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まのわ ~魔物倒す・能力奪う・私強くなる~  作者: 紫炎
ドラゴンイーター編

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第百七十六話 道のりを決めよう

◎首都ディアサウス 冒険者ギルド事務所 ギルドマスタールーム


「これはヨシアキ・オイローというヘルクトの貴族の方の著書でしてね。スライムの生態を記したものなんですよ。恐らく歴史上でも類を見ないスライムの細かな調査をした本でしょうね。いやぁページをめくるたびにドキドキが止まりませんよ」

 そう言ってギルドマスターのベンゼルは騎竜ライエルに届けてもらった品に頬摺りしていた。

「……へえ」

 なんでもベンゼルは魔物マニアらしい。いろいろと魔物に対して深い知識を求めて、自分で調べたり、書物を漁ったりしているのだとか。

 そして風音はと言えば、その本の著者がヨシアキという名からプレイヤーであることを予想していたが、随分と遠い国にいるらしいので会う機会はないだろうなぁと考えていた。

 現在、風音とティアラとルイーズは冒険者ギルド事務所の二階にあるギルドマスタールームに来ていた。

 このメンツなのは、風音がティアラの母親のケイランに呼ばれており、そのついでに冒険者ギルドに寄ったためだ。ルイーズはティアラの護衛でもあるので元からエルマー家に厄介になっているし、弓花はバーンズ家に、ライルとエミリィとついでに直樹もバーンズ家に泊まるようだった。


「黒岩竜のステーキですか」

 そして風音がパーティの今後の予定を伝えると、ベンゼルが涎を垂らしそうな顔でそう口にした。あのクラスのドラゴンのステーキなど本当に限られた人間にしか食べられない。金額の問題もあるが、モノがないのだ。故に魔物マニアでその上グルメなベンゼルがうらやましそうな顔をするのは至極当然のことだった。その様子を見て、

(あれ、もしかしたら竜葬土にしたのって早まったかな?)

 と風音は今更ながら思った。黒岩竜の肉はいくらかは相場額で換金したが、その多くを竜葬土にするように依頼してしまった。もっとも最上質な竜葬土ができるのは間違いないので将来的に見れば失敗ともいえない。

「相場額を払って私も食べさせてもらうのはダメかなぁ」

 と尋ねるベンゼルに風音は唸る。実際食べる分には結構な塊がまだある。特に風音が水晶化を覚えたので不思議な冷凍保存袋にいれておいた肉の塊を水晶化保存に切り替えて不思議な倉庫に保存している。だが、だからといって売るとなると話は別だ。

「うーん。ルイーズさん、どうしよう?」

 風音が最年長の仲間の判断にゆだねる。それにルイーズが苦笑しながら受け答える。

「ま、とりあえずは後で全員に確認をとって反対意見がなければいいんじゃないの?」

 その言葉にベンゼルが手を叩いて喜んでいる。そしてその浮かれているベンゼルにルイーズが質問をぶつける。

「それであんた、相場額って言ったけど今の相場知ってるの?」

「はい。ええと、これぐらいですね」

 そう言ってベンゼルがスラスラと紙に書いた金額は、ルイーズが驚くような額だった。それはそれはルイーズの考えていた金額よりも桁が一つ違った。

「なんで、こんなに高いのよ」

 ルイーズがそう叫ぶが、ベンゼルは渋い顔で答えを返した。

「値上がりしたんですよ。最近ですけど」

 ベンゼルが言うにはミンシアナ、ツヴァーラでの竜葬土需要が高まる中でミンシアナと交易のあるハイヴァーンでも竜の肉の相場が高騰化しているらしいとのこと。その中でも黒岩竜クラスの肉はもはや恐ろしい金額になっているとのことだった。

「その金額を払ってでも食べたいわけ?」

 あきれ顔でルイーズが尋ねるとベンゼルは大きく頷いた。

「もちろん、高くなっているからこそ、稀少だと言われているからこそ食べたくなるのではないですか」

 その気持ちは風音にも分かる。発売日にそれほど買おうと思わなかったゲームソフトが売り切れと書いてあると途端に欲しくなる。ネットオークションで高騰化しているとついポチりたくなるものなのだ。

「そうなるとベンゼルさんもドルムーの街にいっしょに行くってことだよね?」

「ええ、そのまま竜の里に向かうのでしたら、肉の件は置いといても、私とライエルも一緒に行かないといけませんしね」

 風音の問いにベンゼルがそう口にする。

「ドルムーを越えて東へ、モロゴ山よりもさらに先にあるコンロン山に東の竜の里ゼーガンがありますので」

 どうやら風音たちが一度通った道を引き返すルートになるようだった。

「コンロン山には確か結界が張ってあるのよね。ライエルがそれを解いてくれるってわけかしら?」

「ま、そういうことですね」

 そうベンゼルは言って机から取り出した地図を広げてルートを示した。

 ディアサウスからだと途中のドルムーの街、ドンゴルの街に最近までライルたちが拠点としていたオルボアの街を越えてさらにパラムの街、デイドナの街、最後にコンロン山の麓のドラムスの街まで行く必要があった。他にも村や街はあるが、ヒポ丸くんの移動速度を考えて一日ごとに街から街に行くとなると、ここであげた街々を進んでいくのが良いだろうとルイーズは言った。

 ちなみにオルボアの街を越えた後の3つの街はそれぞれ温泉があるそうで、確実にそれ狙いでルイーズはルートを決めていたが、風音も温泉万歳なので大賛成であった。


 その後、風音たちは予定通りエルマー家に向かった。

 なお風音は近所の黒田のお爺ちゃんから「風音ちゃんはほんに魔性の女じゃのぉ」と呼ばれるくらいのお年寄りキラーなため、ティアラの祖父のマイセンにやたらかわいがられていた。


 そして翌日、風音はバーンズ家へと向かうこととなる。エミリィと大学に行く約束があるのと、弓花の腕輪に竜気を補充する約束もあったためだ。



◎首都ディアサウス バーンズ道場


 バーンズ家の横に建造されているバーンズ道場は、このハイヴァーンではかなり古い歴史を持つ槍術の道場とのことだった。現大公もこの道場の出身だし、ジンライも田舎を出てこの道場に通っていたそうだ。


「ユミカさん、ちぃーす」

「「「「ちーーーす!!」」」」


 そして、その道場の入口から暑苦しい声が響き渡っていた。この道場で現在紅一点である牙の槍兵の愛弟子がやってきたからだ。

 弓花はその出迎えに「よろしくお願いします」と控えめに挨拶をすると、そのまま道場の中に入っていった。


「うぉおおおお!ユミカ嬢がワシに挨拶してくれたぞーー!!」

「お前だけじゃねえだろうがッ」

「可憐じゃー。高嶺の花じゃーーー!!」


 弓花が通った後には、そんな会話が飛び交う。

 元々この国は積極的に槍術を習わせることを良しとしているため女性が槍術を習うこと自体は珍しいものではない。だが、このバーンズ道場は事情が違う。ここはハイヴァーン内でも極めて有望な者だけを集めて修行を行う場なのだ。

 なので女性がこの道場に学びに通うということ自体が滅多にない。近年では紅のあざなを持つネイベル・シーンという現役の女性竜騎士が通っていたぐらいだろう。

 そして弓花も最初からこのような扱いだったわけではなかった。寧ろ大反発を食らったのだ。いくら牙の槍兵の愛弟子とはいえ、特別扱いがすぎるのではないか? そう口にされるのは至極当然の流れだろう。

 しかし、弓花はその流れを実力で吹き飛ばした。すべて叩き潰したと言っても良い。さすがに筆頭と呼ばれる道場の門下生ナンバーワン、ドルク・シーンとは引き分けで終わったが、だがそこまで実力を示せれば十分だ。

 以降は、この調子である。それをジンライ道場の時も同じノリだったな〜と遠目で見ている風音は思った。だが、


「どうもあのノリの筋肉は好きになれないな」

『……そうか』


 そう風音はルイーズから借りて(?)腕の中にいるメフィルスと話しながら道場に入ろうとする。しかし、風音の進行を止めた男がいた。

「ああ、お嬢ちゃん。ここはお嬢ちゃんの通える道場じゃないんだよ」

 それは、先ほどまで弓花に愛想を振りまいていた男たちよりもひとつ抜きん出た印象のある金髪の青年だった。年は二十前後くらいだろうか。にこやかに微笑みながら風音に注意をしている。

 そして風音は知らないが、この青年こそがこの道場のナンバーワンのドルク・シーンである。紅のネイベル・シーンの弟で、次代の竜騎士を率いる器として期待されている人物でもあった。

(ふーむ)

 風音は、舐めるようにその男を見て、良い筋肉だと評価した後、ドルクの前でウィンドウを開いて、パッシブスキル『偽りの威圧』をオンにしてからアクティブスキル『フィアボイス』を選択した。風音は発生プロセスの速さからボイスコマンドを主に使うがこうしてウィンドウからの選択を行うことも可能だ。そしてウィンドウの見えないメフィルスは何かしてるなとは思ったが、とりあえず様子を見守ることにした。


「なっ!?」


 そして次の瞬間には、ドルクは突然少女から強力なプレッシャーを感じて飛び退いた。

(なんだ。このプレッシャーは?)

 まるで風音の背中にゴゴゴゴゴゴ……と擬音が並んでいるような、心なしか顔の彫りが深くなったような、劇画っぽくなったような印象があった。

 その様子に道場の門下生たちも異様さを感じて一様に風音を見ていた。ただの子供が出せるプレッシャーではないと誰もが感じ、警戒感を露わにしていた。その男たちに対して風音は声高らかに告げた。


「私は弓花の友人だ。通してもらうよ」


 ゾクッとドルクの心を寒気が通り過ぎた。フィアボイスの効果である恐慌状態に陥った者はさすがにいなかったが、だが確かに男たちの精神に恐怖の楔は打ち込まれた。そして中から弓花が「何やってんのよー」と出てきたときには風音からの強力なプレッシャーは消えていた。そして「すいません、すいません」と謝る弓花に引っ張られて風音とメフィルスは道場の中へと入っていった。


「あれがユミカ嬢の仲間、恐らく鬼殺し姫か。あの幼子の姿で、なんて恐ろしい迫力だ」

 そして風音が弓花に連れられて道場の中に入った後、ドルクが全員の気持ちを代弁するかのようにそう呟いた。何とも迫力のあるオナゴだと全員がうなずき合った。


 なお風音は(……『偽りの威圧』、結構使えるなあ)と思いながら弓花に手を引かれて道場の廊下を歩いていった。あの様子なら気の弱い相手ならさらにフィアボイスが効くようになるだろうし、雑魚敵相手や、この先脅しをかけるような場面があったときにも対応できそうだなと考えていた。それは先日の、弓花が制圧したアウターの件を聞いて考えていたことだった。

 なお弓花は「も、もお、やだよねえ。可憐だとか」などとさきほどの挨拶を見られたと思ったのか(見ていたが)照れながらブツブツ言っていた。

名前:由比浜 風音

職業:魔法剣士

称号:オーガキラー・ドラゴンスレイヤー・ハイビーストサモナー

装備:杖『白炎』・両手剣『黒牙』・粘着剣『ガム』・魔法短剣・竜鱗の胸当て・ドラグガントレット・銀羊の服・シルフィンスカート・プラズマパンツ・竜鬼の甲冑靴・不滅のマント・不思議なポーチ・紅の聖柩・英霊召喚の指輪・叡智のサークレット・アイムの腕輪・蓄魔器・白蓄魔器

レベル:31

体力:114

魔力:205+420

筋力:55+10

俊敏力:48+4

持久力:31

知力:62

器用さ:39

スペル:『フライ』『トーチ』『ファイア』『ヒール』『ファイアストーム』『ヒーラーレイ』『ハイヒール』

スキル:『戦士の記憶』『夜目』『噛み殺す一撃』『犬の嗅覚』『ゴーレムメーカー:Lv3』『突進』『炎の理:三章』『癒しの理:四章』『空中跳び:Lv2』『キリングレッグ:Lv3』『フィアボイス』『インビジブル』『タイガーアイ』『壁歩き』『直感』『致命の救済』『身軽』『チャージ』『マテリアルシールド』『情報連携』『光学迷彩』『吸血剣』『ダッシュ』『竜体化[竜系統]』『リジェネレイト』『魂を砕く刃』『そっと乗せる手』『サンダーチャリオット』『より頑丈な歯[竜系統]』『水晶化[竜系統]』『偽りの威圧』『ストーンミノタウロス』『メガビーム』『空間拡張』


風音「ちょっとしたアイドル気分か」

弓花「う、うるさいなー」

風音「私もちやほやされたいよ」

弓花「それなら王子様と王様がいるじゃない」

風音「いや、それはゴメン被る」

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