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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
魔狼編

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第二百四十四話 我様を出そう

◎ドルムーの街 正門前 早朝


 風音たちが山狩りの方針を冒険者ギルドに提案し、そしてそれが通った翌日。冒険者ギルドの仲介により、風音たちは冒険者たちが集まる街の入り口で、山狩りメンバーと顔合わせをすることとなった。


「なんだ、あの馬車……魔王でも乗ってやがるのか」

「ああ、見たことあるわ俺」

「あれで悪魔に突進してたんだけど、しかしまたゴツくなってるなあ」

「あのデカいエルダーキャットはなんだよ……ありえねえ」


 そんな声が聞こえる中、街の中から巨大な漆黒の甲冑馬に引かれた黒く紫色に放電している馬車がやってくる。馬車の上にはエルダーキャットの亜種と見られる巨大な魔物が座っている。そのサイズは並みのエルダーキャットよりもふた回りは大きいようだった。

 馬車はそのまま冒険者たちの前で止まると、馬車の周りに張られた紫電結界を解除することで周囲に紫の雷を飛び散らせた。その様子に冒険者たちが警戒し一歩下がると、それに合わせたようにゆっくりと扉が開かれる。


 そして中から出てきたのは漆黒に染められた甲冑を身に纏った男であった。


「なっ!?」

 

 声を挙げたのは一人や二人ではないだろう。その馬車を知っている者は意外に多かった。それはリザレクトの街の大武闘会決勝で、それはブルーリフォン要塞の戦いで、それはドラゴンベア討伐戦で、それぞれの場所で見た人物がこの90名の冒険者の中にはいた。

 だから、その中から出てくるのが彼らには予想が付いていた。だが出てきたのは彼らの知る幼き少女ではなく、ひとつの禍々しき存在だったのだ。それはまるで闇より生まれいでた混沌を人の姿に変えたような男のようであった。

 その全身を覆う甲冑はまるで悪魔の顔が張り付いたような形をしていて、まるで今にも噛みついてきそうな異様な気配を放っている。両手足の装具も刺々しく突起物が突き出て、全身を覆うように黒いマントを羽織っていた。そしてその兜はその顔のすべてを覆い尽くし、形状は鬼とドラゴンを混ぜ合わせたようであり、左右には巨大で捻れた二本角が生えていた。さらには背には巨大な漆黒の剣があった。いずれもまるで血管のごとき、赤いラインが入り、それはまるで脈打っているようであった。

 さらにその兜から僅かに見える赤い瞳は紅蓮の炎のように怪しい輝きを見せ、全身から巨大な威圧感を放ちながら目の前の冒険者たちを圧倒している。その場にいる誰しもがその男を見て、恐怖を感じた。その異様な空気に飲まれていた。


 あれはなんだと……魔王そのものではないか……と。

 冒険者たちは、恐れおののきながらも、それをにらみつけた。だがその様子を漆黒の男は笑う。


『なるほど、勇猛果敢な戦士たちだ。我の姿を目にして、こうも闘志を切らさぬとはな』


 そして男は漆黒のマントを開いて、両手を掲げた。

『しかし、数百年の長きにわたり眠りについていた我を起こした代償は高く付くぞ人間』

 そして高らかに拳を振り上げて宣言するのだ。

『我は魔王!幾千万の屍を乗り越え、星々の海をも渡り、世界を越えて君臨するものなり!!』


「なんだとっ!?」


 誰かの声が上がる。しかし、大半の者はその状況についていけてないのだ。一体なにが起きているのか。何故に魔王が復活し、このような場で宣言をするのか。それは誰にも分からなかった。きっと宣言している本人にだって分かりはしないだろう。分かるはずがないのだ。


『さあ、偽りの時間は終わった。ここより世界は我の手により』


「はいはい、出るからどいてね」


 そう声がしたかと思えば、少女が馬車の中からその黒い男を蹴っぽって出てきた。

「ぎゃはっ!?」

 そして響いた声はさきほどまでの渋い声ではなく、小さな少女のモノであった。さらに蹴られた拍子に男は転び、その男の姿がボワンッと消えた。そしてその場に残っているのは、鼻から地面にぶつかって涙目の小さな少女だけであったのだ。

 なお内訳を言えば、男の姿は『竜喰らいし鬼王の脚甲』のアイテム仕様効果である『変化の術』のよるもので、漆黒の装備は『武具創造:黒炎』、強大な威圧感は『偽りの威圧』によるものである。

 元々その場限りの低コストで発現させたために衝撃には脆く、背後からの弓花の攻撃によってすぐさま変身が解除されたのだ。ひどい茶番だった。

「痛いよ弓花?」

「やかましい。あんた、調子に乗りすぎ」

「散々、魔王っぽいとか暗黒将軍とか言われてるからリクエストに応えただけなのに」

「誰のリクエストだ」

「いやもういいから、さっさと話進めようぜ」

 風音と弓花の言い争いに後からヒッポーくんハイに乗ってきた直樹がそうツッコミを入れる。クリアに乗ってきたライルも周囲にすんませんと謝っていた。

 その様子を馬車の上に乗るユッコネエが「にゃー」と声を出してあくびをした後、座っていた格好からおなかを上に向けて大の字になって寝転がったところで、全員の緊張が解かれた。


 そんな風音の悪ふざけの後ではあるが、さすがにその場にいる冒険者たちはランクAやB、それに相当するメンバーで構成された集まりであるので、今前の前で起きたものが高度な魔術によるものであることは理解できていた。

 怒り出す冒険者もいたが、実際にリザレクトの街かブルーリフォン要塞か、或いはデイドナの街のいずれかで風音と共に戦ったこともあるメンバーがこの中には何人かいたので「ああいう残念な子なんだ」と説得して納得させた。あと風音が土下座させられていた。ついノリでやってしまったらしい。これは美味しいのでは?と思ったら止まらなかったらしいのだ。自業自得である。ボランという冒険者がソレを見て青い顔をしていたが、その心情を理解する者はいなかった。

「相変わらずねえ。というか前会ったときよりもヒドくなってない?」

「ああ、セラさんだ。おひさー」

 そして冒険者の中にはブルーリフォン要塞のダンジョンに共に潜った『黒鴨団』のリーダーのセラもいた。土下座タイムも終わり涙目の風音がセラに挨拶を返す。

「うん、久しぶり。でも驚いたわよ。馬車も馬も微妙に形が違ってた……というより、一層物々しくなってたし、変なのが出てきて私が勘違いしちゃったかと思っちゃったわよ」

「あれはポッと出だからと舐められないようにしようと努力した結果だったんだよ」

「あーそうなんだ」

 明らかにセラの理解を超える悪ふざけっぷりでツッコむ気力もなかったのでスルーすることにした。

「あれ、セラさんひとり?」

「まあね。ランクの問題で他のメンバーはまだブルーリフォンでダンジョンの掃討してるところ」

 セラもパーティのメンバーではあるが、彼女のランクはBで他のメンツはCである。このクエストを受けるにはセラ以外は力不足であるようだった。

「それで、白き一団が今回取り仕切るってのはさっき聞いたんだけどね。どういうことなのか、そろそろ話してもらえる?」

 そう口にしたセラの周囲には冒険者たちが集まっていた。

 すでに彼女らは事前にギルド職員から、本日の山狩りが白き一団の指揮の元で行われる事を聞いていた。そして前回の山狩りまで取り仕切っていたパーティ『カイロス』のリーダーであるボランもなぜだか積極的に白き一団に譲ることに賛同し、実際に共に戦ったことのある冒険者たちも同意したことで、とりあえず受け入れの土壌は出来ていた。今の風音のパフォーマンスも変人の類としては見られても実力を疑うような要素はないようだった。

 もっとも、あの甲冑馬と馬車とエルダーキャットだけでも、十分に納得させるだけのものはある。そして御者席から降りたジンライを知る者はハイヴァーンの古参兵ならば多い。知らずとも右手の異様な黒いガントレットと全身から発せられる気配に気付けば侮ることなど出来ようはずがいなかった。

 それにハイヴァーンで活動していた直樹たちを知っている者たちもこの場にはいた。期待の若手としてパーティの引き抜きを考えていた連中もこの場には何人かいたのだ。

 ともあれ、白き一団の指揮を認めるかはまずは方針を聞いてからである。冒険者ギルドの職員から聞いた内容は、白き一団の指揮に変わることと、山狩りの方法は直接説明が入るということのみであり、未だにその方法は明らかではない。

 弓花に「キリキリ話せ」とせっつかれる風音は勿体ぶることもできず、そのまま行動に出た。

 そして、さすがに街の真ん前の地面を抉ることはできないので、少し離れた場所で馬型ゴーレムのヒッポーくんを30体作成する。

 その姿に驚く冒険者たちだったが、それが森の中でも自在に走れることにはさらに驚愕していた。風音の出した案とはようするにヒッポーくんによる高機動探索である。そしてメンバーは、


 風音、メフィルス、タツヨシくんドラグーンを乗せたヒッポーくんハイ。


 ジンライ、直樹を乗せたユッコネエ。


 弓花、エミリィを乗せたヒッポーくんクリア。


 そして待機組として待ちの状態となるライル、タツヨシくんノーマル、ティアラ、ルイーズにタツオの馬車組。


 と、それぞれのチームに冒険者たちを振り分けてウィンドウ機能のチャットを使いながら連携による索敵を行うというものであった。また馬車とはメフィルスを通じて風音とティアラが行えるため、4グループ間での連携が可能となっている。

 そして作り出したヒッポーくんもかつての狂い鬼の討伐時よりも高い防御力と機動力と持続力を兼ね備えた仕様になっている。その乗り心地や森林での移動能力も申し分なく、リアルタイムでの連携にも舌を巻いた冒険者らからは不満の声は当然上がらなかった。

 その後、風音は他の冒険者たちにヒッポーくんを渡して操作に慣れてもらい、準備が整ったところで魔狼たちが潜伏しているツァイトの森へと向かうこととなった。本日は東の方面はハイヴァーン騎士団が探索しているらしく、風音たちは西から探索を行うことになる予定とのことだった。


 そして山狩りが開始されたのである。


名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・ドラグホーントンファー(未完成)×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪

レベル:33

体力:135

魔力:260+420

筋力:57+20

俊敏力:52+14

持久力:33

知力:65

器用さ:41

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』


風音「強い人も結構いるみたいなのに偽りの威圧にかかった人多かったね」

弓花「あの系統は雰囲気に飲ませるとかかりやすいっていうしね。しかし、ヒドい茶番だった。下手すれば攻撃受けてたからね」

風音「うーん、少しやりすぎたけど……魔王スタイルは今後も活用していきたいよね」

弓花「何に使うつもりよ? というかちゃんと反省しなさい」


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