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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
魔狼編

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第二百四十八話 タイマンをしよう

 かくして弓花たちの戦いは終結を向かえた。

 風音は高等魔術である竜変化の術を使ってここまでやってきたと誤魔化し、単位にして14土下座を消費してその場のヘイトを下げることにも成功していた。もっとも冒険者たちも驚いたのは確かだが、風音も急いで来ただけで脅かすつもりも悪気があったわけでもないことは理解できている。なのでその土下座は風音の気の回しすぎであるとも言えた。そして、


風音「オーケーオーケー。すべては上手くいった。なにも問題はない。問題はなかった」

弓花「こっちの魔物は200から300くらい。殲滅完了。エミリィは無事だよ」


 というコメントがチャットウィンドウに書かれたのを確認した直樹は弓花たちの状況を知った。どうやらあちらも戦闘に入り、そして勝利したのだと知ったのだ。であれば直樹も負けてはいられない。


「モッコチーム、魔物300殲滅とのことだ。こっちもやるぞーー!!」


 直樹が戦場でそう声を張り上げる。

 もっとも直樹が口にした魔物300体を殲滅というのはさすがに周囲の冒険者たちには信じられる数字ではなかった。救援に行った風音を含めてもたかだか30足らずでは、まともに考えて倒せる数ではない。その場のほとんどの人間がそう思ったが、しかしフカシだろうといってわざわざそれを否定して勢いを削ぐような真似もしない。そして、その場にいる連中が直樹の言葉に乗って「おおおおおーー!!」と声を挙げる。

「そんじゃこっちは500だ。ぶっ殺せーー!!」

 そうチャチャを入れながらも冒険者たちはコボルトライダーたちに向かっていく。対する魔物の数は乗り手とライダーを分けても200ほどだ。直樹の言葉に乗って冗談を言ったつもりなのだろう。それに周囲は笑いあいながら戦いに興じていく。

 その声を挙げた直樹も両手に竜炎の魔剣『牙炎』と未だ名のない水晶竜角の魔剣を振るって戦場を駆けていく。そのスタイルがここ最近のジンライとの手合わせで直樹が得た結論であった。

 ジンライは二槍流を自ら編み出したとき、その参考として二刀流を学んでいた時期がある。遠隔操作とは言え無数の剣を自在に操れる直樹ならば二刀流も可能なのではないかと言うジンライの言葉のままに直樹はそれを試してみて、実際にこれは……という感触を得ていた。

 そして水晶竜角の魔剣は前日に手に入れたばかりでまだ使いこなせるレベルではないが『牙炎』はすでに使いこなしている。

 もっともここでファイアブレスを出しては山火事の恐れもある。なので意識を集中し、炎をコントロールし、2メートルはある巨大な炎の剣を生み出す。それは灼熱の炎そのものであるが故に剣でつばぜり合えるのは実体を持った部分のみ。なのでその一撃はコボルトたちの持つ貧相な槍の防御を突き抜けてコボルト本体も乗っていた地竜モドキまでをも焼き切っていく。

 それを見た周囲の冒険者等が感嘆の声をあげた。確かにその攻撃が魔剣の力に依るものであることは一目瞭然ではあるが、それを制御し炎を留めている直樹の実力も認めないわけにはいかない。

 さらにもう片方の虹色の輝きを帯びている剣も、魔剣としての能力こそ発揮はしていないが、その切れ味が並の代物ではないと語っていた。白き一団の話を知っていれば、その剣がクリスタルドラゴン素材であることは想像が出来ただろう。

 だが、この戦場での主役は直樹ではない。合流した風音チームの中にいた上位の実力者であるボランの戦いもすさまじかったが、だがそれすらも霞むような戦闘が目の前で行われていた。


「はっはーーー!やるな犬の王よッ!!」

「うにゃーーー!!」


 雷と炎を纏った風のような物体が、戦場を駆け抜ける。


「ウォォオオオオン!!」

「グォォオオ!!!」


 それを追って地核竜と、その上に乗ったコボルトキングが追いかける。木々の間を駆けぬけ、飛び越えるジンライとユッコネエに対し、すべてを薙ぎ払うがごとく破壊していくコボルトキングたち。ともすれば、ユッコネエが急速に反転し地核竜の上を飛び越え、コボルトキングを襲う。


「クッ、ハァアア」


 ジンライが槍を振るうが、それをコボルトキングはバルディッシュと呼ばれる、先が巨大な斧となっている長柄武器を振り回して弾く。コボルトキングの人間を遙かに超えた豪腕に弾かれてはさすがのジンライも体勢を崩さざるを得ない。


「ユッコネエ、下がるぞ」

「うにゃんっ」

 

 ジンライの言葉にユッコネエがそのまま離れる。途中でユッコネエが火の玉を地核竜にぶつけたが、あまり効果はない。堅い鱗に阻まれてダメージが通りにくいのだ。

 そしてコボルトの王は、離れたジンライを見ると、遠吠えをあげてバルディッシュをかざす。すると四方からコボルトライダーが突進してくる。

「ユッコネエ、半分任せた」

「にゃっ」

 ジンライがユッコネエから飛び降り、ユッコネエとは左右に分かれて走り出す。コボルトライダーたちはそれを見てギョッとなったが、だが構えることすら出来ずにジンライの突進によってコアを貫かれる。


「邪魔だっ!」


 そして乗っていた地竜モドキを、義手を巨大化させた手刀で貫く。背から腹まで貫かれて絶命する地竜モドキの姿に魔物たちどころか冒険者すらも唖然として見ている。だがジンライは地竜モドキの背から降りて、その巨大化した腕で地竜モドキを持ち上げて、さらに迫ってくるもう一組のコボルトライダーに投げつけたのだ。

「グギャッ!?」

 それを受けたコボルトは激突の衝撃で地竜モドキの背中から投げ出されてしまう。もちろん、それはジンライの腕力だけで地竜モドキを投げ飛ばしたわけではなく、発動させた巨人の御手ジャイアントアーム補助腕サイドアームが地面に突き刺さって支えることで出来た芸当だが、そんな状況は周囲には分からないし、ジンライというただの人間が巨大な魔物を投げ飛ばしたという事実も覆せない。


「ウォォオオオン!!」


 その状況にいち早く動き出したのはコボルトキングだった。

 地核竜を突進させて潰そうとでもいうのだろう。ジンライに向けて走り出す。

(ユッコネエはまだ戦ってるか)

 ジンライはユッコネエとコボルトライダーがまだ戦っているのを横目で見る。そして再度乗る余裕はないと判断して、突進する地核竜に向かって走り出した。


「ぬぉぉおおお!!」


 そして地核竜の突進を僅かに避けて、その足を切り裂く。ジンライの槍は黒岩竜の牙そのもの。たかだか地核竜の鱗を切り裂けぬはずもない。その攻撃で前の右足を損傷した地核竜が吠えて倒れかかるが、だがジンライにそれを見届ける余裕はなかった。


「ウオンッ、ハッァアア!!」

「チィッ!?」


 まるでジンライが避けるのを見越したかのようにコボルトキングが上空からバルディッシュを持って飛び降りてきたのだ。それを両手の二槍で受けたジンライは、弾かれて吹き飛ばされる。

(やはりやりおるわ、コイツ!)

 手が痺れるのを感じながらも、ジンライの笑みは絶えない。人間を超えた膂力を持つ義手で大地に槍を突き刺して吹き飛ばされた勢いを殺す。6本の補助腕サイドアームが動いて周囲に突き刺さり、さらに衝撃を抑えた。

 だが危機をそれで脱したわけではない。迫る殺意にジンライが顔を上げて睨みつけ、上から降りてきたバルディッシュを左手の槍で受け流す。そして流されて地面に激突する斧によって土塊が弾け飛びジンライの体を汚すが、だがジンライはそのような些末事を気にしている余裕はない。

 目の前から恐るべき速度で手刀が迫っているのだ。


「ウヌォオ!!」


 ジンライはそれを『柳』で避ける。だがそこより『転』に至るわけではない。右手を槍から離し、コボルトキングの脇腹をギュッと掴んだ。


「ギャッ!?」


 そのあまりの力にコボルトキングが吠えた。だが抵抗するにはもう遅い。ジンライの右腕は風音の作った義手なのだ。その膂力は人間のそれを遙かに超える。

 そしてジンライは、脇腹ごと内臓をも一気に抉り取った。


 犬の王の悲鳴が森を木霊する。


 あまりの激痛に意識が跳びかけるが、しかしコボルトキングとて、むざむざとそのままやられるわけにはいかない。コボルトキングも手を伸ばしてジンライにつかみかかるが、ジンライはそれを補助腕サイドアームで器用に弾いてバックステップで間合いをとった。

「ま、普通は想像も付かんわな。ワシとて信じられんよ。この腕のパワーは」

 コボルトキングの血で染められた右手には槍が再度握られていた。後ろに下がると同時に回収していたのだ。

「ユッコネエ、地核竜は任せる。直樹も頼むぞ」

 コボルトキングがうめき声を上げてバルディッシュを握るのを見ながら、ジンライが声をあげた。

 そして「にゃー」という声と「分かりました」という声が響いた。ジンライはその返事に満足そうに頷き、目の前の魔物と対峙する。


 ジンライの目の前にいるのはコボルトキングと呼ばれる、コボルトの進化系としては最上位に位置する魔物だった。2メートルはある長身に、全身が強靱な筋肉に包まれ、獅子のごときたてがみを持っている。その手に持つバルディッシュには血が染み着いているが、相当の業物なのだろう。黒岩竜の槍とぶつかって刃こぼれが少しした程度なのだ。そして刃こぼれをした部分からは銀色の輝きが漏れていた。コボルト族が銀から抽出するというホーリークレイという素材かもしれないとジンライは予測した。

(魔狼の裏にいたのはコヤツだな。恐らくは以前にワシ等が倒したコボルトライダーの群れもこれの配下であったのだろう)

 もっともそんな推測は今は無粋だろうとジンライは首を横に振って頭から追い出す。ただ純粋に敵を討つ。もっと戦闘の純度を上げる。その先へと突き進む。


 ただひたすらに研ぎ澄ませる。自分はただひとつの刃であると……


 そしてコボルトキングが走り出した。ジンライも構えてそれを迎え撃つ。

 確かにコボルトキングの膂力は人のそれを大いに超えている。かつてのジンライであれば避けるしかなかっただろうが、しかし義手の膂力はそれを抗すことが出来る。ぶつかり合う右の槍と流す左の槍、まるで大木と柳を同時に相手にするかのような感触にコボルトキングは戸惑い、ジンライはそこに付けいる。


「ガッ!?」


 再び右手の剛の槍と激突しようとしたコボルトキングの攻撃をジンライは受け流し、そしてコボルトキングの右肩を左の槍で貫いたのだ。それは『閃』と呼ばれるジンライの最速の突き。一撃で肩がイカれたコボルトキングは接近したジンライを噛み砕こうと口を大きく開けたが、


「無駄だぁああ!!」


 だがジンライは叫びながら踏み込み、右の槍をその口に突き入れる。そのまま振動を伴う『振』と呼ばれる槍術の一撃がコボルトキングの頭部を粉砕する。


 そして首より上を吹き飛ばされたコボルトキングがドスッと地に崩れ落ちると、周囲のコボルトたちがそれを見て叫び出し、一斉に壊走を開始した。王の死に自分たちの勝利が消えたと判断したのだろう。

 それを追うべきかどうかと、ボランがこちらを見たがジンライは首を横に振った。森の奥地にこれ以上入り込むのは危険だ。すでに弓花たちも魔狼を討伐していると聞いているのであれば、山狩りの目的はおおよそ達成できたはずである。

 後ろを見れば、直樹とユッコネエ、そして追いついてきた炎の有翼騎士フレイムナイトや他の冒険者たちが協力して地核竜を倒しているところだった。


 こうして魔狼とコボルトキングの二つの戦場は冒険者側の勝利によって終わり、戦いは終結したのである。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー(未完成)×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪

レベル:33

体力:135

魔力:260+420

筋力:57+20

俊敏力:52+14

持久力:33

知力:65

器用さ:41

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』


風音「戦いが終わった。私はなーんにもしていないけどね」

弓花「いやヒッポーくんはあんたの力なんだからね。役には立ってるからさ」

風音「新しいスキルも手に入らなかったんだよねー」

弓花「まあ、たまにはそんなこともあるって」

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