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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
守護の霧編

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第二百三十四話 黒鬼の目を覚まそう

 ドラゴンイーターとは、ドラゴンを甘い匂いで誘い、そして自らの子である種子を植え付けて寄生する魔物だ。そしてドラゴンイーターの種子はドラゴンの竜気を吸収し、異常な成長力でドラゴンを取り込んでいく。取り憑かれたドラゴンは甘い匂いを発する種子へ攻撃できなくなり、そのまま寄生されてしまうのだという。

 しかし、ドラゴンイーターの目の前の黒い鬼は自分にまとわりつくその種子をブチブチと千切りながら、涎を垂れ流して特攻する。種子もドラゴン用の甘い匂いを発しているが、しかし狂い鬼は黒岩竜の因子と融合したハイブリッドなオーガではあるが、ドラゴンそのものではない。つまり、効きは弱かった。

 そして竜気だけではなく、オーガとしての魔力も宿している。故に狂い鬼は止まらない。

『……怖い』

『まあ、食欲旺盛なのは良いことだよ』

 その後ろをティアラのフレイムパワーと風音のタツヨシくんドラグーンが、狂い鬼のフォローに回っている。目の前のドラゴンイーターは右手を失い、今は黒い甲冑で身を包んだストーンミノタウロスの刺又さすまたに抑えられている。とはいえ、ドラゴンをミノタウロスの力だけでは抑えきることは出来ない。周囲をフレイムパワーとタツヨシくんドラグーンが牽制しているからこそ辛うじて抑えることに成功しているのだ。

(……でも、このドラグーン制御ってなんか違うなあ)

 現在、本体は遠いところにある風音は今はタツヨシくんドラグーンを完全に操って戦っている。ジンライの義手の制御力を見て、そして人形使いの機動力を夢見て風音はこうして遠隔操作で戦っているわけだが、だがその動きはスキルのない劣化した風音の動きでしかないようだった。

(まあ、今はこれでやるしかないわけだけどさ)

 やはりどこかで人形使いのスキルか、それに準じる手段を手に入れるしかないようだと風音は結論づけて今はやるべきことをやるよう意識を集中した。


 そして、そのやるべきこととは狂い鬼のフォローである。今や狂い鬼は食欲の権化となっていた。迫る種子をすべてかみ砕くが、まだ物足りない。どうやらドラゴンイーターのコアは現時点でも移動を続けているようだった。今の狂い鬼はそれを追う狩人だ。


 対してのドラゴンイーターはこの状況に焦っていた。植物ではあるが、コアの存在によりその意志は確固として存在している。取り憑いているドラゴンはさきほど腕をなくした痛みで意識を覚醒しつつあり、その肉体も今は黒の全身甲冑のミノタウロスに阻まれている。何よりさきほどから自分にまとわりつく黒い鬼が厄介だ。その動きから、ドラゴンイーターのコアを狙っているのは分かっている。ドリアドリザードも人間に阻まれてこちらを助けにはこれない。このままでは討伐されると考えたドラゴンイーターは、目の前の黒い鬼を倒すべく迅速に行動することを決める。

 種子で狂い鬼に取り憑こうとしても上手く行かないのであれば『自分』で取り憑けば良いのだと判断し、ドラゴンイーターはわずかな時間でその身を寄生していたドラゴンから本体を分離させ、全身の枝や蔓とともに黒い鬼に覆い被さった。


 そして、狂い鬼の叫び声が響きわたった。



  **********


 

「まっずい!?」

 後方にいる風音が思わず叫んだ。風音には『情報連携』を通じて狂い鬼の状況が完全に把握できている。それ故に『情報連携』を解いた。狂い鬼を通じて強力な催眠ヒュプノが風音にまでかかってきたのである。

「狂い鬼が寄生されたっぽいね」

 風音の言葉にルイーズとティアラがドラゴンイーターたちのいる戦場を見る。

 風音が狂い鬼を通じて最後に見たのは全周囲から覆い被さるような植物だった。

(全身を包まれて寄生か。そりゃあ馬鹿力でも解くのは難しいかな)

 召喚解除は出来ないようだった。魔力もドラゴンイーター経由で『あちら』からパスを通じてこちら側にまで若干だが流れている始末である。魔力切れで動かなくなる気配は当面ない。

 まさかここに来て、本体が狂い鬼に取り憑くとは思っていなかった風音は焦るが、だが風音が自分で現場に行くわけにも行かない。狂い鬼の状況を見ていたから分かるが、周囲に種子をまき散らしながら進むドラゴンイーターに風音が近づけば早い段階で寄生されるだろう。狂い鬼のように強靱な肉体をもっているわけではないのだ。

 そしてタツヨシくんドラグーンとフレイムパワーの前で、狂い鬼を木と草の塊のようなものが覆い、その姿を巨大化させている。狂い鬼の身長は普通のオーガよりも巨大な4メートル。それが現在は6メートルほどの木の巨人と化していた。

 だが、それに立ちはだかるものが一体、それは黒炎の全身甲冑を纏ったストーンミノタウロスだった。すでに寄生されてたドラゴンはドラゴンイーターから離れ、ぐったりしているため、刺又さすまたは狂い鬼に向けられてる。

 なお、倒れているドラゴンには当然周囲を飛んでいる種子が寄生を開始しているが、ドラゴン自体の消耗が激しいようで、上手く成長出来ていないようだった。


『どうすれば……』


 そのなかでティアラが周囲の状況を見ながら、打開策を探していた。

 風音は生身ではこれないからカザネバズーカは出せない。動きの鈍いタツヨシくんドラグーンでは対処が出来ないだろう。ストーンミノタウロスが狂い鬼に勝てればよいが、今目の前の戦いを見ていると難しそうだった。


「グルゥロロオオオオオオオ!!!」


 巨人同士の戦い。刺又とは簡単に言えば杖の先から角が二つでていて、その間に相手を挟んで捕縛する武器である。警察で使用したり、学校に不審者用に置かれたりもするものだ。同サイズの相手ならばこれで捕縛も出来るはずだが、狂い鬼の馬鹿力と、周囲を纏うドラゴンイーターの蔓や蔦、枝が延びて、刺又での攻撃を阻害する。

(わたくしに出来ることは……)

 風音のドラグーンは、その蔓などを攻撃してストーンミノタウロスの行動をフォローしている。そして炎の有翼騎士フレイムパワーはどうするべきか。

(このフレイムパワーは守りメインじゃない。でも全力を出すには……)

 ティアラは召喚騎士の目で、直樹たちのフレイムナイトを見て、


『フレイムナイツ、戻します!!』


 そう『情報連携』を通して宣言した。直樹たちも、狂い鬼の状況は横で見ていて理解している。彼らの同意の声が届き、ティアラはパワーを残して、他の召喚騎士を解除した。

 そして直樹たちの周囲にいたフレイムナイトがクリスタルの槍をその場で突き立てた後、一瞬で炎のごとく立ち消えた。


 それと同時にフレイムパワーから吹き出している炎の勢いが増す。翼が肥大化し、その甲冑に厚みが増した。その変化はフレイムナイトに送っていた魔力をすべてフレイムパワーに集中させて出力をあげた結果であった。


 なお、フレイムナイツが消えた後、直樹は苦戦を強いられることになるが、ライルの状況は特に変わらなかった。それはつまりフレイムナイツが直樹しか護っていなかったということだが、それはライルの能力を信頼したものなのか、単に眼中にないからか。

 ともあれ、フレイムパワーは本来の能力を発揮し、狂い鬼に対し戦闘を開始する。

(メインはミノさんに、私はあれを牽制する!)

 ティアラの意志に従い炎の有翼騎士フレイムパワーは空へと飛び上がり、その翼から十数の炎の羽を射出する。それは狂い鬼に纏っているドラゴンイーターへと刺さり、連鎖的に爆発し狂い鬼が咆哮する。

『良し。ティアラ、攻撃を継続して。痛みで狂い鬼の目を覚まさせれば、解放できるかもしれない!』

 風音からの指示にティアラは頷き、そしてフレイムパワーの持つ竜骨槍に意識を集中し炎を纏わせる。次の瞬間にはそれは炎のランスへと変じた。竜骨槍の内にある炎竜の因子がフレイムパワーと共鳴し、望む姿へと変化をしたのだ。

 フレイムパワーの援護にとドラグーンも突進するが、だが狂い鬼に呆気なく弾き飛ばされる。残念ながらタツヨシくんドラグーンの現在の戦闘力は自立行動と同じかそれ以下のようであった。風音がグヌヌと唸る。

『大丈夫。わたくしにお任せください!!』

 ティアラはそう言って、炎の有翼騎士フレイムパワーを一気に空へと上昇させていく。

 そして見上げる狂い鬼に向けて炎のランスを構える。

『さあ、これで目を覚ましなさいませ!!』

 ティアラの言葉とともにランスを突き出し、翼を全身に被せて、まるで一筋の閃光のように急降下する。


「ぐるっぅぉおおおお!!」


 対して狂い鬼も、さすがに戦闘の勘は衰えていない。全力で黒甲冑のストーンミノタウロスを弾き飛ばすと、空から迫る赤い牙にその拳を振り上げた。

 だが狂い鬼は忘れていた。いや意識していなかったと言うべきか。

 今の狂い鬼の拳は本来の彼のものではない。ドラゴンイーターによって増量し木に覆われている拳なのだ。対して空より迫るは炎の一撃。


『いっけぇえええ!!』


 そして、ティアラの裂帛の気合いとともに、灼熱の牙は狂い鬼の木製の腕を大きく抉った。抉られた箇所は燃えさかり、内側の黒い拳がむき出しになる。そのまま地面に着地した炎の有翼騎士フレイムパワーは、足を止めず炎の羽を近距離でぶつけて爆発させることで、その爆風を利用して、そつなくそのままその場から距離を取った。

『いやー、やるねえ。ティアラ』

 風音の嬉しそうな声が響く。これまでティアラの役割は壁や囮だったが、このフレイムパワーは完全なオフェンス特化。今までとはまるで違う進化で、しかもかなり強力な召喚騎士へと変じたようだった。

 そしてティアラの成長に満足しながら風音は視線を狂い鬼に向けて、こう告げた。


『それで、あんたはまだ惚けてるの、狂い鬼?』


 その言葉に、うなり声があがる。

 むき出しとなった黒い腕の周囲がヒビ入り、その腕は拘束している木々を破壊してそのままドラゴンイーターの植物の部分を突き刺した。狂い鬼を覆っているドラゴンイーター本体が震えるが、だがその腕は止まらない。

 そして、ブチブチと何かを千切りながら黒い腕とともに外に出てきたのは、緑色の丸い物体。それがドラゴンイーターのコアであることは、あまりにも強力な匂いから明らかだった。

 そして狂い鬼は、覆われた顔面に纏う植物をかみ砕き、その頭部をむき出しにして、そのまま一気にコアを喰らった。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・魔法短剣フェザー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪

レベル:33

体力:135

魔力:260+420

筋力:57+20

俊敏力:52+14

持久力:33

知力:65

器用さ:41

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携:Lv2』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』『ドラゴンフェロモン[竜系統]』


風音「ティアラが大活躍だったよ」

弓花「うーん。それは良かったんだけど、でも戦術的にはフレイムナイツの方も捨てがたいよね」

風音「あれのヘイト管理があるから私たちあまりダメージ喰らってないようなもんだしね」

弓花「オフェンスかディフェンスか難しいところかな。ま、そういう選択肢があるぐらいティアラが成長したってことだけどさ」

風音「うん、ちょっとびっくりした」

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