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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
魔狼編

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第二百四十五話 挟撃をしよう

「さーて、どっちにワンちゃんいるのかなあー」

 そう言いながらも弓花がヒッポーくんクリアを走らせる。白亜の肌を持つヒッポーくんハイも綺麗ではあるが、女子組的にはこの透明なヒッポーくんクリアの方が人気が高いようである。

 そして一緒についてきている冒険者たちもヒッポーくんの物珍しさに慣れてくると、自分たちの乗っているモノよりも上位そうなヒッポーくんクリアが気になってくる。その芸術品と言って良い竜と馬を混合したような造形とその輝きに目を奪われる。

 そもそもがヒッポーくんクリアはクリスタルドラゴン素材である竜晶石を使って竜の心臓を動力に動いているゴーレム馬である。単純に素材としての価値も高い贅沢な仕様であり、周囲の目を引くのも無理はない。普段はヒポ丸くんの影に隠れがちではあるが。


「よお、姉ちゃん。そっちの馬はスゲーもんだな。これもあのカザネってのが作ったモンなのかい?」

 そして弓花の背後からクリアについて冒険者が質問を寄せる。自分たちが乗っているヒッポーくんもそうだが森の中ですら快適に走れるそれを是非とも欲しいと思うのは当然のことだろう。

「そうだけど、ゴーレムらしいから、なんだっけ? トーレとかいう国とかでも作れるんじゃないの?」

 そう簡単に答える弓花に後ろについている冒険者は、なるほどなと頷いた。

「ゴーレムかぁ。確かにさっき土からこいつを作ってたっけか」

 それを聞いて周囲の冒険者たちが、ゴーレムとトーレという単語を口にする。どうやらトーレ王国でならばこれが手に入るのでは……とでも考えているのだろう。ちなみにゴーレム事情にはあまり詳しくない弓花も似たような認識であったので、弓花本人としては別に誤魔化しているわけではなかったりする。

「おい、いたぞ」

 弓花たちが話していると、前を進んでいた獣人の冒険者が声を上げる。

「むっ」

 弓花も獣人の声の方を向き、確かにかなり先に何かがいるのを目視する。

(あー、さっすが獣人ってのは鼻が効くよね)

 亡霊まで嗅ぎ分ける現在の風音の『犬の嗅覚』スキルほどではないにしても獣人はパーティに一人は欲しい種族である。獣人の嗅覚は獲物を狩る場合にも、魔物から逃げる場合にも非常に有用であるのは、風音と共に旅をしている弓花も十分に理解できていた。もっとも、今回の狩りにおいては現時点までその鼻が決め手にはなってはない。

「あれ、追うのはマズいんだっけ?」

 弓花が目を細くして、獣人が見つけた何かを見る。動く様子はどうやらないようだ。

「ここまでの経験上、待ち伏せの可能性は高い……というか十中八九そうだろうよ。あれはスネークウルフだしな」

 獣人と同じヒッポーくんに乗っているエルフ族の冒険者がそう答えた。彼らは二人組のランクBパーティで獣人がモッコ、エルフはマークという名だと弓花は聞いていた。

「スネークウルフ?」

「この付近に生息する、音も立てずに獲物を狩る蜥蜴狼の一種よ」

 弓花の問いには、クリアの後ろに乗っているエミリィが答えた。蜥蜴狼とは狼に似た生態のトカゲのことである。その系統であるスネークウルフはこの地方においてはサイレントキラーとも呼ばれ、主に夜営中の冒険者にとってはたいそう恐れられている魔物であった。

「そうそう姿を見せてくるようなヤツじゃないし、その気になれば獣人の鼻でも見つけられないような隠密性の高い魔物よ」

 エミリィの言葉にエルフ族のマークが頷く。

「それが姿を見せているっていう点でもう怪しさ満点だな。それにあの距離じゃあ追いかけても確実に逃げられるだろうしな」

 そのマークの話に周囲の冒険者らが同意する。

 この弓花とエミリィのいるチームはヒッポーくんが10体いるが、実際に乗ってみて三人組よりは二人組の方が良いとする者も多く、冒険者自体の数は弓花たちを入れて27名である。

「敢えて誘いに乗るって手もありだろうけど」

 問題はこの人数で倒しきれるかということだった。弓花だけならば問題はない。神狼化も竜人化もある。だが、このメンツで変化なしの弓花と同等に戦えるレベルなのは獣人のモッカと、今は殿しんがりをしている弓使いのロンドという男ぐらいだろう。そして弓花の呟きにエミリィが顔を青くする。

「ちょ、ちょっと、それは本気じゃないわよね」

 一緒に突っ込んだら私は確実に死ぬ。そう確信しているエミリィは悲鳴を上げた。

「んー風音に相談してみる」

 弓花は弓花で自分たちだけでは無理でも、ほかとの連携ならばいけるだろうと考えて開きっぱなしのチャットウィンドウに文字を打ち込んでいく。


弓花「こちら弓花」

風音「あろーあろー。こちら風音」

弓花「今スネークウルフとかいうのを発見。誘われてるみたいだけど」

風音「うーん、どっちに逃げようとしてるの?」


 弓花は少しずつ前に進みながら、スネークウルフがこちらに合わせて移動する方向を見る。


弓花「ここから北東かな」

風音「らじゃー。なら直樹と挟み撃ちさせる。この距離なら10分くらい?」

直樹「そんなところかな」

風音「そんじゃ深追いしない程度に進行で。直樹もOK?」

弓花「了解」

直樹「オッケー姉貴」


 チャットはそこで終了。弓花は今、風音と決めたことをその場の冒険者たちに伝える。ウィンドウの見えない冒険者たちには弓花が本当に風音とやり取りをしたのかさっぱり分からないが、だがここに来る前に実際に連携がとれているのは確認している。さすがに命のやり取りをする上でこんなバカな嘘を付くとも思えないし、そこは信用するしかないと周囲の面々も理解していた。

 そして弓花の後ろにいるエミリィも未だに弓花たちの言うウィンドウというモノがよく分かっていなかった。操作できるのは風音、弓花、直樹だけ。タツオも風音に接触していると見えるらしいのだが、まるで見えぬエミリィには三人が口裏を合わせて嘘を付いているような気すらしてしまう時がある。

 もっとも直樹が普段からそのウィンドウというものを使っているのはエミリィも知ってはいた。見ることも操作も直樹にしかできないが、アイテムボックスもマップも3人で組んでいた頃にもずいぶんとお世話にはなっていたのである。

 それが今は直樹とこの目の前の弓花の間にある絆のようにエミリィは感じてしまう。先日にティアラという恋のライバルを発見してしまうというトラブルもあったが、エミリィにとっての本命の敵はやはりこの弓花なのだ。

 そのライバルがエミリィの知らない方法で直樹とコミュニケーションを取っている。実態はどうあれ、その事実にエミリィの嫉妬が止まらないのは仕方のないことだろう。

(あーまた、いやな視線感じるなあ)

 とは、弓花の心の中のつぶやき。ことあるごとにエミリィのジェラシックな視線ビームを受ける弓花としてはどうすれば誤解が解けるのか未だに思案中だ。以前に元彼女だからーと話したら余計に警戒されたようだった。

 ともあれ、気を取り直して周囲に集中しようとして、


「なにこれ?」


 唐突に殺意の塊が向かってくるイメージを幻視する。

「マズい。敵ッ!!」

 その弓花の叫びに周囲の冒険者が慌てて辺りを見渡す。なお弓花と同様の気配を察知した獣人のモッコはすでに戦闘態勢に入っている。

(今までなんで気付かなかったのよっ!?)

 弓花が舌打ちをしながら、ヒッポーくんクリアを飛び降り、


「モッコさん、西を警戒ッ」

「応ッ!!」


 唯一まともに反応できたモッコに指示を出して、自分は東側へと走り出した。エミリィはその様子に驚きの目で弓花を見るが、弓花の走り出した先に無数の獣たちの姿を見て驚愕する。


「魔物だと!?」

「なんで、こんなに接近してやがるんだ」


 それはシルフィンウルフやカマイタチドッグなどといった風属性の魔物たちを含めた魔物混成群の東と西からの挟撃だった。群れの中には毒爪持ちのコボルトブルーやハイコボルト、ジェミニスヘッドと呼ばれる双頭の狼もいるのが見える。

 そしてその数は100では利かない。或いは200を超えているかもしれない。さらには魔物たちの背後には巨大な黒い狼がいた。それが魔狼フェンリルイルミネーターと呼ばれる魔物であろうことは弓花にも理解できた。あれほどの威圧感を放っている魔物は早々いるものではないのだ。


「こんな状態、勝てるわけないじゃない」


 エミリィが思わず口にするが、それは冒険者たちのほとんどの声の代弁だった。だが動いている者は既に動いている。


「退却ッ!退却ーー!!」


 自らの言葉とは反対に敵への突進をする弓花の指示に従い、冒険者たちは一斉にヒッポーくんをUターンさせて元来た方向へと走り出していく。

「弓使いと魔術師は殿しんがりを務めろ。この馬は俺らが操作せんでも勝手に動いてくれる。撃ちまくれ」

 列の最後尾にいた弓使いのロンドが前に出てそう口にする。

「ユミカッ、あんたはッ」

 エミリィの叫びにすでに戦闘突入の弓花が叫び返す。


「テキトーにやるから早くっ、モッコさんもね」


「承知してるッ」


 逆方向からは、モッコがそう返した。


(あーもう、こりゃオルドロックのモンスターハウスよりもヤバいんじゃないの?)

 弓花は心の中でそうぼやきながら、即座に神狼化して周囲の魔物を駆逐していく。眷属の銀狼も呼び出すが、そちらはモッコに回すことにする。

 獣人モッコはすでにランクAに王手をかけている実力者だが、敵はまるで無限湧きのようにやってきている。相棒であるエルフ族のマークがヒッポーくんで迎えに来ているようだが、次々と敵が増えていて、このままでは逃げ切れないだろう。なので銀狼を彼らの護衛につけるしかなかった。さらにそうこうしている内に上位種の魔物たちもこちらに迫って来ている。


 そしてこの窮地の中、弓花の背に冷たい汗が流れる。冒険者たちの体勢の立て直しか、或いは風音や直樹の助けがくるまでの間をどう乗り切るか、それが問題だった。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー(未完成)×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪

レベル:33

体力:135

魔力:260+420

筋力:57+20

俊敏力:52+14

持久力:33

知力:65

器用さ:41

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』


風音「弓花から連絡がないんですけど」

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