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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
魔狼編

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第二百四十六話 血風となろう

 振るう。槍を振るう。

 右から左へ、左から右へと。ただただ槍を振るい続ける。


 獣たちの叫びを聞きながら、その声の主にトドメを刺しながら、神狼族の姿になった弓花は唯ひたすらに、周りから見れば滅茶苦茶に、だがその実、きわめて合理的にすべてを最小限の動きでもって敵を屠り続ける。


 それは周囲から見れば竜巻のようであったろう。

 銀の輝きを放ちながら、鮮血をばらまきながら弓花はただただ槍を振るい続けた。

 仲間たちが去ったのは確認した。モッコも負傷しながらも銀狼に護衛されながら退却していった。追いかけていったのは半分ほどだろうか。残された弓花にはそれを正確には把握出来ていないが、ここで完全に分断されたのは間違いない。

 だが10分後には直樹が来る。それまで生きていれば弓花の勝ちだ。そう考え、弓花はひとり戦場に立っていた。


(突いて、斬って、突いて、突いて、斬って、突いて、斬って、突いて、突いて、斬って、突いて)


 ひたすらに槍を振るう。四肢を切り裂き、急所を突き、弓花は己を機械であると定義付けたかのようにただ作業のようにそれを繰り返す。

 だがさすがに数が多い。押され始めた状況に舌打ちをして、弓花は迫る獣たちを背に走り出した。臆したかと獣たちが追うが、無論そんなわけもない。弓花は後ろにあった大木を垂直に駆け足で登ると、大木の下へ集まってきた魔物の密集地帯の中心へとバーンズ流槍術・奥義『大震』を繰り出す。大型魔獣を一撃で弾き飛ばすための槍技がその場にいる獣たちを弾き飛ばしていく。

 元々ジンライは自身の身体性能の問題で必要魔力量の高い槍術は扱えず、弓花もそうした技は教えられていなかった。なので弓花はディアサウスのバーンズ道場で初めて魔力コストの高い技を覚えたのだが、こうした一対多数では役に立つモノも多いようだった。

 しかし技を放って地面に着地した弓花にすぐさま上位種であるハイコボルトが迫ってくる。弓花は襲いかかるその敵に対しカウンターでいくつかの急所を的確に貫いたが、だが止まらない。尋常ではない筋肉に包まれた二本足で迫る犬の化け物に弓花は舌打ちをする。


「鈍いヤツっ」


 弓花は一言、そう口にしてから真横に槍をふるって両目を切り裂き、その口の中に槍を突き入れて首裏の脊髄までを抉った。

 それでもまだ動くようだが、弓花が蹴りを入れて後ろへと弾き飛ばすと、目の見えぬハイコボルトは周囲にいる仲間たちを巻き込んで暴れ始めた。

 それを横目で見ながら弓花は今度は三方から迫る3体のコボルトブルーを見て、瞬時に姿を消した。いきなり獲物が消えたことも魔物たちが驚いたが、今、弓花が使ったのはバーンズ流槍術で『雷歩』と呼ばれる瞬間的な加速であり、実のところ彼らの背後に移動したに過ぎない。

 そして弓花はアイテムボックスから風音お手製の水晶投擲槍を出して『雷神槍』を放った。

 『雷神槍』は本来遠距離用、それも対竜戦想定の技である。それが目の前のコバルトブルーの背中に直撃すれば、どうなるかは明らかだった。爆発したかのように魔物の上半身を破壊して、さらにはその先の真正面にいたシルフィンウルフをも串刺しにした。

 

 同時に四方から、獣たちが迫る。それだけ派手に立ち回れば弓花の位置などすぐにバレるのは当然のことだ。だが、そこにふたつの影が飛び出していく。

「遅いッ」

 ワォォオンと声を上げながら銀狼たちが迫るシルフィンウルフたちに体当たりをした。眷属たちのようやくの帰還である。どうやらモッコたちを逃すことには成功したようだった。

「シロ、キバ、ちょっと疲れてきたし、楽させてね」

 名を呼ばれた二体の銀色の狼たちは遠吠えで返し、周囲の獣たちに牽制する。この二体はサイズこそ普通の狼のそれだが、その種族は銀狼という魔物としても上位種に位置する。もっともその銀狼に軽口を叩く弓花も本当に楽をするつもりなどはない。

(やれるウチにさっさと潰すに限るか)

 迫る敵を銀狼たちに任せて後ろに下がった弓花はアイテムボックスから水晶の投擲槍を次々と出して、それを地面に突き立てる。その光景を見て周囲の獣たちの空気が変わった。それが先ほどのコボルトブルーを貫いたものだと理解できているのだろう。その様子に弓花は目を細め、投擲槍を一本抜いた。

 そして、撃たれる前にと獣たちが走り出し、銀狼たちがそれを牽制する。その間にも弓花は次々と雷神槍を繰り出し投げ続ける。併せて銀狼の隙間を抜けて迫る魔物を反対の手で持った白銀の槍シルキーで突き殺すことも忘れはしない。

 それは止まらない。森の中を飛び交う閃光のような攻撃がコボルトブルーとハイコボルトを中心に狙って貫通する。そして突き刺さった木々が破壊され崩れ、土煙を上げて地面をも抉った。もっとも獣たちも来ると分かっているものに対してただ黙って狙われているわけではさすがにない。先ほどのような背後からの不意打ちではないのだ。神狼の身体能力と直感による狙撃力は高いとはいえ、その場で逃げ回ることで直撃は回避する。直撃でなくともその威力は絶大だ。獣たちの四肢やわき腹などが容赦なく抉られ、その場で絶命する魔物も少なくはなかった。そして投擲槍がすべてなくなると、再び弓花は銀狼を伴って走り出した。


 その頃には周囲の獣たちの勢いは随分と弱まっていた。目の前の弓花を恐れているのだろう。獣の血で赤黒く染め上がりひたすらに殺し続ける弓花の姿は、狂戦士ベルセルクのそれである。

 しかし、その実体は狂いにはほど遠い。師の教えに忠実に従い、ただただ学んだことを繰り返す弟子がそこにいるだけだ。


 そして魔物の中でも上位種であるコボルトブルーとハイコボルトの半数が散ろうとして、ついに魔狼が動き出した。

 数に任せて討ち取るつもりが、逆に討ち取られようという状況に魔狼も動かざるを得なかった。かといって撤退はない。たかだか一匹の猿を相手に尻尾を見せるのは魔狼の矜持に関わる。だが猿を相手に、対等に挑んでやるほど、自分を安いとは見ていなかった。


 グォォォオオオオオオオオンン!!!


 魔狼の口から巨大な叫び声があがる。

(……いやな声を)

 神狼化している弓花にはその意味が理解出来た。それは命を捨てて殺せ……だ。周囲の魔物たちの気配が変わっていく。恐怖の方向が変わっていく。それは弓花から魔狼へ、彼らは背水の陣へと立たされる。即ち、殺せなければ殺すというボスからの意思表示。

 恐怖がその瞳に宿り、弓花を見据えて一斉に走り出す。


 もっとも、だからといって弓花のすることが変わるわけでもない。

 

 迫る数が増えようが『雷歩』によって距離を取り、魔物ごとにズレるこちらへの反応速度にあわせて個別に対処していく。コボルトブルーやハイコボルトは厄介だが、銀狼たちの参戦によって間合いを取りやすくはなっていた。一撃で殺せずとも何度でも突いて避けてを繰り返す。

 そしてこれまでの戦いでもその恩恵を大いに受けた神狼化に伴う疲労回復が彼女の足を止めさせない。ひたすらに殺し、ひたすらに避ける。そして……


(これはっ、ヤバいかも)


 直後に弓花の直感は警鐘を鳴らす。まるで黒い稲妻のように魔狼フェンリルイミテーターが走り出したのだ。

 恐るべき速度でヨダレを飛び散らせながら、口を大きく開き、弓花に迫る。それを弓花は『雷歩』の加速で避けようとするが、


(速いッ!?)

 

 逃げきれない。弓花はこちらに噛みつこうとする魔狼を前にして、ここにきてようやく恐怖が芽生えた。だが、そこへ敢えて踏み出した。


 そしてガンッと音が響き、弓花の前に魔狼が「キャウンッ」と鳴いて跳ね飛んだ。周囲の獣たちがざわつく。

「あっぶない」

 弓花はそう言って一息吐いた。見れば竜骨の盾を装着した左手を前に出していた。

 行ったのはシールドバッシュ。弓花は噛みつかれる前に前へとダッシュし、魔狼の鼻ッ面に竜骨の盾を叩き込んで吹き飛ばしたのだ。その跳ね飛ばされた魔狼はそのまま一回転して地面に降り立つ。


 なるほど、強い……と弓花は思った。


 目の前の魔狼は漆黒の毛に包まれ、赤き瞳と赤い牙、赤い爪を持ち、そして胸にはチャイルドストーンが脈打っている。漆黒の魔物というと竜の里で戦った悪魔憑きの魔物を思い出すが、こちらはアレとはまるで異なる、生命力に溢れたものであった。


 そして弓花と魔狼が同時に飛び出す。槍を、牙を、盾を、爪をぶつけ合い、ついには銀と黒の戦いが開始された。だがそこから始まるのはお行儀の良い一騎打ちなどと言うものではない。元より狩るか狩られるか、相手か自分か、その場にいる命が生き残りを賭けている蠱毒のような戦場だったのだ。故にその場のすべての魔物は死に物狂いで弓花へと駆け出していく。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー(未完成)×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪

レベル:33

体力:135

魔力:260+420

筋力:57+20

俊敏力:52+14

持久力:33

知力:65

器用さ:41

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』


弓花「10分過ぎたけど直樹来ないんですけど。トホホなんですけど」

風音「変身タイムもそろそろ尽きそうじゃない?」

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