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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
魔狼編

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第二百四十九話 話題になろう

 その日、冒険者たちと、コボルトキングと魔狼のふたつの魔物の群れとの戦いは終結した。

 白き一団主導による山狩りは開始早々に敵の総力をぶつけられたものの、結果として勝利を収めることに成功していた。だが、この魔狼討伐でここまでの数の魔物に襲われたことは一度もないし、そもそもコボルトキングの存在自体が表に出ていなかったことを考えれば、魔物たちが今回本腰を入れて仕掛けてきたのは間違いないようだった。シルフィンウルフやカマイタチドッグの風のスキルで匂いすら誤魔化して接近してきた魔狼の手際の良さと、白き一団の戦力とヒッポーくんがなければと思うと冒険者たちはゾッとしていた。だがそうしたIFの恐怖よりも彼らの話題は主にたった一人の少女について向けられているようだった。

 確かに今回、コボルトキングを討伐した牙の槍兵、或いは猫騎士の力は凄まじい。仲間を逃がすために殿しんがりを務め上げたモッコとそれをフォローしたロンドも十分な活躍だったと言える。地核竜を倒した魔剣の操者と鬼殺し姫の化け猫もなかなかの強さであったし、炎の有翼騎士の存在も忘れては行けないだろう。直接戦ったわけではないが鬼殺し姫の竜変化の術も見事であった。だが彼女の功績はそれらを大きく上回る。


 血染めの狂戦士ブラッディベルセルクユミカ。


 ただ一人で200の魔物を狩り殺し、多くの魔物たちの鮮血に染まりながらもついには魔狼フェンリルイミテーターすら単独撃破した女傑のことを冒険者たちはそう呼んだ。

 街に戻ってきた冒険者たちは魔物たちを解体し手に入れた毛皮や牙などの戦利品を街の住人に見せつけると、そのほとんどをひとりの化け物のような女がしとめたのだと声高に言ったのだ。それは強者に敬意を示す冒険者たちにとってはそれは最高の褒め言葉であり、悪意など全くない。街の住人がどう思ったか分からないが、彼らは興奮しながら口々に如何に彼女が勇猛に、獰猛に、冷徹に、残虐に、一切の情ひとつなく魔物たちを狩り取ったのかを熱狂的に話し始めた。

 無論、その夜の酒場でも話題は彼女の討伐のことばかり。ランクB以下の参加できなかった冒険者たちも血染めの狂戦士ブラッディベルセルクユミカの話を聞いて驚いた。さすがにフカシだろうと反論する者もいたが、弓花に救われた冒険者たち、特に実力者であるモッコやロンドからの殺意すら篭もった本気の視線を向けられては信じるしかなかったのである。

 そして、それが鬼殺し姫、猫騎士と並んで血染めの狂戦士ブラッディベルセルクの名が白き一団の顔となった最初の夜であった。

 なお、そんなとんでもない状況であるにも関わらず、当の本人はと言えば戦闘後は疲れてずっと眠りについていて、翌日の夕方まで目を覚まさなかった。その間に噂は街全体に広まっていく。久方ぶりの伝説のごときエピソードに胸が熱くなった冒険者たちは加減を忘れたかのように、延々と語り続けた。あの女ヤベエ……的なことを。そして弓花が目を覚まして、自分がなんと呼ばれているのかを知ったとき、すべては手遅れだったのである。



◎ドルムーの街 冒険者ギルド隣接酒場 夕方


「子供が真顔で悲鳴を上げて泣き出して、母親が土下座で謝ってきた。そんなときってどうしたらいいんだろうね」

「笑えばいいと思うよ」

 弓花がプルプルさせながら尋ねた質問に、風音はそう返した。その横でジュースを飲んでいるティアラは(それでは脅えさせるだけじゃないかしら)と思ったが口にはしない。冒険者というのは恐れられれば一流だと言われている。そう考えれば決して悪いことではないかもしれないが、年頃の少女には少々荷が重い話だった。

「まあまあ、今回はレベルも2上がったしチャイルドストーンの魔物も手に入ったし良かったじゃないのさ。ジンライさんもすっごく褒めてたし」

「まあねえ。その点ではねえ」

 そういって弓花は自分の横でミルクをピチャピチャ飲んでいる魔狼の頭を撫でる。風音のユッコネエと同じようにどうやら魔狼フェンリルイミテーターも弓花を認めて自分の主としたようである。名はクロマルと名付けられた。目や牙、爪が赤いので見た目は恐ろしい印象を受けるが、従属している分には普通の犬のようである。

 ちなみにクロマルは黒岩竜とベアードドラゴンの肉をすでに与えてある。その結果、毛並みが良くなり、爪と牙が黒岩竜並の硬度を持つようになって、咆哮に竜の威圧が混じったようだった。また肉食だからかドラゴンイーターのコアは食べようとしなかった。


 なお、現在は魔狼討伐成功祝いのパーティ中である。前日にも行われたが負傷したり疲れたりで参加できないメンツも多かったので仕切り直して今日も行われたのだ。主役はもちろん弓花だが、本人が恐ろしいのか魔狼が恐ろしいのかは分からないが、誰も近づこうとはしなかった。

 この場にいないメンツについては、ジンライとルイーズにメフィルスは古馴染みと共に酒を飲み、直樹たちも知り合いがいて一緒に話に入っているようだった。

 タツオはホテルでお留守番である。もちろんひとりにはさせてはおらず、ユッコネエとタツヨシくんドラグーンに護衛させている。今頃はユッコネエのおなかの上でオネムの時間だろう。


「そういえば師匠の倒したコボルトキングの武器って、賢者の石シリーズの素材だったんだよね?」

 自分の話題になると気が滅入ると思った弓花は別の話題を振ることにした。

「んー、そうだねえ。マッスルクレイと同格のホーリークレイが使われてたみたいだね」

 賢者の石シリーズとはゼクシアハーツ内における鉱物系レア素材の通称である。ジンライが倒したコボルトキングの武器バルディッシュに使われていたのはその中でもホーリークレイと呼ばれている素材だった。

「コボルトが銀から抽出する神聖物質ホーリークレイですわね。あれだけのものを生み出すには相当の銀が偽銀になったでしょうね」

「けど、この辺りでまだ見つかってない銀鉱山があるかもしれないってことだよね。その探索も今度あるかもって話だよ」

 ティアラの言葉に風音がそう返す。コボルトの出現する地帯には銀の鉱山がある可能性が高い。風音の返答にティアラも頷いた。

「ええ。上手く見つかれば良いですわね」

「ところで風音、その神聖物質ホーリークレイってどんなものなの?」

 弓花の疑問に風音は答える。

「悪魔とかゴーストとか負の想念的なアストラル系統に強い素材だね。焼くと陶器みたいになってすごく堅い……けど、一度焼いちゃうと溶かして戻すとか出来ないから、コボルトキングの武器もあれをそのまま使う必要があるんだよね」

 そのバルディッシュはメンテナンスをしてタツヨシくんドラグーンが装備することになっていた。不滅のスコップがどうにも使い勝手が悪いようで、タツヨシくんドラグーンの戦力不足が前々から問題になっていたのだ。

 重量があるので今のチャイルドストーンの出力では厳しいようだったが、今回倒した地核竜の竜の心臓を使用すれば対応できると風音は考えていた。

「銀系統の素材でもあるから、弓花の神狼化とも共鳴するはずだけどね」

 そう風音は言うがバルディッシュと槍では使い勝手が違いすぎるので、弓花が装備するというわけにもいかない。

「ま、私には親方のくれたシルキーがあるし、いいよ」

 ずっと愛用している相棒である。弓花も使い続けられるうちは使うつもりだった。

「でも、そのバルディッシュだっけ? あの武器の素材がコボルトが銀から作るのは分かったけど、あの武器もコボルトが作ったわけ?」

「いや魔精鍛冶師っていう妖精がいるんだよ。魔物が持ってる武器は自分たちで作った石器だったり、人間の持ってた武器を奪ったりしてるのも多いけど、時々強力なのを持ってる場合にはそいつ等が鍛えた武器を手に入れてるらしいよ」

「へぇ」

「そうなんですの?」

 弓花が「そうなんだ」という顔をしたのは想定内だが、ティアラまで風音の言葉に驚きの顔だった。

(あれ? もしかしてこれってゲームだけの話?)

 風音の今の知識はゼクシアハーツの中のものだ。ゲーム内では魔精鍛冶師ドヴェルグといい、倒すとレア武器が手に入り、意志疎通が出来ると素材に応じて強力な武器を作ってくれるレア魔物という扱いだった。もしかするとレアすぎてこの世界では馴染みがほとんどないのかもしれないと風音は思い、後ほどジンライに尋ねた。すると噂だけは聞いたことがあるということだったので、まったく知られていないわけではないようだった。


 そして翌日、風音のトンファーが完成したとの知らせが届いた。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー(未完成)×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪

レベル:33

体力:135

魔力:260+420

筋力:57+20

俊敏力:52+14

持久力:33

知力:65

器用さ:41

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』


風音「ようやく地味だった弓花にも二つ名がついたんだよ。良かった良かった」

弓花「血染めの狂戦士にルビでブラッディベルセルクとか……なんでこんなことに」

風音「ほらほら言っちゃっていいんだよ。ブラッディは英語でベルセルクはノルウェー語だァア!!とかそんな感じのセリフをさ」

弓花「言わないわよ!?」

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