪は小さく、事実上これで戦闘力の大半をこれで奪ったハズである。しかしオダノブナガ・ブレードはまるで動揺なく弓花に向かって突き進む。


「くっ!?」


 それには弓花も慌てるが、間に合わない。槍術の『柳』で避けるが、だが避けきれなかった。弓花の鮮血が地面に飛び散る。

「こいつぅうっ!!」

 弓花は負傷した左腕をぶら下げながら、振り向き様の頭部に右手の槍を突き立てる。そのまま全身全霊の力を込めて槍術『振』による振動攻撃を放ち一気に破壊した。さすがのブレードも頭部を破壊されてはそのまま仰向けに崩れ落ちるしかなかった。

「……やったぁ」

 そして弓花はグッタリと体をうずめかけるが、だが堪える。見れば師匠のジンライの方も二体目のブレードを倒し、勝利をおさめたところだった。だが、やはりジンライも同様に疲労が見られる。

 弓花には魔物と戦った経験は多くても技量的に自分にここまで迫った相手と実戦で戦った経験はない。魔狼討伐の連戦とは違う疲れが弓花を襲っていた。

(あーもう、しんどいなあ)

 そう心の中で愚痴りながら弓花は風音達が戦っている森の方を見る。

 ティアラの召喚騎士が倒されたのはさきほど情報連携の伝達で聞いていた。そして今の風音はアーチャーを一体倒し、最後の一体を狂い鬼と共に詰めているところのようだった。いつもとは違い、疲労や負傷が目立つがここまでは予定通りではある。そして森の奥から迫ってくるプレッシャーを感じて弓花の額から一筋の汗が流れ落ちる。もうじきやってくるそれへの戦いを覚悟し弓花はギュッと手に持つ槍を強く握りしめた。



  **********



 そして森の入り口付近でも、もうひとつの戦いの決着がつこうとしていた。

「グノォォオオオオ!!」

 狂い鬼の棍棒が、オダノブナガ・アーチャーに激突し、そのまま弾き飛ばす。このアーチャーというオダノブナガ種は両腕の爪を弓に変形させ、口から垂らした唾液を固めて矢にして口で咥えて射つ魔物だ。しかし、風音のマテリアルシールドに矢がすべて防がれているという事実に気付くとすぐさまその腕を変形させて弓から二本の剣のような形へと爪の姿を変えていた。

 もっとも現時点で生きているのはこのアーチャー一体のみ。もう一体のオダノブナガ・アーチャーはティアラの炎の有翼天使フレイムパワーと相打ちで死亡していた。炎の有翼天使フレイムパワーは全身を切り裂かれながらもアーチャーの内部を焼き尽くして殺していたのだ。そして残りの一体も風音と狂い鬼が追いつめつつある。

 風音のトンファーは黒岩竜の角製で、狂い鬼の棍棒も黒岩竜の爪が突き出ている。当たればダメージ自体は容易に通る。そして風音もさきほどのアシガルにコンボを決めた時のような無茶はしない。ダメージを喰らわず確実に追いつめて倒すと決めている。だが時間はもうない。森からのプレッシャーがもう間近まで迫っている。


「グォォオオオ!!」


 そんな風音の思惑など関係ないとでもいうように狂い鬼が異常な速度で突進しアーチャーへと詰め寄る。狂い鬼の全身は黒岩竜の鱗ほどの防御力がある。ちょっとやそっとの攻撃ではビクともせず、それ故にムチャな特攻も可能だ。なのでブーストを覚えたことは狂い鬼には大きくプラスとなっていた。そして風音もそんな狂い鬼の攻撃に併せて、追加で攻撃を仕掛ける。

 スキル『ブースト』による突進力と『ファイアブースト』と『空中跳び』により今の風音は空中戦闘を可能としている。

 オダノブナガ・アーチャーにとって、それはまったく未知の攻撃だろう。風音は空中に留まったまま、着地もせずに連続で攻撃を仕掛けてくるのだ。蹴りだけであった攻撃手段もトンファーが加わったことで手数も倍に増えている。

 

「うっりゃあ!!」


 そして風音のコンボ5発目の蹴りでアーチャーが弾き飛ばされる。コンボが続かずとも深追いはしない。それに風音には狂い鬼がいる。追い打ちに棍棒をふるってさらにアーチャーの甲殻を破壊していく。アーチャーもカウンターで狂い鬼を切り裂くが傷は浅い。狂い鬼はそれをものともしない。

 その『情報連携』を完全解放しての認識同期による連携攻撃は驚くべきほどに効力を発揮していた。気難しいが、羽によるブーストの出来る狂い鬼は風音の高速戦闘に付いてこれる良きパートナーとなっている。そして体勢を崩したオダノブナガ・アーチャーに狂い鬼は棍棒を振り下ろし一気に地面に激突させた。


「そんでだめ押しのスキル・炎球!!」


 その地面に転げたアーチャーに対し風音は手のひらから炎の固まりを放出して命中させる。ドラゴンベアを倒して得たスキルだが、それが地面に転がるアーチャーに当たり、甲殻の隙間から全身を焼き尽くしてゆく。

(うーん、エグいなぁ)

 ぶつけてダメージを与えるだけではなく、継続して炎が敵の全身を覆うようである。竜体化時のブレスの種類も増えるし、タツオにも継承している有用なスキルである。

 そしてアーチャーからは『二刀流』というスキルが手に入った。名前はアーチャーだがメインスキルは『二刀流』だったらしい。今回エリミネイトモンキーからは『猿の豪腕』、オダノブナガ・アシガルからは『ダッシュ』の強化版『ハイダッシュ』が手に入っている。さすがに魔物として上位なだけはあって強力なスキルが多い。


(しかし『二刀流』スキルか。直樹に譲れればいいのになあ)


 と風音は思ったが、そんなことは出来ないので訓練で地道に伝授しておくかなーと考えた。口伝オダノブナガ流とか名乗らせたら格好良さそうである。



 こうして、ついにここまで攻めてきたすべての魔物を仕留めた風音たちだが、だが風音はまだ敵が残っていることを知っている。森の奥からの怒気が迫ってくるのを感じている。ここまでは前座でしかないとその気配が告げている。


 なお、何故オダノブナガ種の出現に時間差が生じているのかといえば移動速度の差である。

 単純にいって魔物たちは風音たちを見誤っていた。森の住人でもない外の生き物に、配下の魔物たちがやられるなど考えてもいなかったのだ。エリミネートモンキーとアシガルで足止めをして、アーチャーとブレードで仕留めて、それを自分たちでいただく。その予定だった。だが、時は既に遅い。

 我が子を殺されたクィーンは怒り狂い、そのつがいであるキング・オダノブナガも同様に怒気を発しており、それは姿が見えぬともその場にいる誰もが感じるほどだ。


 そして、本当の化け物がそこに出現する。


 森の中から飛び出してきたのは、巨大な虫だった。

 オダノブナガ・クイーン、それはオダノブナガ勢の中ではもっとも人より遠い姿をしていた。その頭部こそ白い仮面をかけたような人に似た形状をしているが、胸部には複乳が並び、足は6本あり、尻尾のような虫としての腹部を下げていた。そして、その全長は4メートルを超えていた。

 対するキング・オダノブナガは3メートルほどはある巨体の持ち主だが、人型であった。マントのような翼が垂れ下がり、全身が漆黒のプレートメイルに覆われているような姿をしていて、巨大な日本刀のような爪を持っている。


『テイバンノニョタイカーーーー!!』

『エロイーーーーー!!』


 そして地獄から響くようなその叫びに周囲が比喩ではなく震えた。

「化け物だな」

 一目見てジンライが気付く。ソレが人間には到達できない領域にいることを。そばにいた弓花のノドがゴキュッと鳴った。その身にかかるプレッシャーは『潜在的』にはかつて遭遇した黒岩竜に近いモノがあると弓花は気付いていた。

「師匠、あれなんかヤバいですよ」

「カザネの言葉通りなら、あの先がまだあるとのことだが……あれが闇の森の真の住人と言うことか」

 ジンライがクックック……と笑う。

(ライノクスに一度勝っただけでワシは随分と自惚れておったかもしれんな)

 ジンライは自身がかつての全盛期よりも数段実力が上がっていると自覚をしている。であるにも関わらず今はあの敵を見て薄ら寒い悪寒を感じていた。

 生物としての本能が危険信号を発しているのだ。自惚れるな……と、世界を知れ……と、そう言われているような気がした。故にジンライは獰猛に笑みを浮かべ、恐怖という敵に牙を立てる。


「行くぞユミカァアア!!!」

「はい師匠!!」


 ジンライのかけ声を皮切りに師弟がともに駆けてゆく。


 そのふたりの特攻にあわせて風音もここで切り札を切る。

 ここまでは予定通り。戦力は低下していたが、だがまだいける。

 問題は持続時間だ。風音はアレを攻撃力ではなく、防御力を中心に考えて構成していた。確かにアレは強いし、時間さえあればどのような敵にも負けないと胸を張って言える。しかし、オダノブナガの本当の力が発揮されれば果たして制限時間内に倒しきれるかどうか。正直にいえばアレ一人の力では不可能だと風音は考えている。故にそれを成せるか否かはプラスアルファとなる自分たちの力次第だと覚悟を決め、風音はその手を天にかざした。


「こい、ジーク!」


 そしてその声に呼応し風音のはめた指輪からは光が放たれ、そこから男が顕現する。

 それは豪奢な鎧を纏い、白銀の長髪を靡かせた長身の戦士。風音を護る最強の存在が再びこの世に姿を現したのだ。

名前:由比浜 風音

職業:召喚闘士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪

レベル:35

体力:142

魔力:298+420

筋力:63+20

俊敏力:64+14

持久力:37

知力:70

器用さ:45

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ハイ・ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』『ブースト』『猿の剛腕』『二刀流』


弓花「ねえ、風音。なんかあの鳴き声って?」

風音「戦ってる途中に余計なことは考えない。死にたいの?」

弓花「え? ごめん……」

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