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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
守護の霧編

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第二百三十話 注意をしよう

 本日の山狩りも無事終了し、迷子の竜人の人も送り届けた白き一団の一行は現在は宿まで戻っていた。すでに日も暮れて、夜になりかけている。なので泊まる場所の違う風音はこの場で仲間たちと別れることになっていたのだ。

 だがその風音は未だ大竜御殿には戻らず、宿屋の入り口でジンライに対して義手についての説明を淡々と繰り返していた。それは朝方の義手の暴走が原因だった。



◎ドラゴニュートシティ 宿屋プラウン


「何度も言うようだけどジンライさん、寝る前にはちゃんと外すようにしてね」

「分かっておる。もう今朝のような失敗はしない。大丈夫だとも」

 心配そうな風音に、ジンライは「うむ」と頷いて問題なしと返した。

 普段であれば風音もその言葉を信用しただろうが、しかしジンライには前科がある。

 実は昨日も風音はジンライに義手についての注意をしていた。睡眠中は外すようにと言い含めていた。しかしジンライは寝る直前まで義手の扱いの訓練をしていて、そのまま眠りについてしまったらしいのだ。

 義手はあくまで使用者の意志に反映させて操作するもの。だから義手を扱う場合には、使用者が意識をしっかり保っておかないと危険なのである。しかしジンライは義手をつけたまま早朝に寝ぼけて窓を開けようとしたら、ギミックの一つである巨人の御手ジャイアントアームを発動させてしまった。手を伸ばそうと考えたことで、マッスルクレイが膨張し、巨人のように巨大化した腕が宿屋を突き抜けてしまったのだ。

 風音はこの里にいる間は、自分の部屋とされた大竜御殿の一室に泊まっているため、仲間たちとは同じ宿にはいない。なので弓花からメールで連絡を受けた風音は宿屋へとすっ飛んでいったのだが、辿り着いた時にはジンライはまだ土下座タイム中だった。

 失態の理由は先程述べたように、寝ぼけて義手を発動させてしまったためである。レールガンが発動しなかったことには安堵する風音だったが、義手の危険性を教えるためにも、風音は伝えてなかった機能についてジンライに詳しく説明を行った。


 まずひとつは巨人の御手ジャイアントアーム。これは単純に腕を巨大化させて攻撃するためのものだ。膨張する腕を支えるために、これには6本の足が身体を支える機能も付いていてバランスよくパンチを放つこともできる優れものだ。


 そしてもうひとつは雷神砲レールガン、女子中学生からロボットから銃に電気を通すだけで発動させたりもできるなんでもござれな近未来兵器であった。

 風音もお米の国ではすでに艦隊に実戦配備されているということを達良くんから聞いていたが、実物などはもちろん初めてお目にかかる。しかも絶縁体の石っころにサンダーチャリオットの紫電結界のようなシールドをかけて、石を電気伝導体にして射出の衝撃で崩壊しないような工夫までされている。ゼクシアハーツの設定をそのまま持ってきてるにしてもオーバーテクノロジー過ぎるなーと風音は思ったが、ともあれその説明を聞いたジンライは自重するどころか超ノリノリでやる気を出してしまった。そして山狩りついでに初実戦、大破壊となったのだ。

 風音も中庭で試してはいたから動作に問題がないのは分かっていたが、しかしその威力は凄まじいの一言に尽きた。その連続射撃によって、目の前の森は破壊され、魔物たちはほとんど壊滅状態、地形もかなり変わってしまった。

 量産型タツヨシくんの投擲よりも凄まじいその威力に風音も撃ってる最中は高笑いで興奮状態だったが、終わった後の惨状を見ると顔が白くなったほどである。だが、撃った後で分かったことだがジンライ曰く狙いを付けるのはかなり難しいとのことだった。確かに5本の足で固定されることでジンライへの衝撃は軽減されるのだが、照準はブレブレのようである。今回のように魔物が集まっていれば問題はないが、移動速度の速い敵相手をピンポイントで狙うのは困難とのことだ。

 そこまで聞いて風音は、もう少し石のサイズを小さくして、威力を減退させる必要があるかもしれないと考えた。或いは小さな鉄球など弾丸の方を工夫するのも良いかもしれないな……と。

 さらに他の問題としてはジンライがトリガーハッピーになってしまったことだろう。撃ちっぱなしで興奮状態が継続していて、終わった後も素で「ヒャッハー」と声を上げていて、あのルイーズですら引いていた。

 それにジンライが義手を気に入りすぎているのも問題だった。メンテのために一晩預けてもらえるようにと風音は言ったのだが、ジンライが玩具を取り上げられて泣きそうな子供のような顔をするので、諦めて明日の朝に風音が出向いてチェックすることになったのだった。

「とりあえず、外しても竜の心臓が起動してれば自立防衛は取れるし、ジンライさん以外の魔力の持ち主が無理矢理奪おうとしたら抵抗するから、大丈夫だからね」

 風音の忠告にジンライが、義手を撫でながら頷いた。この義手は6本の足を動かして虫のように移動が可能だ。形は腕だが、タツヨシくんやヒポ丸くんの兄弟でもあるのだ。

「なるほどな。ふふふ、シンディは賢いのだな」

 なお、ジンライの義手は奥さんの名前を取ってシンディとつけていた。そのあまりの可愛がりようを考えると、本物のシンディが見たときどんな反応をするのか風音は想像するのが怖かったが、本人は気に入ってるようなので放っておいた。


「じゃあ、左腕もちぎって義手『ルイーズ』も付けよう」


 とルイーズが提案するのを風音は笑顔で無視して、帰る時間ギリギリまでジンライに義手の諸注意を延々と述べていったのだった。



◎コンロン山 ドラゴンロード


「タツオ、もう姿を出してもいいよ」

『はい、母上』

 大竜御殿へ帰る道の途中、街からしばらく過ぎた辺りで風音の言葉に従ってタツオがインビジブルと光学迷彩を解いた。今はまだタツオの存在は世間に知らせない方針であるので、街中ではタツオには隠れてもらっていたのだ。

「ごめんねタツオ。今日は迷子の人もいたから、隠れてもらうしかなくて」

『いえ、母上。私もあのときは興奮して姿を見せてしまい申し訳ございませんでした』

 それはジンライのレールガンの時である。その光景にあまりにも興奮したタツオがつい、インビジブルと光学迷彩を解いて翼をバサバサと広げて叫んでいたのだ。

「しょうがないよ。あの人も見てなかったみたいだから、まあオッケーッしょ」

 風音も一緒に叫んでいたので、タツオを責める気はない。

「それにしてもタツオも途中までは活躍だったよねえ」

『はい。少し疲れましたが』

 そう答えるタツオは確かに少々お疲れのようだった。

 実際に試してみて分かったことだが、タツオのメガビームは風音の固定ダメージ・固定魔力消費の大食らい仕様と違って、自分の意志で調整が効くらしいのだ。射出時間の調整も可能なので、連発も出来、風音のものに比べてかなり使い勝手の良いスキルのようだった。

「ウィンドウ制御と自力制御の違いってヤツかなあ」

『母上のメガビームにはまだまだ届きませぬ。精進せねば』

 グイっと力こぶを作るタツオだが、風音が頭をなでながら「あんまり急いで大きくならないでね。寂しくなっちゃうから」とささやくと、くぇえと鳴いた。タツオは未だ甘えん坊である。

「まあ、迷子の人が来る前にタツオの他のスキルもある程度試せたし、今日はこれはこれで良かったかな」

 本日はタツオの初実戦である。成果は魔物を3.5匹撃破。

 まず目立ったのは、噛みつき攻撃だ。恐らくは『より頑丈な歯』の恩恵だろうが想像以上の顎の力に、首もとを食いちぎられた魔物は、すぐさま活動を停止した。それを別の魔物が引っ剥がしてタツオは投げ出されたのだが、転げて怪我を負ったところを自動修復していたので、リジェネレイトのスキルを持っていることも確認が取れた。

 そしてタツオはマテリアルシールドで敵の追撃を牽制して逃げたのだが、しかしながら体格の有無は大きいようだった。カウンターにキリングレッグでダメージを与えたが一撃では決まらなかったし、結局タツオはその後は風音の元に戻ってメガビームで魔物を倒していた。なお倒した相手はサーチピッグという他の魔物と共同で戦闘をする特殊な性質を持つ斥候タイプの魔物である。

「とりあえずは接近戦はもっと大きくなってからかなあ。危ないしね。メガビームを中心に鍛えていこうか」

『はい、母上』

 また、タツオは実際に戦ってみて自分自身が大きな相手に掴みかかるような血沸き肉踊る戦闘の方が好みなのを実感したが、母の心配も分かるのだ。なので、ここは素直に従っていこうと考えた。

「うん、いいこだねえ」

 そうすれば母から頭を撫でてもらえる。タツオはその母の手の暖かみが好きだった。そして気持ち良さげに鳴くのだった。


 ちなみにサーチピッグをタツオと一緒に狩っていた風音は『食材の目利き』という食材の旨さが分かるスキルを手に入れていた。どうやらあの魔物は餌で他の魔物を釣っているようであった。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・魔法短剣フェザー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪

レベル:32

体力:124

魔力:235+420

筋力:55+20

俊敏力:50+14

持久力:32

知力:62

器用さ:39

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』『武具創造:黒炎』『食材の目利き』


風音「そういえば旨いモノを見分ける能力が手に入ったんだ」

弓花「それは羨ましい」

風音「美味しいスイカとか見分けられるよ」

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