第二百五十話 専用武器をもらおう
第2回魔狼討伐達成お祝いパーティが行われた翌日、朝の特訓も終わりホテルの中でタツオと一緒にゴロゴローと部屋中を縦横無尽に回転していた風音の元にシュライン魔法武具工房の使いがやってきた。
話を聞けばトンファーの追加パーツの完成とバルディッシュのメンテナンスが完了したという。その朗報に風音は飛び上がって喜び、そのまま工房まで足を運んだのであった。
◎ドルムーの街 シュライン魔法武具工房
そして風音の目の前で漆黒のトンファーを挟むように鏡面のような銀のメタリックパーツがカチャンとはめ込まれる。それは神聖物質から作り出された追加パーツだ。それが見事に収まり、風音が待ち望んでいたドラグホーントンファーが完成したのだった。
「上手くハマったみたいだねえ」
追加パーツのツルツルの表面を見ながら風音がそう感想を漏らす。風音と一緒に来ていた黒竜の鎧装備のタツオも『つるつるですねー』と尻尾を振って見ている。
「型どりは正確にやったからね。魔鋼は片方4つずつ仕込んだ。まあ魔法短剣と同じと思ってもらえればいいよ」
トンファーをはめ込んだ工房長のアイキスも満足げにそれを見ている。自分の仕事に満足しているようだった。そして風音がトンファーを手にとって感触を確かめる。
「仕込みもしてもらえたようだね」
風音がガシャンッとギミックを動かすと神聖物質の爪が前に出てきた。
「パーツの位置を変えて、トンファーの先を黒岩竜の角の部分と神聖物質の部分を変えるだけだからね。ま、普段は黒岩竜の角で戦った方が保ちは良いと思うよ。神聖物質も十分に硬いけどさ」
「うん、ありがとっ」
風音はブンブンとそれを振る。重さは増したが今の風音ならば問題なく扱える。ファイアブーストも支障なく装填できるようだった。そしてようやくできた自分自身の専用武器を風音はうれしそうにギュッと抱き締めた。それをタツオが横で羨ましそうに見ている。自分も抱き締めて欲しいらしい。
その風音の様子に鍛冶師冥利に尽きるという顔で見ていたアイキスであったが、頼まれものはもう一つあるので、そちらも渡さなければならない。
「それとコイツも依頼の品だからね。重いけどなかなかの一本だったよ」
そして後ろに立てかけてあったその武器をアイキスはゆっくりとテーブルの上に置いた。それはバルディッシュと呼ばれる長柄の先に斧のような刃物がついている武器だ。素材に神聖物質が使われた強力な武器で、元の持ち主のコボルトキング討伐後に持ち込んで、メンテナンスを頼んでいた。
「綺麗に仕上がってるねえ」
神聖物質で出来た刃先は見事に磨かれ抜かれて新品同様に輝いていた。また長柄も新しいものをはめ直されれ真白く綺麗なものだった。
「ドラグーン、持ってみて」
風音の後ろにいるタツヨシくんドラグーンに声をかける。そしてタツヨシくんドラグーンが前に出て、それを持ち上げてみると、何でもないようにヒョイッとそのまま構えられた。
「動きは悪くないし、こっちもピカピカになってるね」
『ドラグーンさん、勇ましいです』
風音の言葉にタツオも同意の声を投げる。タツヨシくんドラグーンの動力は現在10階層クラスのチャイルドストーンから40階層クラスに値する地核竜の竜の心臓に変わっている。出力もその分上昇し、膂力も上がりバルディッシュの重量にも十分に耐えられるようだった。
「ほぉ、そいつが人形ってやつかい」
そのタツヨシくんドラグーンをアイキスが興味深く見ている。先ほどまで後ろにいるドラグーンを無口な人なのかとも思っていたのだが、その動きに人工的なものを感じてようやく気が付いたようだった。
「ゴーレムタイプの人形だね。これはゴーレム使いでも使えるんだよ」
人形使いの技はすでに廃れたとアイキスも聞いていた。だが風音の話によればゴーレム使いが使えるタイプもあるらしい。
「というとトゥーレ王国のゴーレム使いも使えるのかい?」
「同じように動けるかは別だけど、動かすだけなら問題ないと思うよ」
風音の言葉に「なるほどねえ」とアイキスが頷く。目の前の少女の話はアイキスが初めて聞くことばかりであった。
「人形に水晶竜の角に、神聖物質の生成だって出来るし、マッスルクレイもそうなんだったっけ。本当にあんたって、信じられないお子さまだねえ」
改めて口にしてアイキスはため息を吐き、そしてテーブルにある余った分の神聖物質の固まりを見る。
実は、昨々日にジンライが倒したコボルトキングが持っていた神聖物質の武器のようにすでに焼きが入り加工済みの神聖物質が今回のように出てくることは稀にあるのだ。しかし今、目の前にある加工前の神聖物質というのは、アイキスもほとんどお目にかかったことはない。それはコボルト系統の魔物しか神聖物質を抽出できないし、それが人の手に渡ることがほぼないからだ。コボルトの群れの巣穴に時折少量見つかる程度のレア素材なのである。ダンジョンの宝箱からも極稀に見つかるが本当に例外でしかない。
しかし風音は神聖物質を作るスキルを持っていた。それは『偽銀生成』という偽銀を作るスキルだが、そのスキルは偽銀を生成する際に神聖物質を銀から取り出すのである。
風音は『偽銀生成』を用いて、購入した銀から神聖物質を取り出してトンファーの材料にしていた。そのスキルがあれば、それこそ独占的に神聖物質を供給できるのだから、一財産築けそうなものだが、風音にその気はないようだった。
余りの神聖物質についてはアイキスが欲しがっていたのと、風音もほぼ全額を銀購入につぎ込んでいたので適正価格で買い取って貰うことで同意することにした。そうして風音は意気揚々と武器を貰って帰っていったのだった。
そして、その日の夕食は黒岩竜のタンステーキとドラゴンイーターサラダであった。ドラゴン調理人のノーラには街に来たときにすでに素材は渡してある。
タツオとユッコネエを除くパーティ全員で竜牙堂に向かった白き一団だったが、風音は外で空を見ながら食べるように言われて若干悲しい思いをした。だがまたビームが出たので、その対応は成功ではあったようだった。夜だったので天に伸びた一条の光はたいそう綺麗であったという。
また街の住人も魔狼討伐で白き一団が来ていることは知っていたので「ああ、そういえばいるんだっけ」と思うぐらいで特に騒動にはならなかった。もっともホテルでお留守番のユッコネエとタツオがにゃーにゃークエークエーとビームを見て騒いではいたが。
なお、今回の食事で弓花の竜気発生量が上昇して、戦闘中でも多少であれば雷撃を槍に乗せることが出来るようになっていた。風音も『ストーンミノタウロス』と『戦士の記憶』がLv2に上昇。ストーンミノタウロスは魔力コストが180から150に、継続時間が30分に延長された。戦士の記憶はより技量が上昇したようである。今の風音はトンファーがメイン武装となってはいるが、剣士ではなく戦士の記憶なのでそこにもプラス補正はかかってはいる。剣の扱いも強化されたので、差し当たっては直樹を鍛えるのに利用できないか要検討となった。
また他のメンツの上昇効果は微々たるようだったが、ジンライが若干若返った気がするとルイーズが騒いでいた。風音がジンライをジーッと見てみたが、言われればそんな気もする程度の微妙なものだった。
名前:由比浜 風音
職業:魔法剣士
称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王
装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪
レベル:33
体力:135
魔力:260+420
筋力:57+20
俊敏力:52+14
持久力:33
知力:65
器用さ:41
スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』
スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶:Lv2』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス:Lv2』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』
風音「どうもドラゴンステーキを食べるとスキルに経験値が振られてるようだから他のスキルもレベルアップが結構早いかもしれない」
弓花「私もちょっとパワーアップかな。スタン効果で殺さずに済むならそれに越したことはないし」




