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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
ドラゴンイーター編

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第百八十二話 新技を試そう

「うわぁ、マズい? マズいよね?」

「旦那、見ての通りでさ。グッ、くそ。こんなデコボコしたところじゃあスピードも出やしねえ」

 御者の男がそう返す。ガタガタと馬車が揺れる。背後には地竜モドキに乗ったコボルトが追いかけてくる。

 馬車の中で馬車と同じくらいガタガタとふるえている男の名はノーラ・コルグメントと言った。

「くそっ、護衛の連中もあの分じゃあくたばっちまったでしょうね。まあ奴らの手際の悪さが原因だ。しゃーねえって感じですが」

「そのしゃーねえで死にたくはないなあ」

 御者の男の言葉にノーラはそう言うが、御者はもう諦めた感じではあった。

(いくら旦那がそう思ってもなぁ。何十組のあのコボルト地竜モドキライダー相手じゃあ骨も残らんだろうよ)

 本来の馬車の速度ならば逃げ切れたかもしれないが、囲まれてやむなく草原に出てしまった。地面は凹凸が激しく、大小の石がさきほどから車輪をはね上げてる。未だに横転してないのが奇跡のような状態だ。

「地核竜の肉を投げ捨てたんだから逃がしてくれればいいのになあ」

「臭いがこびりついてるんでしょうよ。畜生、もう少しでディアサウスの街道の近くだってのに」

 御者も迂回してまた街道に戻ろうとは思ってはいるのだがうまく行かない。

 そして「「あっ」」と二人の声が響きわたった途端に、すさまじい音とともに馬車が横転した。


「うわぁああああ!!!??」


 ノーラは馬車の中で転げ回り、ガタンッと背中を打ち付けた。

「つつ、なんだ。転んだのか?」

 衝撃で意識を失っていなかったのは僥倖だろう。御者の男は投げ出されて地面に倒れているのが見えた。

「くっ、なんてこった。馬車が横転してる。これじゃあ逃げられない!?」

 体の節々が痛みながらノーラは横転して今は天井となってしまった馬車の左のドアを開けて外に出ようとする。

「うわぁあああ」

 だが扉を開けて見えた光景は絶望そのものだった。横に並んで走ってくるコボルト地竜モドキライダーの群れが見えたのである。

「こりゃもうダメか」

 さすがにノーラもこれを見れば諦めるしかない。調理で竜をさばくことはあっても戦闘はからっきしだ。もはや彼の命は風前の灯火となっていた。

 そして、ついにコボルト地竜モドキライダーが目の前に迫ったところで、


「出なさいフレイムナイトたち!!」


 可憐だが勇ましい声が響き渡った。

「なっ!?」

 そしてノーラの目の前で、炎が吹き上がり、それが人の形へと変わっていく。そして、それは騎士の形となり、計10体の炎の騎士が馬車の周囲に現れた。

(これは……助かった……のか?)

 そう思ったノーラの背後に、トントンとふたつ何かが降りる音がした。そして振り向くとそこには子供と恐ろしく整った顔立ちの少女のふたりが立っていた。



  **********



「さてとっ!」

 風音は横転した馬車の上でフライを解除して、横転した馬車の上に乗った。

「ユッコネエ、落ちてるおっさんを拾ってきて」

「にゃっ」

 風音が指示を出すとチャイルドストーンからユッコネエが飛び出していく。目の前のまん丸い顔の男がそれを見て「ひっ」と驚いていたが、それを無視して風音は『偽りの威圧』のスキルをオンにして、そして「スキル・タイガーアイ」と声を出した。

 その途端に、走ってきたコボルト地竜モドキライダーたちの動きが止まり、コボルト4体が地竜モドキから落ちた。それはタイガーアイの金縛りの効果ではあるが、効き目はそれほどでもないようだった。

(ふうむ。止めることには成功したけど、『偽りの威圧』は元々地竜モドキのスキルだし、効きが悪いのかなあ)

 などと風音は考えたが、ともあれ、いきなり集団で襲いかかられるような事態は逃れた。そして、


「風になれぇえええええええ!!!!!!!!!!!」


 突然の稲光が立ち止まったコボルト地竜モドキライダーを轢いていった。十を超えるコボルトと地竜モドキが吹き飛んでいく。

 一緒にどこぞの爺さんの声も聞こえたが、気にしない。

 それを馬車から顔を出している男が目を丸くして見ている。まあ、普通は驚くだろう。そんな男の様子も気にせず風音は「そんじゃっ」と言ってアイテムボックスから10本の水晶の槍を出して地面に突き立てた。

「風音、これは?」

 横にいるティアラが尋ねる。

「さっき言ってたヤツだよ。元は普通の鉄の槍だけど、私が最高強度で水晶化させたの。これなら生半可な武器よりも硬度があって使えると思う」

 その言葉にティアラは喜色満面といった顔でフレイムナイトたちに水晶の槍を持たせる。風音からの贈り物である。喜ばないわけがなかったのだ。そしてフレイムナイトがそれを手に持つと全身の炎が反射して水晶の槍が赤く輝いた。

 その新たなる力を手にした騎士たちは馬車の前にズラッと並んでコボルト地竜モドキライダーたちに構える。

 すでに弓花たちも馬車から出て、コボルトたちを囲んでいる。

 先ほどの『這い寄る稲妻』ですでに三分の一程度は轢き殺されたのだ。魔物たちの顔には怯えが見られたが、だが群れの中心から凄まじい叫び声が轟いた。


「あれはコボルト・ブルー!?」

 エミリィが驚きの顔でそれを見る。その叫び声をあげたコボルトは周囲のコボルトよりも一回り大きく全身が青かった。

「やべえぞ。そいつの爪には毒がある。あれに当たると嘔吐して死ぬぞ」

 ライルが青い顔をしてそう言う。あの魔物の毒は非常に厄介なもので、嘔吐や下痢を起こし、場合によってはショック死することもあるというものだ。ライルたちの知り合いの冒険者も何人かコボルト・ブルーにやられて死んでいる。仮に倒せてもその後戦った相手も死ぬのだ。そのためハイヴァーンの冒険者はコボルト・ブルーを死神と呼んで忌み嫌っていた。

「しかも乗ってるのも地竜モドキじゃないな。本物の地竜だ」

 直樹が冷静にそう口にする。地竜モドキに対してパニックになってはいないようだった。

「どうする? ワシがやるか?」

 ジンライがそう口にする。『情報連携』を通じて魔物を挟んで反対の位置にいる風音にもその声は伝わったが、首を横に振る。

「ジンライさんは地竜の方をお願い。コボルト・ブルーは私が。弓花は直樹たちの先導をして雑魚の片付けをお願い」

「分かった」

「了解っ!」

 風音の指示にジンライと弓花が返事をする。

「ルイーズさんはテキトーに援護で。ティアラはここを死守でお願いね」

「はいはい。テキトーいただきましたー」

「分かりましたわ」

 ルイーズの暢気な声とティアラのやる気に満ちた声が届く。ルイーズの扱いがなおざりなようだが、最後部から俯瞰的にものを見れる彼女は実際好きに動いてもらった方が良い結果が出るのだと風音は経験上理解していた。

(そんじゃあ、こっちも新兵器を出しちゃうかなぁ)

 そしてアイテムボックスから二振りの魔法短剣を取り出す。名をフェザーという。どちらも同じ形で両方ともフェザー、ようするに商品名なのだ。一応の試運転は行ったがまだ実戦経験はない。だが風音は構うことなく剣を構えた。元々ジークでゼクシアハーツをプレイしていたときには中盤までは散々使ってきた技だ。不安はない。

「そんじゃ、スペル・ファイア・ブースト!」

 風音は魔法短剣に魔術を装填し、それを8度繰り返す。

「スキル・ダッシュッ!!」

 そしてスキルのダッシュを用いて走り出した。

 その速度にはその場に留まっていたコボルトたちも驚いたが、後ろにいるコボルト・ブルーからの殺気に覚悟を決めて、自分たちも走り出した。風音はまだ『偽りの威圧』をオフにしていない。コボルトたちには風音が恐るべき悪鬼のように見えていた。

 その相手に対して風音は、迫り来る地竜モドキを空中跳びで飛び越えると乗っているコボルトの頭部に竜鬼の甲冑靴で蹴りを見舞う。

 風音の蹴りはすでにキリングレッグでなくともコボルト程度ならば一撃でしとめることが可能だ。そしてグキッとイヤな音とともにコボルトが地竜から落とされた。

「グギャッ」

 それを見て別のコボルトが叫ぶが、風音は気にせず再度空中跳びを発動。

(間には一体だけか。むっ!?)

 風音が標的のコボルト・ブルーを見ると、相手もうなり声を上げながら地竜から飛んでこちらに向かってくるのが見えた。間にいるコボルトが踏み台にされて、そのまま下に落とされる。

「イキがよいねぇ」

 風音は竜鬼の甲冑靴から竜爪を出し、さらに空中跳びで空に上がった。

「グギャアアア!!」

 コボルト・ブルーはそれを見て叫ぶが、風音は気にせず魔法短剣からファイアブーストを始動させる。そして急激な加速が風音を襲う。

 その突然のことに周囲のコボルトもコボルト・ブルーも驚きの顔で見るが、上空から凄まじい速度でソレは一直線に突き進み、


「うりゃあっ!!」

 

 風音の足から出ている竜爪がコボルト・ブルーの右腕を切り裂き、そして青色の腕が宙に舞った。同時にコボルト・ブルーの叫び声があがる。

 だがその叫びは右腕の痛みのせいだけではない。右腕を切り裂き、そのまま後ろへと抜けたはずの風音の蹴りが再度コボルト・ブルーの背に直撃し、突き刺さった竜爪が胸を突き出していた。

「ブッグギャアアア!?」

 その風音に対してコボルト・ブルーは最後の力を振り絞って左腕の毒爪を突き刺そうとするが、


「させないよっ!」


 だが風音は右手の魔法短剣からさらにファイアブーストをかけると、その勢いでギュルンッと一回転をして、コボルト・ブルーを捻り斬って絶命させてその場から離脱した。

 おそらく最後までコボルト・ブルーは風音がどう動いたのか分からなかっただろうが、今の戦闘で風音が行ったのは急突進と急旋回、急回転である。

 風音がカザネネオバズーカに使っていた魔法短剣のファイアブーストは元々ゼクシアハーツの魔法剣士が突撃用に開発したものだ。それが応用されて最終的にはロボットゲームのような機動を可能にしていた。

 さらに風音の場合は叡智のサークレットによって回転酔いも瞬時に回復する上に蹴り技メインなのでブースト用の魔法短剣を両手に持つこともできる。

 ウォンバードで買った魔法短剣でファイアブーストの効果は確認できていたので、いよいよこのブーストを用いた戦闘を取り入れようと考えて、風音は昨日に魔法短剣フェザーを購入したのだった。


「ふうむ。えげつないことをしよるわ」

 その風音を見ながらジンライが地竜にとどめを刺していた。弓花たちも周囲のコボルト地竜モドキライダーたちを駆逐している。

 ティアラのフレイムナイトも3体の地竜モドキと5体のコボルトを倒すのに成功し、わずかな間に50組のコボルト地竜モドキライダーは全滅となった。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣フェザー×2・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:31

体力:114

魔力:205+420

筋力:55+10

俊敏力:48+4

持久力:31

知力:62

器用さ:39

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』『より頑丈な歯[竜系統]』『水晶化[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム』『空間拡張』『偽銀生成』『毒爪』


弓花「そういえばせっかく覚えたメガビーム、使ってなかったわね」

風音「あ、忘れてた」

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