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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
魔軍到来編

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第二百十五話 親子で行こう

◎大竜御殿 グリモアフィールドルーム前


「うん、覚えた」

「あたしも問題なし」

「ちょーっと、目が回ってはいますけども」

 ケロッとした顔で部屋から出てきた風音とルイーズ、ティアラに対し、エミリィは死にそうな顔をしながらズルズルと入り口の横の壁にもたれ掛かっていた。

「うう、吐きそう。ギリギリだった」

 風音たちがこのグリモアフィールドルームに入ってわずか一分。風音たちはそうでもなかったが、魔術師ではない魔導弓使いのエミリィの頭はキリキリと疲労していた。しかし得るものはあった。頭痛だけして、何も手に入りませんでしたでは涙も出てこなかっただろう。


 このグリモアフィールドとは、部屋の内部に精神感応系のフィールドが形成されていて強制的に魔術を覚えさせる空間のことである。風音がこの世界に来て最初にフライの魔術を覚えた部屋もグリモアフィールドルームであった。

 そして風音たちが覚えたのはミラーシールドという魔術だ。グリモア最終章に当たるユニークスペルで魔法防御用、それも光線系の完全反射効果のあるシロモノである。ミンシアナでアオからこの報酬の話が出たときには風音は手放しで喜んだ。なにしろ当時の風音の対魔法防御は不滅のマントぐらいであったのだから。

 今でも使える魔法防御スキルは『キューティクル』ぐらいなので、このメガビームの応用にも使える魔術は風音にとってたいへん有益なものであった。それとこの報酬には生粋の魔術師のルイーズもたいそう喜んだ。グリモア最終章を覚えると言うことは魔術師にとってたいそう栄誉のあることらしい。属性も水と光の混合であるため、ルイーズとも相性が良かった。

 もっともグリモアフィールドは強制的に精神に記憶させるため、それを理解し得る知力がないと理解できずに覚えることは出来ない。エミリィはどうやら修得可能知力ギリギリであったようで、脳への負担が大きく今はダウンしている。

「大丈夫か?」

 直樹の問いにも、エミリィは返事を返す余裕はない。とりあえず手振りだけで反応はしていることを示して床に倒れ込んだ。

(あー気持ちいいー)

 そして床のひんやりとした冷たさに喜びを感じるエミリィだった。


 今回、このグリモアフィールドルームに入ったのは風音、エミリィ、ルイーズ、ティアラの四人のみでほかの人間は適性不足と判断されて、部屋の外で待っていた。

 そして付き添いとしてその場に一緒にいたビャクが嬉しそうに風音に話しかける。なおビャクも今は人化している。風音に付きそうにはその方が都合がよいからということで、ここ最近は大体風音に付き添っている。

「お疲れさまです。その魔術とナーガ様から頂戴された虹のネックレスがあれば魔術防御は完璧ですね」

「えへへ、そうだねえ」

 そのビャクの言葉に風音も胸元の虹色に輝くネックレスを触って照れたように笑う。部屋から出てきた風音の肩にまっ先に乗って頬ずりしているタツオの首にも同じものがかかっている。これはナーガの破損したレインボーハートから作り出した魔法具だった。

 このネックレスに竜気を込めれば魔法防御のレインボーカーテンを発生させられる。竜気を扱えない普通の人間には使用できないし完全防御ではないので強力な魔術を受ければ貫通される恐れもあるが、極めて強力な魔法具であるには違いない。

 さらに風音は虹竜の指輪というものももらっている。これはレインボーハートの中でも核部分から造られたエンゲージリングだ。ナーガが人の世に習ってと口にしていたが、それを風音は左手薬指にはめた。弓花があっという顔になったが、風音はそしらぬ顔だ。マッチョ旦那はもう良いのだろうか。なお、その指輪も当然特殊な力を秘めている。

 そして風音はナーガからもうひとつ、召喚術を受け取っている。悪魔との戦闘中に渡された『黄金の黄昏』という黄金剣の召喚術だ。これは竜専用の魔術であるため、竜体化したときにしか使用できないが、いずれは使いこなせる頃合いを見計らってタツオに受け継がせる予定だった。



◎大竜御殿前 広場


「最低でも7メートルはないと無理っぽいかなあ」

『何がですか?』

 風音のつぶやきにタツオがキュイ?と首を傾げながら尋ねる。

「んー、旦那様からもらった『黄金の黄昏』をタツオに渡すのはいつぐらいかなって」

『カザネの姿で、確かにギリギリではあったな。まあ膂力がなければ、あのサイズでも厳しかろう』

 そう答えたのはナーガだ。『黄金の黄昏』は元々が20メートルクラスの竜であるナーガ専用に拵えたものだそうで、ナーガが持つ分には片手剣なのだが、竜体化した風音が持つと随分と大振りのものに見えるのだ。だが風音がそれをちゃんと扱えているのは、あのサイズにしては風音の竜体化は膂力があるらしいのと『黄金の黄昏』自体に『竜剣士の記憶』というスキル付与のエンチャントがかかっているからだ。ちなみにこれはスキルコピーは出来なかった。


 そして現在風音たちがいるのは大竜御殿の前。白き一団にアオ、ビャクもいる。風音たちのお見送りである。

「まっすぐに進んでいきますので、モンシア王国とソルダード王国を越えてミンシアナ王国というルートですね」

 そうアオが言う。そしてアオのウィンドウと同期した風音のウィンドウに映るマップにルート表示がされているのを見て風音が「なるほどー」と返す。

『母上、気になっていたのですが』

「なに、タツオ?」

『その、空中に浮かぶ板はなんでしょうか?』

「え? 見えるの?」

 風音の驚きに弓花や直樹、アオも反応する。プレイヤーのみが見れるはずのウィンドウである。なぜタツオに見れるのか。

『はい。母上の肩に止まっているときだけですが。ほかの方には出てこないので何かとは思っていたのですが』

 風音がもしかしてと思い、『コマンドオープン』と喋らせたが反応はなかった。タツオがウィンドウを使えるわけではないらしい。

「ああ。多分、ウィンドウが見えると言うよりは風音さんの見えているものが見えているということなのでしょうね」

 そうアオが納得いったとばかりに答える。

「そういうものなの?」

「以前に魔力の波長の近しい親子で似たような事例がありましたので。見えるという以外に特に問題はありませんよ」

 へーと風音は口にして、タツオの前にマップウィンドウを持ってくる。

「ここから、こう行くんだってさタツオ」

『なるほどー』

 そのやり取りをナーガが羨ましそうに見ている。見えないのが悔しそうだ。それを見たタツオがナーガに話しかける。

『父上、きれいな地図があります』

『ふむ。我には見えぬが良かったなタツオよ』

『はいっ、父上!』

 そのやり取りでナーガの顔にも笑顔が戻る。単にかまわれたかっただけかもしれない。

「それで、行きで3日、帰りで3日くらいかな?」

「そうですね。今回の行動は、動向を他に知られるわけにいきませんから人里は経由しません」

「となると野宿かぁ」

『タツオを屋根もない場所に泊めるのは不安ではあるな』

「ナーガ様、ドラゴン的にはそれ普通です」

 ビャクが突っ込んだ。室内暮らしが長いナーガである。何しろここ数百年はほとんど大竜御殿で過ごしている。旦那様はニートの自宅警備員である。だがナーガは、地位も、名誉も、資産も、今は弱まったが力もある。そんじょそこらの自宅警備員ではない。さしずめ自宅警備王と言ったところか。

 ……などというバカなことをだれが考えていたのかなど本人の名誉のために明かすのは止めておこう。ボテ腹ロリで随分と見方が変わってしまった人もいるだろうし、これ以上アオの評判を落とすわけにもいかない。


 そして風音とタツオは竜化したアオに搭乗し、そのまま飛び経っていった。行き先はミンシアナ王国 王都シュバイン。


 ゆっこ姉を救うために風音親子の旅が始まったのである。


名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー・リア王

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣フェザー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜喰らいし鬼王の脚甲・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器・虹のネックレス・虹竜の指輪

レベル:32

体力:124

魔力:235+420

筋力:55+20

俊敏力:50+14

持久力:32

知力:62

器用さ:39

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』『黄金の黄昏[竜専用]』『ミラーシールド』

スキル:『キックの悪魔』『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚:Lv2』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド:Lv2』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化:Lv2[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット:Lv2』『より頑丈な歯:Lv2[竜系統]』『水晶化:Lv2[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム:Lv2』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』『炎球[竜系統]』『キューティクル[竜系統]』


弓花「生んで翌日には旅に出す。ハードな育児ね」

風音「タツオは手の掛からない子だからなぁ」

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