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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
ドラゴンイーター編

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第百八十五話 高い宿に泊まろう

 風音がアイキスに言っていたアテとはもちろん蓄魔器のことである。そして連絡する相手はゆっこ姉だった。風音がその場でメールを書いてゆっこ姉に送ったところ、一時間と経たずに返信が返ってきた。

 そこに書かれた内容を簡単に説明すれば、蓄魔器を用いた武器をアイキスに依頼するのは問題ないが、製作についてはこちらからも人材を送り込んでの共同製作でお願いしたいとのこと。またその条件で支障がなければ飛竜便で明日にでも人材を送り込むとのことであった。

 蓄魔器はその構造自体は単純で、どのみち市場に出てしまえばすぐに作り方は知られてしまうだろうし、材料であるマッスルクレイの製造方法はミンシアナとツヴァーラで独占している。その上で蓄魔器を扱ったアイキスの技術も拝めるのであれば、メリットがデメリットを上回ると踏んだのだろう。

 メールが届いたときには風音はまだ工房にいたので、アイキスにその内容で確認をとり、了承を得たのでそのままオーケーと返信した。そして、直樹専用の武器製作についてもその人材が来てからとなったので、風音たちもその日はチェックインしたホテルに戻ることにしたのだった。

 そしてすでに時間は夜に入ろうというところ。風音と直樹は仲間たちと合流するとホテルの一階にあるレストランに足を運ぶことにした。



◎ドルムーの街 オードナルホテル


「便利だよねえ、飛竜便」

 夕食を食べながら風音はゆっこ姉のメールの話題へと入り、そして続いて飛竜便に話が移った。その風音の話に応えたのは騎竜ライエルと契約を結んでいるベンゼルである。

「飛竜便は飛竜のテイマーの絶対数が少ないですからね。輸送代がバカ高い上に乗り心地も慣れていないとあまり良いとは言えませんから。なので人を運ぶのにはあまり利用されないんですよ」

 そのベンゼルの声に風音は「そうなんだー」と返した。そしてハイヴァーン牛のヒレステーキをカチャカチャと切って口に運んだ。今の風音はスキル『より頑丈な歯』により岩だろうとかみ砕けるが、これはそんなスキルなど全く必要がないくらいの、飲むとでも表現できそうなとろけるような柔らかさだった。

「それにしても、さすがベンゼルさん推薦のホテルだね」

「いやいや、喜んでいただけて何よりです。まあ、私が自慢しても仕方はないのですが」

 オードナルホテルはこのドルムーの街でも一等クラスのホテルで、食通であるベンゼル御用達なのだそうだ。ちなみにこのホテルでもドラゴンの肉は食べることができるのだが、明後日のノーラのドラゴンステーキを期待して、敢えて今夜はドラゴン系以外の食事をセレクトしていた。それでも舌がとろけそうにはなる味ではある。こっちの世界に来てやたら美味しいモノを食べ続けている風音たちだったが、これまた申し分ない夕食だった。

 だが、このホテルに泊まるのを決めたときには、エミリィは大層渋い顔をしてた。元々彼女は直樹たちのパーティ内では財布係をしていたのだ。なので普段泊まってる宿とはクォリティも金額もまるで違うここは自分たちが泊まれるような場所ではないのでは……と口にしていた。それをジンライに「パーティとしての格が上がったのだと考え、慣れるしかないな」とたしなめられて、渋々同意したのだ。

 実際のところ、現時点での白き一団は最高でランクBの冒険者しかいないパーティではあるが、近々の実績からすればランクAからSに該当する活躍をしている。格という点での問題はない。それだけ稼いでもいる。

 それにクリオミネの街の馬泥棒、レインボーハート強奪の件もある。さらに言えばここはドラゴンステーキのメッカであるドルムーの街だ。或いは黒岩竜の肉の話を聞きつけて強奪、もしくは強引な取引を持ちかけられるかもしれない。功績を残してしまった以上はそうした問題は今後もついて回るし、セキュリティにもそれなりに資金は必要であった。

「うう、まさかこんなにポンポンとお金が飛んでいくパーティだなんて」

 エミリィは目の前に出ている豪勢な食事を前に、何か悪いことをしているような気分になっていた。

「慣れろよ。コテージに泊まった場合も頭が痛くなるだろうしな」

 そう口にする直樹の言葉に首を傾げながらエミリィは出てくる食事に恐る恐る手を付けていた。ちなみにライルは特に気にした様子もなく「ウメーウメー」言いながらパクパクと食べている。性格の違いがよく出ていると言えるだろう。

 ジンライはそんな孫たちの様子をなんとも言い難い、だが満ち足りた気持ちで眺めていた。そして家族を顧みずに戦い続けていた自分が、こうして孫たちと一緒に旅をするなど半年前には思いつきもつかなかったな……と考えていた。

(……だが、悪くはない)

 そうジンライは思う。多少若返ったとはいえ、孫たちよりは確実に老い先は短いだろうし、そうであってほしいとも思っている。そして今まで見てやれなかった分、出来る限りのことはしていきたいとも考えていた。つまり地獄の特訓山盛り確定ということであった。孫たちの方が先に死ぬかもしれないのは気のせいだろうか。

「それで人をよこすって誰を寄越すんだろ?」

 弓花の問いに風音も「さあ?」と首を傾げる。

「私たちの知ってる人かどうかも分かんないし、普通に軍属の研究者の人かもよ」

 そう返す風音に弓花が「そっか」と返事をする。

「確かに知り合いである必要はないもんねえ」

「そゆこと。あーそういえばゆっこ姉から面倒な話ももらってたんだった」

「やっかいな話?」

 ルイーズがその言葉に興味を示した。やっかいな話大好きなのだ。

「うん。ブルーリフォン要塞でトゥーレ王国のゴーレム使いのユズさんって人にあってね。どうもマッスルクレイってトゥーレ王国の国宝になってるらしくてさ」

「ああ、あの王国って確かゴーレム魔術を神聖視しているのよねえ」

「なんかそっち方面でアクションがあったか聞いてみたんだよね」

「それでそれで?」

「それが『我が国から秘術が漏れた疑いがあるので製造方法を確認させてほしい』とかトゥーレから来てたらしいんだよね」

「嘘じゃん、それ」

 弓花が呆れ顔でそう返した。あれは風音のゲームの知識から出てきたものだ。

「まあね。そんでゆっこ姉も『ではこちらの秘術と付け合わせて確認をするのでその秘術を教えてほしい』と返したらしいよ。今返事待ちだってさ」

「子供の喧嘩だな」

 直樹も呆れている。

「まあ、友好関係もないとこなら、そんなものよ。嫌がらせ程度ならむしろ上等。大人の対応しても揚げ足取られるだけだから、結果的に子供みたいな対応になっちゃうのよね」

 ルイーズから辛辣な言葉が飛ぶ。

「でも頭のいいヤツはそういうバカなことをやってる裏でちゃんと動いてるから気をつけないといけないわよ」

 それはルイーズなりの忠告だ。風音も「そうだねぇ」と返す。

「ゆっこ姉も何かあったら即連絡するようにだってさ。一応牽制はしてるらしいよ」

「あの人ならまあ、そうするわねえ」

 ルイーズの中でのゆっこ姉の評価は高いようである。風音たちは知らないがルイーズはゆっこ姉の裏の行動もある程度情報として耳に入れている。ここ最近でもソルダード軍の謎の壊滅の噂を実に効果的に周辺国へと流しているようだった。

「なー、ところでさー」

 口の中をもぐもぐさせながらライルが声を出すと、ジンライが渋い顔をしてライルに注意する。

「ライル。食べ終わってから発言しろ」

「あ、はい」

 ライルもこの祖父には逆らえない。そして口の中にあった肉を飲み込むと聞きたかったことを発言した。

「さっきから出てくるそのゆっこ姉ってもしかしてミンシアナの女王様?」

 そのライルの言葉にエミリィも身を乗り出す。ライルもエミリィも、直樹からゆっこ姉の名は聞いていた。直樹はミンシアナの女王がゆっこ姉という知り合いに似ているからといってミンシアナにひとりで行ってしまったのだ。覚えていないわけがない。だが、まさかという気持ちもある。そもそも女王相手だ。身分からすれば気軽に話せるものではないのが普通の考えだった。

 しかし、その質問にはライルとエミリィを除いた全員が微妙な顔をした。どう話すか、どこまで話すかということを全員が思案したためである。その中で相変わらずルイーズの腕の中にいるメフィルスが口を開いた。

『そろそろ頃合いであろうよ』

 その言葉にジンライが頷き、孫たちをみる。

「お前たちも正式にこのパーティに入ったのだ。であれば話はしておくべきであろうな」

 そのジンライの言葉に、ライルとエミリィがゴクッとのどを鳴らす。いつも真面目な祖父のいつも以上に真剣な眼を見たためだ。

「まずは食事をとりなさい。そして部屋に戻った後に、ちゃんと話をしよう」

 それを聞いて頷きながらも食事に戻ったふたりを、直樹は複雑そうな顔で見ていた。一度は自分も通った道なのだ。その後の二人の心中を思うと直樹も他人事ではいられなかった。これからジンライが口にする話は恐らくライルとエミリィにとって、この日の夜をとても長いものとしてしまうであろうことは容易に予想がついていたのだから。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣フェザー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:31

体力:114

魔力:205+420

筋力:55+10

俊敏力:48+4

持久力:31

知力:62

器用さ:39

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』『より頑丈な歯[竜系統]』『水晶化[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』


弓花「ライルとエミリィはフリーズした」

風音「返事がない。ただの兄妹のようだ」

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