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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
ドラゴンイーター編

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第百七十八話 筋肉を愛でよう

 大学に着くまでに囚人脱走の現場に立ち会うなどという想定外の事態が起きたが、風音たちはそれほど遅れることなく大学へと到着していた。風音たちがただの第三者であることは御者の兵も理解していたし、ギルドカードを見せて身元の確認だけ済ませたら、特に事情の聴取もなく風音たちは解放されたのだった。

 なお、風音の鼻でイジカの臭いをたどることは可能であったが、追跡はしなかった。その残り香から相手がかなりの強者であることを窺わせていたし、正義感のみで自分の身を危険にさらすような真似は謹むべきとも自重していたためだ。

 レインボーハートとアウターの件もある。最近調子に乗りすぎたと感じていたので尚更あまり出しゃばらない方が良いだろうという判断をしていた。それが吉と出るか凶と出るかはいずれまた別の機会にハッキリするかもしれないが、ともあれ今はウェルス大学である。

 風音が目の前の大学を見渡す。それは大公の城に比べれば小さな作りだが、石造りの丁寧に作られた茶色い建物で、その建造物の周囲には20から40くらいまでの生徒らしき人物が何人も歩いているのが見えていた。



◎首都ディアサウス ウェルス大学 入り口


「結構年食った人とか多いね。教授じゃないよね、なんか若い人と普通に話してるし」

『ま、教授や教員もあの場にいるかもしれんが、大部分は学生であろうな』

 大学の前で周囲を見回している風音にそうメフィルスが口にする。

 この世界、というよりはこの大陸、或いはこの地域と言うべきか。基本的に初等教育に類するものを受ける学校は街ごとにいくつか存在しており、貴族やある程度の財産を持った家の子供はそこに通っていると風音は聞いていた。

 また裕福でない子供たちも義務ではないが日曜学校の形で教育を受けることは許されている。

 そしてこの大学という施設はそうした教育によって芽生えた知識をさらにのばしていく場であり、ある程度の教養があれば入学することが可能だ。研究所や工房などに就職する窓口でもあるし、大学内でも研究を行い、研究所と同等の成果を上げていたりもする。

 なお、ハイヴァーンの事情を言えば、国からも助成金がでているため、通うだけならばそれほど裕福でなくとも可能ではあるようだった。ただし風音の知るような大学とは違い単位などというものは存在しないし、修業年限があるわけでもない。在学中に就職できればそこで終わりだし、研究員、教員や教授になる道もあるとのこと。

 そしてメフィルスの知人であるマーベリット・モノホリスはそうした大学の教授であり、著名な宮廷建築家であり、魔道弓という比較的新しい分野の武器の研究の第一人者でもある。そしてその人物は大学の玄関口で仁王立ちで立っていた。


「遅いッ!!」


 第一声がそれだった。ぶるんと震えた。

(褐色肌に尖った耳、ダークエルフさんだね) 

 しかもマッチョ巨乳の女の人だ。黒人女性のボディビルダーみたいだった。エルフ族というのは基本細身と聞いているのだが、ルイーズといい、このマーベリットといい、何故に風音が会うエルフはこうもボリュームがある人ばかりなのだろうか。

『すまんな。途中、面倒があってな』

 メフィルスがそう口にして風音とエミリィもそれに併せて頭を下げる。面倒事とはさきほどのイジカ脱走の立ち会いである。確かに解放はすぐにされたが、それでも多少の時間はとられていたため、待ち合わせの時間には間に合わなかった。

「常套句だな。どうせ貴様のことだ。若い娘をはべらせて悦に入っていったのだろう」

 そのマーベリットの言葉にメフィルスはニヤリと笑う。

『そうであればよいのだが、今の余はとんと精力がないからのぉ』

「それぐらいが貴様にはちょうど良いことだろうよ」

 メフィルスの言葉にマーベリットは鼻で笑って返した。


(お爺ちゃんの正体知っててその会話ができるってのは凄いなあ)

 そのふたりのやりとりを見ながら風音はそう思った。元王様である。元になったからあの態度になったというわけでもあるまい。恐らくふたりは昔からそうした間柄だったのだろう。

 なお、ふたりはすでにディアサウスに入った後に出会っているそうなので、マーベリットもメフィルスが召喚獣になっていることにはその場ではツッコミは入れなかった。

「師匠。遅れた事情があったのは本当なんですよ。途中で移送中の犯人が脱走してそこに出くわしたんです」

 横から入ってきたエミリィの言葉にマーベリットが興味深そうに尋ねる。

「ほお。それでは、その犯人とやらは捕まえたのか?」

「いえ。私たちが行ったときには逃げた後だったので」

 師匠の問いにエミリィは申しわけなさそうにそう返す。

「なるほどな」

 マーベリットがエミリィを、風音を、メフィルスを値踏みをするように見る。

「まあ、いいだろう。お前とも久し振りだ。旅の話を後で聞かせてもらおう。その大層立派な弓といっしょにな」

 うぐっとエミリィの言葉が詰まる。身の丈に合わぬ装備だとは自覚しているだけに師匠の言葉に冷や汗が出る。そしてマーベリットの案内で風音たちはウェルス大学へと入っていく。



◎首都ディアサウス ウェルス大学 第5実験区画


「白き一団に入った話自体はそっちのメフィルスから聞いてはいたのだが、ブルーリフォン要塞攻略か。よくもまあ生きてたものだ」

 マーベリットは竜翼弓を確認しながら、そう口にした。褒めてる風ではないのは、その雰囲気から分かったので、エミリィはとりあえず頷いているに留めている。エミリィはこのマーベリットにまったく頭が上がらないようだった。

「この竜翼弓も匠の作ではないが、しっかりと作られている。なかなか良い出来だ」

 そう言いながら、矢を一本持ち出して、つがえ、ビュンッと射った。そして、それはさきほど風音がゴーレムメーカーで用意した石の的に刺さり、そのまま一撃で粉砕した。

「おーー」

 風音が感嘆の声をあげる。余計なものが腰にへばりついている上に、魔力も竜気も通していないのに恐ろしい破壊力だった。

「この辺りは槍術の『振』と同じ原理だ。これができていればストーンミノタウロスにもダメージが通るはずだったんだがな」

「うう、すみません」

 弟子がうなだれて頭を下げる。それを不甲斐ないとばかりに見るマーベリットだが、しかし続けて自分の腰にへばりついているものを見て溜め息をはく。

「それでカザネはまだ離れてはくれないのか」

「好きやねん。ピトーってするの好きやねん」

 風音のキャラが崩壊していた。だらしなくデヘヘヘーとマーベリットの腰に抱きつきながらスリスリしている。風音的にアカに次ぐ筋肉がそこにあったのだ。完全なデレモードだった。

「それにその図面の説明もーしないといけないしー近くにいた方がいいよねー」

 風音の視線の先にあったのは『目の前にある建造物』の図面である。

 ウェルス大学 第5実験区画、広域魔術の実験のための野外施設の隅に風音が作り出したコテージがデンッと建っていた。今でこそ弟子に対してこうしてアドバイスというか説教のようなことをしているが、マーベリットもこの風音のコテージが一分とかからずにできたときには度胆を抜かれた。

 そのコテージは、以前にゆっこ姉が考案した宮殿風のイメージに、チャイルドストーン動力設置、水珠の水源設置、不滅の水晶灯による光源設置、水晶化による窓設置などを入れ込んだ風音の技術の集大成のようなものだ。

 現在は宮廷建築士としてのマーベリットの弟子が、いくつかの建物の図面と共に建造物の内容を確認しているところだが、さきほどから中の弟子が「スゲースゲー」を連発している。特に風音の会心の出来である『お尻に水が飛び出して洗浄してくれる』トイレの評価が高いようだ。

 マーベリットもさきほどは実物を見て図面も一通り確認したのだが、確かに建築士として見た場合に甘い箇所も多々見られるものの、それを上回る生活環境のレベルの高さに立ちくらみがしそうな衝撃を覚えた。

(血管のように建造物の中に水を循環させる管を用意しているのか。温水と冷水を魔術で作り出して室内の温度を調整させるわけだな。無駄に豪勢な造りをしているな)

 マーベリットも図面からある程度の内容は読み取れたのだが、王族でもやらないような贅沢なことをよくもまあ、ここまで盛り込んだものだと感心する。

 とはいえ、実は水を使用することを前提にコテージを改造したのは要塞を出た後のことで、風音はここ二日間ほどで水珠の使用を前提に温水暖房などを搭載したコテージを設計していた。

(しかし、これを野宿の時にしか利用しないだと……アホ過ぎて言葉も出ないわ)

 マーベリットは頭が痛くなる。手持ちのアイテムの能力に依存している面が大きく、ワンオフの仕様ではあるが、この暮らしやすさを追求した構造は驚異であると感じていた。だがその製作者は現在マーベリットにしがみついているアホの子である。このギャップはなんなのだろう。

「か、風音。そろそろ離れたら?」

 そろそろ師匠の雷が落ちるのではないかと気が気ではないエミリィが風音にそう声をかける。

「でも私、限界まで魔力使ったから回復に専念しないと」

「これで回復するのか?」

「します」

 マーベリットの呆れた声に風音は力強く頷いた。するらしい。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:31

体力:114

魔力:205+420

筋力:55+10

俊敏力:48+4

持久力:31

知力:62

器用さ:39

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』『より頑丈な歯[竜系統]』『水晶化[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム』『空間拡張』


弓花「嬉しそうだねえ」

風音「至福!」

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