表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
ドラゴンイーター編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

188/1136

第百八十一話 厄介事を見つけよう

『姫か。ふむ、我らの王女とあらばしっかりと見送りをするべきではないだろうか』

 それは地の底から響くような声。周囲には輝く瞳が立ち並んでいる。

『だがあくまでお忍びのはず。我らが声をかけることで姫に迷惑があってはならぬはずだ』

 別の声が響いた。

『待てよ、皆の衆。よくよく考えれば俺らぁ姫さんが来たときに一度やらかしちまってるぞ』

 妙案だとばかりにさらに別の声が響きわたった。

『だからこそ慎重にだな』

『アホォ、違うやろ。一度やって問題なかったってことはな。次だって同じ名目でやっときゃ問題ないっつーことやろが』

 妙案とばかりに周囲の気配が明るくなる。

『おお、そうや。やるなあ兄弟』

『応ともよ』

『頭、どうでしょうか。それならば行けるんじゃないですか?』

『確かジライドの不始末の詫びの歓待とかそういう話だったか』


 もはや言うまでもないだろうが、ここまでの会話はディアサウスの騎竜の会話であった。彼らはゴードから風音が神竜帝ナーガの娘であると聞いていた。

 そして10日前のハイヴァーンの騎竜が一斉に起こした暴走騒ぎは、市民には功績のあるパーティの歓待によるものだと嘘の通達がされていた。それは、(まさか因縁をつけるために脅しに飛び回っていたなどと市民には伝えられないので)止むを得ずの処置であった。

 だがそれは同時に、そうした名目ならば行動しても良いと認めてしまったことにも他ならない。悪しき前例とはこうして利用されるものなのだ。


『ならば良いだろう。盛大に見送りしてやろうぜ、テメエラーー!!』


『『『『グォォオオオオオオオオオ!!!!』』』』


 そうしてハイヴァーンでもっとも巨大な騎竜厩舎に雷鳴のような叫び声が響き渡り、その日の内に再び騎竜大暴動が発生する。

 前回と違い、竜たちから発せられるのは怒りではなく慈愛に近い竜気であったため、市民はそれほど怯えることはなかった。だが、それも程度問題であり、騎竜たちが厩舎に戻ってきたときには鬼の形相の竜の巫女長が待っていた。

 前回は自分に至らぬ部分があったからこそ強くも出れなかったが、今回は違う。騎竜たちを預かる竜の巫女長としてシンディは心を鬼にして騎竜たちに制裁を加えた。もしくは夫との涙の別れをギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーギャーと喚き立てられ邪魔されたことへの怒りの鉄拳制裁である。


 そう彼女は怒り狂っていた。


 そして古参の竜は久方ぶりに、新参の竜は初めて、竜母とすら言われて慕われているシンディ・バーンズがただの慈悲だけの女性ではないと知ることになるのであった。


 もっとも、ここまでは余談であり、風音たちはそんな状況になっているとは知ることなく馬車を走らせる。風音たちにとっては、出るときに騎竜たちが顔を見せに来てくれたので手を振って別れの挨拶をした……ただ、それだけのことなのだ。

 その際、竜たちが「姫!」「姫!」と呼ぶのでこそばゆい思いをしたが、とりあえずは挨拶だけはきっちりしておいた。風音は礼儀を知る女の子だ。


 その風音も今は馬車の中から窓の外を見ている。視線の先には騎竜ライエルがベンゼルを乗せて飛んでいる姿があった。

「おー、うらやましいなあ」

 竜騎士である。カッコいいもの好きの風音が憧れるのも無理はない。

「あんたは乗せることはできても乗ることはできないしねえ」

 風音の横で弓花がそう口にした。ちなみに弓花は竜体化風音と騎竜モルドに乗っている経験者様である。

「うーん。いっそレインボーハートを転生竜にさせちゃうってのは手かも」

 竜の心臓を使って転生竜ができることはアオから聞いている。だがその幻想を打ち砕く言葉が返ってきた。

「カザネ、多分それで生まれた竜があたしたちを乗せられるくらいまで成長するには20年は必要よ」

「マジで?」

 ルイーズの言葉に風音が目を丸くする。

「それだと竜騎士へのジョブチェンジはできないかぁ」

「あんたなら騎竜にはなれるけどね」

 その言葉に風音の目が見開いた。

「うーん、それはそれで試してみてもいいかも」

 冗談のつもりで言った弓花の言葉だが、意外に風音は乗り気であった。

「荷物届けたら竜体化は好きに使えるしね。ものは試しっていうし上手く行けば竜人化の継続時間が延ばせるかも知れないし」

「あ、そういうこともあるのか」

 弓花の竜人化は制限時間が最高20分となっている。だが、本来の竜騎士の竜人化というのは騎竜とのパスを通じて竜気を送り込まれるため、騎竜が活動不能にならない限り竜人化は継続できるものなのだ。風音と、竜騎士のような契約が可能になれば、風音の竜気が続く限りは弓花も竜人化し続けられるかもしれない。

「うう、わたくしも風音の竜気を浴びて変身したいですわ」

 ティアラはうらやましげにそう言う。

「でもユミカは竜人化できるから行けるかもしれないけどティアラは難しいんじゃないの?」

 そのエミリィの言葉にティアラがショボンとする。

「それに風音の竜気はそもそも氷属性ベースだから、炎の属性が強いティアラだと少し厳しいかもしれないわねえ」

 ルイーズの言葉にティアラがさらにショボーンとした。

「けど、まあティアラは今のままで十分役に立ってるし。今までの戦いでもティアラのフレイムナイトには随分と助けられてるからねえ」

「本当ですの、カザネ?」

 俯いていたティアラがガバッと顔を上げる。その勢いに風音もやや気圧されたが、ティアラの問いに頷いた。

 実際、大概の大物との戦闘ではティアラのフレイムナイトによる敵の攻撃分散が効果を発揮している。突いて良し、守って良しの上に現時点でティアラはフレイムナイトを10体まで呼ぶことが可能だ。それはもう天才と言ってもよかった。

「後はフレイムナイト自体の攻撃力を上げられれば言うことないと思ったんだよね」

「うう、わたくしはまだ未熟ですので武器にまで力及ばず」

 ティアラが申し訳無さそうに頭を下げたので風音は「あーいやいや」と返した。

「召喚でわざわざ武器を生成するよりも元から用意しておいた方が早いと思ったんだよね」

「どういうことですの?」

「後で説明するよ。まあ楽しみに待ってて」

 そう言って風音はティアラに微笑みかけたのだが、それも一瞬のこと。風音の顔が急に緊張を帯びたものになった。

「カザネ?」

 ティアラが驚きの顔を上げるが風音はすぐさまジンライに声をかける。

「ジンライさん、マズいっぽい」


 突然の風音の声にジンライが御者席から言葉を返す。

「どうした?」

「右側だ、姉貴。馬車が何かに襲われてる」

 姉の言葉ですぐに察知スキルをかけた直樹が目ざとく風音の認識したものを当てる。そちらに若干だが土煙らしきものが舞っているのが見える。

「とりあえず飛ばすぞっ」

 ジンライはそう言ってヒポ丸くんの速度を上げる。道なき道に降りたのでガタンと揺れたが今は非常事態だ。そして風音は叡智のサークレットによる遠隔視で状況を確認する。

「地竜もどきに乗ってるコボルトの群れだね。50組ぐらい?」

「普通の数じゃないね」

 エミリィが緊張した顔でそう口にする。コボルトが地竜に乗って乗り物として利用しているコボルト地竜モドキライダーという長い名前の存在は昔からいるが、そこまで集まっているのはほとんど聞いたことがない。

「多分追いかけられて道から離れちゃったんだろうけど、あれじゃあすぐに転ぶか追いつかれる」

 風音たちのヒポ丸くんはともかく、ただの馬車が草原を全速力で走り続けるのは無茶な話だ。

「ジンライさんは『這い寄る稲妻』で群れをブッたぎっちゃって。みんなはそこから迎撃お願い」

 風音の言葉に全員が頷く。

「あんたは?」

「フライで馬車に追い付く!」

 弓花の質問に風音はそう答える。風音には単独で移動できる手段がある。この世界に来て最初に手に入れた魔術『フライ』である。魔力を湯水のように消費するし、制御に集中力をとられるので戦闘に使用できないが、こうした緊急時の移動手段としては有効だ。

「だったらティアラも連れてって。確か人数で速度は変わらなかったはずだよね」

「いいけど、なんでって……て、そうか。ティアラ、手を握って」

「あ、はい」

「それとフレイムナイトの準備をお願い。他のみんなはドアから離れて」

 風音の言うがままに他のメンバーは風音が開こうとするドアと逆に寄る。

「スキル・フライ。指定は私、ティアラで」

 フワッと風音とティアラの体が浮かぶ。

「うわっ」

 ティアラが驚きの声を上げた。

「そんじゃ3・2・1・はいっ!!」

 バンッとドアが開くが、サンダーチャリオットの紫電結界が風の勢いを防いでいる。そして風音とティアラはそこから一気に外に出た。

 それに併せてジンライがさらにヒポ丸くんの速度を上げる。向かう先はコボルト地竜モドキライダーだ。


「う、浮いてる」

「ああー、転んだああッ」

 ティアラの感動をよそに風音が叫び声をあげる。遠隔視で馬車が横転したのが見えたのだ。

 その馬車に向かってコボルト地竜モドキライダーが双方向に分かれているのが見える。囲むつもりだろう。このままでは馬車の人間が危険だ。

「あの数じゃあ、数で対抗するしかないか。良い勘してるな弓花。ティアラ、フレイムナイトすぐ出せる?」

「大丈夫です」

 左手は風音と手を繋いでるが右手は召喚器のレイピアを持っている。

「射程圏内に入ったら、すぐに召喚を!馬車の人を守って!!」

 風音の言葉にティアラが頷く。ティアラはレイピアをかざし、そのときを待った。


名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:31

体力:114

魔力:205+420

筋力:55+10

俊敏力:48+4

持久力:31

知力:62

器用さ:39

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』『より頑丈な歯[竜系統]』『水晶化[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム』『空間拡張』


風音「主人公が道を通ると馬車が襲われる法則」

弓花「実際襲われる確率ってどんなものなの?」

風音「ケースバイケースだよ。普通はそんなでもないけど、魔物が活性化している状況だと襲われることも多いかな。前にオーガに襲われてた奴隷商とかね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ